西川和久の不定期コラム

デル「U2713H」

~IPSパネル27型2,560×1,440ドットのハイエンドディスプレイ

 デル株式会社は1月22日、独自のPremier Colorテクノロジーを採用したハイエンド向け27型液晶ディスプレイ「U2713H」を発売した。DVI-D/HDMI/DisplayPort対応、広い色域はもちろん、USB3.0 HUB機能などを備えた意欲的なモデルだ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。

27型2,560×1,440ドット、色補正済みで出荷されるハイエンドディスプレイ

 同社のサイトで24型以上のディスプレイを検索すると10件ヒットする(他社製を除く)。27型だと最安値は「Dell S2740L」で29,980円。ただしこちらの解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)だ。続いて「U2713HM」の49,980円。こちらは2,560x1,440ドット(WQHD)。その次が「U2711」の59,980円。解像度は同じく2,560×1,440ドットとなる。いずれも価格に応じて機能や性能が違い、多種多様なユーザーのニーズを満たしている。

 今回ご紹介するU2713Hは、位置付け的にはU2713HMの上位モデルで、U2711の後継機(現段階ではサイトにU2711もあるので併売のようだが)に相当する。27型AH(Advanced High Performance)-IPSパネルを採用した解像度2,560x1,440ドットの液晶ディスプレイだ。主な仕様は以下の通り。

デル「U2713H」の仕様
最大解像度2,560×1,440ドット/ドットピッチ0.231mm
スクリーンサイズ27型(非光沢/AH-IPS/LEDバックライト)
視野角上下/左右とも178度
応答速度6ms(中間色)
輝度350cd/平方m
コントラスト比1,000:1(最大200万:1)
色域Adobe RGBカバー率99%、sRGBカバー率100%および120%(CIE 1976)
インターフェイスデュアルリンクDVI-D、DisplayPort 1.2、Mini DisplayPort 1.2、HDMI、USB 3.0ダウンストリームポート×4、DisplayPort出力、音声出力、デル製サウンドバー用DC電源コネクタ(AX510)、SDカードリーダ
最大消費電力標準60W/最大130W/待機時0.5W未満
チルトあり
スイベルあり
ピボット機能あり
サイズ/重量639.3×200.5×423.4~538.4mm(幅×奥行き×高さ)/6.3kg
価格69,980円

 パネルの仕様は先に書いた通りであるが、加えて非光沢となっている。光沢パネルは映画などコンテンツを観る時には良好であるものの、特に作業時などは映り込みが気になる場合もある。そのため、筆者は作業用ディスプレイは全て非光沢のタイプを購入している。

 視野角はIPSらしく上下/左右とも178度。応答速度は6ms(中間色)。輝度は最大350cd/平方m、最小50cd/平方m。コントラスト比は1,000:1(最大200万:1)。色域はAdobe RGBカバー率99%、sRGBカバー率100%および120%(CIE 1976)。色補正済みで出荷されるため、設置して直ぐ使用可能だ。

 同社独自のPremier Colorテクノロジーを採用し、一貫性のある正確な色調、業界標準の色彩、カスタムカラー調整、優れた色域と深みのある色彩などの特徴を持つとしている。プレミアムパネル保証にも対応し、1ドットでもドット抜けがあれば無償交換の対象となる。

 入力系インターフェイスは、デュアルリンクDVI-D、DisplayPort 1.2、Mini DisplayPort 1.2、HDMI、出力系インターフェイスは、DisplayPort、音声、デル製サウンドバー用DC電源コネクタ(AX510)というように、4系統の映像入力と1系統の出力、および音声出力、外部スピーカー用電源出力を備えている。加えてUSB 3.0ダウンストリームポート×4のHubを搭載。最大消費電力は標準60W、最大130W、待機時0.5W未満となる。

 サイズは639.3×200.5×423.4~538.4mmと、高さはスタンド込みの状態で115mmの調整が可能。チルト/スイベル/ピボットにも対応している。重量6.3kg。価格は69,980円と、先に挙げた同社の27型の中では一番高価なモデルとなる。

横設置正面。縁が狭く非常にスッキリしたデザインだ。扉の写真からも分かるように少々角度が付いても色は変わらない
縦設置正面。ピボットにも対応
チルト/スイベル最大。この位置が各最大。チルトの調整幅はあまり無いが、スイベルは結構回る
高さ最小。マイナス側のチルトはこれが最大
高さ最大。高さは115mmの調整が可能
左側面のインターフェイス。SDカードリーダ、USB 3.0×2。右サイドには何も無い
スタンド。この状態でパッケージに梱包されている
裏側のインターフェイス。電源入力、デル製サウンドバー用DC電源コネクタ(AX510)、音声出力、DisplayPort、Mini DisplayPort、DVI-D、HDMI、DisplayPort出力、USB 3.0アップリンク、USB 3.0×2
スタンドの取り付け。ディスプレイによってはスタンドの取り付け取り外しが大変なものもあるのだが、本製品は手前のボタンを押すだけで簡単に外れる
ケーブルマネージメント。スタンドの中央に長細い穴があり、そこへケーブルを通すとスッキリまとまる
付属品など。USB 3.0ケーブル、DVIケーブル、Display/MiniDisplayケーブル、電源ケーブル、インストールCDと簡易説明書
色補正完了証明書。補正済みで出荷されるため、設置後即使用可能だ
背面から見た感じもシンプル

 27型なのでそれなりに大きく重いが、デザインも含め作りは非常にシンプルだ。筆者も1台同社のディスプレイを使っているが、縁も非光沢で指紋などが目立たず、ルックスがあっさりしているので飽きもこない。

 スタンドはしっかりした作りでガタツキも無く、上下の調整、チルト/スイベルもスムーズだ。取り付け/取り外しもボタンを押すだけとワンタッチ。ケーブルマネージメント用の穴が開いているのでケーブル類をまとめるとスッキリする。ただピボットは、そのまま回すと高さが足りず、位置を最大にした上で、チルトして回さないと、フチが机に当たってしまう。

 左側面にはSDカードリーダ、USB 3.0×2。右サイドには何も無い。なお、このSDカードリーダに関しては同社のサイトにも書かれていないが、機能することを確認した。

 背面の下側には各種コネクタが集中しており、電源入力、デル製サウンドバー用DC電源コネクタ(AX510)、音声出力、DisplayPort、Mini DisplayPort、DVI-D、HDMI、DisplayPort出力、USB 3.0アップリンク、USB 3.0×2と並んでいる。DisplayPort出力があるのはポイントが高く、加えてUSB 3.0が左サイドに2ポート、リアに2ポートあるのは何かと使いやすそうだ。

 映りに関してはさすがにハイエンドだけあり、所有するEIZO CG245W(キャリブレーションセンサー内蔵で補正済み)と比較すると、若干派手気味だがなかなかのもの。価格だけのことはある。

 OSDは、右側下のフチの部分に静電容量式のボタンが4つ並び、使える部分だけが光る操作形なので分かりやすい。

 OSDの機能としては、Preset Modes(Standard/Multimedia/Movie/Game/Paper/Color Temperature/Color Space/Custom Color)、Brightness/Contrast、Input Source。ここまでは簡易モード(パーソナライズで各ボタンの機能を変更できる)で、Menuを選択するとフルモードのメニューが表示される。

 フルモードでは、Brightness/Contrast、Input Source、Color Settings(Input Color Format/Gamma/Preset Modes/Reset Color Settings)、Display Settings(Aspect Ratio/Sharpness/Noize Reduction/Dynamic Contrast/Uniformity Compensation/Smart Video Enhance/DisplayPort 1.2/Display Info/Reset Display Settings)、PIP Settings、Other Settings(Language/Menu Transparency/Menu Timer/Menu Lock/Button Sound/Auto Rotate/Energy Smart/Menu Location/Power Save Audio/DDC.CI/LCD Conditioning/Factry Reset)、Personalizeとなる。

 なお、GammaはPC(2.2)かMac(1.8)、Color SpaceはAdobeRGB/sRGB/CAL1/CAL2、Color Temperatureは5,000/5,700/6,500/7,500/9,300/10,000K、Custom ColorはGain/Offset/Hue/Saturationの調整を、GainとOffsetはRGB、HueとSaturationはRGBCMYで個別に変更可能だ。

 以下OSDの画面を掲載したので参考にして欲しい(もちろん日本語にも対応している。Other Settings/Languageで変更可能)。

Brightness/Contrast
Input Source
Color Settings
Display Settings
PIP Settings
Other Settings
Personalize
OSD Home Menu
Preset Modes
Color Temperature
Color Space
Custom Color
Brightness/Contrast
Input Source

Dell Display ManagerでPCからコントロール可能

 付属のソフトウェアCDには2種類のソフトウェアが入っている。1つは「Dell Display Manager」、もう1つは「Dell UltraSharp Color Calibration Solution」。面白いのはセットアップの第1階層はHTMLで書かれ、IEなどを使い表示し、簡単な説明、マニュアルのPDFを見たり、先のプログラムをセットアップできるように工夫されている点だ。

 今回は、ThinkPad X201iにドッキングステーションを接続、DisplayPortから付属のDisplayPort/Mini DisplayPortケーブルを使い、本体のMini DisplayPortへ接続した。コントロールパネル/ディスプレイ/画面解像度の画面キャプチャからも分かるように、最大解像度の2,560×1,440ドットでの試用だ。

コントロールパネル/ディスプレイ/画面解像度
セットアップ画面1
セットアップ画面2

 「Dell Display Manager」は、主にOSDで行なう操作をPC上で行なえるソフトウェア。起動すると常駐し、通知領域からアクセスできる。起動するとまず簡易パネルが表示され、明るさ/コントラスト、カラー設定など、簡単な変更が可能になっている。一番下の「Dell Display Managerを開く」をクリックすると、フルバージョンが起動する。

 フルバージョンのタブは基本/自動モード/Easy Arrange/オプションの4つに別れ、基本ではプリセットモードの選択と明るさ/コントラスト、自動モードではアプリケーション毎にプリセットモードを変更する指定、Easy Arrangeはウィンドの自動配置設定、オプションはPowerNapとスマート動画エンハンスの設定となる。

 先に掲載したように、OSDは基本的に操作しやすい内容になっているものの、PC側で変更する方がより便利だ。なお、この操作に関してはディスプレイ側とUSBを接続する必要は無い。

Dell Display Manager
Dell Display Manager
Dell Display Manager/基本
Dell Display Manager/自動モード
Dell Display Manager/Easy Arrange
Dell Display Manager/オプション

 「Dell UltraSharp Color Calibration Solution」は、高度なキャリブレーションを行なえる環境だ。セットアップ画面にあるように、測色技術のソリューションを提供するX-Riteの技術が使われている。ドライバが組み込まれることもあり、セットアップ後再起動が必要となる。

 セットアップが終了すると、ショートカットがディスクトップに追加され、通知領域にディスプレイのアイコンが常駐する。赤くなっているのはキャリブレーションが取れていない状態を示している。

 キャリブレーションを行なうには、ディスプレイとPCをUSBケーブルで接続した上に、「i1Display Pro」という測定器もUSB接続しなければならない。残念ながら筆者は所有していないため、テストはここまでとなった。パネルの内容を見る限り、カラースペース/輝度を目標値に指定し、2つあるプリセットへ保存できるようだ。

Dell UltraSharp Color Calibration Solution/セットアップ1
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/セットアップ2
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/セットアップ3
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/セットアップ4
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/セットアップ5
Dell UltraSharp Color Calibration Solution
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/プリセットの設定を選択
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/i1Display Proの接続
Dell UltraSharp Color Calibration Solution/カラースペース

 ディスプレイ側の音声出力は、PC接続時(DVI-Dを除く)「インテルディスプレイオーディオ」から出力され、PC側の出力を切替えることによりサウンドを鳴らすことが可能だ。同社のサウンドバーを付ければ電源も含めスマートに収まるが、音声出力から汎用的なアクティブスピーカーなどを接続すれば、余分なケーブルがPCから出ない分スッキリする。

 最後の画面キャプチャは、2,560×1,440ドットでのWindows 8のWindowsストアアプリを表示したところだ。この画面が27型のサイズに大きく映し出され大迫力となる。

インテルディスプレイオーディオ
2,560×1,440ドットでのWindows 8

 以上のようにU2713Hは、IPSパネルの27型2,560×1,440ドットで、DVI-D/HDMI/DisplayPort対応、USB 3.0 Hubを搭載したハイエンドモデルだ。Adobe RGBカバー率99%のもともと広い色域に加え、色補正済みで出荷。さらにi1Display Proと併用すれば高度なキャリブレーションを行なうこともできる。

 一般的な液晶ディスプレイと比較すれば高価であるものの、内容を考えればむしろ安い。ワンランク上のディスプレイを望んでいるユーザーにお勧めできる逸品だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/