やじうまミニレビュー
ゲームでも意外と使える? 「ペン型マウス」を試してみた
2024年7月12日 06:20
ペンを持つように操作できるマウスをご存じだろうか? 普段、仕事ではトラックボールマウスを、趣味では多ボタンマウスを使い分けている筆者だが、今回はちょっと変わった形状のペン型マウスを試してみることにした。
今回試してみたのは、サンワサプライ株式会社の6,980円のペン型マウス「400-MAWBT202」だ。本稿では通常の用途のほか、イラストやゲームでも使ってみて、普段のマウスよりも適したシーンがあるのか検証してみたので紹介する。
ペン型マウスとしての完成度は高い
400-MAWBT202は、ペンを持つように操作でき、Bluetooth/USB Type-A無線/Type-C無線の3種類の接続方法に対応するペン型マウスだ。プレゼンや狭いスペースでの使用に好適としており、左右クリックやホイールボタン、カウント切り替えボタン、ダブルクリックボタンを搭載する。
従来品と比較して、ペン先を押し込むことで左クリックができるほか、細い六角形の筐体を採用することで握りやすさが向上している。
カラーはブラック、ブルー、レッドの3色を展開する。センサーはブルーLEDの光学式、解像度は800/1,200/1,600dpi。バッテリ駆動時間は14時間。本体サイズは12.4×17.2×154mm、重量は約20.5g(USBレシーバ含む)。USBレシーバは本体に収納でき、専用ポーチも付属する。
本製品は、ボタンの配置や握りやすさなど、ペン型マウスとしての完成度はかなり高いと感じた。各ボタンは使い始めてすぐに使いこなせるくらいには直感的で分かりやすい配置になっており、筐体の細さも普通のボールペンなどと同じように使える。
後述する弱点は考慮に入れず、筐体デザインだけでペン型マウスを選ぶのであれば、本製品はかなりお勧めだ。
本製品の一番の弱点は、センサーの判定がシビアな点だ。テーブルなどの平らで硬い場所での使用だと、ペンを持つ角度が悪いとカーソルが動かなくなる。
具体的には、下の1枚目の角度だと問題ないが、2枚目の持ち方だとセンサーが反応しにくくなる。長時間使用すると、この弱点が結構ストレスに感じた。
この弱点を克服するには、持ち方が多少悪くてもセンサーが反応するようにすれば良い、ということでクッションの上に押し付けて使用してみると、反応自体は格段に良くなった。
センサーが反応していれば使いやすいし、ペン先の摩耗も防げそうなので、本製品のようなマウスは柔らかい面に押し付けて使用するのが良いだろう。
一方で、ペン型マウスにはほかのマウスにはない利点もある。それは胸ポケットなどに気軽に入れて携帯できる圧倒的な持ち運びやすさだ。「屋外で立ち止まってポケットからサッと取り出して、サッと使う」といった使い方ができるのはかなり便利である。
また、ペン型マウスは設置スペースを用意しなくても使用できるため、一般的なマウスでは使用できないような狭い場所での作業において真価を発揮するだろう。
筆者の考える最適な使い方はこれだ
本製品の特性を踏まえると、片手で使えるUMPCとの併用が最も便利な使い方だと感じた。筆者が試した中では、左手にUMPC、右手にペン型マウスを持ち、太ももをマウスパッド代わりにして使用するのが最もしっくりきた。
このスタイルだと、簡単なPC操作であれば立った状態でも同じようにできるため、外出時にスマートフォンではなくPCで作業したいときなどにかなり便利だ。筆者は電車内で立ったまま原稿を作成したり、公園のベンチで画像編集したりするときにこうして使っている。
また、本製品は柔らかい面に押し付けての使用に適しており、Androidスマートフォンやタブレットでも使用できるため、寝ながらの動画視聴や電子書籍を読む際の操作にも好適だろう。
筆者はこれまで、寝たままでのPC作業用としてトラックボールマウスやリングマウスを試したのだが、本製品が布団での使い勝手が最も良かった。
なお、スマートフォンとの使用についてだが、ペン型マウスとしての操作は問題なく行なえる。ただ、片手で立ったままでも操作できるスマートフォンにおいて、寝ながらでの使用のような遠隔操作以外では、このマウスを使う必要性はあまり感じられなかった。
本製品は手書きに向いているわけでもないため、スマートフォンやタブレットなどのタッチパネル搭載デバイスでペンを使いたいのであれば、専用のスタイラスペンなどを使用する方が良いだろう。
イラストでは使えるのか?
ペン型ということで、イラスト用途で使えるのか気になる方も多いだろう。結論から言うと、一般的なマウスとほぼ同じレベルでしかイラスト用途として使えない。マウスで上手に絵を描くことができる人であれば、ペン型でより快適に描ける可能性はあるが、そうでなければ素直にスタイラスペンを使うべきだ。
本製品では、センサーのシビアさのほかにもう1つ弱点がある。それは、左クリックがペン先を押し込む仕様になっているために、ドラッグ操作が安定しない点だ。本製品の左クリック操作自体はかなり便利だが、ペン先を押し込んだ状態を維持するのが結構難しく、ドラッグ操作が思い通りにできない。この弱点が、絵を描く際や後述するゲームでの利用において障害となっている。
筆者としては、左クリックを2回押すことが手間ではなくダブルクリックボタンの必要性を感じないこともあり、ダブルクリックボタンも左クリックとして利用できれば、左クリックの長押しが途切れずドラッグ操作も安定して行なえるのにと思った。
サードパーティのソフトウェアでボタンの割り当てを変更する方法もあるだろうが、本製品がボタンのカスタマイズを正式にサポートしていたら、より便利だったに違いない。
では、ゲームでは使えるのか?
世の中には音ゲーやFPSをペンタブレットでプレイする人々がいる。マウスと比較して直感的に操作でき、エイムもしやすいからだという。本製品が音ゲーやFPSで使えるのであれば、そうしたゲーマーにお勧めできるのではないかということで、音ゲー「osu!」とFPS「Apex Legends」でペン型マウスを試してみた。
まず、osu!での使用だが、カーソル移動も難しくドラッグ操作が不安定な弱点もかなり影響し、プレイは困難であると感じた。基本のゲームモードでは特にスピン操作が困難だった。
一方、Apex Legendsでは、予想に反してそこまで不満もなく操作できた。一般的なマウスと比べて使いやすいかと問われればそうでもないが、本製品でも十分戦えそうで可能性は感じられた。ある種の縛りプレイとして使用するのであれば、1つの選択肢としてありかもしれない。
ペン型マウスにすべてを求めてはいけない、特定の用途で光る製品だ
ペン型マウスの400-MAWBT202をさまざまな用途で試してみた筆者の結論は、センサーの判定が厳しくドラッグ操作が安定しないことを踏まえると、一般的なマウスが問題なく使える状況での作業に対しては、一般的なマウスの方が快適に使用できるということだ。
レビューする前から予想していたが、本製品を使えば使うほど、一般的なマウスの形状がいかにPC作業に最適化されているか、そしてペン型マウスがなぜそこまで世に出回っていないかを理解させられた。要するに、通常の用途では本製品は使いにくいのだ。
400-MAWBT202は汎用的に使用するのは難しいが、持ち運びに優れているため、一般的なマウスが使いにくい、または使えないような狭い場所でなら活躍するだろう。
筆者としては、ゲーミングデバイスのようにボタン割り当てができるソフトウェアがあれば理想的だと思うが、現状のままでも簡単なPC作業なら問題なく使用できる。ペン型マウスのデザインとしては完成度が非常に高いので、用途によってはいい具合に刺さりそうだ。