笠原一輝のユビキタス情報局

「Office 2016」のIT管理者/開発者向けプレビューが公開

Office 2016のOutlook、Word、Excel、PowerPoint。メニュー表示がカラフルになっている

 Microsoftは、「Office 2016」のIT管理者/開発者向けのデスクトップ版プレビューを公開した。メニューバーの色が各Officeアプリケーションを象徴する色になり、タッチ専用のメニューが追加されるなど、見た目も若干改良が加えられている。

 今回の記事ではOffice 2016のIT管理者/開発者向けプレビューをインストールしてみて分かったことなどを中心に、デスクトップ版Office 2016について紹介していきたい。現時点で「Office 2013」からの変更点は、メニューの表示などが変わった程度で、あまり大きな変更はまだ加えられていないようだ。Microsoftは、Office 2016のエンドユーザー向けの新機能は別途発表する予定であることを明らかにしており、後のベータ版などでそうした新機能が実装されることになりそうだ。

公開されたのはIT管理者/開発者向けのプレビュー版

 現在、デスクトップ版Officeアプリケーションの最新版はOffice 2013だ。Office 2013は、Windows 8とほぼ同時期にリリースされ、デスクトップ版Officeとしては初めてタッチに最適化されるなどの特徴を備えていた。

 Office 2016は、2015年中のリリースに向けて開発を続けている。IT管理者と開発者を対象にした今回のプレビュー版は、全ての機能を含んでいるわけではなく、一部機能を搭載したバージョンとなる。今後、新機能はOfficeの月例アップデートに併せて逐次追加される予定となっていることがブログで明らかとなっている。

リボンメニューに検索ボックスとタッチメニューが追加

 今回のプレビューは、開発者向けのベータテストサイトである「Microsoft Connect」上で公開されている。参加するには、Microsoftアカウントを使ってサインアップする必要があるが、名前やメールアドレス、会社名などを入力するだけで、基本的には制限なく参加できるようだ。

 ただしアクティベーションには、法人向けOffice 365のサブスクリプション契約とそのアカウントが必要になる。筆者の場合にはOffice 365 MidSize Businessを契約しているが、そのアカウントを利用してアクティベーションできた。

 また、ダウンロードしたファイルには、英語や日本語などさまざまな言語が含まれていたが、日本語ではエラーが発生してインストールできず、英語を選んでインストールしたところ成功したので、現状では言語が限られている可能性が高い。もっとも、現代のOfficeは英語版であってもダブルバイトは問題なく扱えるので、メニューなどが英語になるだけで、日本語環境で使うことは可能だ。テスト目的なら英語版をインストールすればいいだろう。なお、現状では、Click-To-Run版だけが利用可能であるようだ。

 インストールされた後、各Officeアプリケーションで確認してみると、バージョンは“16.0.3823.1005”と表示されており、Office 2016がOffice 16相当のバージョンであることが確認できる。ぱっと見でOffice 2013から大きく変更されたのは、メニューのテーマがよりカラフルになった点で、1段目と2段目のメニューバーの部分がOfficeアプリケーションの色になっている(従来のOffice 2013ではメニューバーは白基調)。

 また、タッチが利用できるPCでは、タッチというメニューが追加されており、フォントの選択、文字の大きさの調整、コピー、ペースト、カット、セーブなどの大きめのアイコンが表示されるようになっている。

 メニュー関連のもう1つの大きな変化は、“Tell me”という検索ボックスが追加されていることだ。ここに、使いたい機能の一部の文字を入力すれば、それに併せて必要なメニューのリストが表示されるようになる。例えば、“insert”と文字を入れれば、insertに関するメニューが候補として表示される。どの機能がどのメニューに入っているのか思い出せない時に重宝しそうだ。

こちらはOffice 2013のExcel。メニュー表示は白地になっている
Office 2016のExcelの画面。メニューにタッチというメニューが標準で追加されている
タッチメニューではフォントや大きさ、コピーなどがタッチでやりやすい大きめのアイコンが用意されている
新しいTell meの検索ボックスを使うと思い出せないメニューへショートカットすることができる
Office 2016のバージョン表示画面。バージョンは16.0.3823.1005

Windowsタブレット向けのOutlookの新機能などが追加される

 MicrosoftがMicrosoft Connectで公開している資料によれば、このほかにも、以下のような機能が強化されているという。

【表1】Office 2016で追加される新機能(Microsoftが公開した資料より筆者が抜粋)
高DPIのサポート250%や300%などのより高いDPIでの表示をサポート
大きなチャートやスマートアート表示中のパンやズームに対応大きめのグラフィックを含むファイルを開いている途中でもパンやズームができるようになる
参照ボタンの移動ファイルを保存するときに参照ボタンが見にくい場所にあったのをよりわかりやすく移動
イメージ挿入時に方向を参照カメラ撮影時の方向に合わせて画像を回転して挿入する
ダークテーマの追加明るめのテーマがまぶしすぎる視力に問題があるユーザーのために暗めのテーマが追加
Outlookのメール保存期間の短縮従来は標準で1カ月だったメール保存期間に、1日/3日/7日/14日を追加
Outlookの小型画面用縦表示の追加Windows PhoneなどのOutlookと同じように、縦表示時にメッセージだけを表示する機能が追加されている
Projectで新しいタイムラインビューが追加されているProjectで改良されたタイムラインビューが追加
LyncがSkype for BusinessとなるLyncのブランド名がSkype for Businessに変更される
Outlookの添付ファイル扱いの変更OneDrive/OneDrive for Business/SharePoint上のファイルをメールに添付するときに、編集可能かリードオンリーモードで添付するオプションが追加
Excelにリードオンリーモードの追加SharePointからExcelファイルを開くときにリードオンリーモードで素早く開くことができるようになる
Excelの複数機能の強化フィールドリストでの検索機能の強化、PowerQuery for Excelの統合、予想機能などの機能強化
DLP(Data Loss Protection)管理者がファイルごとに閲覧・編集権限を設定することが可能になる。

 多くは、IT管理者向けの機能でエンドユーザーには関係のない機能だが、いくつか興味深いアップデートがある。1つはOutlookのメールのローカルへの保存日数。従来は標準の1カ月か、全部かぐらいしか選べなかったのが、1日/3日/7日/14日も選べるようになった。例えば、Windowsタブレットのように、ローカルなストレージがあまり大きくないPCで使う場合、7日や14日ぐらいにオフラインキャッシュを制限すると、ストレージを節約できる。ただ、現在されているプレビュー版ではまだこの機能は実装されていないようで、Outlook 2013と同じように1カ月か、全てしか選べなかった。

 もう1つ、画面サイズがあまり大きくないPCで利用する場合で縦表示にした時に、自動で受信メール一覧のペインを非表示にして、メールファイルを見やすくする機能が追加されていることだ。これにより、8型のWindowsタブレットなど画面サイズが十分ではないPCで見る場合にも快適にメールを見られる。

 ただ、今回公開されているプレビュー版のOutlook 2016では、サポートされているメールシステムはPOPやIMAPなど2013と同じで、GmailやOutlook.comなどでサポートされているOAuth 2.0(パスワードなどの情報をアプリに渡さずにユーザー認証をする認証方式)などにはまだ対応していなかった。現代のメーラーとしてはOAuth 2.0への対応は必須と言える状況で、当然Outlook 2016でもそれに対応する必要があると言えると思うが、プレビュー版では対応していない。

Office 2016のOutlook。基本的な画面はOffice 2013に近く大きな違いはない
8型のWindowsタブレットで縦表示にすると、このようにメッセージ一覧のペインが自動で隠れて、メール本文だけが表示された

今年後半のリリースが予定されているOffice 2016

 今回のプレビュー版はあくまでIT管理者/開発者向けのプレビューで、一般のユーザー向けの機能に関しては、今後明らかにされ、実装されるだろう。OAuth 2.0などはその最たる例と言えるが、Office 2016の製品としての評価は、そうしたエンドユーザー向けの新機能の発表を待ってからということになる。

 ただ、Windowsタブレット向けのOutlookの改良や、タッチメニューの追加、Tell Meボックスの追加などに、その片鱗は確認することができた。引き続き今後の更新に注目していきたいところだ。

(笠原 一輝)