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性能を犠牲にしない熱対策と薄型軽量化を施した15.6型ノート「ThinkPad X1 Extreme」
2018年9月11日 18:56
レノボ・ジャパン株式会社は9月11日、NVIDIAのディスクリートGPUを搭載する国内市場向けの15.6型プレミアムノートPC「ThinkPad X1 Extreme」および「ThinkPad P1」を発表した。
ThinkPad X1 ExtremeはHプロセッサで6コアのCore i7とGeForce GTX 1050 Tiを、ThinkPad P1はXeon/Core i7とQuadro P2000を搭載可能とする製品で、デスクトップPCをしのぐ性能により、写真/映像編集、イラスト/3D CG/3D CAD制作など、デザイナーやクリエイター、プロシューマーが必要とする性能を実現しているのが特徴。
ThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1は同一の設計を採用しており、後者は法人向けとして、ワークステーション用アプリのISV(Independent Software Vendor)認証の取得や、XeonとQuadroを実装できる点が異なっている。
ThinkPad X1 Extremeの詳細に関しては既報の記事(レノボ、6コアCPU/GTX 1050 Ti搭載の「ThinkPad X1 Extreme」を国内投入)を参照いただき、ここでは発表当日開催の記者発表会にて説明された両製品投入の狙いや、開発/設計における技術的な概要について紹介したい。
好調なThinkPadを支える新たな柱に
発表会には、まずレノボ・ジャパンの代表取締役社長のデビット・ベネット氏が登壇し、レノボ・ジャパンの法人ビジネスにおいて、前年比(2017年4月~6月期)で47.8%の成長率をはたしたことをアピール。また、そのうちワークステーションモデルについては73%の伸びとなっていたことも明かされた。
これについてデビット氏は、レノボがワークステーションモデルを戦略的な製品として位置付けており、全世界の営業拠点に対してワークステーションの専門部隊を設置し、より現場の声や問題点を拾えるように改善を進めたことが、成長につながったと説明した。
続いて、同社ワークステーション製品事業本部 事業本部長の林淳二氏が説明を引き継ぎ、これまで展開してきたフィールドワーカー向け、モバイルワーカー向け、ハイブリッドワーカー向け、インターナルワーカー向けというラインナップを超え、ものづくりの現場のプロたちのための働き方改革ソリューションとして、ThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1が投入された背景を語った。
これまでのワークステーションPCは、高性能を求めるがゆえにデスクトップPCを採用せざるを得ないか、ノートPCに性能を求めたために大きさや重量が増大し、可搬性が犠牲になるという問題に直面してきた。レノボはデザイナーやエンジニアといったものづくりの現場にも、テレワークなどに代表される働き方改革を実践する必要があり、その目標を達成可能なデバイスとして、今回のThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1が考案されたという。
高性能かつ可搬性の高い15.6型ワークステーションとして開発
発表会にはレノボの国内開発拠点としておなじみの大和研究所から、開発プロジェクトマネージャーを務める小口貴幸氏が登壇し、設計時の取り組みについて説明が行なわれた。
小口氏はThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1の設計思想として、前述したようなものづくりのプロたちが自由な仕事を行なえるデバイスとして、3つの方針を固めたという。
1つはCPUとディスクリートGPUの性能に妥協を許さないこと、次に薄型軽量化の条件として厚み19mm未満かつ重量約1.8kg未満を達成すること、そして“Be ThinkPad”の哲学をはたすために、あらゆる負荷や衝撃に耐え得る信頼性と堅牢性を掲げた。
小口氏は、性能に関しては熱への対策がまず問題になったとする。というのも、ThinkPad X1 Extreme/ThinkPad P1が搭載するCore i7のHプロセッサは、ThinkPad X1 Carbonが採用するUプロセッサと比べて、約5倍の熱を有しているからだ。
CPUとGPUがサーマルスロットによって本来の性能を損なわないようにするために、ファンのハウジングとヒートパイプを一体化して排熱効率と静音化を行なったほか、CPUとGPUそれぞれに1基ずつファンが設置され、2本のヒートパイプで連結することで、CPU側の冷却能力をGPU側にも発揮させるといった冷却能力の共有を可能にした。この冷却機構は少しでも面積を大きく取るために、各部品の配置に細心の注意が払われ、1つの部品を避けるだけのために一方のファンの端側に微妙な角度を加えるといったこだわりも見られる。
ファンは、フクロウの静かな羽ばたきから着想を得たという独自開発の第10世代オウルファンを搭載。オウルファンは第5世代のX1 Carbonから採用されており、ThinkPad X1 Extreme/ThinkPad P1に組み込んだことで性能が向上するとともに、ファンノイズも2.5dB減少したという。
このほかにも、以下のような試みが行なわれている。
薄型軽量化とThinkPadらしさも再現
ThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1の薄型軽量化を行なうために、X1 Carbonの技術を流用。天板にカーボンファイバーとグラスファイバー強化プラスチックを、ディスプレイ面にはプラスティックシート、キーボード面はマグネシウムアルミニウム合金が採用され、薄型化と軽量化が図られた。
そして、これまでにない試みとして、底面に熱の拡散性に優れたアルミ素材を15.6型製品として初採用。筐体のたわみやねじり耐性を向上させるために、樹脂の収縮量を減らし、カーボンファイバー強化プラスチックの強度を高めることで完成度を高めた。
これらの試みによって、ThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1は本体の厚みが18.4mm、重量約1.7kg(最小構成時)となっており、ワークステーションモデルながら可搬性を高めている。
ThinkPadらしい耐久性を達成するために、大和研究所で“拷問テスト”と称している八角からの自由落下、鉄球落とし、1,000回のねじり試験などが実施されていることに加え、ワークステーションモデルとして設計がさらにきめ細やかになっており、タッチパッド部と筐体の隙間が通常0.3mmのところが0.2mmにまで抑えられている点も、今回ならではのこだわりだ。
小口氏はThinkPad X1 ExtremeとThinkPad P1によって、ユーザーの生産性向上に大きく貢献できるはずとし、新モデルへの自信がうかがえた。