やじうまミニレビュー

耐衝撃でIP65防水防塵とタフなポータブルSSD「Samsung T7 Shield」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
日本サムスン「T7 Shield」

 日本サムスンは、ポータブルSSD新モデル「T7 Shield」を発表した。主にコンテンツクリエイターやフォトグラファーなど、大容量データを頻繁に扱うプロユーザーをターゲットとするポータブルSSD、Tシリーズに属する製品で、高速なデータ転送速度に加え、優れた耐衝撃性能や防水防塵性能、ハードウェア暗号化機能などを備える点が特徴となっている。

 今回、容量2TBの製品をいち早く試用できたので、特徴や性能をチェックしていく。日本では5月上旬の発売を予定しており、価格はオープンプライス、実売予想価格は1TBモデルが2万980円前後、2TBモデルが3万9,980円前後となっている。

高さ3mからの落下に耐える耐衝撃性やIP65準拠の防水防塵性を備える

 T7 Shieldは、すでに発売済みの「T7」や「T7 Touch」など、ポータブルSSD「T7」シリーズの新モデルだ。主な仕様は以下にまとめた通り。

【表1】T7 Shieldの主な仕様
容量1TB2TB
インターフェイスUSB 3.2 Gen2準拠USB Type-C
内蔵SSDPCIe/NVMe SSD
サイズ(幅×奥行き×高さ)88×59×13mm
重量98g
シーケンシャルリード最大1,050MB/s
シーケンシャルライト最大1,000MB/s
暗号化AES 256bitハードウェア暗号化対応
耐落下性能最大3m
防水防塵性能IP65
互換性Windows 7以上、Mac OS X 10.10以上、Andloid 5.0以上
付属品USB Type-Cケーブル/USB Type-C - Type-Aケーブル
保証期間3年

 接続インターフェイスはUSB 3.2 Gen2対応のUSB Type-Cを採用し、PCIe/NVMe準拠SSDを内蔵。データ転送速度はリード最大1,050MB/s、ライト最大1,000MB/sと、発売済みのT7シリーズと同等で、高性能ポータブルSSDとして申し分ない性能を備えている。容量1TBと2TBの2モデルをラインナップしている。

 ポータブルSSDとしての仕様は従来モデルと大きく変わらないが、T7 Shieldの最大の特徴となっているのが、従来モデルを凌駕する優れた堅牢性を備えているという点だ。

 T7 Shieldの筐体を見ると、ほぼ全体がやや厚いラバーでコーティングされていることが分かる。これによって、外部からの衝撃への耐性が高められている。従来モデルも高さ最大2mからの落下に耐える堅牢性を備えていたが、T7 Shieldでは最大3mと、耐衝撃性能が大きく高められている。

 加えて、IP65準拠の防水防塵性能も備わっている。IP65は、内部に塵埃の侵入することのない防塵性能と、あらゆる方向からの噴流水に対して有害な影響を受けない防水性能を備えることを示している。水没に耐えるほどの優れた防水性能を備えるわけではないが、屋外で雨に降られる程度であればまったく問題がない。

 このように、耐衝撃性や防水防塵性を追加することで、より過酷な環境での利用に対応できるようになっている点がT7 Shield最大の特徴となる。これなら屋外での作業が多い場合でも、安心して利用できるだろう。

 ただ、このような優れた堅牢性を備えるため、サイズは88×59×13mm(幅×奥行き×高さ)、重量は98gと、従来モデルのT7よりやや大きく重くなっている。ポータブルSSDとして特別大きく重いわけではないが、近年はUSBメモリサイズの製品も登場するなどポータブルSSDの小型化が進んでいることもあって、それらと比較するとやや大きく感じるかもしれない。

 とはいえフットプリントは2.5インチSSDよりも小さく、かさばるというほどではない。重量も、実際に手にするとやや重く感じるものの、それでも100gを切っているため、気になるほど重くはない。優れた堅牢性を備えていることを考えると、サイズや重量も十分納得できるはずだ。

本体はほぼ全体がラバーでコーティングされており、高さ3mからの落下に耐える耐衝撃性と、IP65準拠の防水防塵性能を備える
フットプリントは88×59mm(幅×奥行き)
2.5インチSSDと比較。ポータブルSSDとして特別小さいというわけではないが、持ち運びにかさばることはない
もちろん余裕で片手で持てる。ラバーコーティングで滑らずしっかり持てるため、その点でも落下の危険性が抑えられている
高さは13mmとやや厚い印象
接続インターフェイスはUSB 3.2 Gen2対応のUSB Type-C
重量は実測で94.3gだった
製品パッケージにはUSB Type-CケーブルとUSB Type-C - Type-Aケーブルが付属する

全領域をハードウェアで暗号化可能

 T7 Shieldのもう1つの特徴が、AES 256bit準拠のハードウェア暗号化機能を備え、SSD全領域を暗号化できるという点だ。

 ポータブルSSDは、個人利用ならともかく、法人やプロフェッショナルユーザーが利用する場合には、紛失によって保存データが流出するという事態を避ける必要があり、保存データを暗号化することが欠かせない。かといって、データの暗号化によってパフォーマンスや利便性が失われてしまうと、作業効率が損なわれてしまう。

 そこでT7 Shieldでは、AES 256bit準拠のハードウェア暗号化機能を搭載することで、暗号化や複合化を高速に行なえるようになっている。後ほどのベンチマークテストでも紹介しているが、実際に暗号化していてもアクセス速度にはほとんど影響がない。

 また、暗号化したT7 Shieldを簡単に利用できる専用アプリ「Portable SSD Software 1.0」を、Windows、Mac OS、Androidそれぞれに用意。この専用ソフトウェアを利用することで簡単に暗号化パスワードを設定でき、PCなどに暗号化したT7 Shieldを装着すると自動で起動し、パスワード入力によって簡単にデータにアクセスできるようになる。

 利便性という点では、指紋認証機能を備える「T7 Touch」のほうが有利かもしれない。それでも、実際に使ってみると、暗号化している場合にはPCなどに装着すると自動的にPortable SSD Software 1.0が起動してスムーズにパスワード入力が行なえるため、そこまで不便とは感じなかった。

 また、利用時にはPortable SSD Software 1.0を事前にインストールする必要があるが、T7 Shieldでは暗号化している場合でも、Windows版とMac OS版のPortable SSD Software 1.0が保存されている領域にアクセスしインストールできるようになっているため、新たなPCに接続して利用する場合でも安心だ。なおAndroidスマートフォンやタブレットで利用する場合には、Google Playストアからインストールすることになる。

T7 Shieldの暗号化を制御する専用アプリ「Portable SSD Software 1.0」。Windows、Mac OS、Android用を用意
Portable SSD Software 1.0でパスワードを設定することで、T7 Shield全領域を暗号化できる
暗号化を有効にすると、パスワードを入力しない限りデータ保存領域にアクセスできない
PCに暗号化したT7 Shieldを装着するとPortable SSD Software 1.0が起動。パスワードを入力するとロックが解除され、保存データにアクセス可能となる
暗号化したT7 ShieldをPortable SSD Software 1.0がインストールされていないPCに接続した場合でも、Portable SSD Software 1.0が保存された領域にのみアクセスでき、インストールが可能

スペック通りの性能を確認

 では、簡単に性能をチェックしていこう。まずはじめに、「CrystalDiskMark 8.0.4a」の結果だ。今回は、データサイズを1GiBと64GiB、設定を「NVMe SSD」にし、暗号化を無効にした場合と、暗号化を有効にした場合でテストを行なった。テスト環境は下にまとめた通りだ。

テスト環境

  • マザーボード:ASRock Z590 Steel Legend WiFi 6E
  • CPU:Core i5-11400
  • メモリ:DDR4-3200 32GB
  • システム用ストレージ:Samsung SSD 950 PRO 256GB
  • OS:Windows 11 Pro 64bit

 結果を見ると分かるように、いずれの結果もシーケンシャルアクセス速度はリードが1,050MB/s、ライトが1,000MB/sを上回っており、スペック通りの性能が確認できた。データサイズの違いで、ランダムアクセス速度に多少の違いは見られるものの、全体的にはデータサイズにかかわらず安定して速度が発揮できている。

 合わせて、暗号化を無効にした場合と有効にした場合の差もほとんど見られないことが分かる。このことから、暗号化を有効化したとしても、スペック通りの性能が発揮されると言っていいだろう。

CrystaDiskMark 8.0.2aの結果

暗号化無効
データサイズ1GiB
データサイズ64GiB
暗号化有効
データサイズ1GiB
データサイズ64GiB

 続いて、実際にPCからデータを転送する時間を計測してみた。デジタルカメラで撮影した写真ファイル1,811ファイルが保存された容量約11.1GBのフォルダと、容量約16GBの動画ファイル1つをT7 Shieldに転送し、それぞれにかかる時間をストップウォッチで計測した。3回計測の平均を出している。また、こちらも暗号化無効、暗号化有効の双方で計測した。

 結果を見ると、どちらも暗号化有効、無効に関わらず、ほぼ転送時間に差がなかった。実際にはごくわずかな差はあるが、これは手動計測ということで誤差の範囲内とも言える。この結果からも、暗号化を有効にしてもほぼ最大限の転送速度が発揮されると言っていいだろう。

デジカメ写真全1,811ファイル、容量約11.1GBをフォルダごとPCから転送する時間
暗号化なし31.2秒
暗号化あり31.4秒
約16GBの動画ファイルをPCから転送する時間
暗号化なし28.0秒
暗号化あり28.6秒

 ところで、内蔵SSDがPCIe/NVMe SSDということで、発熱が気になるところだ。今回、ベンチマークテストやファイル転送を繰り返し継続して行ないつつ本体の温度をチェックしてみたが、多少温かいと感じる程度で、熱くて持てなくなるといったことはなかった。ある程度本体サイズが大きいため、本体全体を使って効率良く放熱できているようで、この点も安心できそうだ。

安全にデータを持ち歩けるポータブルSSDとしておすすめ

 今回見てきたようにT7 Shieldは、ポータブルSSDとしてトップクラスの転送速度を誇るとともに、高さ3mからの落下にも耐えられる優れた耐衝撃性、IP65準拠の防水防塵性能、ハードウェア暗号化機能を搭載することで、プロフェッショナルユーザーも納得の安全性を備えた製品に仕上がっている。特に、優れた堅牢性と防水防塵性は、屋外で撮影した写真や動画を転送する機会の多いユーザーにとって、大きな魅力となるだろう。

 また、暗号化を有効にしてもほとんどパフォーマンスに影響がなく、PCなどに接続する場合の利便性も悪くないため、安全にデータを持ち運びたい法人ユーザーにも十分お勧めできる。

 そのため、パフォーマンスはもちろん、データを安全に持ち運べるポータブルSSDを探しているユーザーにお勧めしたい。