やじうまミニレビュー

iPhoneの充電中に写真データをmicroSDに自動バックアップする「Qubii」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
製品本体。見た目はUSB接続のmicroSDカードリーダ。上段はmicroSDのスロット

 「Qubii」は、iPhoneのカメラロール内にある写真や動画、連絡先を、microSDにバックアップするための外付けカードリーダだ。ふだん充電に使っているLightningケーブルの根元に本製品を装着しておくことで、充電のたびにカメラロールの画像が自動的にバックアップされるという触れ込みの製品である。

 本製品の開発元は台湾Maktarで、海外ではKickstarter、国内では代理店を経由してMakuakeにて資金募集が行なわれ、この7~8月に支援者への発送が行なわれるとともに、一般への販売が開始された。筆者が確認しているかぎりでは、国内ではサンワダイレクトが「iPhoneカードリーダ」(型番:400-ADRIP010W)として取扱を行なっている。今回、このサンワダイレクト経由で製品を購入したので、レビューをお届けする。

Lightningケーブルを経由し、iPhoneのカメラロール内の写真をmicroSDに自動バックアップできる
パッケージ。開発元は台湾Maktar社で、MFi認証も取得済
国内ではサンワダイレクトが販売している。実売価格は5,980円

充電のたびにカメラロール内の写真を自動コピー

 iOSの場合、iCloudフォトをオンにしておけば、写真データは自動的にクラウドにバックアップされるが、どのタイミングでバックアップされるのかはやや見えにくい。つまり「任意のタイミングで」、「クラウドに」バックアップされるわけだが、本製品は「充電のためにLightningケーブルにつないだ時に」、「メモリカードに」バックアップされる点が異なっている。

 本体サイズはiPhone付属のUSB電源アダプタと同程度で、そのUSB電源アダプタに接続し、本製品のUSBポートにLightningケーブルを差し込んで使用する。つまり通常のつなぎ方は「USB電源アダプタ」-「Lightningケーブル」-「iPhone」となるところ、本製品を間に割り込ませて、「USB電源アダプタ」-「本製品」-「Lightningケーブル」-「iPhone」という取り付け順序になるわけだ。

 利用にあたってはまずmicroSDを用意して本体に差し込む。言うまでもないが、バックアップする写真の容量を確認したうえで、なるべくそれをカバーできる容量のmicroSDを用意する必要がある。今回、筆者のiPhoneはカメラロール内で写真が占めている容量が約20GBだったため、32GBのmicroSDHCを使用した。ちなみに最大128GBのmicroSDXCに対応している。

本製品のUSBポートにLightningケーブルを差し込み、iPhoneと接続して使用する
iPhone付属の電源アダプタ(右)とほぼ同サイズ。実際にこの順序で接続する
最大128GBのmicroSDXCに対応している
Lightningケーブルをつないだ状態で電源アダプタに接続する
利用にあたっては専用アプリ「Qubii」をインストールしておく
iPhoneを本製品に接続する前に、アプリを起動して写真や連絡先へのアクセス許可など初期設定を行なっておく

 利用にあたってはあらかじめiPhoneに専用アプリ「Qubii」をインストールし、写真などへのアクセス許可を選択しておく。試したかぎりでは手持ちのiPad(iPad mini 4)でも問題なく動作した。ちなみに連絡先へのアクセスは、初回は必ずオンにしなくてはいけないが、その後オフにしても構わない。

 初期設定を終えてiPhoneを接続すると、アプリが起動してカメラロールがスキャンされ、バックアップが開始される。今回、筆者のiPhone内の写真データ約6,500枚(約20GB)のバックアップを行なったところ、約2時間でバックアップが完了した。そう高速ではないが、これだけの量をバックアップするのは初回だけで、次回からは差分のみなので、そう問題はないだろう。

 いったんバックアップが完了すると、次回以降は接続するたびにカメラロールのスキャンが行なわれ、追加された画像の差分バックアップが自動実行される。いったんバックアップした画像は、カメラロール内で該当の画像を削除しても、バックアップ先で自動的に削除されることは(当たり前といえば当たり前だが)ない。

 なお、本製品に接続するだけで無条件に自動バックアップが行なわれるようでは、悪意を持った第三者が別のQubiiを用い、盗難されたiPhoneから写真データを抜き取れてしまう危険がある。そこで本製品は、アプリ上でバインディングと呼ばれる認証作業を行なうことで、信頼したQubiiにのみ自動バックアップを許可する仕組みになっている。

初期設定を終えるとこのような画面になるので、iPhoneをLightningケーブルで接続する
iPhoneを接続するとアプリが自動的に起動し、画面上部に通知が表示される
「信頼しますか?」と尋ねられるのでOKをタップ。これでバインディング(認証)が実行される
microSDはexFATのみ対応。初回接続時にフォーマットを実行する
メイン画面が表示された。このあとバックアップが自動的に開始される
自動バックアップ開始。ちなみに何項目目かは教えてくれるが、残り時間は知らせてくれない
バックアップ完了。今回は約20GBのバックアップに約2時間を要した
次回以降の差分バックアップは、アプリを起動しなくとも行なえる。画面上には進捗が表示される

 秀逸なのは、バックアップを行なったあと、iPhone内のバックアップ済データを一発で削除する機能が用意されていることだ。同種のツールでは、バックアップ済データを削除するには、カメラロールを開いて対象のファイルを手動で選択しなくてはいけない場合がほとんどなので、この機能は嬉しい。

バックアップ済みの項目を一括削除する機能も備える。この画面はバックアップ完了を知らせる表示の手前で表示される

 また本製品はバックアップしたデータを復元する機能も搭載している。1枚ずつ指定することもできるほか、カメラロールごと書き戻すこともできるので、iPhoneの機種変更にあたって重宝する。Apple IDにひもづいているわけではないため、別のApple IDを持つデバイスへの復元も可能だ。

 余談だが、この「一括削除」と「復元」を併用すれば、カメラロール内の写真の整理が容易に行なえる。つまり一旦まるごとバックアップしたのちカメラロール内の写真を一括削除し、その上でバックアップデータから必要な画像だけを選択して復元するのだ。カメラロール上で不要な画像を選んでからバックアップを実行するより、手間も圧倒的に少なくて済む。

ホーム画面で最上部の「Qubii」メニューをタップするとバックアップ済データが表示される
バックアップ済みのデータ。月ごとに表示される。タップするとサムネイルが表示される
iPhoneへの復元が可能。個別または一括での選択が可能。写真はプロパティを見る限りオリジナルと同一で、Exifデータなどもそのままだ

 ちなみに本製品からiPhoneに復元したデータは、バックアップの対象からは除外されるため、別のiPhoneに数十GB単位の写真をごっそりと移動させた直後に、またそれがバックアップされるようなことはない。雑なアプリならば二重にバックアップしかねないところ、きちんと考えて設計されている印象だ。

バックアップ中断時の途中再開など使い勝手は良好

 おおまかな挙動は以下の通りだが、ケースごとの細かい挙動がわかりにくいのも、本製品の特徴といえる。いろいろと実験してみた結果を以下にまとめておくので、参考にしていただきたい。あくまで筆者環境での実験結果であり、ケースバイケースで結果が変わる可能性があることをご承知置きいただきたい。

 バックアップしたmicroSD内の画像を個別に削除した場合、同じ画像がカメラロール内に存在していても、それが同期して自動削除されることはない。さらに、カメラロール内にある該当の画像が再び自動バックアップの対象になり、知らないうちにmicroSD内で復活することもない。最終スキャン時間をもとに、判定を行なっているようだ。

 写真データがバックアップされたmicroSDを外し、別のmicroSDに交換した場合は、最初からバックアップをやり直すのではなく、続きから再開される。どこまでバックアップを行なったかは、アプリ側が情報として持っているようだ。試しにアプリを入れ直してiPhoneを接続したところ、最初からバックアップをやり直す羽目になったので、間違いないとみてよいだろう。

前回のバックアップ時間が確認できる。欲を言えば履歴は過去の複数件にわたって参照できてほしいところ
自動バックアップでは途中で接続が中断されても次回は続きから再開される。このあたりの使い勝手は良好だ

 写真データをバックアップしたmicroSDは、別のカードリーダ経由でも、また本製品経由でも、Windows PCから普通に読める。とくに暗号化などはかかっていないので、いざという時にPCから読み出せるのはもちろん、PCにコピーするためのツールとしても使える。また本製品自体、Windows PCでは普通のmicroSDカードリーダとして利用できる。

 ちなみにアプリがインストールされていないiOSデバイスを接続すると、Qubiiなるアプリがインストールされていない旨を知らせるメッセージが表示され、インストールするかを尋ねられるが、同意しなければそのまま充電だけが行なわれる。

microSDをWindows PCから参照した状態。ドライバ不要で普通に表示できる。本製品以外のカードリーダを経由しても同様の表示だ
アプリがインストールされていないiPhoneを接続するとこのようなメッセージが表示される。後述する家族との共用時には、この表示が思わぬトラブルになる可能性もあるので注意したい

家族との共有には要注意

 以上見てきたように、挙動自体は至って普通のバックアップツールなのだが、唯一気になったのは、別のiPhoneを同じQubiiに接続すると、先にバックアップしてあった写真データが見えてしまうことだ。つまり1台の本製品を家族で共有した場合、写真データが相互に覗き放題になってしまうことを意味する。

 バックアップ済みのデータはデバイスごとに別フォルダに分かれているため、異なるiPhoneのデータが混じる心配はないのだが、パスワードロックもなしに普通に中身が見えるのは少々気になる。さらに試してみたところ、その中にある写真を、あとから接続したiPhoneに、自分の写真として“復元”することもできてしまった。

本製品を共有すると、別のiPhoneがバックアップしたデータも見えてしまう。個別に指定して自分のiPhoneに復元することもできてしまう
microSDをWindows PCから参照した場合もやはり普通に見られる。ちなみにフォルダ名はデバイス名がそのまま使われている

 本製品はもともと、就寝時に枕元などで充電と並行してバックアップを行なうというコンセプトゆえ、こうした事態はあまり起こらないかもしれないし、またあとから接続した別のiPhoneにQubiiアプリがインストールされていなければ、それを知らせるメッセージが表示されるだけで、つなげばすぐに写真データが見えるわけではない。

 とはいえ、本製品の便利さゆえ、家族で共有したいと考える人もいるはずで、そうした時にいかに家族間とはいえ、プライベートな写真データが自由に見えることに抵抗がある人はいるだろう。また覗き見する意図がなくても、充電器を借用するつもりで家族がうっかり本製品に接続し、その時に前述のアプリインストールを促すメッセージが出ると、疑わずインストールし、結果的に見られる状態になってしまう可能性もある。

 そうした意味では、NASのアクセス権限並みのガチガチのセキュリティまではいかなくとも、デバイス名でフォルダを生成している以上、せめてデバイス名と同じフォルダ内だけを参照できるようにするなど、何らかの仕組みが欲しかったところだ。わかりやすさを優先した設計思想は理解できるが、少々カジュアルすぎる印象だ。

 ただしこの仕様は、家族間で意図的に写真を共有したい場合や、個人が所有する複数のiOSデバイスで写真を移動させたい場合にはかえって便利なほか、なんらかの理由でApple IDを変更する必要が生じ、以前のiPhoneに保存していた写真や連絡先を新しい端末にそっくりそのまま移動させたい場合にも役立つ。とくに後者は、iCloud経由ではできない芸当だ。

 要は、バックアップデータを見せたくない相手と本製品を共有するのは、おすすめしないということだ。自分だけでなく家族の誰かがiPhoneを所有しており、ふだんから充電器も気軽にシェアしている場合は、気をつけたほうがいいだろう。

本稿では写真のバックアップに絞って紹介しているが、動画、また連絡先のバックアップにお対応。さらにFacebook/Instagram/FlickrといったSNSのデータをバックアップする機能も備える
写真のフォーマットはデフォルトではJPGだが、HEICを指定することも可能

クラウドやオンラインストレージが苦手な人に

 以上のように、セキュリティよりも利便性を重視した設計はやや気になるが、iPhoneの故障や紛失で写真データを失うことがなにより怖く、にもかかわらず現在まるで対策を講じていない人にとって、重宝することは間違いない。とくに一人暮らしであるなど、誰かに使われる心配がそもそもなければ、前述の仕様もそう問題にはならないはずだ。

 iCloudをはじめ、各種オンラインストレージへのバックアップに慣れた人であれば、本製品の意義はあまりピンと来ないかもしれないが、クラウドへのバックアップが感覚的によくわからない人にとって、物理メディアへのバックアップというのはわかりやすい選択肢だ。iCloudを有料契約しておらず、容量が足りないという人にも最適だろう。

 そもそも、ITに詳しくない人の中には、クラウドやオンラインストレージといった単語にアレルギーを持つ人は多い。そうした人に「この中に入っているメモリカードに写真がコピーされている」と説明するのは感覚的に理解してもらいやすいし、つなげば自動的にバックアップというのも手間がかからなくてよい。自分ではいらなくても、本製品のようなデバイスこそが必要という人は、周りに少なくないのではと感じた。

ケーブルを介して物理メディアにコピーできるわかりやすさは本製品の強みだ

 不満点があるとすれば、ログ機能がやや貧弱なことだ。最後にいつバックアップを行なったかは分かるのだが、もっと具体的に、何枚をいつバックアップした、何枚をいつ復元したといった具合に、最低でも直近数件の履歴を表示できれば、さらに安心感が増すのではと感じた。

 iPhoneの機種変更時のデータ乗り換えにも適した本製品、ちょうどiPhoneの新製品が登場する今こそ求められている製品だが(新製品での動作確認は行なっていない。念のため)、残念ながら販売元のサンワダイレクトでは、本稿執筆時点で品切れになっているようだ。ほかの販路についてはチェックしていないが、興味のある人は気長に探してみてほしい。