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着荷から最短で当日返送可能になったレノボの修理拠点
~PC-9801生産中止から生き残りかけ、一大変貌を遂げたNEC PC群馬事業場のいま
2018年6月29日 06:00
NECとレノボがPC事業の合弁会社を設立して、早7年が経つ。レノボ傘下となることで、NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)は、レノボの調達力を活かすなどのメリットを得てきたわけだが、一方で、NECの米沢工場で一部のThinkPad製品を製造するなど、協業はレノボ製品にもメリットをもたらしている。
同様の事例として現在、NEC PCの保守サポートサービス拠点となる群馬事業場では、NEC PC製品だけでなく、2016年から全レノボ製品の修理も開始している。
NEC PC製品については、2012年に故障したPCが修理拠点に到着して、24時間以内に修理、出荷する「1日修理(1 Day Repair)」の体制を構築している。このノウハウはレノボ製品の修理にも取り込まれ、現在、ThinkPadなどレノボ製品についても、早いものでは1日修理が可能な体制が構築されつつある。
今回、群馬事業場で、じっさいに1日でThinkPadが修理される様子を取材してきた。
PC-9801の開発拠点から保守サポート拠点へと転換した群馬事業場
群馬事業場は、もともとはNECのPC-9801シリーズの開発・生産拠点の1つだった。その後、生産は米沢に集約され、群馬事業場は修理・サポート拠点となった。合弁にともない、2014年からレノボタブレットの修理を開始し、2016年7月からすべてのレノボ製品の修理も請け負うこととなった。
それまでレノボ修理は外部の企業に委託していた。そのため、達成状況はわかるものの、修理状況や保守パーツの状況などが見えにくいという課題があった。そこで、NEC PCの群馬事業場が持つパフォーマンスをレノボ製品にも活かすほうが良いだろうと、NEC PC側からレノボへと話を持ちかけ、レノボ製品の修理も請け負うこととなった。
じつは、レノボ製品の修理取り扱いは、合弁後に求められた合理化のなかでの、群馬事業場の生き残りをかけた戦略でもあったのだ。
レノボ製品の取り扱いにより、同事業場で取り扱う修理量、保守部品量は1.6倍になり、日本全国にあるPC保守部品の3割がここ群馬事業場に存在することとなった。
群馬事業場では、NEC PC製品とレノボ製品の修理ラインは分かれており、担当者もレノボライン向けに専任者を増員した。加えて、新たな取り組みとして、統合テストツールの開発やNECで培った修理履歴管理システムをレノボ向けにも転用するなどし、生産性やスタッフのスキル向上を図った。
NEC PC製品については、コンシューマ向けのみを取り扱っており、企業向けはNECフィールディングが保守を担当している。一方、レノボ製品については、コンシューマ向けも企業向けも群馬事業場にて対応している。
企業ユーザーの場合は、異なるマシンでも対応を均一化する必要があったり、複数のマシンを一括して返却したりと、個人ユーザーとは異なる対応が求められるため、大手顧客に対しては、専用の修理ラインも設置した。
保守、修理をするなかで得られた知見は、レノボの大和研究所にもフィードバックし、製品品質の改善にも寄与している。また、群馬事業場で開発した修理履歴管理システムは、日本以外のレノボの拠点にも展開させており、同事業場は、保守サービスのマザーサイトとなることを目指すなど大きな意気込みを持っている。
そして、レノボ製品の取り扱いから約2年が経ち、現在では、修理時間は約半分に短縮され、修理品の着荷から返送までが最短で1日になるケースも増えてきた。また、修理品質(再修理率)も約40%改善された。
修理量の予測にもとづくリソース割り振りや、変動対応力、スタッフのマルチスキル化、企業ごとの対応の個別化などの課題も残るが、向こう1~2年の内に、NEC PC製品と同等のレベルまで持って行き、レノボ製品でも公式に「1日修理」を掲げたいとする。