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中古でも型落ちでもCPU交換は効く!!

~【旧PC強化の基礎知識】旧世代でのCore i5→i7乗り換えを考える

 近年のIntel CPUは、比較的すぐにソケットなどの規格が変わってしまう。そのため古いシステムだと最新CPUへの交換はできないが、同世代で下位のCPUから上位のCPUへ交換することでパワーアップすることができる。(TEXT:鈴木雅暢)

i5→i7で対応スレッド数とクロックがアップ!!

 Sandy Bridge世代以降は2世代ごとに互換性がなくなり、古いシステムからCPUだけを最新のものに交換することはできない。ただ、どの世代もCore i7とi5ではスレッド数が2倍違い、Turbo Boost時の最大周波数も差が付けられている。そのため、もとのCPUがCore i5やi3、Pentium、Celeronだった場合、中古などで同世代(あるいは、互換性があれば次の世代)のCore i7を手に入れて交換すれば、マルチスレッド性能を中心に、かなりの性能向上が期待できるだろう。

今回用意したCPU

Sandy Bridge
・Core i7-2700K(4コア/8スレッド/TB時3.9GHz)
・Core i5-2500K(4コア/4スレッド/TB時3.8GHz)
2011年に発売された第2世代Coreプロセッサ。近年のIntel CPUの技術的な基礎を確立した世代で、前世代からの進化が大きかった。ソケットはLGA1155
Haswell
・Core i7-4770K(4コア/8スレッド/TB時3.9GHz)
・Core i5-4670K(4コア/4スレッド/TB時3.8GHz)
2013年6月に投入された第4世代Coreプロセッサ。この世代からAVX2に対応し、FMA対応を含め演算器の部分が大きく拡張されている。ソケットはLGA1150
Skylake
・Core i7-6700K(4コア/8スレッド/TB時4.2GHz)
・Core i5-6600K(4コア/4スレッド/TB時3.9GHz)
2015年8月に登場した第6世代Coreプロセッサ。ソケットがLGA1151、メモリもDDR4対応となった。この世代からシステムバス(DMI)も高速化された

定番ベンチで実力チェック

 実際に同世代のCore i5からCore i7へアップグレードするとどのくらいの効果が見込めるのだろうか。それぞれの世代で比較してみよう。まずCINEBENCH R15だが、Skylakeでは47%、HaswellやSandy Bridgeも35%以上もCPUスコアが伸びており、マルチスレッド性能はかなり上がる。PCMark 10はシステムの総合力を見るテストのため数字は地味だが効果は堅実。グラフは掲載していないが、とくにクリエイティブ系のDigital Content Creationでは効果が大きく出ていて、Skylakeでは13.5%と結構な差がある。

CPUスコアはマルチスレッド、CPU(シングルコア)はシングルスレッドでCGレンダリングをしてスコアを出す。CPUの処理性能がストレートに反映される

ゲーム系ベンチではどうか?

 3Dゲーム系のベンチではどうだろうか。まずは定番の3DMarkを見てみよう。DirectX 11ベースのFire Strikeは約10%の差が出た。しかし詳細を見ると、この差はほぼCPUで物理演算をするPhysicsのスコアが反映されているもので、同世代のi7とi5ではゲームシーンのフレームレートはほぼ変わらない。DirectX 12ベースのTime Spyも、総合スコアの差はFire Strikeより小さいが、やはりゲームシーンでは大きな効果は見られない。

 ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーターベンチマークは、4KではCPUの世代にかかわらず差がなかった。平均フレームレートは40fps以下で、ビデオカードの能力が足りていない。こういう状況ではCPUを変更しても効果はないようだ。一方、Sandy Bridgeのi5環境でも80fps以上出るフルHDではそれなりに差がある。ただ、それぞれの世代でのi7とi5の差は、フレームレートで5から8fpsくらい。詳細を見るとロード時間も数秒ほど短縮するので使用感向上は見込めるかもしれないが、あくまでも「多少」レベルだ。

3D描画の定番ベンチマーク。たくさんのテストがあるが、DirectX 11ベースの標準であるFire Strike、DirectX 12ベースのTime Spyを実行した

エンコードやフォトレタッチは?

 コア/スレッド数が直結しやすいエンコード(Premiere Pro CC)では効果が大きく、SkylakeではH.264で24%、H.265で29%ある。HaswellとSandy Bridgeは多少効果は低いがそれでもH.265で約23%なので交換するだけの価値はありそう。Photoshop CCのフィルタ処理もやはりSkylakeでは18%と効果が高い。ただ、Sandy BridgeとHaswellでは高速化効果が薄い。Skylakeではi7とi5の最大クロック差が300MHzあるのに対し、Haswellは100MHz、Sandy Bridgeは200MHzということが影響していそうだ。

Premiere Pro CCは定番の動画編集ソフト。4Kクリップ7枚で構成したプロジェクトをH.264/H.265で出力するのにかかった時間を計測した

【検証環境】[LGA1151]マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX Z370-F GAMING(Intel Z370)、ASUSTeK Z170-PRO(Intel Z170)、メモリ:Micron Crucial Ballistix BLT2K8G4D26AFTA(PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2)※SkylakeではPC4-17000で動作、[LGA1150]マザーボード:ASUSTeK Z97I-PLUS(Intel Z97)、メモリ:Team TED38G1600C11BK(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)、[LGA1155]マザーボード:ASUSTeK MAXIMUS IV GENE-Z(Intel Z68)、メモリ:Team TED38G1600C11BK(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)※PC3-10600として動作、[共通環境]ビデオカード:ASUSTeK ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING(NVIDIA GeForce GTX 1070)、SSD:Samsung SSD 850 EVO MZ-75E250B/IT(Serial ATA 3.0、250GB)、OS:Windows 10 Pro 64bit

【検証方法】Photoshop CC:RAWデータを開き、レンズ補正、ノイズの低減、スマートシャープといったフィルタをかけ、回転、切り抜きといった処理を10枚連続で行なうバッチ処理にかかった時間を計測、Premiere Pro CC:4Kクリップ7枚で構成したプロジェクトをH.264/H.265で出力するのにかかった時間を計測

その旧式マザーではどんなCPUが使えるか? 手持ちマザーのチップセットを確認

 今使っているマザーボードでどのCPUが使えるのかは、チップセットの対応CPUを調べればだいたい分かるのだが、まれにVRMの設計などで対応TDPが決まっていることや、対応UEFI(またはBIOS)がリリースされていないことがあるため、マザーボードのサポートページで対応CPUリストを調べるのが確実だ。メーカー製PCは、マザーが同じでもUEFIがカスタムされている場合があり、必ずしも交換できるとは限らない。

CPU交換の注意点
自作PC:マザーボードの対応TDP制限があるので、チップセットとの対応を調べるだけでは完璧ではない。マザーボードの対応CPUリストも調べよう。

メーカー製PC:同シリーズで上位のCPUを積んだモデルがあれば、動く可能性があるので、ネットで調べてみよう。冷却なども含め動かない可能性があるので、ダメもとで割り切って挑戦すべし。

CPU-Zで確認しよう
マザーボード名や搭載チップセットがすぐに分からない場合は、CPU-ZやHWiNFOなどのユーティリティを使うと、調べることができる
2011年登場 Intel Z68/Z77世代の基本スペック
Z68DDR3-1600、チップセットのPCI-E 2.0×8本、Serial ATA 3.0×2、USB 3.0非対応
Z77DDR3-1600、チップセットのPCI-E 2.0×8本、Serial ATA 3.0×6、USB 3.0×4
主な対応Core i7/i5/i3シリーズ
Core i73770K、3770、3770S、3770T、2700K、2600K、2600、2600S
Core i53570K、3570、3570S、3570T、3550、3550S、3475S、3470、3470S、3470T、3450、3450S、3350P、3340、3340S、3330、3330S、2500K、2500、2500S、2500T、2450P、2405S、2400、2400S、2390T、2380P、2320、2310、2300
Core i33250、3250T、3240、3240T、3225、3220、3220T、3210、2130、2125、2120、2120T、2105、2100、2100T

 USB 3.0にもまだ対応していなかったZ68はSandy Bridge世代、Serial ATA 3.0対応のポート数が増えたZ77はIvy Bridgeの世代の主力で、ソケットはLGA1155に対応している。Z68マザーならほぼUEFIアップデートでIvy Bridge世代のCPUが使える。なお、Z68マザーは、CPU直結のPCI Express x16スロットがPCI Express 3.0対応のものと2.0対応のものがある。

2013年登場 Intel Z87/Z97世代の基本スペック
Z87DDR3-1600、チップセットのPCI-E 2.0×8本、Serial ATA 3.0×6、USB 3.0×6
Z97DDR3-1600、チップセットのPCI-E 2.0×8本、Serial ATA 3.0×6、USB 3.0×6
主な対応Core i7/i5/i3シリーズ
Core i75775C、4790K、4790、4790S、4790T、4785T、4771、4770K、4770、4770S、4770T、4765T
Core i55675C、4690K、4690、4690S、4690T、4590、4590S、4590T、4460、4460S、4460T、4670K、4670、4670S、4670T、4570、4570S、4570T、4440、4440S、4430、4430S
Core i34370、4370T、4360、4360T、4350、4350T、4170、4170T、4160、4160T、4150、4150T、4340、4330、4330T、4130、4130T

 Z87はHaswell世代、Z97はHaswell Refresh/Devil's Canyon世代の主力。両者のUSBなどのI/O機能はほぼ同じだが、後者はPCI Expressからのブートに対応した。ソケットはLGA1150に対応。Haswell RefreshはHaswellからの小変更で周波数が違うのみだが、Z87マザーで使うにはUEFIの対応が必須だ。

2015年登場 Intel Z170/Z270世代の基本スペック
Z170DDR4-2133、チップセットのPCI-E 3.0×20本、Serial ATA 3.0×6、USB 3.0×10
Z270DDR4-2400、チップセットのPCI-E 3.0×24本、Serial ATA 3.0×6、USB 3.0×10
主な対応Core i7/i5/i3シリーズ
Core i77700K、7700、7700T、6700K、6700、6700T
Core i57600K、7600、7600T、7500、7500T、7400、7400T、6600K、6600、6600T、6500、6500T、6402P、6400、6400T
Core i37350K、7320、7300、7300T、7100、7100T、6320、6300、6300T、6100、6100T、6098P

 PCI Expressのレーンが一気に増加した世代。Z170はSkylake、Z270はKaby Lake世代の主力チップセットだ。両者の違いはOptane Memoryへの対応の有無程度で実質的な機能差は少ない。ソケットはLGA1151に対応。Z170マザーは基本的にUEFIアップデートでKaby Lakeに対応できる。同じLGA1151でもCoffee Lake世代のCPUは使えない点に注意したい。

2014年登場 AMD A78/A88X世代の基本スペック
A78DDR3-2133、PCI-E 2.0×4本、チップセットのSerial ATA 3.0×6、USB 3.0×4
A88XDDR3-2133、チップセットのPCI-E 2.0×4本、Serial ATA 3.0×8、USB 3.0×4
主な対応Aシリーズ
A107890K、7870K、7850K、7800、7700K、6800K、6790K、6700、6700T、5800K、5700
A87690K、7670K、7650K、7600、6600K、6500、6500T、5600K、5500
A67470K、7400K、6420K、6400K、5400K
A47300、6320、6300、5300、4020、4000、3571

 A88X、A78はともにSocket FM2+対応のチップセット。Socket FM2+対応APU(Kaveri)に先行して登場していた。Kaveriの後継のGodavari世代のAPUも基本的にはUEFIアップデートで対応する。なお、Socket FM2のCPU(Richlandなど)も使えるが、Socket FM2対応マザーボードではFM2+のCPUは使えないので注意してほしい。

2017年登場 AMD B350/X370世代の基本スペック
B350DDR4-2667、チップセットのPCI-E 2.0×6本、Serial ATA 3.0×2、USB 3.0×2、、USB 3.1×2
X370DDR4-2667、チップセットのPCI-E 2.0×8本、Serial ATA 3.0×4、USB 3.0×6、、USB 3.1×2
主な対応Ryzenシリーズ
Ryzen 7PRO 1700X、PRO 1700、2700X、2700、1800X、1700X、1700
Ryzen 5PRO 1600、PRO 1500、2600X、2600、2400GE、2400G、1600X、1600、1500X、1400
Rynze 3PRO 1300、PRO 1200、2200GE、2200G、1300X、1200

 初代Ryzenと同時に発表されたチップセット。どちらもU E F Iのアップデートを行なうことで、最新のRyzen G(GPU内蔵モデル)や第2世代Ryzenも利用可能だ。なお、上位のX370の後継として第2世代R y z e nに最適化されたX470が登場している。Precision Boost OverdriveやStoreMIといった第2世代Ryzenの新機能はX470のみで利用できる。

これより古いチップセットは?→“即”買い換え推奨

 IntelのSandy Bridgeが近年のCPUの大きな転換点となっており、Sandy Bridge(Z68、P67)より古い世代のチップセットを搭載したマザーボードでは利用できる一番よいCPUに交換したところでパフォーマンス的に厳しいのは変わらない。マザーボードも本質的には消耗品だ。コンデンサなどが劣化していつ寿命が来てもおかしくない。即交換をお勧めしたい。

コンデンサを多用しているマザーボードは消耗品と言える。Sandy Bridge以前のシステムは延命するよりも即交換を考えたほうがよいだろう

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 DOS/V POWER REPORT 7月号の特集は「パーツ交換でPCをもう3年使う~メーカー製PCも自作PCもめんどう見ます~」。この特集では、3年前、5年前の古いPCのパーツを交換することで、より長く使い続けるテクニックについて解説します。CPU交換、メモリ増設、ビデオカード増設、HDD→SSD換装といったパーツのカテゴリごとに交換に必要な知識から、交換用にオススメのパーツまで紹介し、スタンダードノート、ゲーミングノート、ゲーミングデスクトップ、スリムデスクトップ、Sandy Bridge自作機、AMD FX自作機のアップグレード実例を詳しくお見せします。自作PC、メーカー製PCを問わずに使えるテクニックを満載した本特集をぜひご覧ください。