西川和久の不定期コラム

単独デバイスとして登場したトラックパッド!
アップル「Magic Trackpad」



 トラックパッドと言えば、MacBookなど基本的にノートタイプのMacの入力用として一般的なデバイスだ。今回発売されたアップルの「Magic Trackpad」は、そのトラックパッドを独立した周辺機として商品化したもので、iMacなどデスクトップ機でも使えるようになった。早速入手したので、使用感などをレポートしたい。

●巨大なトラックパッド

 筆者は昔からノートPCのポインティングデバイスは、IBM/LenovoのTrackPoint派で、現在主流のタッチパッドは、どのメーカーのものを使ってもイマイチ使いづらかった。そのような状況の中、唯一「これは何とかなるかな……。」と思ったのは、MacBook Proのトラックパッドだ。マルチタッチに対応し、指の滑り、そしてポインタなどの動きも非常にスムーズ。ThinkPad X31の後釜のを決める際は、結果的にThinkPad X201iを購入したが、候補にはMacBook Proもあがっていた程だ。

 そのトラックパッドが単独の入力デバイス「Magic Trackpad」として7月28日、Intel Core i3を搭載した、新型iMacと共に発表された。簡単な仕様は以下の通り。

□Magic Trackpad仕様
対応PCBluetooth対応Macコンピュータ
対応OSMac OS X Snow Leopard v10.6.4以降(および最新のソフトウェアアップデート)、
Windows XP、Vista SP2、7(各32bit版)、Windows 7 64bit版
※WindowsはいずれもBoot Campで作動しているWindows
電源単3電池2本(同梱)
サイズ/重量128×130×19mm(幅×奥行き×高さ)/187g(サイズ/重量共実測、バッテリ込み)
価格6,800円(アップルストア調べ)

 対応OSは、Mac OS X 10.6.4以降、Boot Campで作動しているWindows XP/Vista SP2/7の各32bit版とWindows 7の64bit版だ。Windowsに関しては一般的なので問題無いと思われるが、Mac OS Xに関しては10.4(Tiger)、10.5(Leopard)には非対応なので注意が必要だ。ショップで購入する時も「OSは10.6.4からの対応ですが大丈夫ですか? 」と確認が入った。ただまだ10.5ユーザーも多く(特にPowerPCは10.5までのサポート)、10.5の頃でもMacBookのトラックパッドは対応していたので、できれば1つ前のOS程度は対応して欲しいところだ。

 パッケージには単3形乾電池が2本入っていた。従って購入後直ぐに使用できる。また同時に「Apple Battery Charger」も発売された。チャージャーと単3形のリチャーブルバッテリ6本がセットで2,800円。あれば試しに欲しかったものの、残念ながら未入荷で購入できなかった。

 この“6本”には意味があり、「Apple Wireless Keyboard」、「Apple Magic Mouse」、そしてこの「Apple Magic Trackpad」、全て単3バッテリ2本が必要。つまり3つ揃えると6本となる。もしくは同じポインティングデバイスが2組あっても仕方ないので、キーボードと合わせて計4本。残り2本は予備と言ったところだろう。

 価格の6,800円は、「Wireless Keyboard」、「Magic Mouse」も同じ値段となっている(ワイヤードのキーボードは4,800円)。Bluetoothタイプは全て値段を合わせているのだろうか? 3つ並べて見るとどれも同じ値段なのは(価値観的に)ちょっと微妙な感じだ。

上。写真からはわからないが薄いガラスが全面に貼られている正面(左右に傾きボタンの替わりになる)。微妙に左側に傾いている。マウスの左ボタンに相当する操作となる(右も同様)底面。このボタン操作、実は下の左右にある滑り止めの足がボタンになっている
左側面。後ろの[-]部分を回して外し、単3バッテリ2本を入れる右側面。後ろのボタンが電源スイッチになっているキーボードと並べたところ。素材も傾斜も同じなのでご覧のようにぴったりマッチする

 MacBook Proに搭載しているトラックパッドも結構面積は広いが、この「Magic Trackpad」は、128×130×19mm(幅×奥行き×高さ)と、かなり大きい。「Wireless Keyboard」と奥行きと高さ傾斜も同じで、幅が約40%ほどある(MacBook Proに搭載されているものより約80%広い)。筆者の小さめの手のひらがスッポリ入るサイズだ。

 また奥行き/高さ/傾斜が「Wireless Keyboard」と同じなので、横に並べるとぴったりマッチ。素材も同じなので違和感も無く、この辺りは同社ならではの美学だろう。個人的には横に並べず、少し角度を付けて(ハの字型)置くほうが操作しやすかった。

 パッドの部分はガラス製で指のタッチは滑らかだ。ただ若干ザラザラした感じもあり、iPadやiPhoneのツルツルしているのとは少し異なっている。マウスのクリックに相当するジャスチャーは指1本でタップする一般的なものだが、加えて実はこのパネル自体が左右に少し沈む(傾く)仕掛けになっていて物理的な左右のボタンの代わりになる。どちらを使うかはユーザーの好みで選択できる。

ダウンロードページ。サポートページで「Magic Trackpad」をキーに検索すればすぐに見つかる対応OSはMac OS Xは10.6.4以降。試しに10.5.8にインストールしたところやはり駄目だったパッケージに書かれているジャスチャー。ご覧のように計12種類ある。どれも直感的なので初めてでも短時間で慣れる

 パッケージにはソフトウェアは一切含まれず、ドライバは同社のサポートページから必要に応じてダウンロードする(もしくはソフトウェア・アップデート)。執筆時点では「Magic Trackpad および Multi-Touch アップデート 1.0」、「Apple Magic Trackpad Update 1.0 for Windows 64 bit」、「Apple Magic Trackpad Update 1.0 for Windows 32 bit」の3種類のドライバがある。

 Mac OS Xに関しては試しに10.5.8(Leopard)にインストールしてみたところ、「このアップデートには、Mac OS X 10.6.4が必要です。」と表示され先に進めなかった。

 パッケージの裏には、1~4本指までのジャスチャーが書かれている。機能のON/OFFなどは、システム環境設定で変更は可能だが、これを見るだけで何が出来るのか直ぐに把握できる。

●使用感

 ドライバをインストールすると、システム環境設定のマウスの横に「トラックパッド」の項目が増えている。ここで「軌道の速さ」/「ダブルクリックの間隔」/「スクロールの速さ」、1本指~4本指のジャスチャーのON/OFFを設定可能だ。通常デフォルトで問題無いと思うが、好みに応じてコントロールできる。また、電池残量もここで確認できる。

 既にMacBook Proなどで十分こなれているだけにドライバの完成度は高い。いろいろ試したところ、筆者はデフォルトのままで使っている。

一旦汎用のポインティングデバイスとして認識させ、その後ソフトウェア・アップデートでドライバを組み込む方法もあるシステム環境設定、マウスの横にトラックパッドが追加されたここで好みに応じてカスタマイズ可能だ。各項目にカーソルを合わすと、右側に該当するジャスチャーが動画で説明されるので分かりやすい

 数時間使ってみて、2本指での慣性付きスクロール、3本指で左右にスワイプするとWebブラウザの戻る/進むになるのはもちろん、意外と便利だったのが4本指で上下にスワイプするとExposeすることだった。デスクトップ上に展開しているウィンドを平面に重ならないように並べ選択する機能なのだが、キーボードのショートカットより覚えてしまえば直感的でそれこそワンタッチにウィンドを選択できる。いずれにしてもWebを見る時など、一部の指に力が入ることも無く、リラックスした雰囲気で操作できる。

 iPadやiPhoneでは2本指まで、そしてタッチパネル式のコントロールなので、直接目標をタップするか、マウスポインタを意識して指を滑らせタップするかの違いなどがあり、日頃iPadやiPhoneを使っている筆者としてはちょっと違和感はあるものの、少し触れば慣れて同等以上に快適に操作可能だ。

 もちろん、基本的にMacBook Proなどに搭載しているトラックパッドと操作的は同じ。MacBookのユーザーであればその感覚そのままで、iMacなどデスクトップ機を操作できる。考えてみれば、この手のデバイスがこれまで純正で無かったのは不思議なほどだ。

 マウスと比較して、少し劣る部分があるとすれば、細かい作業が必要な時だろう。ドット単位に近い動きをする操作に関してはマウスに軍配が上がる。ただ、これはトラックパッドの固有の話ではなく、指を使ったタッチ式の入力デバイス全般の特性だ。

●Windowsでは……。

 Mac OS X上では快適に使える「Magic Trackpad」だが、現在、PC上で動くWindows用のドライバは正式には公開されていない。Boot Campで作動しているWindowsのみの対象となる。筆者はBoot Campを使っていないのでWindows上で試すことが出来なかったが、同社の資料によるとWindows環境ではかなり機能制限があり、単に普通のタッチパッドとなるようだ。ここの記述によると、

・1本指 同等
・2本指 水平スクロールはXP以外OK、垂直スクロールOK、回転NG、ピンチ/拡大縮小NG、画面の拡大縮小NG、セカンダリータップOK
・3本指 非対応
・4本指 非対応
About Apple Magic Trackpad Update 1.0 for Windowsより

 このように、Windowsの機能から来る制限もあるだろうが、残念ながら結構骨抜きの状態になってしまう。特に3本指でスワイプしてのWebブラウザで戻る/進むに対応していないのは痛い。

 同様に「Magic Mouse」も現在、Boot Camp上のWindowsのみの対応で、PC上のWindows環境に対してはドライバを提供していない。どちらも物としては良くできているだけに、できればドライバを供給して欲しいところだ。


 以上のように、「Magic Trackpad」は、これまでMacBook ProなどノートタイプのMacのみ対象となっていたマルチタッチ対応のトラックパッドを、独立した入力デバイスとして商品化した面白い周辺機として仕上がっている。ドット単位の細かい動きが必要な作業には向いていないものの、通常のオペレーションは快適に操作できる。

 Windows環境はBoot Campのみなのは残念な部分であるが、価格も手頃なので、気になる人にはお勧めの逸品だ。