やじうまミニレビュー

Teclast、4:3液晶+ペン付きで3万円台からのタブレット「ArtPad Pro」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Artpad Pro

 Teclastは、2,176×1,600ドット表示対応の12.7型液晶を備えたクリエイター向けのAndroidタブレット「ArtPad Pro」を発売した。Amazonでの通常価格は4万2,900円だが、8月1日限定で価格は3万2,400円(レジで表示価格)となる。8月2日から4日までは専用クーポンコードの適用で3万2,900円だ。

 ArtPad Proは、アスペクト比がほぼ4:3の2,176×1,600ドット表示対応の12.7型液晶を備えるほか、4,096筆圧レベルのUSI 2.0ペンをサポートしたクリエイター向けを謳うAndroidタブレットだ。折しも昨日(7月31日)、ワコムが7万円切りのペン付きAndroidタブレット「MovinkPad 11」が発売されたが、ArtPad Proは狙ったかのようなタイミングで、しかもキャンペーン価格とは言え、同じような性能を備えながら半額以下で登場した。

 この2製品は価格帯的に離れている上に、ArtPad Proはそこまで「お絵描き向け」とは謳われていないが、“ペン付きAndroidタブレット”という意味では共通なため、ArtPad ProがどこまでMovinkPadに迫れるのかちょっと気になるのも確かではある。両機の仕様を並べると下記のようになる。

【表】ArtPad ProとMovinkPad 11の比較
機種ArtPad ProMovinkPad 11
SoCMediaTek Helio G99
メモリ8GB
ストレージ256GB128GB
ディスプレイ2,176×1,600ドット表示対応12.7型、光沢、約4:3、60Hz2,200×1,440ドット表示対応11.45型、非光沢、約3:2、90Hz
ペンTeclast T-Pen(USI 2.0、4,096筆圧)Wacom Pro Pen 3(EMR、8,192筆圧)
OSAndroid 15(ArtOS)Android 14
無線LANWi-Fi 5
Bluetooth5.2
インターフェイスUSB 2.0 Type-C
microSDカードスロットありなし
WWAN2G: B2/3/5/8
3G: B1/2/5/8
4G: B1/3/5/7/8/20/34/38/39/40/41
なし
カメラ1,300万画素背面/800万画素前面470万画素背面/500万画素前面
バッテリ10,000mAh7,700mAh
本体サイズ279×211×7mm266×182×7mm
重量674g588g

 SoCがMediaTek Helio G99でメモリが8GBという性能の根幹をなす部分に関して両製品まったく共通だ。一方でArtPad ProがMovinkPad 11に勝っている点として、ストレージ容量が2倍であること、ディスプレイがより大型で高解像度であること、OSバージョンが1つ新しいこと、そしてWWAN対応、大容量バッテリの搭載が挙げられる。値段の割にスペックでかなり健闘しているといえるだろう。

 その一方で「描く」用途に絞ると、ディスプレイが“光沢”であるのはややマイナス。あらかじめ保護フィルムが貼られているのだが、フィルムもディスプレイ自体も光沢で、ペンの滑りも一般的なタブレットと大差ない。非光沢仕様で紙の書き心地に近づけたMovinkPad 11のほうが、描画体験としては上回る。

 ペンに関しても、ハイエンド製品にも採用されているWacom Pro Pen 3と比べると見劣る。また、パームリジェクションがうまく動かなかったり、ペンが画面から浮いているのにもかかわらず反応してしまうなど、チューニング不足は否めない。さらに、T-PenはUSB Type-Cで充電する必要があり、充電不要なワコムと比べると利便性で劣る。

 しかし、T-PenはApple Pencil+iPadのように本体側面にマグネットで吸着させて、スマートに持ち運べるのはポイントが高い。Wacom Pro Pen 3はほかのペンタブレット製品にも採用されている製品ゆえに、別途収納の工夫が必要となる。

付属品など
液晶の発色品質はまずまずだ
液晶表面は光沢。フィルムも光沢のため映り込みはどうしてもある。視野角自体は狭くないが、斜めから見ると一部暗いゾーンが発生する
付属のT-Pen。USB Type-Cで充電する
手書き入力をしているところ。ちなみにアクティブペンをサポートするHimax Technologyのソリューションを採用しているようだ
Wacom Pro Pen 3ほどの入力精度や低レイテンシはない印象だが、本体とともに持ち運ぶ際にマグネットで本体に吸着できるのはいい

 また、MovinkPad 11では、画面ロック状態でも下書き程度の描き込みができるアプリ「Wacom Canvas」が搭載されていて、プリインストール「CLIP STUDIO PAINT」に転送する機能も備わっているなど、お絵描きに特化した機能も充実しているわけだが、ArtPad Proには手書きメモの「Art Note」がプリインストールされている程度で、お絵かきに特化した機能やアプリはない。

 また、「ArtOS」という名のOSが搭載されているが、サイドからの長めのスワイプインで現れるランチャー「補助コントロール」や、本体右上のSmartボタンによる表示モード切り替え機能(標準、パステル、Ink)が備わっている程度だ。

標準では、本体上部右側(横向き時)のSmartボタンを押すと、3つの表示モードを切り替えられる。標準はその名の通りだが、Inkはモノクロ、パステルは彩度を落としてパステル調にした表示となる。なお、Smartボタンの機能を割り当てることも可能

 このため、MovinkPad 11は“お絵描きに特化した製品”であるのに対し、ArtPad Proは汎用的なタブレットとして利用を前提としつつ、“ペンを使った操作も可能な製品”だと捉えることができる。もちろん、簡単なスケッチや趣味的な用途、メモ書き程度であれば使えるが、プロユースには向かない。

SIMで4G通信も可能。ただ、バンド19は非対応であるので注意してほしい

 以降は、汎用的なタブレットとしての視点で評価を進めていこう。性能面では、過去に多くの製品で採用されているHelio G99を搭載しているため、「3Dゲームは厳しいが、通常利用ならなんらストレスを感じることのない性能」だと評価できよう。Web閲覧や動画視聴では、ハイエンドSoCを搭載した製品と遜色なくキビキビ動作する。

Geekbench 6のテスト結果
PCMark Work 3.0 performance scoreは10,078
3DMarkのWild Lifeのスコアは1,230。ハイエンドSoCだと10倍以上のスコアなのでその性能は推して知るべし

 一方、4:3アスペクト比の液晶に関しては特筆に値する。Androidタブレットの多くは16:9もしくは16:10を採用しており、いかんせん横画面でWebブラウジングする際にスマートフォンと同じモバイルモードだと情報量が少なすぎて窮屈、かといってPCモードだと表示領域が小さすぎるきらいがあった。その点ArtPad Proの4:3液晶はPCモード表示でしっくり来るので、PCに近い使い勝手で利用可能だ。

 また、漫画などを含む電子書籍の閲覧においても、アスペクト比が4:3の液晶は見開き/単一ページ表示とも余白が少なく読みやすかった。4:3は「iPad」でも長らく使われているアスペクト比なので、タブレットに最適なアスペクト比であるのだろう。

 動画に関しては16:9や21:9コンテンツが多いため上下黒帯が生じるが、没頭してしまえばそれほど気にならない。なお、4つの9ccスピーカーによる「Symphonyオーディオシステム」やソフトウェア処理の「Art Tuneオーディオアルゴリズム」「AI Hyper Audio」などの搭載でオーディオにも配慮しているが、それもあってか低中域や音の立体感はまずまずといった印象だった。

Web閲覧は横画面にしてPCモードで閲覧しても快適だ
「AI Hyper Audio」でシーンに合わせて音を最適化できる。ただ、“AI”を冠するならその判別は自動でやってくれよという気がしないでもないが……

 “Art”という名前を冠しているが、プロ向けというよりはホビーやエントリー向けだ。とはいえArtPadは同社の新ラインナップということで、将来的に上位機種の登場も期待したいところだが、ひとまず4:3のディスプレイを備え、機能的なペンが使える廉価なタブレットの選択肢が増えたことを歓迎したい。Webや電子書籍の閲覧、ちょっとしたメモ書き、あるいはお手頃な価格でこれからデジタルアートの入門に適した1台だろう。