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NECら、非イオン性分散剤で半導体型単層カーボンナノチューブを高純度で分離する技術

 NEC、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、および株式会社名城ナノカーボンは8日、非イオン性分散剤を使い、半導体型単層カーボンナノチューブ(以下CNT)を99%以上の高純度で分離する製造技術を世界で初めて確立した。2018年度から、名城ナノカーボンがサンプル販売を開始する。

 単層CNTは直径約1nm、長さ数μmの炭素による円筒構造体。炭素の並び(巻き方)の違いにより、半導体型と金属型があり、半導体型の単層CNTは、印刷技術を利用して電子回路などを生産する「印刷エレクトロニクス」の材料(高機能性インク)として注目されている。

 しかし、単層CNTは半導体型と金属型が混在した状態で生成されるため、高機能性インク材料として用いるためには、半導体型CNTだけを高純度かつ効率的に分離する技術が必要。従来も「密度勾配長遠心分離法」や「ゲルカラムクロマトグラフィー法」などが提案されてきたが、いずれもイオン性界面活性剤を利用するため、デバイスの動作を不安定にしてしまう課題があった。

 今回開発された「電界誘起層形成法(ELF法)」は、非イオン性界面活性剤により分散し、分散液を分離装置に入れて、上下に配置された電極に電圧を印加させて分離する。これは半導体型と金属型単層CNTが持つ異なる表面電位の差を利用したもので、カソード側に金属型CNT、アノード側に半導体型CNTが移動。安定的な分離を実現するという。

 ELF法によって製造された半導体型CNTの高機能性インクを使って制作した電界効果トランジスタ(FET)の特性を評価したところ、オン状態とオフ状態が完全に分かれた、良好な均一性を持つデバイス性能が得られたとしている。

 この技術では、99%以上の高純度な半導体型CNTを製造でき、塗布/印刷特性に優れ、高性能で安定的に動作するデバイスが製作可能であるだけでなく、製造設備も安価かつ簡便、大型化も容易なため、大量製造に適しているという。