やじうまミニレビュー

余ったWindows 10ノートがサブディスプレイに早変わり!

~Windows 10の標準機能で画面の広さを2倍にする術

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Windows 10の「接続」を使えば別のWindows 10ノートの画面をサブディスプレイとして活用できる

 在宅での仕事になって以降、ノートPCのディスプレイでは画面サイズでは足りず、大型ディスプレイの導入や、マルチディスプレイ環境の構築を検討している人は多いだろう。

 しかしいくら安価になったといっても、ディスプレイの購入には相応のコストがかかる上、最近は品薄で入手がおぼつかない製品も多い。前回、こうした場合に試したい方法の1つとして、手持ちのタブレットをサブディスプレイ化するアプリ「Duet Display」を紹介したが、これにしてもタブレットが手元にないと話にならない(サブディスプレイが買えないなら「Duet Display」でタブレットを代用すればいいじゃない)。

 もし、利用しているのがWindows 10で、かつテレワークの開始にあたってPCを買い換えたなどの理由で、手元にWindows 10ノートが1台余っていれば、Windows 10固有の機能である「接続」を試してみるとよい。

 この「接続」は、別のWindows 10ノートをサブディスプレイとして利用できる機能だ。ノートPCとして使うのではなく、ノートPCのディスプレイ部だけを、ほかのWindows 10 PCのサブディスプレイとして一時的に拝借できる機能だと考えればよい。

Miracast対応ならばハード・ソフトとも追加不要

 「Windows 10ノートが余っているのであれば」と書いたが、正確には「Miracast」に対応している必要がある。MiracastはWi-Fi Allianceが策定したワイヤレス配信技術で、Windows 10ノートの多くはデフォルトで対応している。HDMIのワイヤレス版だと考えておけばおおむね正しい。

 ちなみにMicrosoftのページには、Miracastに必須のディスプレイアダプタとWi-Fiアダプタの要件が書かれているが(Windows 10の仕様掲載ページ)、市販のWindows 10ノートであれば高い確率で対応しているので、コマンドラインから確認するなどの手間をかけるよりも、まず実際に試してみるのが手っ取り早い。

以下、Windows 10ノートを左右に2台並べた状態でのスクリーンショットを使って紹介する。左がホスト(操作する側)、右がサブ(ディスプレイのみ使う側)。ちなみに左がThinkPad X1 Carbon(2019)、右が(2016)

 では接続の手順を見ていこう。まず最初に、サブ側のPCで、Windowsのアプリのなかにある「接続」を探して起動する。「ワイヤレス接続する準備ができました」という画面が表示されたら、続いてホスト側PCの右下、アクションセンターのなかにある「接続」というアイコンをクリックして起動する。

まずはサブ側のPCで、アプリ一覧のなかにある「接続」をクリックして起動

 するとネットワーク上にある接続待ちのPC(今回で言うと先ほど「接続」アプリを起動したサブ側のPC)が検索され、見つかれば画面が自動的に表示される。最初はウィンドウ内にホスト側PCの画面が小さく表示されるので、あとは最大化してやれば完了だ。

サブ側PCの画面に「ワイヤレス接続する準備ができました」というウィンドウが表示される。サブ側の操作はいったんここで終了

 以上のように、手順としてはあっという間である。同一ネットワーク上に両方のPCがワイヤレスで接続されていれば、ハードウェアをつなぐなどの設定はいらない。あまりに簡単すぎて拍子抜けするほどだ。

続いてホスト側のPCで、画面右下のアクションセンターを開いて「接続」をクリック
すると接続待ちのPCが自動的に検索され、サブ側PCのウィンドウ上に、ホスト側の画面が表示された
サブ側PCの操作によりウィンドウを最大化してやれば、晴れてマルチディスプレイ環境の完成だ

「無茶しやがって……」な配置の例

 ホスト側のPCから見ると、もう1台であるサブ側のPCは、一般的な外付ディスプレイとして扱われる。したがってWindowsの「設定」→「ディスプレイ」で、倍率や解像度、向き、位置調整なども自由に行なえる。

 これら設定はいずれもホスト側PCで行なうので、サブ側のPCで何らかの設定をする必要はない。ちなみに今回は、画面の表示領域を広げるという主旨上「拡張」を選択しているが、「複製」、つまりミラーリング表示にも対応するので、別のユーザーに自分のノートPCの表示内容を見せる用途でも利用できる。

Windows側からは外付ディスプレイとして認識されるので、倍率や解像度、向き、位置調整なども自由に行なえる
ホスト側ディスプレイの上部には、接続中であることを示すバーが表示され、ここから切断が可能。実行中の操作に合わせて接続を最適化する機能もある

 今回は、いずれもフルHD解像度(1,920×1,080ドット)のノートを横に2台並べたので、3,840×1,080ドット、アスペクト比32:9という、横長の表示が可能になっている。現実的に使いみちがあるかは不明だが、ディスプレイの配置を左右ではなく上下にして、画面を縦方向に拡張することもできる。

Excelのワークシートを左右ブチ抜きで表示させることもできる
今回は横に並べただけだが、ノートPCの画面の高さを調整すれば、左右の画面が段差なく表示できるはずだ
ディスプレイの配置を上下につなげることもできる
実際の表示。キーボード面が折りたためるノートPCを使ったり、スタンドで高さを調整すれば見栄えも良くなるだろう

 また、Windowsから見て外付ディスプレイとして扱われるということは、画面を90度回転させることもできる。見た目はややギョッとするが、実用性という点ではむしろこちらのほうがありかもしれない。これ以外に、ワイヤレスであることを活かして、離れた位置に配置するというのもありだろう。

Windows側の設定で画面を回転させることも可能だ
この場合、サブ側のPCを物理的に90度回転させて置くことになる。セッティングはたいへんだがWebページなど縦長の画面を表示するには便利だろう。キーボードを背面に折りたためるノートであれば見栄えもよいはずだ

 ちなみに「接続」のパフォーマンスについてだが、フレームレートはそこそこ高いものの、マウスのポインタなどは明らかにワンテンポ遅れて動くので、レスポンスを要求する用途には向かない。たとえば、2つの画面にまたがった状態で動画を再生すると、サブ側だけが表示が遅れるといった具合だ。

 これら挙動はPCのスペックにもよるので一概には言えないが、前回iPad Proとの組み合わせで試した「Duet Display」よりも、ThinkPad X1 Carbon(2016)との組み合わせで試した今回のほうが、体感的に遅延は大きい印象だ。用途としては、書類やWebページの参照が中心になると考えておけばよいだろう。

追加コストなしで表示領域を拡張できる選択肢

 最後になったが、接続時の注意点としては、いずれのノートPCもワイヤレスアダプタが有効である必要があることだ。「Miracastがサポートされていない」というエラーメッセージが出てがっかりしていたら、じつは単に有線で接続するためにワイヤレスアダプタを無効にしているだけだった、という場合があるので要注意だ。

ワイヤレスアダプタを無効にしていると表示される画面。機能そのものをサポートしていないように誤解しがちだが、ワイヤレスアダプタを有効化すれば問題なく接続できる場合も

 また今回はテストしきれていないが、VPNなど特殊なネットワーク上で接続していると利用できない可能性がある。テレワークでは該当するケースも多いはずで、この場合は残念ながらあきらめるしかないだろう。今回の用途ではあまりいないだろうが、動画配信サービスなど、著作権保護技術にひっかかる場合もNGだ。

 最後に、そもそもMiracastをサポートしていない場合だが、これについてはこの方法自体を選択肢から外すべきだろう。もちろん市販のMiracastアダプタを購入してノートPCに追加すれば対応できる可能性はあるが、今回は「手元にあるもので環境を改善する」というコンセプトなので、そこからは大きく逸脱してしまう。

 Miracast対応のWi-Fiアダプタは数千円はくだらないし、接続に成功したところでパフォーマンスはお世辞にも高くないときている。今回は目的も目的なので、それならば予算をもう少し上積みして、安価な外付けディスプレイを買うべきだろう。

 以上のように、「Windows 10ノートが余っていれば追加コストなしで表示領域を拡張できる」という特徴が活かせる場合は有力な候補で、実際かなり有用なのはここまで見てきたとおりだが、コストが発生するとなれば必ずしも固執しなくてよいというのが筆者の意見だ。別の選択肢も含めて、適材適所で判断することをおすすめしたい。