西川和久の不定期コラム

Core i9搭載で電源内蔵。しかもdGPUが接続できる変態ミニPC!「Beelink GTi13 Ultra」

 ハイエンドなモバイルプロセッサを搭載しつつ電源ユニットも内蔵。加えてドッキングステーションでdGPUをPCIe x8接続可能……と、今回のBeelinkのミニPC「GTi13 Ultra」はかなり個性的。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

Core i9-13900HKを搭載し電源内蔵のミニPC!

 同社のハイエンドミニPCシリーズは大きく分けてGTシリーズとSRシリーズの2つ。見ると前者は主にIntelプロセッサ、後者はAMDプロセッサ(一部Intel)となっている。また前者は専用のドッキングステーションに対応する。

 今回ご紹介するのはCore i9-13900HK搭載のGTi13 Ultra。他社の最新型だと同レベルのプロセッサ搭載モデルもあるだろうが、本機の特徴は「電源内蔵」、「PCIe x8が使えるドッキングステーション」対応。加えて細かいところだと「ちゃんとしたスピーカー内蔵」も挙げられる。

 筆者にとって、PCIe x8が使えるのはかなりポイントが高い。というのも、OCuLinkはPCIe x4接続。対してこちらは倍と、dGPU接続時に帯域的に有利になる。加えて見た目もカッコいい(笑)。主な仕様は以下の通り。

Beelink「GTi13 Ultra」の仕様
プロセッサCore i9-13900HK(Pコア6基+Eコア8基/14コア20スレッド、クロック最大 5.4GHz、キャッシュ 24MB、TDP 45W)
メモリ32GB(SO-DIMM DDR5 5,200MHz)/2スロット/最大96GB
ストレージ1TB(M.2 2280 PCle4.0 x4)、2スロット(1つ空き)
OSWindows 11 Pro(24H2)
グラフィックスIntel Iris Xe Graphics/HDMI、DisplayPort、Type-C
ネットワーク2.5GbE 2基、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.2 Gen 1 5基、USB Type-C、USB4.0、3.5mmジャック 2基、SDカードスロット、スピーカー、マイク、指紋センサー、145W電源内蔵
サイズ/重量158×158×55.8mm、1,290g
価格11万9,000円(Amazon調べ)

 プロセッサはRaptor Lakeのコードネームで知られる第13世代Core i9-13900HK。Pコア6基+Eコア8基の14コア20スレッド、クロックは最大5.4GHz。キャッシュ24MBでTDP 45Wと、モバイル用としては強力なものだ。

 メモリはSO-DIMM DDR5 5,200MHzの16GB×2で32GB。最大96GBまで対応する。ストレージはM.2 2280 PCle4.0 x4の1TB。M.2スロットは2つあり1つ空き。

 OSはWindows 11 Pro。24H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel Iris Xe Graphics。外部出力用としてHDMI、DisplayPort、Type-C(USB4)を装備。

 ネットワークは、2.5GbE 2基、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB 3.2 Gen 1 5基、USB Type-C、USB4.0、3.5mmジャック 2基、SDカードスロット、スピーカー、マイク、指紋センサー。スピーカーは掲載の写真からも分かる様に、Beep用でなく、それなりの物を採用している。また冒頭に書いたが145W電源を内蔵。ACアダプタレスはやはり便利だ。

 サイズは158×158×55.8mm、重量1,290g。今回の構成(ドッキングステーションなし)で価格は11万9,000円(Amazon調べ)。10万円を少し超えているが、この円安なので仕方ないところか。

 上位モデルのCore UItra 9 185H搭載「GTi14 Ultra AI PC」も用意されており、こちらは16万6,999円(Amazon調べ)。約5.5万円ほど高くなる。

前面。USB 3.2 Gen 1、SDカードスロット、USB Type-C、3.5mmジャック、電源ボタン(指紋センサー兼)。上部4つの穴はマイク用
背面。ACプラグ、USB4、3.5mmジャック、HDMI、DisplayPort、USB 3.2 Gen 1、2.5GbE、USB 3.2 Gen 1、2.5GbE、USB 3.2 Gen 1 2基
裏面とiPhone 16 Pro。iPhone 16 Proより少し大きいが、電源内蔵と考えるとコンパクト。前後に1本バーの足、メッシュ構造でスピーカーの音が出る様になっている
付属品。USB Type-CケーブルとACケーブル
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で1,318g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでUSB Type-Cケーブル1本で接続可能

 筐体は裏以外シルバー(ダークグレイとの間)で金属製。なかなかカッコいい。電源内蔵と言うこともあり、重量は実測で1,318gとミニPCとしては重くまた大き目。ただノートPCと考えれば普通。加えてACアダプタがないので、本体だけ持ち運んで、モニタとマウス、一般的なメガネ型プラグの電源ケーブルさえばどこでもこのパワーを利用できる。

 前面は、USB 3.2 Gen 1、SDカードスロット、Type-C、3.5mmジャック、電源ボタン(指紋センサー兼)。上部4つの穴はマイク用。背面は、ACプラグ、USB4、3.5mmジャック、HDMI、DisplayPort、USB 3.2 Gen 1、2.5GbE、USB 3.2 Gen 1、2.5GbE、USB 3.2 Gen 1 2基を配置。裏は、前後に1本バーの足、メッシュ構造でスピーカーの音が出るようになっている。

 いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、背面にUSB4があるので、USB Type-Cケーブル1本で接続可能。付属品はUSB Type-CケーブルとACケーブルのみ。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。

 さて内部へのアクセスだが、ここ最近扱ったミニPCの中では難易度が高い。ざっくり裏パネル、内部パネル、そして電源ユニット、電源ユニット/スピーカー設置パネル……これらを外さないとメモリやストレージにアクセスできない。

 手順は掲載した写真をご覧いただきたいが、やっかいなのが本体とスピーカーを接続しているフラットケーブルのコネクタ。このコネクタ、先に周囲の黒い部分を持ち上げロックを解除、ケーブルを外す。戻す時はケーブルを入れ黒い部分を下げてロックする必要がある。場所に余裕があれば簡単な作業だが、場所が狭いこともあり、なかなかうまく行かない。戻す時は全部戻さず、仮組みで音が出るか確認する方がいいだろう(ダメな時にまたバラすのが面倒)。

四隅の丸いゴムの下にネジがあるので4本すべて外すと簡単に裏蓋が開く。内部パネルも4つのネジで外れる
ここからが大変。写真、電源ユニット左上の銀色のネジ2本、ユニットを固定するシール、ユニット右側にあるネジ2本、ユニットの下にネジ3本、スピーカー中央上にある六角柱……これらをすべて外す
やっとSO-DIMMとM.2 SSDにご対面。この時、スピーカーと本体を接続するフラットケーブルコネクタも外す(戻すのが結構大変)。メモリとSSDはCrucial製。手前にPCIe x16スロットがある(ドッキングステーション用)

 内部を見ると結構大きいスピーカーを2つ搭載しているのが分かる。パワーはあり、低域もそこそこ出るものの、構造的に机に反射した音になるため、高域が弱いのは仕方ないところか。

 ノイズや発熱は、ベンチマークテストなどCPUに負荷をかけると少しあるものの、同社の製品ページに“32dB Noise Level”とあるようにかなり静か。また熱も大したことはない。なかなかうまく処理されている。

Beelink「Multi-Functional EX Docking Station」

 本機はこのクラスのプロセッサで電源内蔵というだけでも個性的だが、さらにこのドッキングステーションを使い、dGPUをPCIe x8接続、USB 2.0、M.2 228 SSD(オプション/ただしPCIe x1接続)、Wi-Fi(オプション)に対応。Wi-Fiは本体側に内蔵済み、SSDはPCIe x1接続なので実質使えない……と考えると主な目的はdGPU接続となる。

Beelink「Multi-Functional EX Docking Station」の仕様

  • 600W電源内蔵
  • PCIe x8スロット
  • SSDスロット/M.2 2280 PCle 4.0 x1
  • Wi-Fiモジュール対応
  • 外部アンテナポート
  • 価格:159ドル

 電源は600W。この容量だと、dGPU用の8ピン補助電源が4つ使えるということになる(1つ150W)。ただしドッキングステーションから出ているコネクタは8ピン2つ。普通に考えれば150W 2基の300Wだ。残り300Wはどこへ?の話はまたの機会にして(笑)、とりあえず手持ちの8ピンを1つ使うGeForce RTX 4060Ti(16GB)を接続してみたい。手順は掲載した写真を参考にして欲しいが、工作レベルで簡単だ。

右/前。左手前に電源ボタン。PCIe x16スロット(ただしx8動作)、USB 2.0、GPU用電源コネクタ 2基
左/後ろ。左手前Wi-Fi用アンテナコネクタ、AC入力、ファン用電源コネクタ
付属品。ACケーブル、GPU用ケーブルx2、本体固定金具とGPU固定用ブラケット、Wi-Fi用サブ基板(Wi-Fiモジュールは別途用意)、各種ネジ
裏を開けたところ。右側にM.2 2280 1つ搭載可能(ただしPCle 4.0 x1)。黒いカバーの下に600W電源ユニット
本体を差し込む。本体の裏蓋を外し、内部のPCIe x16へ
本体を固定。内側がゴム
GPUを支えるブラケットをつける。ブラケット上は2スロット分のネジ穴。ただし下の凹みは3スロット分ある
GPUを取り付ける。GeForce RTX 4060Ti(16GB)は2スロット分占有
GPUと電源ケーブルを接続して完成!GeForce RTX 4060Ti(16GB)なのでGPU用の8pinコネクタを1つ使用
無事GeForce RTX 4060Ti(16GB)認識
動作OK。3DMark / Time Spy完走

 ご覧のように無事RTX 4060Ti(16GB)を認識、3DMark / Time Spyも完走した。iGPUが2,147に対して13,284と6倍以上の差をつけている。注意点としてはドッキングステーション側の電源を先にオンすること(オフは逆に本体から)。

 このクラスのGPUを搭載する場合、一般的には最低でもmicroATXマザーボードを使い、それなりのケースと電源を用意する。当然設置はまぁまぁの空間が必要。

 ところが扉の写真からも分かるように、GTi13 Ultra+Multi-Functional EX Docking Stationだと非常にコンパクト。加えてGPUが縦になるので重みを支えるスペーサーなども必要なく、重みでコネクタが壊れる心配も不要。これらのメリットは結構大きい。

 唯一の欠点は、PCIe x16がPCIe x8になってしまうことだろうか。ただこの点はGPUを何に使うかにもよるだろう。

必要十分(以上)のパワー!

 初期起動時、プリインストールのアプリや壁紙の変更などは特になし。構成が構成だけにサクサク動き快適。モバイル用とは言えさすがCore i9と言ったところ。

 M.2 2280 1TB SSDはCrucial「CT1000P3PSSD8」。仕様によると、Sequential Read 5,000MB/s、Sequential Write 3,600MB/s。CrystalDiskMarkのスコアはこれより高めに出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられ空き849GB。

 2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V 2基、Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntelと、オールIntel製だ。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro(24H2)標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 1TB SSDはCrucial「CT1000P3PSSD8」。2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V 2基、Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。さすがCore i9といいスコアでモバイル用プロセッサとしてはなかなか良いのではないだろうか。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.2.2704
PCMark 10 Score6,180
Essentials10,815
App Start-up Score14,811
Video Conferencing Score8,463
Web Browsing Score10,093
Productivity7,264
Spreadsheets Score7,326
Writing Score7,204
Digital Content Creation8,154
Photo Editing Score12,667
Rendering and Visualization Score5,931
Video Editting Score7,218
3DMark v2.31.8372
Time Spy2,147
Fire Strike Ultra1,515
Fire Strike Extreme2,980
Fire Strike6,124
Sky Diver20,101
Cloud Gate32,269
Ice Storm Extreme153,832
Ice Storm200,287
Cinebench R23
CPU16,459
CPU(Single Core)1,748
CrystalDiskMark 8.0.5ベンチマーク結果
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  5170.960 MB/s [   4931.4 IOPS] <  1619.73 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2690.539 MB/s [   2565.9 IOPS] <   389.34 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   692.919 MB/s [ 169169.7 IOPS] <   183.10 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    76.315 MB/s [  18631.6 IOPS] <    53.53 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  4746.681 MB/s [   4526.8 IOPS] <  1764.33 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  4407.808 MB/s [   4203.6 IOPS] <   237.63 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   411.223 MB/s [ 100396.2 IOPS] <   308.67 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   315.151 MB/s [  76941.2 IOPS] <    12.92 us>

 以上のようにBeelink「GTi13 Ultra」は、Core i9-13900HKを搭載しつつ電源内蔵。これだけでも十分魅力的なのに、加えてBeelink「Multi-Functional EX Docking Station」によりdGPUをPCIe x8接続できる。コンパクトなゲーミングPCやAI PCが欲しいユーザーにピッタリな1台。

 早速AI PC化する、という話は次回のお楽しみ!?つづく……(笑)。