Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ

タブレットモードとデスクトップモードを往来してWindows 10を使う

 Windows 10は2つのモードを持っている。1つはデスクトップモード、そして、もう1つはタブレットモードだ。今回は、この2つのモードとWindows 10での一般的な作業について、少し掘り下げて考えてみたい。

最新ビルドがInsiderに向けて配布

 公開されたばかりのWindowsだが、InsiderビルドをFastで受け取るように設定しているユーザー向けには、さっそく新しいビルドとしてBuild 10525が配布されている。正式版が公開された7月29日以降、大規模な更新が何度か配布されてはいたが、Build番号が変わったのはこれが初めてとなる。目に見える変化としては、スタートメニューやタスクバーの色を調整できるようになったところくらいだが、内部的にはずいぶん手が入っているようで、体感的にも前のビルドより快適になっていることがはっきりと分かる。

 Insiderビルドを入手して、現行の環境を更新するかどうかはユーザーの判断に委ねられている。当然、リスクを伴うので自己責任となる。仮に、次の更新がなんらかの事情でシステムを再インストールしなければ適用できなくなったとしても文句は言えない。それでもかまわないというのであれば、「設定-更新とセキュリティ-Windows Updata-詳細オプション」で「Fast」か「Slow」を指定する。

 もちろんInsiderビルドはいつでも好きな時に停止して通常のユーザーに戻れる。新しいビルドの情報を集め、その評判を吟味して大丈夫そうだと思った時点でInsiderとなって更新を適用し、適用したらその場でInsiderを停止して次のビルドを待つといった使い方でもよさそうだ。それが面倒であれば、配信タイミングをSlowに設定しておけば、最悪の事態は避けられそうだ。

Insiderには新しいビルドが配布され、デスクトップ右下にはPreivewであることが表示されるようになった

タブレットモードとデスクトップモード

 さて今回の本題だ。

 タブレットモードはWindows 10で新しく導入されたモードだが、Windowsデスクトップに加わったもう1つのシェルと言える。デスクトップモードではデスクトップそのものがシェルだが、タブレットモードではスタート画面がシェルとなる。モバイルOSでいうところのホームアプリと言ってもいい。

 タッチ非対応の環境で使っているユーザーや、従来通りのデスクトップでの作業をマウスとキーボードで行なうことが主のユーザーは、タブレットモードの存在に気が付かないかもしれない。モードの主張はそれほどに控えめだ。そのオン/オフはスクリーン右端からのスワイプや、タスクバーの通知領域のアイコンを使ってアクションセンターを表示させ、クイックアクションボタンで自由にできる。

 デスクトップモードでは当然、あらゆるアプリがウィンドウとして開き、デスクトップをオーバーラップして使う。一方、タブレットモードではデスクトップを拝むことができなくなり、スタート画面そのものがシェルになってスクリーン全体を覆う。そして、そこからアプリを起動すると、基本的にはフルスクリーンを占有するかたちで起動する。モダンアプリはもちろん、従来のWindowsデスクトップアプリも最大化した状態で起動する。ただ、Widows 8.1の時のように、一定上解像度があれば(画面解像度とスケーリングの状態に依存)画面を縦分割しての同時表示はできる。

【お詫びと訂正】初出時に、タブレットモードでは1つのアプリが全画面を占有するとしておりましたが、実際には画面分割できます。お詫びして訂正させていただきます。

タスクバーへのピン留め

 デスクトップには従来通り、ファイル、フォルダ、各種ショートカットが置ける。これは何も変わっていない。

 ただし、デスクトップに横たわるお馴染みのタスクバーにはインターネットサイトのピン留めができなくなってしまっている。よく参照するサイトをタスクバーにピン留めしておけたのは便利だったのだが、それができなくなったと思ったら、標準ブラウザがEdgeになったからだった。IE11登場時の目玉機能だったのにと思うとはかないものだ。だが、いったんIEを使ってピン留めすれば、それを開くのはEdgeとなる。ちょっとした裏技だ。

 デスクトップのタスクバーにピン留めできるのは、プログラムのショートカットファイル、スタート画面にタイルとしてピン留めされたアプリ、そして「すべてのアプリ」にある項目だ。これらはタスクバーにドラッグすることでピン留めすることができる。また、これらをデスクトップにドラッグするとデスクトップ上にショートカットが作成される。

 スタート画面に配置されたタイルや「すべてのアプリ」、またデスクトップ上に置いたショートカットは右クリックでのショートカットメニューから「スタート画面にピン留め」「タスクバーにピン留め」を設定できる。もちろんエクスプローラでプログラム本体を探してそれを右クリックしても同じことができる。

 興味深いのはフォルダの扱いだ。フォルダについては、デスクトップのタスクバーにおいては、ピン留めされたエクスプローラの固定済みフォルダとして置くしかないのだが、スタート画面には個別にフォルダをタイルとして配置できる。エクスプローラでのフォルダのショートカットメニューから「スタート画面にピン留めする」を実行すればいい。

スタート画面はあくまでもアプリをスタートさせるだけ

 これらの点を頭において、自分で使いやすいようにスタート画面とデスクトップ、そしてそのタスクバーを構成してみよう。

 注意したいのはタスクバーには起動しているアプリをインジケートする機能があるが、スタート画面にはそれがないという点だ。タブレットモードでWindows 10を使っている場合は、アプリが既に起動していようがいまいが、タイルを見つけてそれを開くという操作になってしまう。例えばWordで文書を編集するために既にWordがファイルを開いていたとしても、スタート画面からWordを開くと、新規作成画面になってしまう。既に開いているファイルがあったとしても、その編集画面に戻ることはない。

 スタート画面はあくまでもアプリをスタートさせるための画面であり、タスクバーのように、既にスタートしているアプリとそうでないアプリをうまく切り分けてアプリ間を行き来するためのものではないわけだ。

 これがややこしいと思うなら、タブレットモードではデフォルトでオフになっているタスクバーのアプリアイコン表示をオンにすればいい。非表示がデフォルトなのは、おそらくアプリの全画面感を高めてコンテンツに没頭できるようにするための計らいだと思われる。表示の有無は設定のシステムータブレットモードで変更できる。

 目的のアプリを探してそれをスタートさせるという意味でスタート画面はシェルというよりも単なるプログラムランチャーにすぎない。

 今、自分がどのようなプログラムを開いているのか、開いていなければ新しく開くし、開いていればそれをアクティブにする。Windowsでの作業はその繰り返しだ。過去におけるデスクトップのタスクバーはうまくその作業をうまくサポートでてきていたと思うが、今後は少し考えを改めないと、ちょっと混乱してしまうかもしれない。

 スリープとそこからの復帰を繰り返しながら使うモバイルノートPCなどでは、あるアプリが開いているのかどうかなんて、操作する側はとっくに忘れて把握していない。このあたりの作法が整理しきれていないのは、履歴としてできるかぎり以前の状態を復帰しようとするモバイルOS上のアプリのような割り切り方が、過去とのしがらみのあるWindowsでは難しいということなのだろう。

アクションセンターから手動でタブレットモードに遷移できる。2-in-1 PCなどではキーボードの脱着などでも切り替わる
タブレットモードでは種類にかかわらずアプリは全画面で表示される
デスクトップモードでは種類にかかわらずアプリはウィンドウ表示される。もちろん必要に応じて最大化もできる

タスクビューボタンで任意のアプリに遷移する

 Windows 10では、現在、開いているアプリの一覧を得るための方法がいくつかあるが、新設されたものとしてタスクバー上のタスクビューボタンがある。タスクビューでは、現在開いているアプリを一覧することができる。履歴ではない、れっきとした今の情報だ。

 タスクビューは、タッチ対応のスクリーンなら左からのスワイプインでも表示されるし、キーボードからはWindows+Tabキーで表示できる。開いているアプリから任意のものをタップすることで、そのアプリをアクティブにできる。もし、タスクビューに開きたいアプリがなかったら、スタートメニューを使って新たにアプリを起動すればいいわけだ。起動したアプリを閉じないでそのままにしておけば、そのうち履歴のように使えるようになるだろう。

 せっかく復活したスタートメニューでもあるので有効に活かしたいのはやまやまだ。そこでまず、タスクバーにアプリをピン留めするのはやめてしまおうと思った。そうすれば開いているアプリのボタンだけがタスクバーに並び、そこにないものを開きたい時だけスタート画面に行けばいい。ただ、その場合、よく使うアプリを開くためだけに、スタートボタンとタイルという2つのボタンを順に押す必要がある。これが面倒だからこそのピン留めだったのだ。それに、ピン留めして順序を固定しておかないと、Windows+数字キーによる遷移も番号が不定になってしまってやっかいだ。ちなみに起動している場合はストアアプリもタスクバーボタンとして表示するようにしたほうがいい。もう、ストアアプリとデスクトップアプリを区別して考えないようにするべきだろう。

スタート画面の役割はアプリなどのスタート。現在の状況はわからない。タスクバーを常に表示させておけば開いているアプリにはインジケータとして白い下線が付く
スタート画面に配置したアプリは右クリックでピン留めの解除ができる。また、タスクバーへのピン留めもここからできる
スタート画面にはフォルダも置ける。フォルダを右クリックして指定すればいい

 結局、個人的には今まで通りのタスクバーをデスクトップモードの時もタブレットモードの時にも常時表示させ、よく参照するインターネットサイトをスタート画面にタイルとして置くという使い方をするようになった。タブレットモードでWindowsを使う時は似たようなサイトの巡回が多く、タップしやすい大きなタイルを置いておけるスタート画面が操作しやすい。

 ちなみに、タブレットモードでは開いているアプリを上から下にスワイプするとそのアプリは終了する。そこで、サイトを見終わったらいつも終了してしまうようにした。そうしないと、次にスタート画面から同じサイトを開こうとすると、ブラウザは新しいタブでそのサイトを開いてしまうからだ。これまでの習慣を変えるというのは実に難しい。

タスクバーではタスクバーアイコンを非表示にし、フルスクリーンアプリの表示をすっきりさせられる
タブレットモード時のタスクビュー表示
デスクトップモード時のタスクビュー表示。仮想デスクトップの追加機能がある
スタート画面に Edgeからサイトをタイル表示することができる

(山田 祥平)