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富士通のAIで自然なコミュニケーションを実現したロボット「unibo」

ユニロボットが開発したコミュニケーションロボット「unibo(ユニボ)」

 富士通は、人と自然なコミュニケーションを実現する「ロボットAIプラットフォーム」の提供を開始すると発表した。

 富士通研究所が、1980年代から開発を進めてきたロボット実用化技術をベースにするとともに、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用。対人コミュニケーションにおける領域において、独自技術を持つ複数の企業とパートナーシップを組んで、ロボットAIプラットフォームとして体系化した。

 第1弾として、ユニロボットが開発したコミュニケーションロボット「unibo(ユニボ)」と連携。導入検討に向けた実証用に1年間利用でき、uniboも同時に提供する「ロボットAIプラットフォーム 実証パック for unibo」(税別価格648,000円)と、本格導入に向けたコンサルティングサービス「ロボットAIプラットフォーム 基本サービス for unibo」(価格は個別見積)の提供を、2017年12月12日から開始する。ユニロボットには、2016年12月に富士通が出資している。

 ロボットAIプラットフォームでは、自然対話、表情認識、音声感情分析、顔認識などのコミュニケーションに関わるAI技術を搭載し、ロボットと接続したサービスとして提供。ロボット側から積極的に話しかけることで獲得した人の嗜好や状態に基づいて、自然対話でのコミュニケーションサービスを提供でき、窓口業務や高齢者介護などの現場で利用できるという。さらに、iNAGOが開発した人と対話意図を絞り込む目的志向の対話機能も利用。さまざまなパターンに応じた対話を実現できる。

 また、sMedioと富士通が共同開発した表情認識技術では、わずかな表情の変化でも喜怒哀楽が判別可能であり、同時に、顔が一部隠れた状態でも個人を識別できる顔認識技術を活用。Empathが開発した音声感情分析技術を統合して、生活シーンやビジネスシーンにあわせて利用できる技術に進化させたという。

プラットフォームコンセプト

 「ロボットAIプラットフォームは、富士通のデジタルビジネスプラットフォームであるMetaArcの1つとして提供するものになる。人と人を結ぶコミュニケーションを強めるものになると考えており、人間の感情に寄り添うあたたかいコミュニケーションを目指したい。自然対話、感情認識、パーソナライズ技術を、パターン認識、知識、推論により進化させていく。また、国内を中心にした独自の尖った技術を持った企業との連携によって、1社で提供するよりも、数々の企業との連携によって、技術の広がりや先端性の活用につなげることができる」などと述べた。

 富士通では、今後、マルチデバイス対応によるタブレット、スマートフォン、インターホンなどのさまざまなフロントデバイスと接続した「ロボットAIプラットフォーム 基本サービス for マルチデバイス」サービスなどを提供する。「サービスロボットをはじめさまざまなデバイスと接続することで、新たな価値を生み出すサービス基盤となる」と位置づけている。

 また、富士通では、長年のロボット研究開発によって培った知見およびノウハウを、活用コンサルティングとして体系化し、これを提供するという。

 同社では、2020年度には、関連ソリューションを含めて、300億円の販売を目標にしている。2018年度には、英語対応も図っていく予定だという。「また、コミュニケーションを重視するためには、方言への対応も図っていく必要があると考えている」とも述べた。

位置づけ
パートナー企業との協業

 すでに、いくつかの先行活用事例がある。

 名古屋市では、医療介護ものづくり研究会において、特別養護老人ホームの職員、入居者それぞれに対する付加価値提供の実証を行なっている。高齢者の生活支援に活用し、一緒になって体操をしたり、歌ったりすることができる。自然対話技術などを活用して、職員の業務負荷軽減や介護の質的向上によって、自治体の介護保険費用の抑制につなげるという。

 また、沼津信用金庫では、新店舗オープンにあわせて試験導入。セレモニーや受付窓口での接客業務に活用し、待ち時間を使った施設案内や、金融商品の情報提供などによるやさしい対応とともに、来店客へのサービス向上と、営業店職員の負荷軽減の実証を進めている。

ロボット側から積極的に話しかけるコミュニケーションサービスの例

 さらに、アクロメディアでは、マンションのインターホンにロボットAIプラットフォームを接続し、訪問者の特定などを行い、スマートフォンに表示することができるサービスの実用化について検証しているという。

 また、今後のロボットAIプラットフォームの具体的な導入提案として、病院における入院患者とのコミニュニケーションに利用し、その日の検査や服薬の内容を確認したり、体調管理や食事メニューの案内などのほか、消灯時から朝までの夜間の見守りにも利用できるという用途を想定。

 金融分野では、店舗内にロボットを設置し、来店客とコミュニケーションを行ないながら、タッチパネルを使い、さまざまな情報を提供したり、アンケートを収集したりといった活用を想定している。

 また、家庭内への導入も想定しており、帰宅時の声かけを行ったり、「今度の日曜日になにをしようか」という親子の会話をサポートしたり、日曜日に出かける場所の必要なチケットを事前購入できるようにするという。

入院患者とコミュニケーションを取りながら、投薬の状況を確認する例
高齢化対応
働き手不足解消
おもてなし
マーケティング高度化
共働き世帯アシスト
インターフォンと連携し、訪問者の特定を行ないスマートフォンに表示する

 一方、ユニロボットの酒井拓社長は、「ユニロボットと富士通は、ソフトウェア、ハードウェア、人工知能の各領域て協業を深め、uniboを通じて、社会に大きく貢献できるロボットを一緒に展開していきたい」とした。

 uniboのデザインコンセプトは、丸みを帯びた体型とするとともに、文字や顔を表示するディスプレイ部にはブラウン管テレビのような没入感を持ったスタイルを採用。高さ32cm、重さ2.5kgというデスクトップ型としているのも特徴だ。

 右足にタッチするとuniboが聞き取った音声や発話内容を字幕表示して、わかりやすくしたり、赤外線リモコン機能によって、テレビや、エアコン、照明などの家電コントロールが行なえたりといった機能を搭載している。スキルクリエイターと呼ぶ開発キットを用意。「ビジュアライズされた操作画面を通じて開発できることから、小学生でも開発が可能であり、プログラミングの経験は不要である」(ユニロボットの酒井拓社長)という。

デザインコンセプト
各種センサー活用
開発キット
富士通との協業領域
ユニロボット 代表取締役社長の酒井拓氏

 ロボットは、1970年代に産業用途でスタートし、2000年代にはAIBOに代表されるように民生用での利用が増加。2015年以降はAIの広がりなどのICTの進化や、環境の変化によって、サービスロボットとして、より人に近づくといった動きが出ている。

 2020年には、産業ロボットの市場規模は1兆2,000億円、サービスロボットは1兆円だが、2025年度にはそれぞれが1兆6,000億円、2兆6,000億円となり、市場構成が逆転すると見られている。

 「少子化や高齢化、人口の都市集中化、さらには訪日外国人の増加などにより、コミュニケーションが重要になってくる。人に近づくサービスロボットの市場は拡大し、あらゆる領域で新たな価値を提供できるようになる」(富士通 グローバルビジネス戦略本部長の谷村勝博氏)とした。

富士通 グローバルビジネス戦略本部長の谷村勝博氏
市場概況
社会構造の変化
ロボットによる新たな価値提供