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オラクルと東京都港区、AIチャットで外国人を助ける生活情報サービス

握手する東京都港区の武井雅昭区長(左)と日本オラクル 専務執行役員 公共営業統括の白石昌樹氏(右)

 日本オラクル株式会社と、東京都港区は、AIチャットによる外国人向け情報発信サービスを開始すると発表した。

 AIチャットによる外国人向け生活情報案内サービスを、Facebookを通じ、オラクルのクラウドサービスを活用して提供。Facebookの承認がおり次第、サービスを開始する。国際化・文化下術担当Facebookページである「Minato Information Board」からメッセージを送ることで、「防災」、「ゴミの捨て方」、「教育(区内の小学校)」、「国際・文化」の各分野についての質問ができる。

 港区では、2017年後半から、日本オラクルの協力を得て、AIチャットサービスの実用化に向けた実証実験を行なっていた。

 実証実験では、操作性や反応速度などにも課題がなく、実験の参加者の質問の意図の分析や、言語理解において、AIが効果的に機能したこと、区の職員によるFAQの追加なども即時にできることが確認できたという。

東京都港区の武井雅昭区長

 東京都港区の武井雅昭区長は、「実証実験を通じて、外国人から高い利用意向があり、日常的に役立つサービスであることがわかった。Facebook Messengerを利用して、英語およびやさしい日本語で、24時間いつでもどこでも質問でき、行政情報だけでなく、生活に関わる問い合わせに幅広く回答できる。

 さらに、日本の習慣や生活のルールなど、外国人ならではの質問にも回答できるようにした。港区の外国人対応の経験、実績、ノウハウを集結してサービスである。在住外国人だけでなく、国内外から港区を訪れる外国人、外国人と接している日本人も役立つ」としている。

 たとえば、小学校の入学式は外国人にはめずらしく、これに関する質問が多いことから、「小学校の入学式はどのようなものですか」といった質問などにも対応する。

 また、回答のあとには、その内容に対する評価が行なえるようにしており、回答内容の改善にもつなげる。今後、質問できる分野を増やし、回答も充実させる考えだという。

 武井区長は、「外国人の27%がFacebookを利用しており、より多くの人が利用できる環境からスタートした。今後、ほかのSNSへの展開についても研究していきたい」とした。

オラクルのクラウドサービスを活用

 AIチャットサービスは、AIにより利用者からの質問を理解して、最適な回答を返すSaaSの「Oracle Service Cloud」、会話内容データを安全に保管し、利用者に安心して使ってもらうためのPaaSおよびIaaSの「Oracle Database Cloud」を利用している。

 日本オラクルのクラウドを活用することで、教師データを必要とせず、1組の質問回答を登録するだけで、AIが自動学習し、適切に回答する「自動学習するAI」、職員が随時、質問回答を登録することができ、即時にサービスに反映する「即時の登録更新」、データの暗号化、データベース管理者の権限制約が行なえる「高いセキュリティ」、英語およびやさしい日本語で対応する「多言語処理」の4つの必須条件をクリアしたことを日本オラクルと協業した理由に挙げている。

日本オラクル 専務執行役員 公共営業統括の白石昌樹氏

 日本オラクル 専務執行役員 公共営業統括の白石昌樹氏は、「日本オラクルも港区に本社をかまえる1社として、区民をつなげ、地域に対する愛着を高めることに貢献していきたい」とした。

 港区は、区の総人口256,563人のうち、約8%にあたる20,082人が外国人で、国籍は140カ国におよぶという。また、国内の駐日大使館の半分以上にあたる約80の大使館があるほか、国内の外資系企業の約30%が集積。約70の国際的機関や、約40のインターナショナルスクールがある。

 武井区長は、「港区は、リニア中央新幹線品川駅が開通する2027年には、人口が30万人に達すると予測されており、人口が増加傾向にある。多様な文化と人が共生する、活力と魅力ある成熟した国際都市を目指しており、外国人の地域参画と、協働の推進よる多文化共生社会の実現に向けた取り組みの1つとして、AIやSNSを利用したAIチャットサービスの導入を検討してきた。2017年9月から導入検討を開始し、11月~12月に実証実験を行なった結果、実用化できると判断した」とする。

 港区では、これまでに、外国人ニーズの把握のために、区民参画会議やアドバイザー会議を開催。メールマガジンを活用した年2回の簡易アンケート、3年に1回に実施する実態調査を実施。さらに、Facebookやメールマガジンによる情報発信、英字広報紙の発行のほか、暮らしの手帳や各種チラシ、FMラジオでの放送を、日本語、英語、中国語、韓国語で提供してきた経緯がある。「約80%の外国人が、区からの情報提供は適切との回答を得ている」という。

 だが、「一方向の情報発信が多いこと、双方向のやりとりは、時間や場所がかぎられること、必要な情報に容易にたどり着けないといった課題や、港区にすんでいる外国人のニーズを把握する機会がかぎられること、外国人ニーズに応じた施策展開が十分でないという課題もあった」とする。

 AIチャットサービスでは、「外国人向けサービスの向上とともに、外国人ニーズの把握や分析につなげたり、外国人の地域参画の促進にもつなげたりといった効果を見込んでいる。行政サービスや地域に対する興味を喚起し、地域への愛着を増進することで地域コミュニティへの参加を促進したい。AIチャットサービスは、大きな力を発揮するものと期待している」と述べた。