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NIMS、静電気を貯める液体を開発
2019年10月1日 14:23
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)および国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、静電気を貯められる「液体エレクトレット材料」を開発した。柔軟性のある電極と組み合わせることで、伸縮や折り曲げが可能な振動発電素子を実現する。
エレクトレット素子は、電荷を半永久的に保持できるもので、電極との距離の変化で電圧を発生する。
今回研究グループでは、電荷を保持する色素ユニットとして「ポルフィリン」を採用。独自に分子設計を行ない合成した「液体ポルフィリン」を使って「ストレッチャブル液体エレクトレット素子」を作製した。
液体ポルフィリンは、ポルフィリン骨格の外側にフェニル置換基を介して8本の分岐アルキル基を化学結合させた分子構造が特徴。常温で不揮発の液体で、これに高電圧でコロナ帯電処理を行い、電荷を付与する。
液体ポルフィリンの有用性を確認する実験では、導電性ITOガラス基板の上に帯電させた液体ポルフィリンを配置。スペーサーを使って基板を封止して、一般的なエレクトレット素子と同様の構造のものを用意した。
はじめに、これを指で押すと電圧の出力が確認でき、振動から電圧が得られた。次に、100V/1kHzの交流電圧を与えると、200Hzの音が確認でき、逆に電圧から振動が得られた。このような振動と電圧の関係は、固体のエレクトレット素子が実際に使用されているマイクとスピーカーと同様の動作であり、液体エレクトレット素子としては世界初の実証例となる。
研究グループでは、これに加えて伸縮性素材への転用を実施。液体ポルフィリンを伸縮性のある布地に浸し、ポリウレタンフィルム上に銀メッキ繊維を編み込んだ伸縮性電極で挟み込んで封止したストレッチャブル液体エレクトレット素子を開発した。指で押すと±100~200mVの電圧出力が得られ、少なくとも1カ月半以上の間、安定的に駆動することが確認された。
今回開発された液体エレクトレット素子は、さまざまな形状で電池が必要ないウェアラブルデバイスの実現につながるとしており、医療分野における脈拍や心拍などを検出するセンサーへの応用が期待されている。加えて、電圧から振動を生み出せるため、触覚素子としての利用も見込んでいる。
【お詫びと訂正】初出時に、タイトルにて「産総研、静電気を貯める液体を開発」としておりましたが、同液体を開発したのは正しくはNIMSとなります。お詫びして訂正させていただきます。