西川和久の不定期コラム

7万円台と互角で5万円台!コスパが光るRyzen 5搭載ミニPC「NucBox M8」

NucBox M8

 GMKtecは、Ryzen 5 PRO 6650Hを搭載し、107×111×63mmでコンパクトなミニPCを販売中だ。5万円台で512GBと1TBモデルがある中、前者が編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 5 PRO 6650H搭載、107×111×63mmでコンパクト、5万円台のミニPC

 11月の頭に7万円台のミニPCをご紹介したが、今回はさらに下の5万円台を実現したミニPC、GMKtec「NucBox M8」の登場となる。

 プロセッサはRyzen 5 PRO 6650H、メモリ16GB(オンボードで増設不可)、ストレージは512GBもしくは1TBといったスペック。ヘビーユーザーにはもの足りないかもしれないが、ライトユーザーや事務処理用途であれば特に問題ないレベルだ。価格も安いのでセカンドマシンとして衝動買いできる……というのもあるだろう。主な仕様は以下の通り。

GMKtec「NucBox M8」の仕様
プロセッサRyzen 5 PRO 6650H(6コア12スレッド、クロック最大 4.5GHz、キャッシュ L2: 3MB/L3: 16MB、TDP 45W)
メモリ16GB LPDDR5-6400MT/s(オンボード)
ストレージ512GB(PCIe 3.0 M.2 2280 SSD) / M.2 2280 PCIe4 ×4 x2(1つ空き)
OSWindows 11 Pro(24H2)
グラフィックスRadeon 660M(6コア)/HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、Type-C
ネットワーク2.5GbE ×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイス前面: USB 3.2 Gen 2 2基、OCuLink、USB4(フル機能)、音声入出力
背面: USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、2.5Gigabit Ethernet 2基
サイズ/重量107×111×63mm、590g
価格5万2,999円(1TBモデルは5万8,999円)

 プロセッサはZen 3+アーキテクチャのRyzen 5 PRO 6650H。6コア12スレッドでクロック最大4.5GHz。キャッシュはL2: 3MB、L3: 16MB。TDPは45W。今年はNPU搭載のAI系か、Ryzenのハイエンドが多かったので本連載としては珍しいミドルレンジSKUとなる。

 メモリは16GB LPDDR5-6400。オンボードなので増設できない。プロセッサ自体は最大64GBまで対応するのだが、本機に関しては32GB/64GB構成モデルは用意されていない。

 ストレージはPCIe 3.0 M.2 2280 SSDの512GB。M.2スロット自体はM.2 2280 PCIe4 ×4に対応。2スロットあるので空き1。

 OSはWindows 11 Pro。24H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用した(25H2にはアップグレードしていない)。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵、Radeon 660M(6コア)。外部出力用にHDMI 2.0、DisplayPort 1.4、USB4を装備する。USB4はUSB PD 3.0 100W入力に対応しているので、モニター側が対応していれば、映像と給電を1本のType-Cケーブルで済ますことが可能だ。

 ネットワークは2.5GbE 2基、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、 USB 3.2 Gen 2 2基、OCuLink、USB4、音声入出力、3.5mmジャック、背面にUSB 3.2 Gen 2、USB 2.0、HDMI 2.0、DisplayPort 1.4。

 サイズ107×111×63mm、重量590g。価格は5万2,999円(1TBモデルは5万8,999円)。昨今PCがかなり値上がりしている中、1TBモデルでも6万円を切るというのは、かなり安い。

 ただ惜しいのは32GB(加えて64GB)モデルが用意されていないこと。OCuLinkが使えるので外部に強力なGPUを接続可能にもかかわらず、16GBだとゲーム系は大丈夫かもしれないが、多分AI関連はあまり動かない。せめて32GBモデルはほしかったところか。

前面はUSB4、OCuLink、USB 3.2 Gen 2、音声入出力、電源ボタン
背面はUSB 3.2 Gen 2、USB 2.0、HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、2.5Gigabit Ethernet 2基(シールの後ろ)、電源入力
底面とiPhone 16 Pro。EVO-X1と同じ筐体。かなりコンパクトなのが分かる
付属品のACアダプタ(サイズは約130×55×33mm、重量410g、出力20V/5A/100W)、HDMIケーブル
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で483g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでType-Cケーブル1本で接続可能。ただUSB4が前面にあるので場合によっては邪魔になる

 筐体は以前ご紹介したEVO-X1と色違いで同じ。サイズ107×111×63mm、重量は実測で483gと、とてもコンパクトだ。コの字型の上下パネルもなかなか雰囲気がある。

 前面は、USB4、OCuLink、USB 3.2 Gen 2、音声入出力、電源ボタン。背面はUSB 3.2 Gen 2、USB 2.0、HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、2.5Gigabit Ethernet 2基(シールの後ろ)、電源入力を配置。底面には四隅にゴム足と中央にファン用のスリットがある。

 付属品はACアダプタ(サイズは約130×55×33mm、重量410g、出力20V/5A/100W)、HDMIケーブル。本体が小型軽量なだけにACアダプタがその割に大きく重いのが目立ってしまう。

 本機は、USB4があるため、いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続はType-Cケーブル1本でOK。BIOSへのアクセスは起動時[DEL]キー。

 内部へのアクセスは、裏のゴム足自体がネジになっているので外すと、内側にもう1枚パネルがあり、固定しているネジ4本外せば、M.2 SSDが見える。M.2スロットが1つ空きなので増設可能だ。

裏の足がネジになっているのでそのまま回すと外側のフレームが外れる
次に内部パネル4つのネジを外せばM.2スロットにアクセスできる

 ノイズや発熱は使用した範囲ではまったく気にならなかった。ファンの音も筐体に耳を付けないと聞こえないレベルだ。

 なお、電源プロファイルが、サイレントモード(28W)、バランスモード(35W)、パフォーマンスモード(40W)と、3つ用意されているが、後述するベンチマークテストも含めバランスモードを使用している。

Core i7-13620Hと比較してもいい勝負!

 初期起動時、プリインストールなどのカスタマイズは特になし。先にスペックを知ってるのでいつものハイエンドより少し遅いかな……と、思わないでもないものの、ストレスなく普通に操作可能だ。逆にこれが5万円台なら十分(以上)価値はあるだろう。

 ストレージは、512GBのPCIe 3.0 M.2 2280 SSD「AirDisk 512GB」。検索してもメーカー仕様は見つからなかったが、CrystalDiskMarkでシーケンシャルリード3,560.977MB/s、シーケンシャルライト2519.511MB/sと出た。PCIe 4.0接続タイプよりは遅いが、PCIe 3.0なのでこんなところか。C:ドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられ空き438GB。

 2.5GbEは「Realtek Gaming 2.5GbE」が2つ、Wi-Fiは「RZ616 Wi-Fi 6E」、Bluetoothも同様に「RZ616 Bluetooth」となる。

初期起動時のデスクトップはWindows Pro 24H2標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージは、512GBのPCIe 3.0 M.2 2280 SSD「AirDisk 512GB」。2.5GbEは「Realtek Gaming 2.5GbE」が2つ、Wi-Fiは「RZ616 Wi-Fi 6E」、Bluetoothも同様に「RZ616 Bluetooth」
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられている
AMD Software: Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 ちょっと前に紹介した7万円台のミニPC、Beelink「EQi13 Pro」は、Core i7-13620Hを搭載。比較して本機のほうが勝っている項目に*印を付けた。

 これを見る限り、メモリがLPDDR5XかDDR4-3200か、もしくはiGPUの差が出るところが勝っている。ストレージはPCIe 3.0 M.2 2280 SSDなのでさすがに少し遅めだ。

 価格は5万8,999円(1TB/16GB)対7万6,900円(1TB/32GB)なので、価格差1万7,901円。結構違う。この点をどう考えるかは用途次第といったところか。

PCMark 10 v2.2.2734
PCMark 105,497*
Essentials9,342
App Start-up Score11,697
Video Conferencing Score8,022*
Web Browsing Score8,690
Productivity7,724*
Spreadsheets Score9,395*
Writing Score6,351
Digital Content Creation6,248
Photo Editing Score8,829
Rendering and Visualization Score6,321*
Video Editing Score4,372
3DMark v2.32.8454
Time Spy1,746*
Fire Strike Ultra1,163*
Fire Strike Extreme2,288*
Fire Strike4,573*
Sky Diver15,458*
Cloud Gate32,940*
Ice Storm Extreme131,101*
Ice Storm171,922*
Cinebench R23
CPU8,984
CPU(Single Core)1,444
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3560.977 MB/s [   3396.0 IOPS] <  2354.00 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2224.292 MB/s [   2121.3 IOPS] <   471.05 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   384.060 MB/s [  93764.6 IOPS] <   330.40 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    52.490 MB/s [  12814.9 IOPS] <    77.82 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  2519.511 MB/s [   2402.8 IOPS] <  3320.40 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2308.196 MB/s [   2201.3 IOPS] <   453.78 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   221.071 MB/s [  53972.4 IOPS] <   592.38 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   110.435 MB/s [  26961.7 IOPS] <    36.89 us>

EVO-X1との2ショット。筐体は同じだが色が異なる

 以上のようにGMKtec「NucBox M8」は、Ryzen 5 PRO 6650H/16GB/512GB(1TB)を搭載したコンパクトなミニPCだ。円安に加え最近メモリ価格の高騰などが原因で値上げするPCが多い中、5万円台で購入可能はある意味貴重な存在。

 メモリがオンボードで16GB固定が少し痛いものの、ベンチマークテスト的には十分ミドルレンジ。ライトユーザー、業務用やセカンドマシンを考えているユーザーに使ってほしい1台だ。