笠原一輝のユビキタス情報局
Androidでも超改造+フレーム生成、Snapdragon新GPUで16fpsが52fpsに
2026年9月24日 06:06
Qualcommは、9月22日から9月24日にかけて年次イベントのSnapdragon Summitを、米ハワイ州マウイ島で開催している。この中でQualcommは新しいスマートフォン向けフラグシップ製品となる「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」を発表した。
そのGPUとなる「Adreno 850」において、「Matrix Core」と呼ばれるAI専用の演算器を追加し、同社の新しい超解像技術となる「Adreno Neural Fusion(ANF)」を導入した。また、中間フレームをAIにより生成する「フレーム生成」も対応し、フレームレートを引き上げる。
Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6に採用されているGPUは「Adreno 850」
同社の内部では「世代を示す1桁の数字+グレードを示す2桁の数字」でGPUを呼ぶ。たとえば、1世代前の「Snapdragon 8 Elite Gen 5」では「Adreno 840」、2世代前の「Snapdragon 8 Elite」は「Adreno 830」、3世代前の「Snapdragon 8 Gen 3」では「Adreno 750」といった具合だ。
| SoCブランド | Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6 | Snapdragon 8 Elite Gen 5 | Snapdragon 8 Elite |
|---|---|---|---|
| 発表年 | 2026年 | 2025年 | 2024年 |
| GPUブランド名 | Adreno 850 | Adreno 840 | Adreno 830 |
| アーキテクチャ | スライス(3スライス) | スライス(3スライス) | スライス(3スライス) |
| GPUキャッシュ | Adreno HPM | Adreno HPM | ― |
| Matrix Core | ○ | ― | ― |
| Adreno Neural Fusion | ○ | ― | ― |
こうした数字の名称は、以前は公開されていたのだが、最近は一般消費者に分かりやすくするという理由で、すべてAdrenoで呼ぶようにし、外部にはあまり語られていない。しかし、GPUのドライバなどにはこの名称が使われており、ベンチマークプログラムなどで確認できる。
では、今回のSnapdragon 8 Elite Gen 6のAdrenoは何かというと、公開された実機でGeekbench 6.5のGPU詳細で確認したところ「Adreno 850」であった。QualcommはGPUのアーキテクチャの世代を新しくしたときだけ、3桁の数字のうち最初の数字を新しくするので、今回のSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6に搭載されているAdreno 850は、第8世代のAdreno GPUの最新製品という位置づけになる。
実際、Snapdragon 8 Eliteに搭載されたAdreno 830において、完全に新しいアーキテクチャのGPUを導入している。それが第8世代のAdrenoアーキテクチャだ。このとき、後継のAdreno 840や今回のAdreno 850にも採用されている「スライス・アーキテクチャ」が導入された。
スライスというのは、3Dレンダリングを行なう上で必要な要素(たとえばシェーダープロセッサやレイトレーシングエンジンなど)が含まれており、そのスライス単位で演算器を増減することで、ローエンド向けのGPUからハイエンド向けのGPUまでを設計することが可能な構造になっている。
Adreno 830、後継のAdreno 840、そして今回のAdreno 850ではいずれも3スライスで、演算器の数などは基本的に同じだと考えられる。しかし、機能の拡張は続けられており、Adreno 840ではAdreno HPM(High Performance Memory、18MB)というGPU専用のキャッシュメモリが追加されて、メモリ帯域への圧迫を下げられる工夫が加えられた。今回のAdreno 850でも引き続きAdreno HPMは容量こそ18MBと同じだが、電力効率が改善されている。
Adreno 850ではMatrix Coreが追加
今回のAdreno 850における最大の強化点は、「Matrix Core」と呼ばれる一種の行列演算器が追加されていることだ。これによりFP8などの演算を少ない消費電力で行なうことができる。すでにNVIDIA、AMD、Intel各社は、そうした行列演算器をGPUに搭載している。Matrix CoreもそうしたAI用演算器と同列に考えていいだろう。
Matrix Coreは、各スライスに1つ搭載されている。このため、Adreno 850では3基のMatrix CoreがGPU全体で利用できる。もっともその内部の構造がどうなっているのかなどについてQualcommは説明していないので、そのあたりの詳細は不明なままだ。
しかし、このMatrix Coreの利用用途は明白だ。今回それが「Adreno Neural Fusion(ANF)」と呼んでいるアップスケーリングとフレーム生成からなる技術だ。
いずれも、PCゲーマーにとってはお馴染みの技術だろう。AMDのFSR、IntelのXeSS、NVIDIAのDLSSに相当する。こうした技術はざっくりいうと、2つのパートに分かれている。1つは低解像度でレンダリングした3Dのフレームを高解像度にアップスケーリングするパートで、もう1つが実際にはレンダリングされていないフレームを、AIを活用して生成し、フレームレートを引き上げるフレーム生成だ。
こうした技術のメリットは、少ない演算リソースと消費電力で高解像度の映像を出力できることだ。GPUが実際にレンダリングしているフレームがHD(1,280×720ドット)/30fpsであるのに、技術を活用するとフルHD(1,920×1,080ドット)/60fpsの出力ができているとすれば、GPUのレンダリングエンジンの性能はWXGA/30fpsがレンダリングできる性能があればいいことになる。
メリットが多い技術のため、これまでPCのゲームではあたり前にサポートされてきたが、Androidゲーム環境ではサポートされてこなかった。QualcommのAdreno、MediaTekのGPUであるArm MaliおよびImmortalisなどでこうした超解像技術がサポートされてこなかったからだ。しかし、今回Adreno 850が対応したことで、Androidのゲームでも利用することが可能になる。
ただ、ANFを利用するにはゲーム側の対応が必要になる。今回Qualcommは20以上のゲームが対応すると発表した。まだまだ無数にあるAndroidゲームのほんの一部という状況だが、すでにUnreal Engine、UnityといったゲームエンジンがANFに対応したとQualcommは説明しており、今後徐々にゲームタイトルのANFへの対応が進んでいくと考えられる。
ANFの絶大な効果をベンチマークで確認、ANFは現状Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6のみが対応
今回のSnapdragon SummitでQualcommはSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6のリファレンスデザイン機を公開し、メディア関係者などがベンチマークを行なうことができた。
ANFに対応したベンチマークとしてはTraverse Researchが制作したEvolve Benchmarkのアップスケーリングテストを利用して、ANFのうちアップスケーリングオン(性能向上テスト、省電力テスト)、アップスケーリングオン+フレーム生成の2つのテストを試すことができた。
(1)アップスケーリングのみ(フルHD/10fpsと960×540ドットからフルHD/10fpsへのアップスケーリングの比較)
(1)のテストでは、画面表示のクオリティは同じにして、必要な消費電力の違いを見ることができる。アップスケーリングを使わない場合は同じフルHD/10fpsでSoCの平均消費電力は5.9Wであるのに対して、超解像を使うとわずか1Wだと計測することができた。
(2)アップスケーリング+フレーム生成(フルHDネイティブと、960×540ドットからフルHDへのアップスケーリングとフレーム生成)
(2)のテストでは、消費電力よりも表示品質を重視したセッティングに相当し、ネイティブのフルHDの設定ではフレームレートは16.4fpsだったが、アップスケーリングとフレーム生成の両方をオンにした場合には52.1fpsとなり、実に3倍以上のフレームレートの向上が実現できていた。
これにより、GPUの性能不足により、低いfpsでプレイできなかったようなゲームも、今後はANFをオンにすることで快適にプレイできる可能性があるし、その逆にANFをオンにしてゲームの解像度を下げたりすれば、消費電力を抑えることができる。
なお、フレーム生成について、ANFも1フレームだけでなくマルチフレーム生成に対応しているが、現状はほとんどのゲームパブリッシャーがシングルフレーム生成を選んでいるとのことだ。アーキテクチャ的にはマルチフレーム生成に対応しているとのことで、将来登場するANF対応ゲームなどでマルチフレーム生成対応が行なわれる可能性はある。
このように、ANFはAndroidゲーミング環境に革命的な新しいユーザー体験をもたらす技術だ。そして現状はSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6でのみANFが使えることができる。その意味では、これから新しいゲーミングスマートフォンを買おうと考えているユーザーにとってはSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6が最初に検討すべき選択肢になっていく可能性が高いのではないだろうか。


















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