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VAIOが中国市場に再進出。VR事業も展開
~新社長 吉田秀俊氏によるフェーズ2の経営方針が発表
2017年8月1日 17:34
VAIO株式会社は8月1日、代表取締役社長に新しく就任した吉田秀俊氏による経営方針説明会を開催した。
吉田氏は30年近く家電業界で職歴を積み、とくに海外系の営業経験が豊富な人物。現JVCケンウッド代表取締役社長、オプトレックス取締役副社長、エルナー代表取締役社長などを歴任した。新生VAIOを約3年間牽引してきた前代表取締役社長の大田義実氏に代わり、6月15日付けで吉田氏が同役職を引き継いだ。
吉田氏は冒頭で、7月1日でVAIOが3周年を迎え、昨年度(2016年度)の決算で営業利益が前年比で3.2倍に増大したことを述べ、VAIOが順調に成長を続けていることをアピール。「“VAIO”という会社名自体がブランドそのものであり、ブランドの価値をさらに高めていくことが自分にとってのミッションである」との方向性を明らかにした。
吉田氏によれば、起業からの3年間でVAIOは法人向けPCを堅実に拡大させ、受託のEMS事業がVAIOの第3のコア事業として成長させることができたと述べる。EMS事業は初年度は赤字だったものの、現在は営業利益2期連続で黒字化、大幅な売上増が達成され、収益構造の確立ができたという。これによりVAIO構造改革のフェーズ1は終了し、3~5年の成長戦略を描くフェーズ2に移行する。
VAIOはこうした結果に伴い、同社は新たに事業の拡大を図ろうとしている。
VAIO PCの中国再進出と第2のコア事業を立ち上げ
従来のPC事業については、これまでどおりビジネスユースに最高の「快」を求めることを追求し、“かっこいい”と“気持ちいい”PCをテーマにVAIOらしい製品をコンシューマとビジネス向けに提供していく。VAIOの法人向け製品は他社の製品よりも魅力的との声があり、とくに若いユーザーから会社で利用したいとの支持が多いという。
吉田氏は、以前は他社にくらべてビジネスPCとして弱さが目立っていたが、耐久性や仕事面で必須とされるインターフェイスの充実など、こうした点を改善していくことで大きな前進につなげているとの見方を示した。
EMS事業に関しては、NB(New Business)事業戦略とし、受託事業からパートナー事業への変革を図る。同社はトヨタ自動車によるロボット「KIROBO mini」、富士ソフトのロボット「Palmi」など、いくつもの受託を行なっているが、通常EMS事業社の名前が外に出ることは稀という。
VAIOでのEMSを依頼している企業はむしろVAIOブランドで製造されていることをアピールしたいとの思いが強いとのことで、従来は黒子的な存在だったEMS事業が、パートナーという形で製造を請け負うだけでなく、設計支援、アフターサービスなどに加え、VAIOならではの付加価値を提案・提供していく。
そして、今回新しい動きとして、中国市場への再進出を決定した。かつてのソニー時代には中国で100万台ほどVAIOシリーズを販売したとのことだが、PC事業の分離からの3年間で中国での動きは途絶えてしまっていた。
中国は新生VAIOが進出する6カ国目となるが、今回は中国大手のEコマースサイトJD.COMのみと取引し、販売店は利用しない方針を採る。吉田氏はその理由として、中国ではPCやスマートフォンで製品を購入することが当たり前であることを指摘。また、中国市場では価格競争が激しいことから、現状はVAIO Z(クラムシェル)とVAIO S13によるプレミアム路線で展開を図る。まずはVAIOブランドの再認知を図る考えで、初年度は数万台程度の規模になるとしている。
さらに、第3のコア事業として“ソリューション事業”を提案。本格稼働は2018年からとのことだが、EMS事業で培ったノウハウを活かし、まずはソリューション事業の1つとして「VRソリューション」事業を開始するという。
説明会ではあまり具体的な内容は語られなかったが、VAIO自身がVR製品を作るというわけではなく、VRコンテンツを作りたい企業に対してハード、ソフト、サービス面でのサポートを行なうというもの。VRソリューション事業に関してはVRシステムなどを手がけている株式会社ABALと協業し、法人向けに導入・保守・コンテンツ制作、運営企画まですべてをサポートする体制を整える。VR以外のソリューションに関しても水面下で進行させているようだ。
吉田氏は、現状の日本ではPCからスマートフォンまで、海外ブランドばかりになってしまっていることが残念であるという。そのため、VAIOの価値を高めることで、日本のエレクトロニクスを元気にし、日本のブランドを輝かせたいとの強い意気込みを見せた。
以下、会場に展示されていたVAIOの製品を掲載している。