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レノボ、56コアの新ThinkStationの投入で数%しかなかったシェアを伸ばす

~初のQuadro GP100 NVLink対応機

ThinkStation P920

 レノボ・ジャパン株式会社は8日、前日(7日)に発表されたハイエンドワークステーション「ThinkStation P920」、「ThinkStation P720」記者説明会を都内で開催。製品を担当する、ワークステーション製品事業本部の高木孝之氏が解説にあたった。

 製品の詳細については、7日のニュース記事「レノボ、最大56コア/112スレッドCPU搭載のワークステーション」でもご紹介したとおり、ThinkStation Px20世代ではSkylake-SP世代のXeonスケーラブル・プロセッサーの搭載が最大のトピック。6チャネルに拡張されたメモリに加えて、Pascalベースのビデオカードが選択可能になっているなど、旧製品から根底的な進化を遂げた製品となっている。

 これにより、CADや映像編集などの実アプリケーションワークロードによる3D性能評価を行なう「SPECviewperf 12.1」では、2世代前のP900と比べて約50%から270%、1世代前のP910と比べても20%~30%の性能向上を実現。一方、CPUやGPU、I/O、メモリ帯域を総合的に評価する「SPECwpc 2.1」でも、10%~50%程度の性能向上を達成しているとし、「数%でも業務効率改善が求められる分野のニーズに応えられるもの」とした。

高木孝之氏
旧世代製品とのSPECviewperf 12.1の比較
SPECwpc 2.1のスコア比較

 具体的には、CAEと呼ばれる製造や建築におけるシミュレーションや流体解析、ビデオのエフェクトやフォトリアル/シネマ品質が求められるレンダリング、VRやMRを使った各種設計やトレーニング、金融のトレーディングやモンテカロルシミュレーション、そして深層学習といった業務/作業でその威力が発揮されるとした。

 上位のP920では、現時点で考えうる最上位の構成が可能となるよう、92%以上の変換効率を誇る80PLUS Platinum準拠の1,400Wの電源を搭載する。これにより、最大28コアのCPUを2基、そしてQuadro GP100を3基まで搭載可能としている。P720は電源が690Wまたは900Wまでとなるため、24コアのCPUを2基、Quadro GP100の搭載も2基までとなるが、筐体サイズが小さい分、設置スペースが狭くても済む。

 このうちThinkStation P920は「業界で唯一、Quadro GP100のNVLink構成が可能なワークステーション」だとしている。GP100では2枚のビデオカードの相互接続にNVLinkを使うが、意外にもこのNVLinkコネクタの厚みで入らないという。P920では余裕をもった容積55LのシャーシによりNVLink接続を実現し、2つのビデオカードのビデオメモリを1つとして扱え、深層学習で大きなデータセットを扱うさいに有効になるとした。

 ハイスペックゆえに放熱に配慮した筐体設計も特徴。前面や背面は吸気口/排気口を多数設け、前方から吸った空気を直線的に後ろに吐き出す「Tri-Channelクーリング」機構を採用。吸気口のメッシュはハニカム構造となっており、強度と吸気面積を両立させながら、ベンチュリ効果によって空気を圧縮し冷却効率を向上させているという。

 また、CPUは2基前後に並んでいるが、中央に設けられたエアーバッフルによって、いずれも前から吸入された冷気をダイレクトにCPUクーラーに届け、排気ゾーンを分離させる、拡張カード類とも空気を隔離させる仕組みとなっている。ケーブル類もエアフローの邪魔にならないように配置され、ケース内の暖気循環を徹底的に排除したものとなっている。

 これにより、システムファンは全体で3個(CPUファンは2個)に抑えられ、全体の低消費電力化、低ノイズ化、そしてファンの故障によるダウンタイムの軽減を図ったとしている。

エアーバッフルにより冷却ゾーンを分離
中央に横たわっているのがエアーバッフル
エアーバッフルを外したところ

 いざダウンしたとしてもダウンタイムが最小限となるような仕組みも取り入れられている。たとえば電源、HDD、ファン、拡張カード、そして光学ドライブやマザーボードに至るまで、すべてがツールレスで交換可能。そしてシステムがダウンしているときでも、AndroidおよびiOS用のモバイルアプリ「Lenovo PC Diagnostics」で、システムの診断と原因の解明、対策までが可能となっている。

 このLenovo PC Diagnosticsは、旧世代ではAndroidのみに対応しており、特定のUSBポートとスマートデバイスを接続するものであった。しかしP920ではiOSが新たにサポートされるとともに、カメラ用のフラッシュで診断用のシグナルを前面パネルの光電センサーに送り、それを受信したP920は起動しない原因を、内蔵スピーカーのオーディオトーンで発信、それをスマートデバイスのマイクで拾い、エラーメッセージとして表示するようになった。なお、エラーコードは前面パネルで表示されるため、それをアプリ内に入れてエラーを検索することも可能だ。

 BTOでは、5インチベイ1基にスリム光学ドライブやマルチカードリーダ、IEEE 1394またはeSATA、Thunderbolt 3ポートなどを集約できる「FLEXモジュール」が選択可能。NVMe M.2 SSDはマザーボード上に2基搭載可能で、冷却用ヒートシンクも搭載済み。PCI Express x16拡張カード型でNVMe M.2 SSDを4基搭載できるアダプタも用意する。

 NVMe M.2 SSDをCPU側でRAID構成とし、ブート可能にする「VROC」技術もサポート。この機能は特殊なハードウェアキーで有効にできるのだが、RAID 0/1/10が可能な「VROC Basic」と、それに加えてRAID 5が可能な「VROC Premium」RAID 5が用意される。VROCによるRAID 5では、バックアップバッテリなしで部分書き込み状態エラー(RAID 5書き込みホール)を防止できるのが特徴で、高額な専用RAIDカードが不要になるメリットがあるとした。

 このほか、ThinkStationシリーズはAdobeやAutodeskといった主要ISV認証を取得済みまたは取得予定であり、ミッションクリティカルな業務でサードパーティーのソフトを使用するさいも安心して使えるとし、世界の多くの映画スタジオで使われている実績を挙げた。

 日本国内では数十万台規模のワークステーション市場があり、そのうちデスクトップが85%程度を占めるが、このうちレノボ・ジャパンのシェアはわずか1桁台に留まり、グローバル規模で見てもシェアが芳しくない。小規模な市場だが、一般的なPCと比較して大きな利幅が確保できる市場であり、レノボでは今回の新製品の投入でシェア拡大を目指し、同社の利益に貢献させていきたい意向だ。

ツールレス筐体
FLEXモジュール
診断機能
前面に光電センサーやエラーを表示する4桁の7セグメントLEDを搭載