PC短評

14コアCore i9を12cm四方に詰め込んだミニPC「GEEKOM NUC MINI IT13」

GEEKOM NUC MINI IT13

 ますます盛り上がりを見せるミニPC市場。GEEKOMの「GEEKOM NUC MINI IT13」もそのうちの1台だ。平置きした12cm CDケースよりも小さいフットプリントに第13世代Coreを凝縮したこの製品、メーカーよりサンプル提供があったため簡単に紹介していきたい。

 今やミニPC自体は珍しくないのだが、117×112×49.2mmというIntelの初代NUCを彷彿とさせる小ささで、IntelのハイエンドモバイルCPUを搭載するのは実は少ない。市場全体がRyzenに傾いているからだ。たとえば第13世代Core搭載に限定してみると、一番ラインナップが豊富なMINISFORUMでも「Venus NPB7/6」しか用意がなく、最上位はCore i7-13700H/メモリ32GB/SSD 512GBという仕様だ。

 一方本製品は、モバイル向けの最上位であるCore i9-13900Hが選択できるほか、メモリは32GB、SSDは最大2TBまで搭載可能。OSも標準でWindows 11 Proだ。今回送られてきたサンプルもこの最大構成であった。ハイエンドなIntelミニPCがほしいユーザーにとって、GEEKOM NUC MINI IT13は有力な選択肢となる。

 まずは外観から見ていこう。本製品は底面と左右側面のメッシュ部分を除くほとんどの部分はプラスチックのようだが、メタリックブルーの塗装でチープさを全く感じさせない。外装の内側は金属製フレームとなっているため、剛性も十分だ。ゴム足はリング状でネジが中央にあるため、ゴム足を外すことなく内部にアクセスできるため、メンテナンス性も良い。マイナス点を挙げるとしたら、大きい120WのACアダプタだろうか。

製品パッケージ
付属品はシンプル。ACアダプタがちょっと大きめだ
天板はメーカーロゴだけとシンプルなデザイン
本体底面のインターフェイス

 内部は、PCI Express 4.0対応M.2 2280スロットにSSDがあらかじめ装着されているが、SATA 6Gbps対応のM.2 2242スロット、および2.5インチSSD/HDDシャドウベイがあり、ストレージの拡張にも応えられる。家庭内NASやファイルサーバーやメディアサーバーとしてもうってつけだろう。

 インターフェイスは、背面にUSB4×2、USB 3.1、USB 2.0、SDカードスロット、2.5Gigabit Ethernet、HDMI 2.0×2を搭載。左側面にはSDカードスロット、右側面にはケンジントンロックポートがある。そして前面はUSB 3.1×2、3.5mm音声入出力といった具合。このほかWi-Fi 6EおよびBluetooth 5.2も搭載する。ストレージの拡張と合わせて、不満を覚えることはまずない。筆者的には、デジタルカメラで撮影した写真の取り込みに便利なSDカードスロットはありがたい限りだ。

内部へのアクセスは容易。SATAのフラットケーブルも長めに取られており、開けようとしたら無理なテンションがかかってしまうことはない
SATAドライブを増設できるほか、M.2 2242対応M.2スロット(SATA専用)もある。メモリはDDR4-3200で交換は可能
本体前面のインターフェイス
本体背面のインターフェイス
本体左側面にはSDカードスロットを装備
本体右側面はケンジントンロックのみ

 性能に関して「PCMark 10」、「3DMark」、「Cinebench R23」でテストしてみたが、同価格帯のRyzen 7 7840HSやRyzen 9 7940HS搭載機に遅れを取る結果となった。第13世代CoreはGPU周りが弱いので、それが露呈する結果となった。ただ、CPUコアが多いのにもかかわらず、マルチコアを計測するCinebench R23でも、たとえば以前テストしたRyzen 9 7940HS搭載のMINISFORUMの「UM790 Pro」よりスコアが低くなっている。

 本機は負荷がかかると、最初の28秒はPL2の80Wで動作するが、それ以降は35Wに限定されている。一方でUM790 Proなどは60Wで動作するので、消費電力の差を考慮すると当然の結果とも言える。とはいえ、ミニPCとしてみれば十二分すぎるほどの性能であり、一般的なオフィスやWebブラウジングなどにおいては快適そのものだった。

PCMark 10のスコアは6,224。GPUが若干足を引っ張っている印象だが、一般オフィス用途に不足はない
3DMark Time Spyのスコは1,928
3DMark Fire Strikeのスコアは5,362
3DMark Night Raidのスコアは19,879
3DMark Wild Lifeのスコアは13,297
Cinebench R23のスコアはシングルコア1,729、マルチ13,290となっている。同じCPUを搭載した製品は高いTDPで動作するモデルも少なくないので絶対値としては低いほうだが、PL1 35Wの枠で見れば一般的なスコアだ
ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマークは「最高品質」が4,007、【標準品質(ノートPC)」プリセットが7,132と、高い方ではないが、十分にゲームをプレイできる水準にある

 こうした性能面よりもやや気になったのは騒音。本機は無負荷の際、室温20℃の環境でCPU温度は40℃を示すのだが、「サー」という風切り音が続く。さほど耳障りではないのが幸いなのだが、近年の他社製品や同クラスの製品と比較するとうるさいのは間違いなく、静かな環境では気になるかもしれない。

 一応、BIOS(起動時にESCキーで入れる)にはPL1を28W、PL2を40Wに制限する「Quite」モードがあるのだが、設定してみてもあまり変化がなかった(アイドル時は結局回転数は変わらないため)。思い出せば、過去にレビューした「Beelink GTR5」でも初期の頃はアイドル時でうるさかったものの、BIOSの更新で静かになったパターンがあったので、本機にもそうしたチューニングを施した後のBIOS更新がほしいところだ。

 同価格帯に限定してみると性能面などで競合に見劣るところもあるのだが、筐体の小ささやCore i9-13900H/メモリ32GB/ストレージ2TBというハイエンド構成など見どころも多い。ハイエンドな作業環境がほしいユーザーにはぜひ検討に加えてもらえたい1台だ。