笠原一輝のユビキタス情報局

史上最高の「紙のような書き心地」が魅力のSurface Pro 8。ペンを使うならマストバイの仕上がりに

MicrosoftのSurface Pro 8は、Windows 11を標準で搭載しており、オプションとして販売されている「Surface Pro Signature キーボード」、「Surface Slim Pen 2」と組み合わせて利用することでフル機能のノートPCとして活用可能

 MicrosoftのSurface Pro 8は、キーボード分離型の2in1で、日本で最も人気がある「Surface」シリーズの最新製品となる。このSurface Pro 8は、製品名こそ従来の「Surface Pro 7」の後継としての「8」であるため、正常進化した製品のように感じるかもしれないが、今回のSurface Pro 8は、これまでのSurface Proシリーズ製品の中でも最も「大きなモデルチェンジ」が施された製品と言えるような製品だ。

 その最大の要因は底面積の変更だ。Surface Pro 4以降のSurface Proシリーズはほぼ同じ底面積を維持しており、このため、オプションとして提供されるSurfaceタイプカバーキーボードは、Surface Pro 4以来同じものが利用できていた。

 しかし、Surface Pro 8では、底面積は一昨年(2019年)にMicrosoftが投入したSurface Pro X(ArmベースのSurface Pro)と同等になり、これまでSurface Pro X用として販売されてきたキーボードがSurface Pro 8用として利用可能になる。

 もう1つの大きな変更点はオプションとして提供されるデジタイザペンだ。

 従来のSurface Pro 7までは、Surface Penと呼ばれるペンが提供されてきたが、今回のSurface Pro 8では、やはりSurface Pro X用として提供されてきたSurface Slim Penの第2世代となるSurface Slim Pen 2が用意される。Surface Slim Pen 2は、ハプティックモーターが内蔵されており「誘導信号」という新しい機能により、紙に対してペンで書いているような書き心地を再現する機能が用意されている。

 本記事では日本マイクロソフトより借用した11月1日発売のSurface Pro 8日本版(8PV-00026、Core i7/メモリ16GB/SSD 256GB/グラファイトモデル)を利用して、レビューをお届けしていきたい。

筐体が一新されSurface Pro Xと同じ底面積に。13型/2,880×1,920ドットにディスプレイが強化

オプションのSurface Pro Signature キーボードを分離したところ、キックスタンドを持っていることで、そのままでコンテンツ視聴などにも利用可能

 新しいSurface Pro 8の最大の強化点は、筐体が従来のSurface Proシリーズから更新されていることだ。

 キックスタンドを備え、自力で立つことが可能で、オプションのタイプカバーキーボードを装着すれば、クラムシェル型ノートPCのように使用できるという特長こそ変わっていないが、縦と横のサイズ、つまり底面積が変更されているのだ。

 従来のSurface Pro 7と比較してみると、横方向の長さは全く同じ(208mm)だが、縦方向は従来モデルが287mmだったのに対してSurface Pro 8は292mとわずか4mmだが増えている。このため、従来モデルをSurface Pro 8の上に重ねて見ると、縦方向が大きくなっていることが視認できる。そして、Microsoftが2019年に発表したArmプロセッサ搭載のSurface Pro Xとは縦も横も同サイズで底面積は一緒になっている。

キックスタンドは無段階で変更可能なので、このように様々な角度で利用できる

 こうした変更は、ディスプレイのサイズが大きくなったことも影響している。従来のSurface Pro 7では12.3型/2,736×1,824ドットのディスプレイが採用されており、ディスプレイ左右の額縁も現代のPCとしてはかなり大きいと言わざるをえない、やや古風なデザインになってしまっていた。

 しかし、新しいSurface Pro 8では、左右が狭額縁になっており、さらにディスプレイのサイズも13型に大型化され、解像度も2,880×1,920ドットと若干だが、縦にも横にも高解像度化されている。ディスプレイの大型化も、高解像度化のどちらもメリットしかなく、歓迎すべきことだ。

解像度は2,880×1,920ドットに向上し、リフレッシュレート120Hz対応

 なお、デバイスの詳細などを確認するツールで表示させてみると、同じ13型/2,880×1,920ドットのパネルになっているSurface Pro XはLG PhilipsのLGD0555になっていたが、Surface Pro 8は同じLG PhilipsだがLGD06B1と別のパネルになっていた。

 実はSurface Pro XとSurface Pro 8ではパネルサイズと解像度は全く同一だが、大きな違いとしてリフレッシュレートの差がある。従来のSurface Pro 7やSurface Pro Xが60Hzであるのに対して、Surface Pro 8では120Hzになっているのだ。このため、フレームレートを高く出せるゲームなどをプレイする場合や、画面スクロールする場合など、より滑らかになるという効果がある。

 ただし、リフレッシュレートを引き上げるとその分だけ消費電力は増えることになる(1秒間に倍のリフレッシュがかかるため)。このため、バッテリ駆動時には60Hzに設定するなどしておく方がいいだろう。電源に繋いだ時だけ120Hzにするようにしておけば、性能とバッテリ駆動時間の両立が可能だ。

従来のSurface Proシリーズ用のキーボードとは互換性なし。新たにSurface Pro Xと共通のキーボードが利用可能に

上がSurface Pro 7、下がSurface Pro 8、Surface Pro 8の方が縦方向に長い

 既に述べた通り、Surface Pro 8は、Surface Pro 7に比べて縦方向が大きくなっており、従来Surface Proシリーズ用のオプションとして提供されてきたSurfaceタイプカバーキーボードは利用できない。しかし、底面積はSurface Pro Xと同じであり、Surface Pro X向けに提供が開始された「Surface Pro Signature キーボード」を利用することができる。

左がSurface Pro 7用までのタイプカバーキーボード、左がSurface Pro Signature キーボード

 実はSurface Pro 8用のキーボードには2つの種類がある。1つはSurface Slim Penを充電可能な充電器をキーボードのヒンジ部分に備えている「Surface Pro Signature キーボード」と、その充電機能がない「Surface Pro Signature タイプ カバー」の2種類だ。

 後者は元々Surface Pro X用として販売されてきたもので、それがそのままSurface Pro 8にも利用できる。実際、筆者の手元にあったSurface Pro X用のSurface Pro Signature タイプ カバーをSurface Pro 8で利用してみたが問題なく使えた。

Surface Pro Signature キーボード、オプションのSurface Slim Pen 2をこのように入れて充電できる、配列なども素直だ

 Surface Pro Signature キーボードは、Surface Pro X用として販売されてきた「スリム ペン付き Surface Pro X Signature キーボード」ではSurface Slim Pen(第1世代)がバンドルされて販売されてきた。しかし、Surface Pro 8用として販売されるSurface Pro Signature キーボードは後述するSurface Slim Pen 2は別売りで、それぞれ別に購入する必要がある。セットではないので割高になるが、キーボードだけを買って後でペンを買うという入手の仕方も可能になるため、善し悪しだろう。

本体とはマグネットで吸着して、このような形でキーボードに角度をつけて利用できる
角度をつけずに利用することも可能

 なお、キーボードの打鍵感などは従来のSurface Pro 7用のタイプカバーキーボードと大きな違いはない。キーボードがディスプレイの下部を起点にしてやや浮いていることもあり、強く叩くとキーボード自体がやや歪むことで衝撃を吸収する仕組みになっているため、固めの板をバンバン叩きたい系の人には不満は残るという基本的な点も同様だ。

 ただ、そういう場合には、本体とマグネットで吸着させないで、机との隙間をなくしてフラットにする使い方をするか、そんなに強く叩かない入力方法に変更すると、快適に使えるだろう。このように、基本的には従来のSurface Proシリーズ用のタイプカバーキーボードと同じような使い勝手や打鍵感だと思って間違いない。

USB Type-CはThunderbolt 4に対応。microSDカードスロットはなくなるがストレージは交換可能な構造に変更

本体の右側面には(上から)電源スイッチ、USB Type-C(Thunderbolt 4対応)、Surface Connect
本体の左側面にはボリュームスイッチ、ヘッドフォン端子

 インターフェイスもSurface Pro Xと同じように、USB Type-C端子が2つ、ヘッドフォン端子、Surface Connect(Surface用のACアダプタやドッキングステーションを接続する専用端子)となっている。ただし、Surface Pro XではUSB端子は左側に2つだったのに対して、Surface Pro 8では右側に2つだ。さらにSurface Pro 8のUSB Type-CはThunderbolt 4にも対応していることが大きな違いとなる。

付属のACアダプタ、60W+5W(USB Type-A)
ACアダプタの重量は254g
本体の重量は885g
Surface Pro Signature キーボードとSurface Slim Pen 2併せた重量は1,176g

 また、Surface Pro 7まではmicroSDカードスロットが用意されており、内部ストレージがいっぱいになった時の外部ストレージとして、あるいはデジタルカメラで撮影した画像を取り込むためのカードリーダとして利用できた。

 しかしSurface Pro 8ではそれがなくなっている。microSDカードスロットを、ストレージ容量拡張のために使っていたユーザーにはやや残念なことだ。

 その代わりというわけではないが、Surface Pro 8では、Surface Pro Xと同じように、SIMピンで押すだけで開けられる蓋のところに、メインストレージが格納されている。

 Surface Pro 7ではディスプレイをほぼ破壊的に剥がす必要があり、普通のユーザーがストレージを交換することはほぼ不可能だったのに比べると、ストレージへのアクセス性は圧倒的に優れている。

SIMピンでボタンを押すとこの小さな蓋が開けられる
M.2 2230のストレージがネジ1本でとまっているだけ

 利用されているのはM.2の2230(22×30mm)タイプのストレージで、同じM.2 2230形状のSSDにネジ(トルクスネジ)1本を外すだけで簡単に交換できる。

 保証に関する議論は置いておくとして、256GBモデルを使っていたけど容量が足りなくなってきた場合に、M.2 2230型の512GBや1TBに交換可能だ(現状M.2 2230は1TBまでラインナップされている)。

 M.2 2230のSSDは、一般的に自作PC用として流通しているM.2 2280(22×80mm)のSSDに比べると入手性は良くないが、海外からの輸入などを含めて調べてみると手に入らないわけではない。

 しかし、今後Surface Pro 8が販売されて、需要が高まれば日本でもM.2 2230の512GBや1TBの入手性が良くなり、将来的に内蔵ストレージを簡単に交換できる可能性がある。もちろん、交換すれば保証は効かなくなるが……。

静止画は3,712×2,784ドットに、動画は4K/30fpsに対応しているリアカメラ

 パソコンに搭載されたフロントカメラとしては、その映りの良さで最高峰として評価されてきたSurface Proシリーズのカメラだが、もちろんSurface Pro 8でも評価が高かったそのフロントカメラは継続採用されている。

 Surface Pro 8ではそれに加えてリアカメラが強化されており、従来モデルの最大800万画素から最大1,000万画素へと画素数が増えている。

 このため、Surface Pro 7では3,264×2,448ドットの画像かフルHD/30fpsの動画の撮影が可能になっているが、Surface Pro 8では3,712×2,784ドットの画像か4K/30fpsの動画を撮影可能だ。

 こうした2in1型デバイスのリアカメラは、書類のPDF化などの用途に使うことが多いが、そうした時にもできるだけ高解像度で撮れた方がより綺麗なスキャンが可能になるので、画素数が増えたのは嬉しいところだ。

ハプティックを利用した「誘導信号」の機能は効果抜群。史上最高に「紙のような書き心地」を実現している

Surface Slim Pen 2の表
Surface Slim Pen 2の裏

 そして、Surface Pro 8でのもう1つの大きな強化点は、Surfaceシリーズの特徴の1つであるデジタイザペンの強化だ。Surface Proシリーズでは、Microsoftが買収したN-Trig由来のMPP(Microsoft Pen Protocol)に対応したデジタイザがディスプレイに内蔵されており、オプションで販売されているSurface Penを利用して入力可能になっている。

Surface Slim Pen 2を利用してメモを取る様子

 今回のSurface Pro 8ではディスプレイに内蔵されているデジタイザが進化しており、Surface Slim Pen 2では新しく「誘導信号」という機能が追加されている。この誘導信号とはハプティックの仕組みを利用して、ペンがディスプレイに接地したタイミングなどで軽くぶるっと震える仕組みになっている。

 それにより、紙に書いた時のような摩擦を、振動で再現して指に伝え、ユーザーは「紙の書き心地」を体感できる。オフにするとガラスの上をつるつる滑っている感じだが、オンにするとざりざりっとした感覚が指に伝わってきて「あ、確かに紙に書いているのって、こんな感じかも」という感覚を得られる。

 この設定は、Windows 11の設定にある「Bluetoothとデバイス>ペンとWindows Ink」の順でたどっていくと表示されるメニューの中にある「誘導信号」の項目で行なうことができる。

 オンにするには手書き文字を書いている間だけにするのか、それともデバイスの操作中(例えばWindowsのメニューをペンで操作する場合)などにも行なうのか、またその強弱も設定可能だ。このあたりは自分で実際に書いてみて、どの設定が紙に書いているのに近いかを決めるといいだろう。

設定画面で強さを調整することが可能

 筆者はペンデバイスとしてSurface Pro X+Surface Penと、AppleのiPad Pro 11型(第3世代)+第2世代Apple Pencilという2つの組み合わせを常用しているが、率直に言ってSurface Pro X+Surface Penより書きやすいのはもちろんのこと、iPad Pro 11型(第3世代)+第2世代Apple Pencilよりも紙に書いているような優れた感覚が得られる。

 「誘導信号」だけのために現在使っているSurface Pro XからSurface Pro 8に買い換えたいなと思ったほどだし、ぜひSurfaceシリーズに限らずこうした機能をほかのWindowsデバイスも搭載してほしいと思った。

 なお、この誘導信号の機能を利用するには、ディスプレイ側のデジタイザも、ペン側もどちらもハードウェア的に対応している必要がある。

 このため、例えばSurface Slim Pen 2を従来のSurface Pro XやSurface Pro 7を組み合わせても利用できないし、逆にSurface Slim Pen(初代)やSurface PenをSurface Pro 8で使っても利用できない(ペンとしては利用できるが、誘導信号の機能は利用できないという意味だ)。

 この誘導信号を利用するには、Surface Pro 8、そして来年に日本で発売される予定のSurface Laptop Studio、Surface Slim Pen 2を購入する必要がある。

CPUは約32%の性能向上、GPUは倍の性能向上を実現している第11世代Coreを採用

 CPUはSurface Pro 7の第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake-U)から、第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake-UP3)へと強化されている。Ice Lake-UではTDP 15Wになっていたが、Tiger Lake-UP3ではTDPは28W~12Wと幅広いレンジに広げられており、熱設計の枠を広げたことでCPUの処理能力が大幅に向上している。

 また、内蔵されているGPUも強化。EU(実行ユニット)の数が64基から96基に増え、GPUの性能も引き上げられている。CPUは一般消費者向けモデルではCore i5-1135G7ないしはCore i7-1185G7から、法人向けモデルではCore i3-1115G4、Core i5-1145G、Core i7-1185G7から選択可能だ。

 今回評価機として入手したマシンにはCore i7-1185G7(Bステップ)が搭載されていた。

【表1】Surface Pro 8とSurface Pro 7のスペック
Surface Pro 8Surface Pro 7
CPU第11世代Coreプロセッサ(i5-1135G7/i7-1185G7、一般消費者向けモデル)(i3-1115G4/i5-1145G7/i7-1185g7、法人向けモデル)第10世代Coreプロセッサ(i7-1065G7/i5-1035G4/i3-1005G1
GPUIntel UHD(i3)/Iris Xe(i5/i7)Intel UHD(i3)/Iris Plus(i5/i7)
メモリ8GB/16GB/32GB(LPDDR4x)4GB/8GB/16GB(LPDDR4x)
ストレージ128GB/256GB(Wi-Fi/LTE)、512GB/1TB(Wi-Fiのみ)128GB/256GB/512GB/1TB
ディスプレイ13型 PixelSense Flow/120Hz/2880x1920ドット(267ppi)12.3型 PixelSense/2736x1824ドット(267ppi)
タッチ/ペン10点マルチタッチ/Surface Slim Pen 2(別売)/SurfaceDial対応(別売)10点マルチタッチ/Surface Pen(別売)/SurfaceDial対応(別売)
カメラ(Windows Hello対応有無)1080pフロントカメラ(500万画素、Hello対応)/4K リアカメラ(1000万画素)1080pフロントカメラ(500万画素、Hello対応)/フルHDリアカメラ(800万画素)
USB Type-A1
USB Type-C(USB 3.0/3.1)1
USB Type-C(Thunderbolt)2(Thunderbolt 4)
HDMI
カードリーダMicroSDXC
イーサネット
オーディオ端子3.5mmヘッドフォン3.5mmヘッドフォン
マイクデュアルマイク(遠方界対応)デュアルマイク(遠方界対応)
その他ポートSurface Connect(1)、キーボード端子(1)Surface Connect(1)、キーボード端子(1)
Wi-FiWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
BluetoothBluetooth 5.1Bluetooth 5.0
WANSnapdragon X20 LTE Modem
対応LTEバンド1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/19/20/25/
26/28/29/30/38/39/40/41/66
指紋認証
センサー加速度計/ジャイロスコープ/磁力計/環境光センサー加速度計/ジャイロスコープ/磁力計/環境光センサー
TPMTPM 2.0TPM 2.0
キーボードSurface Pro Signature Keyboard(別売)Surface Pro Typecover Keyboard(別売)
ポインティングデバイスSurface Pro Signature Keyboard(別売)Surface Pro Typecover Keyboard(別売)
ACアダプタ60W(5W USB Type-A端子)60W(5W USB Type-A端子)
バッテリ(サイズ/駆動時間)50.2Wh/最大15時間50.2Wh/最大10.5時間
カラープラチナ/グラファイトプラチナ/グラファイト
サイズ(幅×奥行き×高さ)287×208×9.4mm292×201×8.5 mm
重量891g775g(i3/i5)、790g(i7)
OSWindows 11 Home/Pro、Windows 10 ProWindows 10 Home/Pro

 メモリもSurface Pro 7ではLPDDR4x-3733だったが、Surface Pro 8ではLPDDR4x-4266に動作クロック周波数が引き上げられており、メモリはより広帯域になっている。

 メモリは最小構成でも8GBとなっており、既にWindows 10/11ではWebブラウザ専用機として使うしかない4GBのモデルがなくなったことは歓迎していいし、メモリも最大で32GBのモデルを選べるようになったのも嬉しい変化だ。

 ストレージは128GB/256GB/512GB/1TBとなり、前述の通り背面にある小さな蓋を開けることでアクセスできる位置にM.2 2230のモジュールで実装されている。

 なお、ワイヤレス機能はWi-Fi 6/Bluetooth 5.1対応のWi-Fiモデルのほか、LTEモデルが用意されている。

 Surface Pro 7では、法人向けのSurface Pro 7+のみLTE対応になっていただけに、一般消費者向けでもLTEが選択できるようになったのは朗報だ。

 気になる性能だが、やはりSurface Pro 7(Core i7-1065G7搭載)と比較すると、CPUもGPUも大幅に上がっていることが分かる。Cinebench R23の結果ではマルチコアで約32%向上しており、通常CPUの世代が1つ上がった時の向上幅は10%程度なので、第10世代から第11世代への変更は効果が大きいことが分かる。

 グラフィックスに関しても同様で、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークをやってみたところ、Surface Pro 7では標準と軽量品質で「動作困難」と判定されるといった千台のスコアしか出ていないが、GPUが強化されているCore i7-1185G7を採用するSurface Pro 8では、標準品質が2,460で「重い」(ギリギリゲームできなくないレベルという意味)、軽量品質が3,308と「普通」(普通にゲームできるレベルという意味)となっており、軽量品質ではSurface Pro 7に比べて倍以上のスコアになっている。

 今までのSurface ProではAAAタイトルのゲームできなかったのが不満というユーザーも少なくなかったと思うが、Surface Pro 8では設定を軽量にすればなんとかプレイできるレベルまで性能が上がってきている。

強化されたCPU/GPU、新しい筐体/キーボード、紙のような書き心地のSurface Slim Pen 2など、魅力が詰まったフルモデルチェンジ

「誘導信号」に対応したSurface Slim Pen 2はSurface Pro 8のキラー機能になりそうだ

 以上のようにSurface Pro 8は筐体が一新され、Surface Pro Xと同じ底面積に変更されたことで、ディスプレイが12.3型/2,736×1,824ドットから13型/2,880×1,920ドットに大型高解像度化されており、さらにはリフレッシュレートの120Hz化により、ノートPCとしてはかなり充実したディスプレイになっている。

 また、Thunderbolt 4に対応したことで、Surface専用のドック経由だけでなく、一般的なThunderbolt 4のドック経由でも外部ディスプレイに高解像度出力できるようになった点もメリットとして上げられる。

 そしてCPUは第11世代Coreに強化されたことで性能が上がっているほか、最大で32GBが選べるようになったというメモリ周りの強化、さらにはストレージに蓋をあけるだけで簡単にアクセスできるようになったことで、自己責任ではあるが保証切れの後にストレージをより大容量(現時点では最大1TB)に交換することも可能だ。

 Surface Slim Pen 2の「誘導信号」は予想よりも遙かに紙に書く感覚を実現しており、正直良い意味で期待を裏切られた。筆者は仕事柄、市場で手に入れられるほぼすべての方式のデジタイザペンは試しているつもりだが、今回のSurface Pro 8とSurface Slim Pen 2の組み合わせは間違いなく「紙のような書き心地」という謳い文句の通り。現時点では最強のデジタイザペンであり、このためだけに買い換えたいぐらい、非常に優れた書き心地だった。

 名前がSurface Pro 8なのでマイナーチェンジだろうという印象を持たれてしまうのがもったいないぐらい、Surface Pro 8はフルモデルチェンジと言える完全に新しい製品だ。高性能なCPU、Thunderbolt 4対応の新しいインターフェイス、そして何よりもSurface Slim Pen 2との組み合わせによる素晴らしい紙のような書き心地、そうしたところを評価するのであれば、これからSurfaceを検討するユーザーや、Surface Pro 7以前を持っていたユーザーも、十分に購入する価値のある製品だ。