西川和久の不定期コラム

ASUS「VivoBook U38N」

~A10-4655M APUを搭載したタッチ対応13.3型フルHDノートPC

 ASUSは1月24日、AMD A10-4655M APUを搭載したタッチ対応の13.3型フルHDノートPC「VivoBook U38N」を発表、26日より出荷開始した。これまで記事にしたWindows 8搭載ノートPCはIntelプロセッサばかりだったので、その性能が気になるところ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。

メインストリーム・ノートPC向けAMD A10-4655Mを搭載

 同社のサイトによると、U3系ノートPCは、U37VCとU38Nの2種類。前者は非光沢14型/HD解像度でCore i5そしてGeForce GT 620Mを搭載した2スピンドルノートPCだ。仕様的にスタンダードノートPCと言える構成になっている。後者は今回ご紹介するモデルで、AMDのAPU、A10-4655Mを搭載。おそらくこのプロセッサを使ったノートPCは、国内初登場となる。

 A10シリーズの特徴は、Intel製CPUよりも高いグラフィックス性能に尽きる。実際の使用感が気のなるところ。主な仕様は以下の通り。

ASUS「VivoBook U38N」の仕様
プロセッサA10-4655M(4コア、2.0GHz/TurboCORE 2.8GHz、キャッシュ4MB、TDP 25W)
メモリ4GB(PC3-10600/2GBオンボード+2GB/最大6GB)スロット1(空きx0)
チップセットAMD A70M FCH
HDD500GB
OSWindows 8(64bit)
ディスプレイIPS式13.3型液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット、5点タッチ対応、mini-VGA×1(変換アダプター付属)、HDMI出力
グラフィックスプロセッサ内蔵Radeon HD 7620G
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0、USB Ethernetアダプタ
その他USB 3.0×3、92万画素Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力、キーボードバックライト付き
サイズ/重量325.6×227×5.5~18.6mm(幅×奥行き×高さ)/約1.55kg
バッテリ駆動時間最大約5時間(6セル)
実売価格84,800円前後

 プロセッサはAMD A10-4655M。4コアでクロックは2.0GHz。TurboCOREと呼ばれる自動オーバークロック時2.8GHzとなる。キャッシュは4MB、ULVタイプでTDPは25Wだ。A10はAシリーズの中でもA4/A6/A8の次で最上クラスに相当する。チップセットはAMD A70M FCH。メモリはオンボードで2GB、スロットで2GBを搭載し計4GB。スロット側を4GBにすれば最大6GBとなる。ストレージは500GBのHDD。OSは64bit版のWindows 8。

 液晶パネルは、光沢タイプIPS式のフルHD(1,920×1,080ドット)解像度だ。5点タッチにも対応。グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon HD 7620G。DirectX 11およびUVD 3に対応し、Intel HD Graphics 4000より高性能をうたっている。外部出力は、mini-VGA×1とHDMI出力。mini-VGA→ミニDsub-15pinアダプタが付属する。

 ネットワークは、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetooth 4.0も搭載。またUSB Ethernetアダプタが付属し、100BASE-TX/10BASE-Tでの有線LANも対応可能だ。

 その他のインターフェイスは、USB 3.0×3、92万画素Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力。キーボードバックライト付きとなる。個人的にキーボードバックライト付きはポイントが高い。

 サイズは325.6×227×5.5~18.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.55kg。6セルのバッテリを内蔵して最大約5時間駆動可能だ。実売価格は84,800円前後。

フロント。先端はかなり細いのが分かる。パネル中央上にWebカメラ
斜め後ろから。バッテリは内蔵のため後ろはシンプル。写真はゴールドっぽく見えるが実際はシルバー
裏面。メモリやストレージにアクセスする小さいパネルは無い
左側面。USB 3.0×1、SDカードスロット
キーボード。アイソレーションタイプで4段階のバックライト付き
右側面。電源入力、USB 3.0×2、HDMI出力、mini-VGA、音声入出力
キーピッチは実測で約19mm
重量は実測で1,571g
ACアダプタなど。サイズは約60×60×30mmで184g。付属のUSB→Ethernetアダプタとmini-VGA→ミニDsub-15pinアダプタ

 トップカバーはヘアライン仕上げのシルバー、パームレストも同様で、裏側のみ色の濃いシルバーが使われている。液晶パネルのフチはツヤありブラック。全体的にシャープなイメージで規格上Ultrabookにはならないが、Ultrabookの雰囲気そのもの。同社最近のお決まりデザインだ。

 液晶パネルは明るく色は鮮やか、コントラストも高く、IPS式なので視野角も広い。13.3型でフルHD解像度と言うこともありスカスカに感じる事も無く全体的に好印象。これだけ綺麗なパネルだと指紋が気になるのであまり触りたくは無いものの、5点タッチ対応でWindows 8のWindowsストアアプリもスムーズに操作できる。

 左サイドには、USB 3.0×1、SDカードスロット。右サイドには、電源入力、USB 3.0×2、HDMI出力、mini-VGA、音声入出力。裏側にはメモリやストレージにアクセスできる小さいパネルはない。アナログディスプレイ出力以外は標準サイズのコネクタなので、使用上特に困らないと思われる。ACアダプタはサイズ約60×60×30mmで184g。コンパクトなので持ち運びに便利だ。

 パームレストは十分広く、タッチパッドは約105×70mmと大きめのサイズ。物理的なボタンはなく、先端が左右に傾く。キーボードはアイソレーションタイプで4段階のバックライト付きになっている。暗めの場所でも快適にキー入力可能だ。中央を強く押すと全体的にたわむものの、十分許容範囲だろう。

 振動やノイズ、発熱に関しては十分コントロールされているようで、試用中、特に気になることは無かった。

 サウンドは「Bang & Olufsen ICEpower」の認定を受けているだけあって全体的にバランスが良く、クリアで抜けも良い。最大出力も十分確保されている。発色の良い液晶パネルと共にコンテンツを十分楽しむことができる。

全体的にまずまずバランスの取れた性能

 OSは64bit版のWindws 8。スタート画面には、ASUSの簡易ツールやXboxゲーム、Skype、Fresh Pintが追加されている。デスクトップはごみ箱のみとシンプルな構成だ。フルHD解像度と言うこともあり、アプリ画面も含め多くが1画面に収まり広々して見通しが良い。

 HDDは500GB/5,400rpm/キャッシュ8MBの「HTS545050A」が使われ、C:ドライブ約186.3GB、D:ドライブ約258.15GBの2パーティション。C:ドライブの空きは、空き約158GBとなる。個人的には中途半端なのでC:ドライブのみの1パーティションでもいいような気がする。

 Wi-FiモジュールはBroadcom製、付属のUSB→Ethernetアダプタは、ASIX AX88772B USB2.0 to Fast Etherrnet Adapterが使われていた。

スタート画面。ASUSアプリ以降がプリインストール。後ろが少し切れているが以降にアプリは無い
起動時のデスクトップ。ごみ箱のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは500GB/5,400rpm/キャッシュ8MBのHTS545050A。Wi-FiモジュールはBroadcom製、ASIX AX88772B USB2.0 to Fast Etherrnet Adapterは付属のUSB→Ethernetアダプタ
HDDのパーティション。C:ドライブ約186.3GB、D:ドライブ約258.15GBの2パーティション

 プリインストール済みのアプリケーションは、Windowsストアアプリは、ASUS Calculator、ASUS Converter、世界の時計、Fresh Paint、Microsoft Solitaire Collection、Skype、Wordamentなど。はじめの3つが同社オリジナルとなるが、Windowsストアアプリのサンプル的なもので、あまり実用性は無い。

アプリ画面
ASUS Calculator
ASUS Converter
世界の時計

 デスクトップアプリは、ASUS InstantOn、ASUS Live Update、ASUS Tutor、eManual、LifeFrame、Power4Gear Hybrid、Splendid Utility、USB Charger Plus、Kingsoft Office 2012など、同社お馴染みのツール系が中心だ。

AMD VISION Engine Control Center
ASUS LIVE UPDATE
ASUS USB Charger+
ASUS Splendid Video Enhancement Technology
ASUS LIFEFRAME
Kingsoft Office 2012

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.8。プロセッサ 6.7、メモリ 5.9、グラフィックス 5.8、ゲーム用グラフィックス 6.6、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は1036 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 29309、FPU 22147、MEM 18926、HDD 10275、GDI 5957、D2D 2042、OGL 12121。

 Core i5-3317U(2コア/4スレッド、1.7GHz/Turbo Boost 2.6GHz、キャッシュ3MB、TDP 17W)と比較すると、メモリが遅いのは気になるものの、CPU性能としては7~8割程度だろうか。OGLはさすがに上回っている。使用上、ストレージが素のHDDなので全体的にもたつく感じだ。できればSSDキャッシュでもいいので欲しいところか。

 BBenchはBattery Saving mode、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で14,875秒/4.1時間。仕様上、約5時間なのでほぼスペック通りだ。また液晶パネルのバックライトを最小にしても十分見え、実運用した場合もほぼ同レベルでバッテリ駆動可能だと思われる。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)。総合 5.8。プロセッサ 6.7、メモリ 5.9、グラフィックス 5.8、ゲーム用グラフィックス 6.6、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7。1036 PCMarks
BBench。Battery Saving mode、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で14,875秒/4.1時間
CrystalMark。ALU 29309、FPU 22147、MEM 18926、HDD 10275、GDI 5957、D2D 2042、OGL 12121

 以上のようにASUS「U38N」は、AMD A10-4655M APUと、タッチ対応IPS式13.3型液晶パネルを搭載したノートPCだ。ルックスも良くUltrabookの雰囲気そのもの。

 Intelプロセッサを搭載したノートPCと比較した場合、性能はザックリClover Trailの約2倍、Core i5-3317Uの7~8割程度。一方、3Dグラフィックスは結構速い。バッテリ駆動はCore i5並と言ったところ。価格はClover Trail機に近く、ノートPCとして考えた場合は、コストパフォーマンスも高い。価格優先で高性能&クールなノートPCを探しているユーザーの候補になりえる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/