ニュース

リコーとミネベアミツミ、ベッドに取り付け体動や呼吸状態も検出できるシステムを共同開発

~医療/介護分野を狙う

ベッドセンサーシステム

 株式会社リコーと、ミネベアミツミ株式会社は、体重、体動、呼吸状況などの生体情報を高精度にモニタリングする「ベッドセンサーシステム」の事業化に向けて共同事業を行なうことを発表した。

 ミネベアミツミのセンサーモジュール技術と、リコーグループのシステム化技術、製造、販売、保守サポートなどのノウハウを連携させることで、付加価値が高いベッドセンサーシステムおよび情報サービスを提供する。2020年度には、センサーの販売およびサービスなどで、両社合計で30億円の事業規模を目指す考えだ。

 ベッドの4つの脚にロードセルと呼ぶセンサーを取り付け、荷重変化を電気的に感知。「人が、精緻な体重計の上に寝ているようなイメージ。何もつけない非侵襲の状態で計測ができるのが特徴。ベッドのどのあたりで寝ているのかといったことがわかるほか、さまざまなセンシングを通じて、身体の状況がわかる。ロガーを通じて情報を収集し、複数の被介護者を1カ所で管理でき、遠隔地からも見守ることができる」(ミネベアミツミの貝沼由久社長)という。

 センサーは、10万分の1の分解能、6,000分の1の精度で、人間の最も大きな臓器である肝臓の動きなども把握できるようになるという。現在、ベッドセンサーシステムに関しては、4件の特許を取得、44件を申請済みだという。

ベッドの脚の下に据え付けられたセンサー
ベッドセンサーはそれぞれにどの脚につけるかが決まっている
それぞれのセンサーからケーブル接続してデータを収集する
データを収集するロガー
センサーから収集したデータを表示
遠隔地からも複数のベッドを一括管理できる
寝返りを打つと、その様子が表示され、ベッドからの転落などを防止する

 さらに、「気圧センサーや湿度センサーと連動させることで、気圧や湿度の変化が人体のコンディションにどう影響するのかがわかる。また、当社が持つ血糖値計や血圧計などのモジュールと組み合わせれば、より精度の高い見守りサービスができる。まずは日本の市場において、リコーとしっかりと取り組む。だが、世界規模で大きな需要があると見込まれる。両社で新たな分野に取り組んでいきたい」とした。

 2018年度に本格展開を目指す第1フェーズでは、介護市場において、各種介護システムと連携して、高齢者を見守るためのプラットフォームを構築。既存のベッドに後付け下センサーを使用し、ベッド上の体重、体動、呼吸状態などの生体情報を、非接触、非侵襲で高精度にモニタリングし、「介護現場での転倒、落下などの安全対策による見守り、呼吸状態の異常検知のほか、体重などの計測、記録業務の負荷軽減が可能になる」という。現在、20施設以上で臨床実験を行なっている段階だ。

 また、第2フェーズでは、介護/医療市場において、心拍に関する情報の提供を可能にするとともに、介護記録システムやナースコールと連携させることで、高次元の見守りサービスを実現するという。ここでは、人工知能などの活用も検討する。これにより、生活パターンの分析などにも活用し、予知や予防といった観点からもサポートすることになる。

 さらに、第3フェーズとして、介護/医療/育児などの市場において、血糖値計や血圧計などの各種センサーで計測した情報や、位置測位情報、監視カメラ情報などを活用。医療系の他のサービスや機器の情報も統合的に活用した「統合型情報サービスプラットフォーム」への拡張を目指す。「今後のヘルスケアのプラットフォームを、ベッドセンサーを軸に作り上げたいと考えている。最終的には個人向けにも販売し、健康寿命の延伸に貢献したい」(ミネベアミツミの貝沼由久社長)とした。

 ミネベアミツミでは、2015年から千葉大学大学院医学研究院と共同で、生体情報モニタリングシステムを開発。高精度荷重センサーの事業領域拡大に取り組んできた。一方、リコーでは、2016年6月に、医療従事者や患者の動きをデータとして把握し、業務改善につなげることができる屋内位置情報ビジネスにより医療分野に参入している。また、リコーでは、介護事業者の業務効率化を支援するアプリケーションソフトを販売しているが、介護市場向けのビジネスを本格化するのは今回が初めてとなる。

 ミネベアミツミでは、今後、センサーおよびアルゴリズムの改良やグループのリソースを活用することで、IoT市場の中核を担う製品へとスケールアップさせたいとしている。

 また、リコーの販売子会社であるリコージャパンには、介護分野の専任営業担当者が100人、医療分野の専任営業担当者が100人おり、これらの販売体制を活用して、2017年秋から、ベッドセンサーシステムの販売を開始。介護支援、医療支援、育児支援、健康増進支援を実現するという。

 「高精度なセンシングデバイスや、そこから得られるデータの解析結果である生体情報を提供するミネベアミツミの技術と、その情報を効率的、適切に処理し、ユーザーの手元に届けるリコーの技術によって、双方の強みが生きる補完関係が成立する。また、人の生命に関わる重要な情報サービスを提供するにあたり、高い信頼性が求められるカスタマーサポートは、リコーグループが長年培ったノウハウやリソースによって実現される」などとした。

ミネベアミツミ 代表取締役社長執行役員の貝沼由久氏(左)とリコー 代表取締役社長執行役員の山下良則氏

 ミネベアミツミの貝沼社長は、「数年前から、画期的なセンサーとして開発をしてきたものの、どうしたら最も早く、効率的に市場に使ってもらえることができるのかを考えていた。経営者が集まるある会合で、ベッドセンサーの技術をプレゼンする機会があった。それをリコーの三浦善司前社長が聞いており、検討させてほしいとの申し入れがあった。リコーは、知名度があり、密着した営業体制を持っているという点で、パートナーとしては願ってもない最高のパートナーである」と発言。「当社は、外径22cmまでのベアリングでは6割のシェアを持つ企業であるが、新たな分野として、今後、ヘルスケア、インフラ、自動車、インダストリー、ロボティクス、情報通信分野にも存在感を発揮したいと考えている。今回のベッドセンサーは、ヘルスケア分野に向けた第1弾となる」とした。

 また、リコーの山下良則社長は、「デジタル変革が押し寄せている領域に、リコーのビジネスチャンスがある。リコーは、昨年、ヘルスケア分野への参入を発表しており、今回の協業もその取り組みの1つになる。今回の共同事業では、なるべく早く市場に投入するということを考えてきた。リコーの顧客、社会への価値提供を進めることになる」などと述べた。