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Synology、CPUを強化した個人向けNASの2018年モデル
~脆弱性に24時間以内で対応できる社内体制でセキュリティも万全
2017年10月24日 18:22
Synologyは24日(日本時間)、東京都内で記者説明会を開催し、27日に発売予定の個人向けNAS 3製品についての説明を行なった。なお、3製品ともに価格は未定となっている。
「DS118」および「DS218play」は、既存の「DS116」、「DS216play」の後継にあたるモデル。従来はデュアルコアCPUだったが、ともに1.4GHzのクアッドコアCPUへと強化され、暗号化でもファイル転送速度は112MB/sに達するほか、4Kビデオ変換機能などが加わった。
「DS218j」は、“アジアでは日本がもっとも高い販売台数を達成している”という「DS216j」の後継モデル。従来は1GHzのデュアルコアCPUだったが、1.3GHzに高速化し、ライト速度が14%、暗号化速度が18%向上したという。
なお、これらのモデルはグローバルでもまだ未発表となっており、そのほかの詳細は不明だが、従来モデルの筐体や機能などをほぼ踏襲すると見られる。PC Watchでは、27日製品発売時に改めてご紹介する。
NAS徹底解説のセミナーが明日開催。参加者は400人規模に
発表会の冒頭では、Synologyでセールスディレクターを務めるMike Chen氏が挨拶。日本では10月25日に、新製品紹介および機能解説を行なう「Synology 2018」と題されたイベントが開催されるのだが、日本のほかにも世界17カ国で開催されているユーザーイベントであり、今回の日本のイベントには400人、全世界合わせて6,000人ほどのユーザーが集まる規模のイベントとなっている。
2017年はじめ頃にリリースしたNAS専用OS「DSM 6.1」は、すでに368万回ダウンロードされており、5,100万以上のアプリケーションが動作しているという。また、SynologyのNASを利用しているアカウント数は6億9,000万に達したと豪語する。
2018年モデル(Synologyは年の半ばが区切りとなっているため、2017年後半発売モデルは2018年モデルと呼ばれる)では、“NAS”の定義を一新し、アプリケーションの強化を行なう。
1つ目はユーザーのビジネスの成長の加速を支援するもの、2つ目は新しいマルチメディアアプリによる新しいユーザー体験の提供、そして3つ目はユーザーのデータを保護する立場としてバックアップ機能の強化だ。
NASを再定義する新機能
具体的な新しいアプリケーションの機能については、Synologyでセールスマネージャーを務める田野久敏氏が解説した。まず1つ目の“ビジネスの成長の加速を支援するもの”だが、これは新たに導入された「Synology Drive」と呼ばれるアプリによって実現する。
同社のファイル管理アプリはこれまで「File Station」と「Cloud Station」に分かれており、スプレッドシートといったファイルの編集は「Synology Office」というアプリで行なっていた。これらを1つの入り口から使えるようにしたのがSynology Driveであり、クラウドサービスの「Google Drive」のように使えるようになった。
2つ目の“新しいマルチメディアアプリによる新しいユーザー体験”とは、新たに導入される写真管理アプリ「Moments」のことを指す。Momentsでは畳み込みニューラルネットワークによる深層学習により、写真を「人物」、「主題」、「場所」の3つのジャンルに自動で振り分けがなされるようになり、ユーザーは容易に目的の写真を探し出せるようになった。
ちなみにこの深層学習による処理はすべてローカル(つまりNAS上)で行なわれ、クラウドサービスは使用しないという。これによりネットワークの状態やプライバシーを気にすることなく、撮りためた写真をNAS上に溜め込んでおけるとした。
3つ目の“バックアップ機能の強化”だが、新たにGoogleの「G Suite」やMicrosoftの「Office 365」と連携できる「Active Backup」により、パブリッククラウド上のファイルをオンプレミス側でバックアップできるようになった。パブリッククラウドがダウンした状態でも必要なファイルにアクセスできるようになるほか、ユーザーがファイル単位の閲覧やリストアが可能になる。また、容量節約のための重複排除機能も利用可能だ。
さらに、Windowsの物理サーバーからのバックアップを、同社の仮想サーバーアプリ「Virtual Machine Manager」(VMM)のイメージとして使う機能も可能になった。ちなみに同社のVMMは5月にベータ版を提供しはじめ、これまでに5万ダウンロードされているが、ライブマイグレーション機能(コンピュートクラスタとデータクラスタを動作させたまま結合や移行)やスナップショット機能も利用可能であるとした。
スタンダード版については無償で提供する予定だが、物理CPUスレッドは2つまで、スナップショットは32、クラスタ最大構成数は1までという制限がある。まもなく提供開始予定のビジネス版では、それぞれ4/256/7に拡張されるほか、インスタントマイグレーション、ストレージマイグレーション、オフサイトレプリケーション機能が利用可能になる予定だ。
なお、VMMは基本的に4GB以上のメモリを備えたモデルでのみ利用可能となり、個人ユーザー向けではPlusシリーズが対応予定。上記機能は2018年モデルのみならず、旧モデルにも提供される。
脆弱性に24時間以内に対応
新機能とは別に、Synology製品の特徴である、脆弱性への迅速な対応も紹介された。
たとえば、2017年5月に流行した「SambaCry」(WannaCry)への対応について、Ciscoでは対応に54日、IBMでは対応に6日かかったが、Synologyはわずか24時間以内に対応を終えた。10月16日に発表されたWPA2の脆弱性についても、CVEが17日に勧告を出してから、18日には対応を完了させたという。
この迅速な対応の背景には、Synologyは台湾で唯一、セキュリティ機関であるMITRE Corporation によってCVE(Common Vulnerabilities and Exposures:共通脆弱性識別子)の採番機関(CNA)に認定されているからだという。これにより、自社の製品に影響する脆弱性にCVE IDを割り当てられ、脆弱性の開示と修正を管理できる。
また、社内に独自の「Product Security Incident Response Team:PSIRT」と呼ばれる、製品のセキュリティに即座に対応するチームを設けている。脆弱性の調査を8時間以内、脆弱性への対応を15時間以内に終えることで、合計24時間以内の対応を実現しているとした。
このほか発表会では、家庭内に無線メッシュネットワークを張り巡らせることで無線到達範囲を拡張するルーター「Synology Mesh Router」の予告も行なわれた。機器ダウン時に自動的にメッシュを修復する機能や、容易に管理できる「Synology Router Manager」を備えていることを挙げた。