PC短評
Snapdragonで動く899gの軽量モバイルノート「Zenbook SORA」
2025年2月27日 06:27
2月5日に発売されたASUS「Zenbook SORA UX3407」シリーズ。Windows 11が動くArm系CPU「Snapdragon X」を採用するモバイルノートで、軽量、23時間の長時間駆動、かつCopilot+ PCとしてAIを活用できる。ここでは下位モデルの「Zenbook SORA UX3407QA」を試した。
Zenbook SORA UX3407QAはザブリスキーベージュとアイスランドグレーの2色展開。Microsoft 365 Basic 1年使用権の有無と合わせて4モデル展開されている。ここで試したのは「Zenbook SORA UX3407QA-PU16548BES」。ザブリスキーベージュのMicrosoft 365 Basic 1年使用権付きモデルで20万9,800円だ。
ちなみにMicrosoft 365 Basic 1年使用権なしの「Zenbook SORA UX3407QA-PU16548BE」なら17万9,800円。20万円以下の予算で導入できるCopilot+ PCというところも魅力に挙がる。
軽く、薄く、質感もよい。モバイル比率の高い方向きのスペックか
Zenbook SORA UX3407QAは、14型で310.7×213.9×13.4~15.9mmといったサイズ。14型モバイルノートとしてはよくあるサイズ感だ。特筆すべきは重量で、約899gと1kgを切る軽さ。普段1kg台前半の14型ノートPCに触れている中、1kgを切る製品に触れると軽さを実感できる。
デザインはよい意味で普通。カラーはザブリスキーベージュとアイスランドグレーが展開されており、今回の評価機は前者ザブリスキーベージュ。一般的にはブラック、ホワイト、シルバーあたりが定番のノートPC中にあって、ザブリスキーベージュは個性的な色だろう。女性に人気のくすみカラーとして、男性でもビジネス・カジュアルどちらでも使いやすいカラーと言えるだろう。
特徴的なのはその色味と質感。ザブリスキーベージュは単なるベージュ色ではなくクラフト紙のような複雑な見え方だ。ただしザラザラしているわけではなくなめらかな手触りだ。ここがASUSの独自素材「セラルミナム」(Ceraluminum)とのこと。
これはハイテクセラミックであり、軽量かつ耐久性を兼ね備えた革新的な素材と説明されており、先の899gを実現したキーワードでもあるようだ。そして表面に触れると明らかに冷たく、ここは樹脂製のものとは異なり金属素材寄りだと感じた。
インターフェイスは左側面にHDMI、USB4 2基(映像出力+USB PD)、マイク/ヘッドフォンジャック、右側面はUSB 3.2 Gen 2。あまり多くはないが、モバイルノートとしては十分といったところ。ディスプレイ/プロジェクタにHDMI、本体充電はUSB4のType-Cを1つ使うが、もう1ポート残っているし、周辺機器の接続がスムーズに行なえる。ほか、ワイヤレスではWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3に対応している。
ACアダプタは直方体のものが付属する。USB Type-Cケーブルは着脱可能。本体側はアダプタ式で日本のコンセントに対応する。プラグを折り畳めない構造ではあるが小型で持ち運びしやすい印象だ。
なお、スリム&コンパクトなボディだが、バッテリ駆動時間は公称23時間とほぼ1日に匹敵する。まあ、この23時間というのは国内で一般的なJEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)ではなく、製品サイトの情報を見ると「最大29時間(これはもう一つのZenbook SORA UX3407RAモデル)シリーズ映画の一気見も余裕」とあるので動画再生時のものと思われる。
実機において電源設定をバランス、ディスプレイ輝度を50%付近とした際のPCMark 10 Battery Test(Applications)は14時間17分だった。ApplicationsはMicrosoft 365を用いたバッテリ駆動時間ベンチマークなので、この14時間17分というのはリアルな使い方で1日の仕事を余裕でこなせるイメージでよい。
ディスプレイは解像度1,920×1,200ドットで16:10アスペクト比。リフレッシュレートが60Hzで非光沢仕様だ。ベゼルも狭く、本体のコンパクト化に貢献しているほか、上部ベゼルにはWindows Hello顔認証対応(IR)の207万画素Webカメラやアレイマイクも搭載している。
キーボードは84キー日本語配列。Copilotキーもある。バックライトも搭載しており、暗い状況下でもキーを視認しやすい。
Zenbook SORA UX3407QAのCPUはQualcomm「Snapdragon X X1-26-100」。Snapdragon Xシリーズでは最エントリーモデルになるが、CPUがOryon、GPUがAdreno、NPUがHexagonで構成されている。
CPUは8コア、30MBキャッシュ、最大3GHz(ブーストなし)、GPUは1.7TFLOPS、NPUは45TOPSといったスペックになる。Zenbook SORA UX3407にはもう一つ「Zenbook SORA UX3407RA」シリーズという上位機種もあり、そちらは「Snapdragon X Elite X1E-78-100」という上位CPUを搭載する。CPUコアは12コア、42MBキャッシュ、最大3.4GHz(ブーストなし)、GPUは3.8TFLOPS、NPUは45TOPSといったスペックだ。
メモリは16GB(LPDDR5X-8448)。現在のスタンダードな容量である。上位のZenbook SORA UX3407RAではここが32GBになる。
ストレージは512GB(PCI Express 4.0 x4)。上位のZenbook SORA UX3407RAでは1TBモデルも用意されている。
一応、Zenbook SORA UX3407RAとのスペック差を確認しておきたい。まずディスプレイがZenbook SORA UX3407RAではOLED(有機EL)となり(解像度、リフレッシュレートは同じ)、ワイヤレスがWi-Fi 7&Bluetooth 5.4へ、重量が980gに増え、バッテリ駆動時間が約29時間とより長い。
サンプルが少なく比較しづらいが、性能自体はメインストリームユーザーにとって十分なもの
最後にいくつかベンチマークテストの結果を紹介していこう。ACアダプタに接続した状態で、電源設定は「最適なパフォーマンス」といった条件で計測している。
PCMark 10のテストのうち、Arm系CPUでも計測できるApplicationsは11,575ポイント。シナリオ別ではWordが6,430、Excelが17,750、PowerPointが11,468、Edgeが13,717ポイントといったスコアだった。
Cinebench R23(Arm版)はMulti Coreが6,245pts、Single Coreが961pts。Single Coreで言えばEコアのみIntel N100と比べると100ポイント以上高い。またMulti CoreもIntel N100比では2倍強ある。まあ、8コアなので4コアのIntel N100と比べればおよそこのあたりといった値だ。
Cinebench 2024(Arm版)のスコアも参考として挙げると、Multi Coreが593pts、Single Coreが96ptsだった。
3Dグラフィックスは、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークのスコアを参考として紹介しよう。
1,920×1,200ドットの場合、画質設定を標準品質(ノートPC)とした条件で4,735ポイント(普通)、画質はそのまま解像度を1,280×768ドットにした条件で7102ポイント(やや快適)だった。さらに軽量なタイトルであれば60fpsを得ることも可能と思われるが、全体的に見てゲーム性能には期待せず、ホーム&ビジネス用途が適している製品と言えるだろう。もちろんArmネイティブのゲームが出れば変わるかもしれない。
モバイルにおける「ちょうどイイ」をお探しの方にぴったり
Zenbook SORA UX3407QAの総評だが、軽さ薄さのモビリティ、そしてバッテリ駆動時間といったモバイルノートの本質的なところではASUSがプレゼンする通り「ちょうどイイ」感がある。セラルミナム素材は感触もよい。カラーのザブリスキーベージュはPCであまり見かける色ではないが、ハデすぎることなく個性をアピールできそうだ。ここもちょうどイイ感じと言えるだろう。
パフォーマンスについては、ベンチマークスコアで見るとx86/x64 CPUの高性能モバイルノートと比べてしまうと若干物足りないかもしれないが、パワーユーザーでなければ不満を感じるほどではないだろう。Snapdragon X Eliteを搭載する上位モデルZenbook SORA UX3407RAもある。Zenbook SORA UX3407QAは一般的なメインストリームユーザーのモバイル用途なら十分にカバーできる。
また、「Windows 11が動くArm CPU」であるがゆえアプリの互換性を不安に思うかもしれない。ここについては、実際に日々運用する中で動かないアプリに出会う可能性も否定できない。
ただ、試した範囲で言えば秀丸(32bit版)は問題なく、Google日本語入力もOK、写真のリサイズをするフリーソフト「Ralpha」もOK……といった具合で大抵動いた。おそらくはコアなユーザーであるほど可能性が高くなる種のものだ。メジャーでオーソドックスなアプリを使う一般的なユーザーなら互換性が問題になる可能性は低いだろう。