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自動OC機能で大幅ブーストした第2世代誕生。Ryzen セカンドインパクト
2018年5月3日 06:00
AMDから第2世代のRyzenが登場した。初代Ryzenからアーキテクチャの最適化を進めつつ、新たに12nmプロセスルールを採用し、性能を底上げしているのが特徴だ。その概要を解説するとともに、ベンチマークテストで性能や電力効率を検証した。(TEXT: 鈴木雅暢)
第2世代Ryzen
開発コードネーム「Pinnacle Ridge」こと第2世代Ryzenが登場した。新しいZen+アーキテクチャを採用していること、新たにGLOBALFOUNDRIESの12nmプロセスルールを導入している点が大きな特徴だ。
Zen+アーキテクチャは、初代Ryzen(開発コードネーム:Summit Ridge)のZenアーキテクチャから大きな変更がないマイナーチェンジではあるが、最適化によりキャッシュのレイテンシが大きく改善されている。
新たに導入された12nmのプロセスルールは、「FinFET」や「LP」を付けて呼ばれることもある。FinFETはいわゆる3Dトランジスタ技術で、LPは「Leading Performance」の略で、パフォーマンス志向を示す。GLOBALFOUNDRIESには省電力志向のプロセスもあるためこのように区別されている。最適化によってトランジスタパフォーマンスが向上しており、高周波数での動作がしやすくなっている。従来の14nmプロセスルールに比べて、同周波数なら11%の消費電力減、同電力なら16%の性能向上が可能だと言う。
プロセス技術の効果はCPUの仕様に反映されており、最上位のRyzen 7 2700Xは、先代の1800Xに比べてベース周波数が100MHz、ブースト時最大周波数が300MHz向上している。ちなみに、最上位の型番が2800Xでないのは、Core i7-8700Kを意識して下3桁の数字を合わせ、ライバル関係を分かりやすくするためだと言う。
ブースト技術がPrecision Boost 2へと強化されたのもポイントだ。初代のPrecision Boostでは3スレッド以上実行時に低く設定されていた上限設定がなくなり、メニースレッド実行時でも(温度や電流などが安全な範囲内にあれば)大きくブーストできるようになった。
これはRyzen Mobile以降で導入された仕様だが、コア/スレッドが多くなればなるほど性能へ反映されやすいだけに、8コア16スレッドのRyzen 7へ導入された意義は大きい。最上位のRyzen 7 2700XのTDPが1800Xの95Wから105Wに増えているのは、このブースト機能のメリットをより活かすためだと思われる。
さらに、高冷却時の追加ブーストであるXFR(Extended Frequency Range)もXFR2となり、こちらもスレッド数の制限なしにブースト可能になった。加えて、メニースレッド時のブースト幅が拡大する「Precision Boost Overdrive(PBO)」という機能も用意されている。前者は型番末尾に「X」が付いたモデルのみ、後者はXモデルとX470チップセットの組み合わせでのみ利用できる。
第2世代Ryzenの特徴
- 12nm LPプロセスルールを採用
動作周波数が向上 - Zen+アーキテクチャ
シングルスレッドIPCとキャッシュが高速化 - Precision Boost、XFRが新しく
ブースト時のスレッド数の制限がなくなり、より効果的に - DDR4-2933メモリに対応
シングルランク品かつ2枚まで - X470チップセットが登場
第2世代Ryzenに最適化、StoreMIをサポート
Zen+アーキテクチャの強化ポイント
- 1次キャッシュのレイテンシを13%改善
- 2次キャッシュのレイテンシを34%改善
- 3次キャッシュのレイテンシを16%改善
- DRAMのレイテンシを11%改善
- シングルスレッドのIPCを3%改善
- DDR4-2933に対応
性能アップに大きく寄与する「Precision Boost 2」
初代のPrecision Boostは、アクティブスレッド数で上限値を決めていたため、1、2スレッド実行時には大きくブーストする一方、3スレッド以上では小幅なブーストにとどまっていた。Precision Boost 2ではスレッド数の条件を撤廃し、温度などが安全な範囲内であれば、メニースレッド時でも大きくブーストできるようになった。メニースレッド時はスペック上の周波数差以上の性能向上が期待できる。
製品名 | コードネーム | コア数/スレッド数 | 動作クロック(ベース/ブースト時) | 2次キャッシュ | 3次キャッシュ | 対応メモリ | TDP | 倍率アンロック | 付属CPUクーラー | 実売価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 7 2700X | Pinnacle Ridge | 8/16 | 3.7GHz/4.3GHz | 4MB | 16MB | DDR4-2933/2ch | 105W | ○ | Wraith Prism(LED付き) | 41,000円前後 |
Ryzen 7 2700 | Pinnacle Ridge | 8/16 | 3.2GHz/4.1GHz | 4MB | 16MB | DDR4-2933/2ch | 65W | ○ | Wraith Spire(LED付き) | 39,000円前後 |
Ryzen 5 2600X | Pinnacle Ridge | 6/12 | 3.6GHz/4.2GHz | 3MB | 16MB | DDR4-2933/2ch | 95W | ○ | Wraith Spire | 28,000円前後 |
Ryzen 5 2600 | Pinnacle Ridge | 6/12 | 3.4GHz/3.9GHz | 3MB | 16MB | DDR4-2933/2ch | 65W | ○ | Wraith Stealth | 25,000円前後 |
検証ダイジェスト:新旧最上位モデルの性能差は?
第2世代となり、性能はどのくらい向上したのだろうか。新旧の最上位モデルの性能をCPUの基本性能の目安となるCINEBENCH R15で比較した。マルチスレッド性能(CPU)で14%、シングルスレッド性能(CPUシングルコア)では16%と大幅にスコアアップ。p.13からはキャッシュ性能などZen+アーキテクチャのより細かい検証やIntel CPUとの比較も行なっている。
検証ダイジェスト:消費電力、電力効率は?
第2世代Ryzenは電力効率に優れる12nmプロセスルールを導入している一方、周波数を向上させている。実際の消費電力はどの程度なのか気になるところだ。こちらもRyzen 7 2700XとRyz
en 7 1800Xを比較してみた。結果は、高負荷時は2700Xが約70W高かったが、3.6GHzに揃えて比較すると逆に2700Xのほうが低く、電力効率は向上していることが分かる。
AMD X470チップセット
第2世代Ryzenの公式対応メモリは、最高でDDR4-2933に対応する。ただし、シングルランクで2本まで、さらにマザーボードが6層基板である必要があるなど、かなり条件が付く。新たにメモリを購入する場合はマザーボードの動作確認リストなど、事前に情報収集をしておいたほうがよさそうだ。
新たにX470チップセットも登場した。PCI Express、USBなどのインターフェースは前世代のX370と同一だが、第2世代Ryzenの性能を引き出すために最適化されていると言う。末尾に「X」が付いたモデルが対応する「Precision Boost Overdrive」が利用できるのもX470のみだ。さらにX470では「AMD StoreMI」も利用可能。これはストレージの仮想化機能で、小容量で高速なSSDと大容量のHDDを組み合わせて高速大容量のドライブとして使うというのが定番の使い方だろう。
AMD X470チップセットの特徴
- 第2世代Ryzenに最適化
- チップセットTDPがX370より低い
- StoreMI対応
- PCI ExpressなどのI/OはX370と同じ
USB 3.1 | USB 3.0 | USB 2.0 | PCI-E 3.0 | PCI-E 2.0 | Serial ATA | |
---|---|---|---|---|---|---|
第1世代/第2世代Ryzen | 0 | 4 | 0 | x20※ | 0 | 2※ |
X470/X370チップセット | 2 | 6 | 6 | 0 | x8 | 8 |
B350チップセット | 2 | 2 | 6 | 0 | x6 | 6 |
※ PCI-E 3.0 x4とSerial ATA×2は排他利用
メモリ構成 | ランク | 対応規格 |
---|---|---|
2本/2スロット | シングル | DDR4-2933 ※ |
デュアル | DDR4-2666 | |
2本/4スロット | シングル | DDR4-2933 ※ |
デュアル | DDR4-2400 | |
4本/4スロット | シングル | DDR4-2133 |
デュアル | DDR4-1866 |
※ 6層基板のマザーが必要。4層基板の場合はDDR4-2666
検証ダイジェスト:X370とX470の性能差は?
同じASUSTeKのROG STRIXシリーズのマザーを使い、X470とX370利用時でRyzen 7 2700Xの性能がどのくらい変わるかテストした。CINEBENCH R15とPCMark 10いずれもはっきりとX470のほうがよい。X470ではPrecision Boost Overdriveが自動的に有効になるようで、その効果が大きいようだ。
検証ダイジェスト:オーバークロックはどのぐらいイケる?
Ryzen 7 2700Xで軽くOCテストも行なってみた。倍率変更とLoad-Line Calibration(Level 5)のみの操作でベンチマークが完動するのは43倍まで。Precision Boost 2の最大周波数と同じだが、メニースレッド時にも周波数が下がらないためCINEBENCH R15のCPUスコアはしっかり向上している。
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