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旧式メーカー製スリムデスクトップPCが4K対応で別物に

 あまり高度な作業はしないので、なんとなく惰性で利用し続けてきた古いメーカー製のデスクトップPC。老眼の兆しかディスプレイの表示がだんだん見にくくなってきたこともあり、文字や表示が美しいという「4K対応液晶ディスプレイ」に乗り換えたいのだが、この古いPCでどうすればよいのかが分からない……ここではそんなユーザー向けに、古いPCで4K対応ディスプレイを利用するための基礎知識と、実際の導入方法を紹介する。また古いPCはメモリやストレージも弱いので、ここも強化していきたい(TEXT:竹内亮介)。

2012年に発売されたDellの「OptiPlex 7010 SFF」は、卓上で利用しやすいコンパクトでスリムな筐体を採用する
OptiPlex 7010 SFFのスペック
カテゴリー
CPUIntel Core i5-3570(3.4GHz)
マザーボードIntel Q77チップセット搭載
メモリ(空きスロット)PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×2(2)
グラフィックスIntel HD Graphics 2500(CPU内蔵)
HDD500GB
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
電源240W(80PLUS Bronze)
CPUクーラーブロアータイプ

ここが不満

  • 4Kディスプレイ快適利用には
    スペック不足
  • OSやアプリの起動が遅い
OptiPlex 7010 SFF搭載パーツと現在のスタンダードとの比較
CPU
搭載パーツ「Core i5-3570」現在のスタンダード「Core i5-8600」
2012年に発売された、Ivy Bridge世代の4コアモデル。Windows 10を利用する程度ならまだまだ現役だ。ただしCPU内蔵グラフィックスで4Kディスプレイを利用するのはツライ。内蔵コア数は6コアに増え、Turbo Boost時のクロックも4.3GHzまでアップし、性能は大きく強化された。
メモリ
搭載パーツ「PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×2」現在のスタンダード「PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2」
2012年当時の主流はDDR3メモリだった。搭載量は4GBと少なめで、複数のアプリを切り換えながら使うのはツライ。DDR3メモリはまだ安く買えるので、増設はしやすい。IntelやAMDの最新CPUでは、PC4-21300以上に対応する高速メモリを標準でサポートするようになった。
システムドライブ
搭載パーツ「500GBのHDD」現在のスタンダード「500GB前後のSSD」
2012年は、2011年に起きたタイの洪水でHDDが供給不足になり、価格が高止まりしていた時期だ。容量は少ないし、OSやアプリの起動も遅い。システムドライブはSSDに換装する。OSをインストールするPCのシステムドライブはSSDが主流に。
ベンチマーク性能
PCMark 10−ExtendedCrystalDiskMark シーケンシャルリードCrystalDiskMark シーケンシャルライト
ベースPC(2012年)1,288112.3110.2
アップグレード後のPC(2018年)3,953554.6511.3

【検証環境】OS:Windows 10 Pro 64bit版、室温:22.6℃、PCMark 10:PCMark 10 v1.0.1493 ExtendedのScore、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.5.1 POWER SUPPLYテストを10分間動作させたときの最大値

マニュアルに従って拡張ベイなどを外す

 海外の大手メーカー製PCは、メンテナンスしやすい構造を採用していることが多い。とはいえ何も考えずやみくもに作業すると、固定用のツメやフックを壊してしまうことがある。マニュアルをかたわらに置き、よく見ながら作業したい。紙のマニュアルをなくしてしまっても、多くのメーカーではWebサイトにPDFファイル形式でアップロードしているので、それをダウンロードすればよい。

 今回使うOptiPlex 7010 SFFも、非常によく考えられた構造だ。重なった状態で組み込まれているスリムドライブや3.5インチHDDは、拡張ベイごと取り外し可能。また、それぞれの拡張ベイとドライブは、ドライバーなしで簡単に着脱できる。

 それらの拡張ベイごとドライブを外すと、マザーボードにアクセスできるようになる。CPUクーラーやメモリスロット、拡張スロットの状況が一目で分かる構造だ。コンパクトながらも拡張の余地を十分に残しており、アップグレード作業も容易だ。

ベイの構造や各パーツの外し方は、基本的にマニュアルに記述してある。メーカーのWebサイトからダウンロードして確認しよう

光学ドライブやHDDはベイごと取り外し可能

①5インチスリムベイを外す
光学ドライブが組み込まれた5インチスリムベイの背面に、青いプレートがある。ここをやや上に引っ張ってベイごと光学ドライブを外す
②3.5インチシャドーベイを外す
マザーボードの近くにある青い固定具をずらし、3.5インチシャドーベイをHDDが付いたままの状態で上に引っ張り出して外す
③マザーボードにアクセスできる
するとメモリやCPUクーラーなど、マザーボード上の各パーツにアクセスできるようになる。コンパクトながら作業性は意外に高いことに驚く
電源ユニットは、2基のSerial ATA電源コネクタと、光学ドライブ用のSlimline SATA対応電源コネクタを装備する
HDDを交換したい場合は、HDDを固定したトレイごとシャドーベイから引っ張り出し、トレイを左右に開いてHDDを取り出す

ビデオカードを追加して4K対応ディスプレイを接続

 PCで利用する「4K対応ディスプレイ」は、基本的に横の解像度が3,840ドット、縦の解像度が2,160ドットの液晶ディスプレイのことを指す。フルHD対応ディスプレイでは縦が1,920ドットで横が1,080ドットなので、ドット数で比較するとフルHD4枚分のドットを表示できる計算となる。パネルサイズが同じであれば、より精細な画像や文字が表示できるのだ。

 またWindowsでは「スケーリング」という機能を導入しており、100%以上にスケーリングを設定することで、アイコンや文字を拡大し、ジャギーのない美しい表示が行なえる。Windows 10ではこのスケーリング機能が強化されているため、4K対応ディスプレイを利用しやすくなっている。

そのままではリフレッシュレートは30Hzビデオカードの追加は必須

 詳しいことは後述するが、4K対応ディスプレイに4K解像度で出力する場合、PCはHDMIかDisplayPortの出力端子を装備する必要がある。OptiPlex 7010 SFFはDisplayPortを2基備えており、実はビデオカードなしでも4K解像度の表示は行なえた。

 ただし、理由は不明だが4K対応ディスプレイのみを接続した状態だとPCが起動しない。DisplayPortの一方にフルHD対応ディスプレイ、もう片方に4K対応ディスプレイという環境でないと、4Kディスプレイ側にデスクトップが表示されないのだ。

 また4K対応ディスプレイの「リフレッシュレート」(1秒間の画面書き換え回数)が30Hz(つまり秒間30回)で、動きがカクカクしている。これでは4K対応ディスプレイを接続しても快適に利用することはできない。ということで、やはりビデオカードの増設は必須である。

GeForce GT 1030搭載Low Profileカードがオススメ

 まずはどのようなビデオカードが最適かを考えたい。ビデオカードを含む拡張カードは、PCが装備する拡張スロットのサイズに合わせる必要がある。OptiPlex 7010 SFFでは、Low Profileという幅が狭いタイプのビデオカードに対応する。

 次に、GPUの対応規格を確認する。左の表は、Low Profileのビデオカードに搭載されることが多いGPUの4K出力対応状況を整理したものだ。前述のリフレッシュレートは、表示のなめらかさに影響する。フルHDディスプレイでは一般的に60Hzであり、1秒間に60回の画面書き換えを行ない、スムーズで違和感のない表示を行なう。そして4K解像度でリフレッシュレート60Hzでの表示を行なうには、「HDMI 2.0」か「DisplayPort 1.2」以降の規格に対応するビデオカードが必要だ。

 OptiPlex 7010 SFFではLow Profile対応ビデオカードしか使えないことを考えると、現実的にはNVIDIAの「GeForce GT 1030」を搭載するカードが有力な選択肢になるだろう。MSIの「GeForce GTX 1050 Ti 4GT LP」のように、3D描画性能の高いGeForce GTX 1050 Tiを搭載するモデルもある。しかしPCゲームをプレイする予定がないなら、そこまでよくばる必要はない。

 4K対応ディスプレイ側の対応も確認しておこう。4K解像度でリフレッシュレート60Hzの表示を行なうには、4K対応ディスプレイ側も、HDMI 2.0以上やDisplayPort 1.2以上に対応していなければならない。

かすんだ表示がくっきりと老眼を意識したら4Kに移行

 実際のアップグレード方法は、下で紹介しているとおりだ。ビデオカードを拡張スロットに挿すだけでよい。最新版のデバイスドライバをインストールすれば、残りの設定は基本的に自動で行なわれる。

 フルHD解像度の液晶ディスプレイと比べると、文字やアイコンがくっきりと表示されることに驚く。筆者は以前、文字やアイコンがかすんで見えるのは目が悪くなったせいだと思っていたが、4K対応ディスプレイを導入したら解決してしまった。老眼を意識するユーザーにこそ、4K対応ディスプレイへのアップグレードをオススメしたい。

広いデスクトップと文字表示が美しい4Kディスプレイ

フルHDパネル4枚分の領域
解像度から考えると、4KパネルにはフルHDパネル4枚分のドットがある計算になる。同じパネルサイズなら、4倍の情報量で写真などを表示できる
文字表示もなめらかに
左はフルHDパネルに100%スケーリング、右は4Kパネルに150%スケーリングで表示した文字だ。4Kではより多くのドットを使い、なめらかな文字を表示できる

拡張ナシの4K表示には問題が発生

HDMIかDisplayPortが必要
4K対応ディスプレイに表示する場合、原則的にはHDMIか、DisplayPortを搭載している必要がある
DisplayPortを装備
OptiPlex 7010 SFFは、2基のDisplayPortを装備する。とりあえず4K解像度での画面表示自体は可能だった
ただし4K対応ディスプレイ単体を接続した状態ではPCを起動できない。またリフレッシュレートも30Hzで動きがカクつく

ビデオカードはLow Profileタイプを選ぶ

拡張スロットの高さが低い
OptiPlex 7010 SFFの拡張スロットは、ブラケットが通常の約半分のサイズの「Low Profile」に対応したもの
ビデオカードもLow Profile
上は通常サイズ、下がLow Profile対応カードだ。OptiPlex 7010 SFFはLow Profile対応のビデオカードでないと組み込めない

HDMI 2.0とDisplayPort 1.2に注目

 以下は、現状で購入しやすいローエンド~ミドルレンジクラスのビデオカードが搭載するGPUの対応規格を整理した表だ。4K解像度時に、リフレッシュレート60Hzで表示したいなら、HDMI 2.0以上か、DisplayPort 1.2以上に対応するものを選ぼう

メーカー名GPU搭載ボードの実売価格4K解像度でリフレッシュレート60Hz表示
AMDRadeon RX 55012,000円~15,000円前後現行世代のローエンドモデル、DisplayPortとHDMIが対応
Radeon RX 56014,000円~20,000円前後現行世代のエントリーモデル、DisplayPortとHDMIが対応
NVIDIAGeForce GT 7307,000円~10,000円前後前世代のローエンドモデル、対応しない
GeForce GT 10308,000円~10,000円前後現行世代のローエンドモデル、DisplayPortとHDMIが対応
GeForce GTX 105014,000円~18,000円前後現行世代のミドルローモデル、DisplayPortとHDMIが対応
GeForce GTX 106030,000円~46,000円前後現行世代のミドルレンジモデル、DisplayPortとHDMIが対応
ビデオカードの出力端子を確認
GPU側の対応を確認したら、購入したいビデオカード側の出力端子を確認する。Low Profileカードだと、両方積むモデルは少ない
液晶ディスプレイの入力端子を確認
4K対応液晶ディスプレイの入力端子も、4K解像度とリフレッシュレート60Hzに対応していなければならない

スリムPCと組み合わせたいオススメビデオカード

1050 Ti搭載でゲームも楽しめる
Micro-Star International
GeForce GTX 1050 Ti 4GT LP
実売価格:23,000円前後
Low ProfileカードながらGeForce GTX 1050 Tiを搭載し、PCゲームへの対応も強化してくれる。HDMIとDisplayPortが4K対応
大型ヒートシンクでファンレス動作
ASUSTeK Computer
GT1030-SL-2G-BRK
実売価格:12,000円前後
GeForce GT 1030を搭載。GPUを大型のヒートシンクのみで冷却するため、動作音はない。HDMIが4Kに対応する

アップグレードで利用したパーツ

27型ワイドの4Kパネルを搭載
アイ・オー・データ機器
LCD-M4K271XDB
実売価格:58,000円前後
27型ワイドパネルを採用する4K対応液晶ディスプレイだ。4K入力に対応する1基のHDMIが、より幅広い明るさや色彩表現を可能とする「ハイダイナミックレンジ」に対応する。そのほかDisplayPortも4K入力対応
HDMIとDisplayPortを装備
Micro-Star International
GeForce GT 1030 2G LP OC
実売価格:13,000円前後
GeForce GT 1030を搭載するLow Profile対応のビデオカード。HDMIとDisplayPortの両方で4K出力が可能だ

接続後に解像度やリフレッシュレートを確認

①カードの先端は干渉しない
ビデオカードの長さは15.9cm。PCI Expressスロットに挿しても、先端がシャドーベイなどに干渉することはなかった
②デバイスドライバは最新に
電源を入れたら、NVIDIAのWebサイトからダウンロードしておいた最新のデバイスドライバをインストールしよう
③表示解像度とスケーリングを確認
設定アプリの「システム」にある「ディスプレイ」を開き、解像度とスケーリングを見やすい設定に変更する
④リフレッシュレートを確認
リフレッシュレートが60Hzであることも確認しよう。HDMI接続で30Hzの場合は、液晶ディスプレイ側の接続端子が間違っている
⑤快適な作業環境が実現!
スケーリングを調整してテキストを見やすく、そして美しく表示することで、目の疲れを軽減できる。老眼を意識するようになったら、4K環境の導入はなおさらオススメ

メモリやSSDの増設も簡単に行なえる

 一つ一つの操作に対する応答性が鈍く、もっさりしている原因は、メモリが少ないことと、システムストレージが古い3.5インチHDDであることだ。使用感を改善するために、ここにもメスを入れていこう。

 メモリは、PC3-12800のDDR3 SDRAMが2枚組み込まれている。容量は2GB×2なので合計4GB。Windows 10を利用するにはやや心もとない容量なので、空いているメモリスロットにメモリを増設しよう。今回は8GBモデルを2枚追加し、合計で20GBにしたところ、3分以上かかっていたWindows 10の起動が3分未満に改善された。

システムドライブをSSDに変更起動時間が大幅に短縮

 さらにシステムドライブを2.5インチSSDに変更しよう。今回は使用頻度の低くなった光学ドライブを外したままにし、そこに2.5インチSSDを入れてケーブルを挿し直すだけなので、作業的には簡単だった。SSDに交換することでOS起動時間はさらに1分前後まで短縮され、使用感も大幅に向上した。

 なお、2.5インチSSDを固定する場所がないので宙ぶらりんになってしまうが、運用上は問題ない。気になるなら、粘着テープ付きの面ファスナーなどで、フレームやドライブベイに貼り付けてしまおう。

シャドーベイに2.5インチデバイスを固定する場所がない。必要に応じて、粘着テープ付きの面ファスナーなどで固定するとよいだろう

空いているメモリスロットに増設

メモリスロットは2本空いている
4本のメモリスロットのうち、2本のメモリスロットが空いた状態。ここにDDR3 SDRAMを増設する
DDR3 SDRAMはまだ買える
PC3-12800対応のDDR3 SDRAMは、8GB×2枚セットで15,000円~18,000円程度。まだ普通に購入できる
合計のメモリサイズは20GB
標準の4GBに加え、8GBモジュールを2本組み込み、合計20GBになった。この容量なら、メモリが足りなくなることはまずない

2.5インチSSDをシステムドライブに

低価格な2.5インチSSDがオススメ
Western Digital
WD BLUE 3D NAND SATA SSD WDS500G2B0A
Serial ATA 3.0対応で容量は500GB。2.5インチSSDならスリムPCに組み込むことも容易なのでオススメ
OSの起動から応答性まで効果絶大
左はもとのHDD、右はSSDに換装後のCrystalDiskMarkのベンチ結果だ。シーケンシャル/ランダム問わず大幅に高速化し、日常的な使用感も大きく向上した

DOS/V POWER REPORT 7月号は「PCの強化・延命」がテーマ

 DOS/V POWER REPORT 7月号の特集は「パーツ交換でPCをもう3年使う~メーカー製PCも自作PCもめんどう見ます~」。この特集では、3年前、5年前の古いPCのパーツを交換することで、より長く使い続けるテクニックについて解説します。CPU交換、メモリ増設、ビデオカード増設、HDD→SSD換装といったパーツのカテゴリごとに交換に必要な知識から、交換用にオススメのパーツまで紹介し、スタンダードノート、ゲーミングノート、ゲーミングデスクトップ、スリムデスクトップ、Sandy Bridge自作機、AMD FX自作機のアップグレード実例を詳しくお見せします。自作PC、メーカー製PCを問わずに使えるテクニックを満載した本特集をぜひご覧ください。