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独自の斬新な音声&タッチを実装した一体型PC「Smartisan TNT Station」

TNT Station

 中国Smartisanは15日(現地時間)、北京で製品発表会を開催し、“今後10年のコンピュータの姿を先取りした”というコンピュータ「TNT Station」を発表した。

 TNT Stationは2つのバージョンがあり、1つは同社製スマートフォン「堅果 R1」に接続するタッチディスプレイタイプ、もう1つはシステムを内包して単体で動作する一体型となる。前者は8月15日に出荷し、価格は9,999人民元(約173,000円)、後者は2018年末に出荷し、価格は1,499人民元(約26万円)となっている。

 発表会では、同社の羅永浩CEOが、ソニーやAppleといった“革命的な”製品を世に送り出した企業を挙げ、Smartisanもそのような企業を目指していると掲げた。その一方で、利益や安定を重視せず、「革命的な製品を世に送り出すことが弊社の使命である」とし、革新的なコンピュータを実現するTNT Stationは、コンピュータ史に残るマイルストーン的な存在であるとした。

 その“革命的”な部分は「TNT」だ。TNTとは“Touch aNd Talk”の略であり、“タッチしてから音声入力”をすることで、これまでのコンピュータではなし得なかった効率的な操作を可能にする。

 発表会で羅氏は、「AppleがSiriを投入して以来、すべてのテクノロジー企業が音声アシスタントの開発に心血を注いでいるが、これは人間同士のコミュニケーションのなかでもう1つ重要な要素を軽視してしまっており、コンピュータにとって正しい方向性ではない。それは、指で指し示すことだ」とした。

 羅氏は、「たとえば友人の洋服に汚れがついている場合、言語によるコミュニケーションだけだと、“襟から下14cm、ボタンから左3cmのところに汚れがついているよ”と説明しなければならないが、指で指せば一発だ。指で指すのは皆知っている方式であり、多くの研究やテストの結果、すべての機能においてもっとも速く実現する手法である」というスティーブ・ジョブスの言葉を借り、コンピュータやAIとのコミュニケーションにも、言葉とタッチの両方を用いるべきだと力説した。

 そして、そのタッチと音声入力--つまりTNT--を用いれば、これまで十数年、進化がまったくなかったコンピュータに革命をもたらすほどの効率化を実現できるとする。羅氏は「私は年初に自分のMacBook Proを見つめ直し、それが2012年の製品であることに気づいた。それでも使い続けられている理由の1つに、ソフトウェアの進化による作業の効率化が全く図れていないことが挙げられる。コンピュータ業界はここ数年ずっと足踏みをしており、よほどのエンスージアストでもなければ買い替える理由がない」と指摘し、TNT Stationこそが未来の姿だとした。

 それでは、そのTNT Stationとはどういった製品なのか。ハードウェアとしては、27型の4Kディスプレイに、10点のマルチタッチ対応タッチパネル、左右にいくつかのホットキーを備え、底部にR1の画面を出力したり、USBポートなどを設け、キーボードやマウスを接続したりするためのドッキングステーション機能が備わっているだけの製品である。

 TNT Stationの核となるのは、新たに開発された「Smartisan OS 6.0」だ。R1にはこのSmartisan OS 6.0が搭載されており、TNT Stationのディスプレイモデルに接続すると、MacやWindowsのようなデスクトップ操作モードとなる。もちろん、TNT Stationに付属するマウスやキーボードでも操作できるが、「慣れればキーボードやマウスはゴミ箱行きになる」と羅氏は豪語する。

従来のユーザー向けにキーボードとマウスは付属するが、慣れれば不要だとする

 まずはアプリの起動だが、これはデスクトップ下部のタスクバーを指で押さえながらアプリ名をしゃべるだけで起動できる。複数起動して画面がゴチャついた場合、残したウィンドウを抑えながら「これ以外を最小化」と言えばそのほかのウィンドウを最小化する、といった具合だ。

 Windowsではアクティブウィンドウしかウィンドウを動かせないが、Smartisan OS 6.0では手の指が押さえられる限りの複数のウィンドウを同時に動かすことができ、複数のウィンドウをつまんで一握りにすると自動で整列する機能も備える。このほか、複数のフォルダをまたいで複数のファイルをドラッグしてほかのところに移動させたりもできる。

 付属するオフィススイートもTNTを活用する。たとえば表計算「TNT Excel」では、入力したいセルを指で押さえながら音声入力するとそのセルに入力できる。一連の数値を指でなぞり、押さえたまま「合計」や「平均」と喋れば自動的に関数まで入力できる。

 プレゼンテーションソフト「TNT PPT」も、文字を入力したあと、その文字を押さえながら「赤」、「斜体」、「下線」などと喋るとその文字のエフェクトを適用する。また、TNTのみならずタッチ操作にも最適化されており、2つのスライドを同時に選択すると、スライド変更時のアニメーションエフェクトを選択したり、フォント変更などではリアルタイムプレビューが適用されるようになっている。

 さきほど述べたとおり、TNT Stationには10個のホットキーがあるが、このうちの1つは、同社のメッセンジャーソフト「子弾短信」に割り当てられており、このホットキーを押しながら喋るとその音声をテキスト化し、音声が入ったサウンドファイルとともにメッセージ化される。そしてそのメッセージの右に「最近使った連絡先」、さらにその右に「お気に入りの連絡先」などが用意されているので、送信したい人をタップするだけでそのメッセージを送信できる。

 子弾短信のもう1つ特徴的なのが、「Poker Dealer」と呼ばれるUIを駆使している点。Poker Dealerは読んで字のごとく「ポーカーを配る人」なわけだが、子弾短信では受信したメッセージをカードとして“手札”のように複数並べて表示する。その手札の下にはマイクのアイコンがあるが、ここをタップしながら音声入力すれば、自動的に音声認識によりテキスト化されるので、その後はマイクのアイコンを上へとスライドするだけで送信となる。

 このUIが革新的なのは、複数人への返信だ。たとえば2人に同じメッセージを送りたい場合、2本指で各々のカードのマイクアイコンを同時に押さえながら音声入力して送信できる。3人、4人となる場合でも、2つのマイクアイコンをドラッグして近づかせてグループを作り、3人目、4人目のマイクアイコンをタップするだけで、グループにまとめて送信可能。また、複数の人でグループを作りたいときも、追加したい人のアイコンをドラッグしてひとまとめにするだけだ。

 また、インターネット検索のホットキーもPoker Dealerの仕組みを使い、複数の検索エンジンで同じキーワードを検索した結果をカードとしてまとめて表示する機能を備えている。

 このほかハードウェアとしては、3,840×2,160ドット表示対応の27型IPS液晶、sRGB 100%の広色域、36度まで倒せるチルト機構、Cirrus Logicによるアンプや2.1chスピーカー、デジタルマイク、バイブレータ、500万画素カメラおよびFace++による顔認証などを備える。

 インターフェイスはDisplayPort、HDMI、USB Type-C、USB 3.0×4、3.5mmステレオミニジャックなどを搭載。本体サイズはディスプレイ部が650.4×15.8×389.3mm(幅×奥行き×高さ)、ベース部が240.5×324×38.5mm(同)、重量は12.6kg。