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太陽電池の劣化を6倍以上抑制する新規添加剤が開発

~ペロブスカイト太陽電池の安定性向上に寄与

(a)順セル構造ペロブスカイト太陽電池の模式図。(b)ピリジン誘導体の分子構造(左)と青色で示すアルキル基の付いた新規ピリジン誘導体の分子構造(右)

 国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)は6日、ペロブスカイト太陽電池の安定性を向上させる新規添加剤を開発したと発表した。

 塗布プロセスで製造可能な「ペロブスカイト太陽電池」は20%以上の変換効率が報告されたことから大きな注目を集め、現在世界中で研究開発競争が行なわれている。ただし、ペロブスカイト太陽電池は安定性が低く、特に酸化チタン/ペロブスカイト/ホール輸送層で構成された順セル構造の同太陽電池は変換効率は良いものの、光照射のない状態でも劣化が進み、200時間で約3割も変換効率が低下してしまう。

 NIMSの研究グループは、順セル構造のホール輸送層に用いるピリジン系の添加剤TBPに注目。実験により、TBPとペロブスカイト材料が化学反応を起こすことが安定性低下の大きな原因となっていることを明らかにした。また、赤外分光やX線回折による解析で、ピリジン環にある窒素原子とペロブスカイト結晶の間で反応が生じることが分かったという。

 そこで、この反応を防ぐために窒素原子の隣接位置にアルキル基を導入し、立体障害効果(2つの反応原子を空間的に近付くことを防ぐこと)を生じさせ、上述の化学反応の抑制に成功した。

 これにより、今回開発した「新規ピリジン誘導体」を用いたペロブスカイト太陽電池は、暗所で1,000時間経過後も性能の低下が認められず、連続光照射下でも初期の変換効率から85%まで劣化する時間が従来の添加剤では25時間弱だったものが、150時間まで延び、安定性が6倍以上改善されたという。

 今回の成果で、ペロブスカイト太陽電池の劣化メカニズムの解明による新規材料開発というアプローチが非常に有効であることを実証。今後は引き続き安定性に影響を及ぼす牽引を究明し、新規材料の開発を行なうことで同太陽電池の早期実用化を目指すとしている。