西川和久の不定期コラム
Core Ultra 9と大容量メモリでLLMも動く。M.2スロット3基搭載のミニPC「GMKtec EVO-T1」
2025年8月19日 06:00
Core Ultra 9 285H/64GB搭載、M.2 2280 x3と少し大きめのミニPC!
先月、Core Ultra 9 285Hを搭載したミニPC、GEEKOM「IT15」をご紹介した。サイズは0.46L(117×112×46mm)。ハイパフォーマンスの割に小型といった特徴を持つ1台だ。
これ対してGMKtec「EVO-T1」は、同じプロセッサを搭載しながら154×151×73.6mmと40mm近く大きくなってる。プロセッサが同じなので性能は変わらないと思われるが、違いはミニPCとしては大きなファンが2つ(照明あり)、M.2 2280スロットが3つ(内1つはSSD装着済み)。大きくなった分、余裕ができ、このような構成が可能になった……といった感じだろうか。主な仕様は以下の通り。
| GMKtec「EVO-T1」の仕様 | |
|---|---|
| プロセッサ | Core Ultra 9 285H(Pコア6基, Eコア8基, LPEコア2基/16コア16スレッド、クロック最大5.4GHz、キャッシュ24MB、TDP 45W、NPU最大13TOPS) |
| メモリ | 64GB(32GB DDR5-5600、SO0DIMM 2基、最大128GB/6400対応) |
| ストレージ | M.2 2280 SSD 1TB(PCIe x4.0/NVMe対応 x3/2つ空き) |
| OS | Windows 11 Pro(24H2) |
| グラフィックス | Intel Arc 140T GPU(8コア)/HDMI 2.1、DisplayPort、Type-C 2基 |
| ネットワーク | 2.5GbE 2基、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 |
| インターフェイス | USB 3.2 Gen 2 3基、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD/DisplayPort Alt Mode対応)、USB4、USB 2.0 2基、3.5mm音声入出力2基、OCuLink |
| サイズ/重量 | 154×151×73.6mm(幅×奥行き×高さ)、910g |
| その他 | 32B DeepSeekローカルAIモデル内蔵 |
| 価格 | 14万6,999円(64GB+1TB、クーポン利用)、16万0,399円(64GB+2TB、クーポン利用)、17万3,999円(96GB+2TB、クーポン利用) ※Amazon調べ |
プロセッサはArrow Lake、Core Ultra 9 285H。Pコア6基/Eコア8基/LPEコア2基の16コア16スレッド。クロック最大5.4GHz、キャッシュ24MB、TDPは45W。13TOPSだがNPUも内包する。
メモリは32GB SO-DIMM/DDR5-5600 2基の計64GB。ミニPCでは16GB~32GBが多い中、64GB標準搭載は特にAI系を使う時にありがたい。Amazonでは96GBモデルも用意されているほか、最大容量は128GBだ。
ストレージはM.2 2280(PCIe x4.0/NVMe対応)スロットが3つあり、内1つにSSD 1TBが装着済み。+2スロットは用途によっては嬉しい構成ではないだろうか。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel Arc 140T GPU(8コア)。外部出力用にHDMI 2.1、DisplayPort、Type-C 2基を装備する。
OSはWindows 11 Pro。24H2だったので、この範囲でWindows Updateを適用し評価した。
ネットワークは2.5GbE 2基、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB 3.2 Gen 2 3基、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD/DisplayPort Alt Mode対応)、USB4、USB 2.0 2基、3.5mm音声入出力2基、OCuLink。前面と背面どちらにも3.5mm音声入出力があり、OCuLink対応で外部dGPU接続可能が特徴となる。
面白いのは、32bだがDeepSeekが標準で入っていること。後述するAIPCアプリでチャットが可能だ。
サイズ154×151×73.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量910g。価格は1TBモデルで18万9,999円、2TBモデルで19万8,999円(Amazon調べ)。なお同社のサイトにはベアボーンもあり、価格は999.99ドル(15万円ほど)となる。
筐体はゴールドの部分が金属製、黒い部分がプラスチック製。iPhone 16 Proとの比較写真からも分かるように一般的なミニPCと比較して少し大きめ。重量も実測で944gある。ただ大きいとは言え、机などどこかに置いてしまえば、やはりミニPC。特に大きさが気になることもないだろう。
前面は電源ボタン、USB 3.2 Gen 2 3基、USB 3.2 Gen 2 Type-C、3.5mm音声入出力。背面は3.5mm音声入出力、HDMI、USB4、DisplayPort、OCuLink、USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、2.5GbE 2基を配置。
気になるのは2.5GbEポートの上にある“最初はLANケーブルを接続しないでください。~大規模なアップデートが始まり、デスクトップ画面に進むまでに時間がかかる…”と書かれたシールだ。
これに関しては筆者も毎回レビュー用のPCを初期起動する時に困ったおり、初期起動時にWindows Update、もしくはデスクトップをとりあえず出してからWindows Update。どちらでも同じような感じだが、とにかく時間がかかる。今回は後者のパターンだが、Windows Updateを全部適用するのに計3時間半もかかっている。これがもし前者のパターンだとユーザーはトラブルか?と思いメーカーに問い合わせが入るため、このようなシールを貼ったと思われる。
筆者から言わせてもらえば、これは完全に欠陥OSだ。macOS、Ubuntu、iOS/iPadOSやAndroid、どれにしてもOSアップデートに(PC構成やOSリリースタイミングなどで程度はある)、こんな時間はかからないだろう。Microsoftは猛省すべきではないだろうか。
話戻って、付属品はACアダプタ(サイズ約78×68×25mm、重量339g、出力19V/7.8A)、HDMIケーブル、VESAマウンタ。
BIOSの表示は、起動時[DEL]キーではなく[ESC]キーなので要注意!Main→Power Mode SelectはBalance(デフォルト)、Quiet、Performanceと3モード設定可能。後述しているベンチマークテストはBalanceでの結果となる。なお、扉の写真右奥にボタンがあり[FAN-MODE]と書かれている。一見、このPower Mode Selectと連動しているのか?と思ってしまうが、全く無関係で、ファンの照明パターンがいろいろ変わる、ある意味ゲーミングPC的なものとなる。
内部へのアクセスは筐体が大きい分、非常に簡単。まず金属部分にある足を外す。これはねじ止めしているだけなので回せば外れる。次に左右側面にネジが2つずつあるのでこれも外せばOK。写真から分かるようにミニPCとしては大きいファンが2つ付いている。
内部はSO-DIMMスロットに32GB 2基。そしてM.2 2280スロット3つの内1つに1TBが乗っている。これまでいろいろなミニPCを触ってきたがM.2 2280スロット3つは初だと思う。
まず発熱だが、ベンチマークテストなどCPUに負荷をかけても全くと言って良いほど熱を持たなかった。これはミニPCとしては大きめのファン2つ、そして、内部に余裕があるためだと思われる。
そしてファンが2つある割には静か。耳を近づけてもほとんど聞こえないレベルに抑えられている。
以上のように、ミニPCで小さい筐体へいろいろ詰め込み過ぎで何かと面倒な機種より、本機の様に少し大きめで余裕を持たした方がいいのでは?と思う出来栄えだった。大きいと言ってもiPhone 16 Proの高さと同程度。机の上に置いてしまえば大差ない。
DeepSeek 32b標準搭載!
初期起動時、デスクトップに「AIPC」アプリのアイコンがある。Windows 11 Pro標準まんまでないPCは久々だ。構成が構成だけあって何をしても快適。ストレスは全く感じない。
1TB SSDはCrucial製「CT1000P3PSSD8」。仕様によると、シーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト3,600MB/s。CrystalDiskMarkのスコアは後者が高めに出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割当てられ空き753GB。ん?と思った人は正解。1TBの割に空き容量が少ない。
これは、DeepSeek 32bやその関連が入っているためであり、不要な場合は、\users\default\AppData\Roaming\AIPC\enhanced-32bにあるモデルや、そのほかのコンポーネントを削除すれば空きが増える。
2.5GbEはRealtek Gammin 2.5GbE Family Controller 2基、Wi-FiはIntel Wi-Fi6 AX201、BluetoothもIntel製だ。またタスクマネージャにNPUの項目が増えている。
本機はこの手のミニPCとしては珍しく「AIPC」というアプリが1つ入っている。これはプリインストールのDeepSeek 32bを使うチャットアプリだ。アカウントを作ってログインすると、ほかのもモデルも使えるようだが、今回はDeepSeek 32bのみを試用した。
画面キャプチャからも分かるように、GPUを使用するようだ。共有メモリ32GB中22GBを使用する。この状態でメインメモリの64GBは約半分になっている。なるほど、ほかのアプリなどを併用する場合に32GBを残す格好となっているわけだ。速度は何も表示していないので分からないが、10~15tok/sは出ている感じでチャットであれば十分実用レベルにある。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23。冒頭に書いた同じプロセッサを搭載したGEEKOM「IT15」と比較するとPCMark 10は全般的に少しマイナス。逆に3DMarkは少しプラスという感じだった。いずれにしてもハイパフォーマンスには変わりなく、メインPCとして十分使えるスコアだ。
| PCMark 10 v2.2.2737 | |
|---|---|
| PCMark 10 Score | 7,697 |
| Essentials | 10,934 |
| App Start-up Score | 14,061 |
| Video Conferencing Score | 8,707 |
| Web Browsing Score | 10,678 |
| Productivity | 9,282 |
| Spreadsheets Score | 11,962 |
| Writing Score | 7,203 |
| Digital Content Creation | 12,193 |
| Photo Editing Score | 19,829 |
| Rendering and Visualization Score | 11,046 |
| Video Editting Score | 8,277 |
| 3DMark v2.31.8385 | |
|---|---|
| Time Spy | 4,379 |
| Fire Strike Ultra | 2,128 |
| Fire Strike Extreme | 3,864 |
| Fire Strike | 8,193 |
| Sky Diver | 32,982 |
| Cloud Gate | 41,884 |
| Ice Storm Extreme | 200,327 |
| Ice Storm | 237,156 |
| Cinebench R23 | |
|---|---|
| CPU | 17,524 |
| CPU(Single Core) | 2,109 |
[Read]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 5102.416 MB/s [ 4866.0 IOPS] < 1640.17 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2589.259 MB/s [ 2469.3 IOPS] < 404.68 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 843.528 MB/s [ 205939.5 IOPS] < 150.41 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 74.966 MB/s [ 18302.2 IOPS] < 54.53 us>
[Write]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 4588.732 MB/s [ 4376.2 IOPS] < 1821.28 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 4513.825 MB/s [ 4304.7 IOPS] < 232.05 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 769.513 MB/s [ 187869.4 IOPS] < 170.06 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 248.494 MB/s [ 60667.5 IOPS] < 16.39 us>
CPUとメモリだけでgpt-oss-20bがどこまで動くか?確認
さてDeepSeek 32bが標準搭載だったので、では!ということでOpenAIがオープンウェイトでリリースしたgpt-oss-20bがどの程度動くか?確認してみたい。使用アプリは「LM Studio」。モデルの検索で「gpt-oss-20b」とするといくつか出てくるがopenaiのものを使っている。これだと入力枠の下にあるReasoning Effort(=考える度合い)でLow / Medium / Highが選択可能になる。
モデルロード時のコンテキスト長は確認できた範囲で最大30,000までは設定可能。速度は内容にもよるが15tok/s前後出る。つまり(個人差もあるだろうが)実用レベルだ。
gpt-oss-20bは、筆者の知る限りこのパラメータサイズだとかなり優秀なモデルだ。たとえばMCPを使いデータベースに接続して自然言語で問い合わせできる。
これまでこれが意外と難しく、「このテーブルのこのカラムとこのカラムを結合して……」と、SQL文に近い形であれば簡単なのだが、「顧客データから都道府県別平均年齢と性別一覧」となると、どのテーブルに何が入っているかを把握した上で集計する必要があり、それなりにLLMが賢くないとできないのだが、gpt-oss-20bはやってのける。強力なGPUなしでこの速度で動くのだから良い時代になったものだ。
さて、本機64GBの構成のまま、実はgpt-oss-120bもギリギリ動くのだが、これは別の機会にまとめてご紹介したい。
以上のようにGMKtec「EVO-T1」は、Core Ultra 9 285H/64GB/1TBを搭載した少し大きめのミニPCだ。大きい分、M.2 2280スロットが3つ、熱を持ちにくいなどのメリットがある。
特に気になる部分もなく、Core Ultra 9 285Hを搭載し、いろいろな意味で少し余裕のあるミニPCを探しているユーザーに使ってほしい1台と言えよう。
































![[Amazon限定ブランド]CCL い・ろ・は・すラベルレス 2LPET ×8本 ミネラルウォーター 無味 製品画像:1位](https://m.media-amazon.com/images/I/41h0MHfvhkL._SL160_.jpg)








