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自動OC機能で大幅ブーストした第2世代誕生。Ryzen セカンドインパクト

 AMDから第2世代のRyzenが登場した。初代Ryzenからアーキテクチャの最適化を進めつつ、新たに12nmプロセスルールを採用し、性能を底上げしているのが特徴だ。その概要を解説するとともに、ベンチマークテストで性能や電力効率を検証した。(TEXT: 鈴木雅暢)

第2世代Ryzen

 開発コードネーム「Pinnacle Ridge」こと第2世代Ryzenが登場した。新しいZen+アーキテクチャを採用していること、新たにGLOBALFOUNDRIESの12nmプロセスルールを導入している点が大きな特徴だ。

 Zen+アーキテクチャは、初代Ryzen(開発コードネーム:Summit Ridge)のZenアーキテクチャから大きな変更がないマイナーチェンジではあるが、最適化によりキャッシュのレイテンシが大きく改善されている。

 新たに導入された12nmのプロセスルールは、「FinFET」や「LP」を付けて呼ばれることもある。FinFETはいわゆる3Dトランジスタ技術で、LPは「Leading Performance」の略で、パフォーマンス志向を示す。GLOBALFOUNDRIESには省電力志向のプロセスもあるためこのように区別されている。最適化によってトランジスタパフォーマンスが向上しており、高周波数での動作がしやすくなっている。従来の14nmプロセスルールに比べて、同周波数なら11%の消費電力減、同電力なら16%の性能向上が可能だと言う。

 プロセス技術の効果はCPUの仕様に反映されており、最上位のRyzen 7 2700Xは、先代の1800Xに比べてベース周波数が100MHz、ブースト時最大周波数が300MHz向上している。ちなみに、最上位の型番が2800Xでないのは、Core i7-8700Kを意識して下3桁の数字を合わせ、ライバル関係を分かりやすくするためだと言う。

 ブースト技術がPrecision Boost 2へと強化されたのもポイントだ。初代のPrecision Boostでは3スレッド以上実行時に低く設定されていた上限設定がなくなり、メニースレッド実行時でも(温度や電流などが安全な範囲内にあれば)大きくブーストできるようになった。

 これはRyzen Mobile以降で導入された仕様だが、コア/スレッドが多くなればなるほど性能へ反映されやすいだけに、8コア16スレッドのRyzen 7へ導入された意義は大きい。最上位のRyzen 7 2700XのTDPが1800Xの95Wから105Wに増えているのは、このブースト機能のメリットをより活かすためだと思われる。

 さらに、高冷却時の追加ブーストであるXFR(Extended Frequency Range)もXFR2となり、こちらもスレッド数の制限なしにブースト可能になった。加えて、メニースレッド時のブースト幅が拡大する「Precision Boost Overdrive(PBO)」という機能も用意されている。前者は型番末尾に「X」が付いたモデルのみ、後者はXモデルとX470チップセットの組み合わせでのみ利用できる。

第2世代Ryzenの特徴

  • 12nm LPプロセスルールを採用
    動作周波数が向上
  • Zen+アーキテクチャ
    シングルスレッドIPCとキャッシュが高速化
  • Precision Boost、XFRが新しく
    ブースト時のスレッド数の制限がなくなり、より効果的に
  • DDR4-2933メモリに対応
    シングルランク品かつ2枚まで
  • X470チップセットが登場
    第2世代Ryzenに最適化、StoreMIをサポート

Zen+アーキテクチャの強化ポイント

  • 1次キャッシュのレイテンシを13%改善
  • 2次キャッシュのレイテンシを34%改善
  • 3次キャッシュのレイテンシを16%改善
  • DRAMのレイテンシを11%改善
  • シングルスレッドのIPCを3%改善
  • DDR4-2933に対応

性能アップに大きく寄与する「Precision Boost 2」

 初代のPrecision Boostは、アクティブスレッド数で上限値を決めていたため、1、2スレッド実行時には大きくブーストする一方、3スレッド以上では小幅なブーストにとどまっていた。Precision Boost 2ではスレッド数の条件を撤廃し、温度などが安全な範囲内であれば、メニースレッド時でも大きくブーストできるようになった。メニースレッド時はスペック上の周波数差以上の性能向上が期待できる。

第2世代Ryzenのラインナップ
製品名コードネームコア数/スレッド数動作クロック(ベース/ブースト時)2次キャッシュ3次キャッシュ対応メモリTDP倍率アンロック付属CPUクーラー実売価格
Ryzen 7 2700XPinnacle Ridge8/163.7GHz/4.3GHz4MB16MBDDR4-2933/2ch105WWraith Prism(LED付き)41,000円前後
Ryzen 7 2700Pinnacle Ridge8/163.2GHz/4.1GHz4MB16MBDDR4-2933/2ch65WWraith Spire(LED付き)39,000円前後
Ryzen 5 2600XPinnacle Ridge6/123.6GHz/4.2GHz3MB16MBDDR4-2933/2ch95WWraith Spire28,000円前後
Ryzen 5 2600Pinnacle Ridge6/123.4GHz/3.9GHz3MB16MBDDR4-2933/2ch65WWraith Stealth25,000円前後
Ryzen Masterも新しく
AMDの純正OCツール「Ryzen Master」も機能拡張された。CCXごとの周波数指定や高速動作しやすいコアの表示に対応した(★が付く)ほか、そう遠くはない時期にPrecision Boost Overdriveに関する制御も可能になると言う

検証ダイジェスト:新旧最上位モデルの性能差は?

 第2世代となり、性能はどのくらい向上したのだろうか。新旧の最上位モデルの性能をCPUの基本性能の目安となるCINEBENCH R15で比較した。マルチスレッド性能(CPU)で14%、シングルスレッド性能(CPUシングルコア)では16%と大幅にスコアアップ。p.13からはキャッシュ性能などZen+アーキテクチャのより細かい検証やIntel CPUとの比較も行なっている。

検証ダイジェスト:消費電力、電力効率は?

 第2世代Ryzenは電力効率に優れる12nmプロセスルールを導入している一方、周波数を向上させている。実際の消費電力はどの程度なのか気になるところだ。こちらもRyzen 7 2700XとRyz
en 7 1800Xを比較してみた。結果は、高負荷時は2700Xが約70W高かったが、3.6GHzに揃えて比較すると逆に2700Xのほうが低く、電力効率は向上していることが分かる。

【検証環境】マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX X470-F GAMING(AMD X470)、ASUSTeK ROG STRIX X370-F GAMING(AMD X370)、ASUSTeK ROG STRIX Z370-F GAMING(Intel Z370)、メモリ:Corsair Vengeance RGB CMR16GX4M2C3000C15(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)、Micron Crucial Ballistix BLT2K8G4D26AFTA(PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2)、ビデオカード:ASUSTeK ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING(NVIDIA GeForce GTX 1070)、システムSSD:Samsung SM961 MZVKW512HMJP-00000[M.2(PCI Express 3.0 x4)、512GB]、電源:Corsair RM Series RM1000x(1,000W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Thermaltake Floe Riing RGB 280 TT Premium Edition(簡易水冷)、OS:Windows 10 Pro 64bit版、アイドル時:OS起動10分後の値、電力計:Electronic Educational Devices Watts up? PRO

AMD X470チップセット

 第2世代Ryzenの公式対応メモリは、最高でDDR4-2933に対応する。ただし、シングルランクで2本まで、さらにマザーボードが6層基板である必要があるなど、かなり条件が付く。新たにメモリを購入する場合はマザーボードの動作確認リストなど、事前に情報収集をしておいたほうがよさそうだ。

 新たにX470チップセットも登場した。PCI Express、USBなどのインターフェースは前世代のX370と同一だが、第2世代Ryzenの性能を引き出すために最適化されていると言う。末尾に「X」が付いたモデルが対応する「Precision Boost Overdrive」が利用できるのもX470のみだ。さらにX470では「AMD StoreMI」も利用可能。これはストレージの仮想化機能で、小容量で高速なSSDと大容量のHDDを組み合わせて高速大容量のドライブとして使うというのが定番の使い方だろう。

AMD X470チップセットの特徴

  • 第2世代Ryzenに最適化
  • チップセットTDPがX370より低い
  • StoreMI対応
  • PCI ExpressなどのI/OはX370と同じ
CPUおよびチップセットが備えるインターフェース
USB 3.1USB 3.0USB 2.0PCI-E 3.0PCI-E 2.0Serial ATA
第1世代/第2世代Ryzen040x20※02※
X470/X370チップセット2660x88
B350チップセット2260x66

※ PCI-E 3.0 x4とSerial ATA×2は排他利用

第2世代Ryzenシリーズの対応メモリ
メモリ構成ランク対応規格
2本/2スロットシングルDDR4-2933 ※
デュアルDDR4-2666
2本/4スロットシングルDDR4-2933 ※
デュアルDDR4-2400
4本/4スロットシングルDDR4-2133
デュアルDDR4-1866

※ 6層基板のマザーが必要。4層基板の場合はDDR4-2666

検証ダイジェスト:X370とX470の性能差は?

 同じASUSTeKのROG STRIXシリーズのマザーを使い、X470とX370利用時でRyzen 7 2700Xの性能がどのくらい変わるかテストした。CINEBENCH R15とPCMark 10いずれもはっきりとX470のほうがよい。X470ではPrecision Boost Overdriveが自動的に有効になるようで、その効果が大きいようだ。

検証ダイジェスト:オーバークロックはどのぐらいイケる?

 Ryzen 7 2700Xで軽くOCテストも行なってみた。倍率変更とLoad-Line Calibration(Level 5)のみの操作でベンチマークが完動するのは43倍まで。Precision Boost 2の最大周波数と同じだが、メニースレッド時にも周波数が下がらないためCINEBENCH R15のCPUスコアはしっかり向上している。


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