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NVIDIA、ロボットの脳になるVoltaアーキテクチャの開発ボード「Jetson Xavier」

Jetson Xavier

 NVIDIAは4日(台湾時間)、台湾・台北で記者発表会を開催し、同社CEOのジェンスン・フアン氏が、ロボットやドローンといった自律動作型機械の“脳”になる開発プラットフォーム「Jetson Xavier」を発表した。価格は1,299ドル。

 Jetson Xavierは「Jetson TX2」の後継となるモデルで、GPUにはVoltaアーキテクチャを採用。TX2と比較して10倍の電力効率と20倍の性能を達成し、ディープラーニング技術を駆使した本格的な自律動作型マシンを実現できる。

 CPUには8コアのARMv8.2対応64bit CPUを搭載。L2は8MB、L3は4MB。Tensorコア内蔵のVoltaアーキテクチャのGPUを採用し、CUDAコア数は512基。12nm FinFETプロセスで製造されている。最大TDPは30Wで、10Wや15Wの動作モードに切り替えることもできる。

 メモリはLPDDR4xで、バス幅は256bit、容量は16GB。ストレージはeMMC 5.1 32GB。また、7-wayのVLIWプロセッサを採用したビジョンアクセラレータ、4K60p×2に対応したビデオエンコーダ/デコーダなどを搭載。本体サイズは100×87×16mm(幅×奥行き×高さ)となっている。

 インターフェイスは、eDP/DisplayPort/HDMI、16レーンのCSI-2(D-PHY V1.2では40Gbps、CPHY v1.1では109GB/s)および8レーンのSLVS-ECといったカメラ入力(最大16基対応)、16GT/sに対応したPCI Express(5レーン)、USB 3.1×3、USB 2.0×4、Gigabit Ethernet、UFS、I2S、I2C、SPI、CAN、GPIO、UART、SDなどを備える。

ジェンスン・フアン氏

 発表会では、フアン氏が同社のAIへの取り組みについて紹介。「AIへの進化は3つのステップがある。第1フェーズはAIのためのプラットフォームやエコシステムの構築である。そして第2フェーズは、AIによる業務効率化/生産性向上。そして第3フェーズが、自律動作するロボットやドローンといったインテリジェントマシンの到来」だとした。

 NVIDIAが第1フェーズに対して行なっているのは、まぎれもなくGPUの開発だ。イノベーションはソフトウェアがもたらしてくれるのだが、CPUに関しては近年高速化が鈍化しており、ソフトウェアに提供できる性能は需要に追いつかない。このギャップを埋めるために、NVIDIAは新たなGPUアーキテクチャを開発するだけでなく、ソフトウェアツールなどを提供し、エコシステムを提供していく。

コンピューティング性能の需要と、CPUの力不足

 先週のGTC Taiwanで新たに発表された「DGX-2」についても紹介し、アプリケーションの性能の需要に対して応えていくとする。Volta GPUの採用により、FP32、FP64といった従来の浮動小数点演算のみならず、FP16やInt8といった精度の低い演算をサポートし、高いスループットを実現。

 また、NVLinkにより、16個のGPUがお互い自由に相互アクセスできる仕組みとし、16個のGPUを1GPUのように扱えることもメリットとして挙げ、OSのライセンスは1つで済み、それで2PFLOSの演算能力と512GBのメモリにより、より大きなデータセットを扱えるようにしたと語った。

DGX-2
DGX-2のマザーボードを手にするフアン氏
DGX-2はボード上にVolta GPUを8基装備できる
搭載されるVolta GPU
そのほかNVIDIAが提供しているソリューション

 第2フェーズは、AIによって人間の業務を効率化し、生産性を向上させるもの。「将来的にソフトウェアが深層学習によりソフトウェア自身を学習し、新たなソフトウェアを生み出すことも可能になる。自動運転のアプリケーションなどもそれらによって生まれる」としたほか、「GeForce RTXにより、レイトレーシングのリアルタイムレンダリングも実現できるようになる。今後の映画製作会社やゲーム制作会社は、レイトレーシング技術をより効率的に、低コストで実現できる」とした。

DGX Stationを使えば、リアルタイムレイトレーシングを実現可能

 そして第3のフェーズが、Jetson Xavierが実現するような自律動作型のマシンだ。Jetson Xavierは、自律運転車向けの「DRIVE PX PEGASUS」と同じアーキテクチャで、同じプログラミング手法が使えるが、自律動作型ロボットは移動する速度が車よりはるかに遅く、瞬時に判断しなければならない情報が少ないため、より低価格、低性能、低消費電力で実現できる。その一方で、従来のTX2から20倍高速化されているため、深層学習の推論技術を駆使した高度な動作が可能となる。

 加えて、Jetson XavierではNVIDIAが開発したロボット開発環境「ISAAC」に対応できる。これにより、ロボットを設計するさいに、シミュレーションした環境のセンサーのデータをJetson Xavierに引き渡し、Jetson Xavierからのコントロールで、シミュレーション環境にフィードバックできる。これによりロボットの開発期間を大幅に短縮できるのが特徴だとした。

Jetson Xavierはこのような手のひらのケースに収納できる
Jetson Xavierにより、ジェスチャーや人の動き、声などをリアルタイムに推論処理できる