PC短評

ハンドル付きでバッテリ内蔵の「HP ENVY Move All-in-One」は一体型PCの完成体だ

日本HP「HP ENVY Move All-in-One」

 日本HPはディスプレイ一体型PC「HP ENVY Move All-in-One」を10月18日に発表、11月中旬以降に販売開始する。価格は22万円。

 本製品は最厚部で実測38mm前後という薄型ボディに、80Whのリチウムイオンバッテリを内蔵。背面上部に備え付けられているキャリングハンドルで手軽に持ち運び、ACアダプタと接続することなくバッテリ駆動でどこでも利用可能。またHDMI入力端子を装備しているので、23.8型モバイルディスプレイとしても利用できる。今回は本製品の実機レビューをお届けしよう。

80Whバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大4時間

 HP ENVY Move All-in-Oneに用意されているのは1モデルのみ。OSはWindows 11 Home、CPUは第13世代(Raptor Lake)のCore i5-1335U(10コア/12スレッド、最大4.6GHz)を採用。メモリは16GB、ストレージは1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)を搭載している。

 ディスプレイは23.8型WQHD光沢IPS液晶(2,560×1,440ドット)を採用。ディスプレイ上部には約500万画素Webカメラ、デュアルマイク、ディスプレイ下部にはステレオスピーカーが内蔵されている。

 インターフェイスはUSB 3.1 Type-C、USB 3.1、HDMI入力を装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3をサポート。前述の通りHDMI入力端子を装備し、バッテリを内蔵しているので、ゲーム機など外部ディスプレイとしても利用可能だ。

 本体サイズは約552.3×366.6×148.6mm、重量は約4.1kg。6セル、80,018mWh(batteryreportで確認)のリチウムイオンバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大4時間と謳われている。

ディスプレイは23.8型WQHD光沢IPS液晶(2,560×1,440ドット、最大輝度300cd平方m、タッチ対応)
本体背面。キャリングハンドルは磁力で吸着されており、暴れることはない
背面ポケットにはキーボードを収納できる
右側面には電源ボタン、輝度調節ボタン、HDMI入力切り替えボタン、HDMI入力端子、電源端子。左側面にはボリュームボタン、USB 3.1 Type-C、USB 3.1を用意
ディスプレイ面は90~100度の間で角度を調整できる
本体上部にはWebカメラのプライバシーシャッタースイッチを配置
専用シェルパカバーの厚みは1.9~2mm。一定の保護性能を備えている
パッケージには、本体、シェルパカバー、ACアダプタ、電源ケーブル、単4形乾電池4本、説明書一式が同梱
ボディには再生アルミニウムや再生プラスチックが随所に使用されている
「HP 720タッチパッドBluetoothキーボード(日本語配列)」は単体では販売されていない
電池は単4形乾電池を4本使用する
キーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測2mm前後。「¥」キー以外の文字キーはすべて等幅に揃えられている。タッチパッドの面積は実測125×80mm
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測420g。ACアダプタのコード長は実測174cm、電源ケーブルの長さは実測101cm
ACアダプタの型番は「TPN-CA09」。仕様は入力100-240V~1.7A、出力19.5V/4.62A、容量90W
説明書は最近ではめずらしく多め。PC初心者には嬉しい配慮だ
【表1】「HP ENVY Move All-in-One 24」のスペック
製品名HP ENVY Move All-in-One 24
OSWindows 11 Home
CPUCore i5-1335U(Pコア×2+Eコア×8/12スレッド、最大4.6GHz、15W)
GPUIris Xe Graphics(1.25GHz)
メモリ16GB(LPDDR5-4800、オンボード)
ストレージ1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)
ディスプレイ23.8型WQHD IPS光沢液晶(2,560×1,440ドット、最大輝度300cd/平方m、タッチ対応)
ワイヤレス通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
インターフェイスUSB 3.1 Type-C、USB 3.1、HDMI入力
入力デバイスHP 720タッチパッドBluetoothキーボード(日本語配列)
WebカメラHP Wide Vision 5MP IRプライバシーカメラ(約500万画素)
サウンドステレオスピーカー(Audio by Bang & Olufsen)、デュアルマイク
バッテリリチウムイオンバッテリ(6セル、80,018mWh)
バッテリ駆動時間最大4時間
本体サイズ約552.3×366.6×148.6mm
重量約4.1kg
セキュリティ顔認証
同梱品シェルパカバー、ACアダプタ、電源ケーブル、説明書一式

【お詫びと訂正】初出時にディスプレイを「タッチ非対応」としておりましたが、正しくは「タッチ対応」となります。お詫びして訂正いたします。

持ち運びと設置のしやすさを考えた設計

 本製品最大の売りは持ち運びと設置のしやすさ。ボディは最厚部で実測38mm前後と薄く、上部にはキャリングハンドルが用意され、保護用の専用シェルパカバーが用意されている。基本的に屋内での持ち運びを想定した製品だが、大型のバックパックなどに入れれば、体力自慢の方なら外へ携帯することもできそうだ。

 そして特筆すべきが設置の容易さ。テーブル面に置くと、本体下部の黒い突起が押されることで、キックスタンドが自動的に開く。この独自のキックスタンド機構により、片手で容易に設置できるし、ボディの薄型化にも成功している。単純だがよくできた機構だ。

携帯時は専用シェルパカバーで保護。キャリングハンドルを握ってテーブルに置けば、キックスタンドが勝手に開いて自立してくれる

 23.8型WQHD IPS液晶は色域が公表されていない。カラーキャリブレーション機器で色域を実測したところ、sRGBカバー率は98.9%、sRGB比は100.1%、AdobeRGBカバー率は73.9%、AdobeRGB比は74.2%、DCI-P3カバー率は73.8%、DCI-P3比は73.8%となった。一般的な用途であれば実用上十分な色域だ。

最大輝度は300cd/平方m。鮮やかに画像を表示できる
sRGBカバー率は98.9%、sRGB比は100.1%
AdobeRGBカバー率は73.9%、AdobeRGB比は74.2%
DCI-P3カバー率は73.8%、DCI-P3比は73.8%

一般的な用途なら十分こなせる性能

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。比較対象機種としては、第12世代(Alder Lake)のCore i5-1245U(10コア/12スレッド、最大4.4GHz)を搭載する「FZ-G2E」を使用した。

 主要ベンチマークを実施したところ、HP ENVY Move All-in-OneはFZ-G2Eに対して、Cinebench R23のCPU(Multi Core)は149%相当、CPU(Single Core)は109%相当、3DMarkのTime Spyは116%相当、Fire Strikeは125%相当、Wild Lifeは126%相当、Night Raidは123%相当、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の「1,920×1,080ドット標準品質(ノートPC)」は138%相当、PCMark 10の総合スコアは110%相当のスコアを記録した。

 HP ENVY Move All-in-Oneは低消費電力向けのUプロセッサを搭載しているが、一般的な用途であれば実用上十分な処理性能を備えている。

HWiNFO64 Proで取得したシステムの概要
Cinebench R23
3DMark
CrystalDiskMark 8
PCMark 10
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 バッテリ内蔵一体型PCとして気になるスタミナ性能については、ディスプレイ輝度50%で「PCMark 10 Modern Office Battery Life」を実行したところ4時間43分というスコアを記録した。モバイル用途としてはやや物足りないが、自宅やオフィスで腰を落ち着けて作業できるだけのバッテリ駆動時間は備えている。

ディスプレイ輝度50%で「PCMark 10 Modern Office Battery Life」を実行した際のバッテリ駆動時間は4時間43分

モバイルPCとして使いたくなるほど携帯性に優れた一体型PCだ

 「HP ENVY Move All-in-One」の処理性能はUプロセッサ搭載PCなりのものだ。しかし本製品を実際に試用したところ、バッテリを内蔵することによって一体型PCの使い勝手が格段に向上することに気付かされた。

 基本的には自宅やオフィス内を持ち歩くことを想定した製品ではあるが、約4.1kgの重量の持ち運びに適応して、モバイルPCとして使いたいと思わせるほど携帯性に優れた一体型PCだ。