やじうまミニレビュー

ビクビクしながらGPUを使いたくない人に。12VHPWRの動作状況が見える「WireView Pro II」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
WireView Pro II

 筆者はかれこれ四半世紀ほどPCを自作しているが、近年はビクビクしながらその自作PCを使っている。何にビクついているのかというと、12VHPWRコネクタだ(ビデオカード側の新しい方は12v-2x6ともいうが、ここでは12VHPWRで統一)。

 なぜかといえば、Facebookを眺めていると、海外で12VHPWRのコネクタが溶けたとか燃えたとかの話題が立て続けに挙がってくるから。少なくとも1カ月に1件以上は“新規事例”を見ている気がする。

 そういう海外での話題はよく見る割に、日本国内ではあまり燃えたとか溶けたとかの事例が挙がってこないため、「それは単にやらせなんじゃないのか?」と疑問に思ったりもするのだが、「ちゃんと奥まで挿したかどうか目視しやすい色分けコネクタ」とか「NTCセンサーで異常時に停止する電源」といったソリューションを各メーカーが実際にリリースしているあたり、やっぱりきちんと向き合うべき問題だろう。

 コネクタがきっちり結合している、と外観から判断できても、実際コネクタハウジングの中できちんと結合しているのかどうか、確かめる手段はない。今日が大丈夫でも明日は緩んでいるかもしれない。あるいはケーブルのテンションとか経年劣化で気づかないうちに状況が変化しているのかもしれない……などと、いろいろ想像が膨らんでしまう。

 しかも、今はGPUがべらぼうに高い。筆者にとって自作の最盛期は2009年前後で、当時は“超”がつくウルトラハイエンドの「GeForce GTX 295」でも4万円台から買えていた。これぐらいの価格ならたとえ壊してしまっても「あ~あやっちまったな」と後悔する程度でいい(よくないけど)のだが、今「GeForce RTX 5090」を壊したら60万円の損失だ。

 だからビクつきながら使っているのだ。

WireView Pro IIとは?

 そしてある日、著名オーバークロッカーder8auerのYouTubeで「WireView Pro II」の存在を知った。この製品を簡単に説明すると、電源コネクタとビデオカードのコネクタの間に介在し、12VHPWRに内在する6本のラインを個別に電流監視して、ディスプレイやソフトウェアで可視化、異常などを通知してくれるデバイスである。

 そもそも12VHPWRが溶けたり燃えたりする原因だが、何らかの理由で端子が接触不良になり、そこの抵抗値が高くなって、ほかの端子に電流が集中し、もしくは抵抗値が高くなった端子が異常発熱して起きるとされている。12VHPWRはコネクタ小型化のために、従来のPCIe 8ピンから端子が小さくなっているわけだが、ケーブルの本数や接触面積が減ることにより、接触不良の影響のリスクが高まる。

 たとえば従来のPCIe 8ピン端子の電力供給能力は1個あたり12V/12.5A、つまり150Wである。それを実質3対のケーブルで送るため、1本あたりにかかる負荷は4.16Aだ。一方12VHPWRは最大600Wの場合1個で12V/50A。それを実質3対のケーブルで送るため、1本あたりにかかる負荷は8.33A程度と約2倍。うち1本に接触不良が生じれば、それだけ被害が大きくなるというのは容易に想像できる。

 そのため、ケーブル1本に電流が集中しないようにすれば良いわけだが、コネクタ自身は不透明であり、金属接点の接触状態をユーザーが把握できるわけではない。ならば、各ラインの電流を監視して可視化すればよい、というコンセプトで生まれたのがWireView Pro IIだ。開発をしているのは“熊グリス”で有名なThermal Grizzly。早速同社に問い合わせたところ、快くサンプルを送っていただけたので、レビューをしていきたい。

 直販での価格は140.28ドル(約2万2,000円)であり、現在予約受付中。出荷は4~5週間後とされているので、実際は3月発売といったところだろう。なお、日本国内においても3月に発売する予定があるという。今回レビューするのは発売前のサンプルであり、実際の製品では仕様変更になる可能性がある点はご了承いただきたい。

質実剛健な外観に至れり尽くせりな機能。互換性に注意

 製品は腕時計を収めるような四角い箱に入っており、本体のほかにサーミスタが2個(20cmと5cmが1本ずつ)、PCのリセットを強制操作させるためのY字型ケーブル、そしてUSB Type-C→USB 2.0ピンヘッダ変換ケーブル、マニュアル類が付属していた。機能がシンプルかつ明快であるため、説明書は比較的あっさりしている。

WireView Pro IIのパッケージ

 付属品から見ていく。サーミスタはGPU周辺の温度を測るためのもの。本製品の主目的であるコネクタの温度も測れる……のだが、そもそもコネクタの基板上にセンサーは内蔵しているようなので、ビデオカードに貼った方がよいだろう。

 一方、Y字型ケーブルの用途だが、本機には電流量や温度のしきい値を超えた際に、PCに強制リセット信号を送るためのもの。ケースのリセットスイッチと線を共有するためこの仕組みとなっている。シンプルかつ原始的だが確実な制御だ。

 USBのケーブルは、ソフトウェア上から監視データを拾ったり、ソフトウェアから設定を変更したり、ファームウェアをアップデートしたりするためのもの。試用時点では、モニタリングの機能はうまく動作していたが、ログ取得機能や設定変更はうまく機能しなかった。ファームウェアバージョンがv01なので、これから機能強化されるのだろう。

 さて本体だが、12VHPWRの入力を底面、出力を背面に装備しており、その間の電流量を監視する仕組み。監視したデータは本体前面の320×170ドット表示対応の小型ディスプレイで確認できるほか、上のUSBケーブルを通じてPCのソフトウェア上からでも監視できる。

WireView Pro IIの本体
本体底面のコネクタ(写真はNormal版)
本体右側面。小さなボタンがあり、メニュー操作が行なえる
本体背面。12VHPWRコネクタが備わっている

 もう1つのオマケ的な特徴は、30mm角の超小型ファンを搭載している点で、コネクタの温度が一定以上になった際などに回転して冷却を補助できる。まあ、本当に小型なので、正直「コネクタが溶けてしまうような温度を放熱できるだけの能力」があるのか疑問ではあるのだが、温度上昇を緩やかにできるのは間違いないだろう。

 ちなみに、12VHPWRのコネクタはビデオカードのモデルによって上下の向きが異なる。ビデオカード側の12VHPWRコネクタのラッチが基板側にある場合は「Normal」、そうでない場合は「Reverse」を選択するので、注文時に間違えないようにしたい。

 また、互換性リストも用意されているのだが、コネクタが斜め向きに出ているNVIDIAの「GeForce RTX 5090 Founders Edition」(日本未発売だが)や、すごく奥まったところに装着されているGIGABYTEの「AORUS GeForce RTX 5070 Ti MASTER 16G」やPalitの「GeForce RTX 5080 GamingPro」などとは互換性がないので注意したい。今回はNormal版でPalitの「GeForce RTX 4090 GameRock OC」を使ってテストしている。

ビデオカードの背面からはみ出す大きさのため、空冷CPUクーラーと干渉する可能性が高い。基本的に簡易水冷が前提だろう

 さらにいえば、ビデオカードをマザーボードの最上段に装着している場合、背が高い空冷CPUクーラーと干渉する可能性が高まる。今回のテスト環境がLGA4677ということもあるのだが、Noctuaの「NH-U14S DX-4677」(高さ165mm)と干渉した。幸いにしてマザーボードはPCIeスロットがたくさんある「Supermicro X13SWA-TF」なので、ビデオカードを上から3段目のスロットに装着して問題を回避したが、このようなマザーボードを使うユーザーはごく限られているだろうから、簡易水冷との組み合わせをおすすめする。まあ、ハイエンドビデオカードのユーザーの大半は簡易水冷だろうが……。

リアルタイム監視だけでなく、長期的なログも取得可能

 実際にGeForce RTX 4090を接続して、本機で各ラインを監視してみたが、負荷時におおよそ5A~7Aで推移していることが分かった。なお、測定誤差があるのかもしれないが、各ラインの電流量は意外にもダイナミックに推移している印象で、1つのラインが継続的に高かったり低かったりすることはないようだ。

WireView Pro IIの表示。GeForce RTX 4090では400W以上消費する
当たり前だが、アイドル時は負荷が低くなり、各ラインのグラフも短くなる

 本体側面に1つだけのボタンを備えている。これは1回押すと表示する内容を切り替えるのだが、設定画面では短押しで設定項目切り替え、長押しでその設定項目に入るようになっている。もっとも、設定できる項目はソフトウェア上からでも行なえるので、このボタンにお世話になることは少ないだろうが、ハードウェアだけでもできる、というのはなかなかすごい。

消費電力をメインとした表示。ピークのピンだけ表示する
各ラインの電流量表示にフォーカスした表示
コネクタや温度センサーのデータを表示

 本製品の特徴は、こうしたリアルタイムの監視のみならず、60秒間ごとに「ログ」を取得して本体内に保存している点。最大3~4年分のログを保存できるらしく、たとえば当初は問題なかったが、何らかの原因で不調に陥った、ということも調べられる。PCのメンテナンスをする際にコネクタを抜き差しした、パーツの増設をしたタイミングで変化があったとすれば、それらが原因だということも記録として残しておけるわけだ。なお、ログデータの読み出しはUSBを介して行なうのだが、採用されているROMの性能からか速度は速くない。

 機能の設定としては、先述の通り温度や電流がしきい値を超えた際に、ブザーで通知したり、強制的にリセットしたりする機能を備えている。また、そのしきい値もユーザーが自由に変更でき、シャットダウンでは電源オフまでの猶予時間も設定できるなど、ハードウェアの安全性に優先しつつも、突如の強制リセットによるデータロストも防ぐといった配慮がみられる。とにかく、機能面では不足や不満を覚えることはないだろう。

ソフトウェアのWireView2 v1.0.5。各ラインの電流量などを細かに表示する
各データの推移をグラフ化して表示する機能も搭載
本体のROMからログを吸い出すための機能
温度や電流しきい値を超えた際の挙動も細かに調整可能だ
アプリのそのほかの設定

 実は、同社は本製品を投入する前に「WireView Pro」という製品を投入している。こちらは純粋に12VHPWRの電力を計測表示するだけのもので、ピンごとの監視やリセットによる保護機能はついていなかった。さすがにこれでは不十分だったと認識したのか、WireView Pro IIを投入したのだろう。

高価なビデオカードを失わないためにも導入すべき……だが……いや、導入すべき

 このようにWireView Pro IIは、ビデオカードを不慮の事故による焼損を防ぐことができる、機能的にもデザイン的にも大変優れたデバイスだ。特にパーツが高騰する昨今、GeForce RTX 5090のようなハイエンドビデオカードは60万円を超えることも珍しくない。WireView Pro IIの日本での価格はまだ分からないが、仮に高めに見積もって3万円になったとしても、それで70万円を失うことを回避できる保険だとしてみれば安いものだろう。

 もちろん、言いたいことはある。そもそも12VHPWRが事故を誘発しやすい設計とか規格でなければ、こういった“保険”的なデバイスは不要なのだ。PCを自作し続けた筆者もかつて一度も保険のためにデバイスを買ったという記憶はない。まして焼損という“事故”につながる“電源コネクタのための保険”なんて、存在してはならないようなものだ。

 そうはいっても、12VHPWRは規格として登場してからすでに4年が経過しており、今さら撤回したり、明日から差し替わったりするようなものではなく、しばらく採用は続きそうなことから、搭載するビデオカードを使いたければ“それを買うしかない状態”である。その中で安心感を求めたいのであれば、WireView Pro IIの導入は欠かせないといえるだろう。