西川和久の不定期コラム

第11世代Core搭載で、多くのオプションを用意した12.3型着脱式2in1「VersaPro タイプVS<VS-9>」

VersaPro タイプVS<VS-9>

 NECは2月に第11世代Core i5を搭載した12.3型のタブレット、「VersaPro タイプVS<VS-9>」を発表、現在販売中だ。編集部から本体に加え、オプションのキーボード、USB Type-C拡張ドックなど一式届いたので、試用レポートをお届けしたい。

キックスタンド式の12.3型(1,920×1,280ドット)Windows 10タブレット

 2020年9月にIntelがTiger Lakeを発表して以来、各メーカーからさまざまなWindows PCが登場した。特にiGPUが第10世代よりも強力になったこともあり、ノートPC、2in1、タブレット、小型PCなど全体的な性能が一気に向上した。

 筆者は去年(2020年)の春に第10世代のNUCを買ったばかり。最近はM1 Mac miniからRemote Desktop接続しているだけなので、作業内容的にiGPUの性能には左右されないと言い聞かせ、入れ替えたい衝動を抑えつつ日々作業している(笑)。

 ご紹介するVersaProシリーズも毎年、その時々に合わせたプロセッサ搭載モデルを発表/出荷しているが、今回も第11世代Tiger Lakeを搭載したタブレットが登場した。主な仕様は以下の通り。

NEC「VersaPro タイプVS<VS-9>/PC-VKT40S4G9」の仕様
プロセッサCore i5-1130G7(4コア8スレッド/1.8GHz(cTDP-up)~4.0GHz/キャッシュ 8MB/cTDP-down 7W、up 15W)
メモリ8GB/LPDDR4X(オンボード固定)
ストレージPCIe SSD 256GB
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ12.3型フルHD+(1,920×1,280ドット)、光沢、10点タッチ、デジタイザペン(静電結合方式)対応
グラフィックスIntel Xe Graphics/Type-C
ネットワークWi-Fi 6対応、Bluetooth 5、LTE(オプション)
Nano SIMカードスロット
LTE(CA対応):1、3、8、18、19、28、41
3G:1、8
インターフェイスThunderbolt 4/Type-C×1、USB Type-C×1、前面500万画素(IR対応)/背面800万画素(AF対応)カメラ、音声入出力
センサー加速度センサー、ジャイロセンサー、GPS(LTE搭載モデルのみ)
バッテリ駆動時間約11.4~25.6時間(約18.5時間)
サイズ/重量283.3×203.5×8.8mm(幅×奥行き×高さ)/約773g(本体のみ)
本体価格153,340円(税込)から
キーボード(オプション)キーピッチ:18.5mm、キーストローク:1.35mm、88キー、JIS標準配列、
外形寸法:283.3(W)×218(D)×5.7(H)mm、約350g
指紋センサー搭載、ペンホルダー付き、
価格33,000円
USB Type-C拡張ドック(オプション)HDMIポート×1、DisplayPort×2、GbE×1、USB 3.1ポート×3、USB 3.1(Type-C、データのみ)ポート×1、USB 2.0ポート×2、 音声入出力×1。ACアダプタ添付
本体サイズ:171×80×31mm(幅×奥行き×高さ)、約330g、
価格49,500円

 プロセッサは第11世代Tiger LakeのCore i5-1130G7。4コア8スレッドで、クロックは1.8GHz(cTDP-up)から最大4.0GHz。キャッシュは8MB、cTDP-down 7W/up 15W。下位モデルとしてi3-1110G4搭載機も用意されている(執筆時、同社の得選街サイトでは販売終了)。

 メモリはオンボード固定でLPDDR4X 8GB。PCMark 10/System Informationでは1GB×8となっていた。ストレージはPCIe SSD 256GB。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載する。手元に届いた時にBuild 20H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応、評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel Xe Graphics。外部出力用にType-Cを装備している。この時、最大解像度は3,840×2,160ドット。ディスプレイは12.3型フルHD+(1,920×1,280ドット)。光沢ありで10点タッチ/デジタイザペン(静電結合方式)に対応する。なおデジタイザペンは標準添付だ(追加オプションは11,000円)。

 ネットワークは、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5、LTE(オプション/nanoSIM)。バンドは表を参考にしていただきたい。インターフェイスは、Thunderbolt 4/Type-C×1、USB Type-C×1、前面500万画素(IR対応)/背面800万画素(AF対応)カメラ、音声入出力。センサーは、加速度センサー、ジャイロセンサー、GPS(LTE搭載モデルのみ)。

 バッテリ駆動時間は約11.4~25.6時間(約18.5時間)。サイズ283.3×203.5×8.8mm(幅×奥行き×高さ)重量約773g(本体のみ)。価格は153,340円(税込)から。

 オプションも豊富で、キーボード(約350g/33,000円)やUSB Type-C拡張ドック(ACアダプタ添付/49,500円)を用意。後者は、HDMIポート×1、DisplayPort×2、GbE(RJ45 LANコネクタ)×1、USB 3.1ポート×3、USB 3.1(Type-C, データのみ)ポート×1、USB 2.0ポート×2、 音声入出力×1……と多くのポートをType-Cケーブル1本で追加可能だ。

前面。パネル中央上に前面カメラ。わかりにくいが左右フチの凹みにスピーカー
背面。上ほぼ中央に背面カメラ。約下半分がキックスタンド
左 / 下。左側面に音声入出力、USB Type-C、nanoSIMスロット、電源LED、USB Type-C。下側面にキーボード用コネクタ
右 / 上。右側面に音量ボタン、ロックポート。上側面に電源ボタン
キーボード装着時。パネルをキックスタンドで倒しつつ、キーボード面も少し傾く
横から。各コネクタサイズからもわかるように結構薄い
キーボードはテンキーなしの日本語配列。タッチパッドは1枚プレート式。右横に指紋センサー。右側面にペンフォルダ
キーピッチは実測で約19mm(仕様上はキーピッチ:18.5mm、キーストローク:1.35mm)。[Enter]キー周辺が若干狭くなっている
重量/本体のみは実測で782g
重量/合体時。実測で1,115g
ACアダプタとペン。サイズ約92×39×29mm、重量189g、出力5V/2A、9V/2A、15V/3A、20V/2.25A(45W)。ペンはUSB Type-Cでの充電式
ペン使用中。スタンドはここまで倒すことができるのでペン入力しやすい(写真よりはもう少し倒れる)

 筐体はフチ以外マットな感じのブラック。質感も良くタブレットの割に高級感がある。重量は実測で782g。パネルサイズが近いiPad Pro 12.9が682gなので少し重目だろうか。オプションのキーボードと合わせると実測で1,115gと、1kgを少し超える。

 前面は、パネル中央上に前面カメラ。写真からはわかりにくいが左右フチの凹みにスピーカー。裏は上ほぼ中央に背面カメラ。約下半分がキックスタンドになっている。スタンドは写真からもわかるように、かなり傾けることが可能で、ペン操作時に威力を発揮する。左側面に音声入出力、Type-C、nanoSIMスロット、PowerLED、Type-C。下側面にキーボード用コネクタ。右側面に音量ボタン、ロックポート。上側面に電源ボタンを配置。

 付属のACアダプタは、サイズ約92×39×29mm、重量189g、出力5V/2A、9V/2A、15V/3A、20V/2.25A(45W)。いわゆるPDだ。ペンはUSB Type-Cでの充電式となっている。

 12.3型のディスプレイは明るさ、コントラスト、発色、視野角も十分。また解像度が1,920×1,280ドットと、16:10より80ドット多く、縦位置でも横位置でもバランスよく表示可能だ。タッチやペンもストレスなく反応する。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は394cd/平方m。写真を観るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mは、最大から-3が130cd/平方m、-4が106cd/平方m。従って前者で計測。黒色輝度は0.086cd/平方m。(目視可能かは別として)若干黒が浮くものの、かなり黒に近い。リニアリティは、上に行くほどばらつきがあり、特に緑の補正量が多くなっている。つまり補正前は少しマゼンタ被りしてる感じとなる。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 カメラは前面500万画素、背面800万画素。扱える解像度は、前面でカメラ:0.08MP~5.0MP、ビデオ:480p@30fps~1440p@30fps。背面でカメラ:7.1MP~8.0MP、ビデオ:360p@30fps~1080p@30fps。軽く試したところ、一般的にノートPCにオマケ程度で付いているカメラよりは写りはいい(とは言え昨今ミドルレンジのスマホの方が写りはいいだろう)。特に前面ビデオは最大1440p。ビデオ会議などの時威力を発揮する。ただ細かく映る分、照明などに気を使わないと逆に粗が目立ってしまうが……。

カメラアプリ
背面8MP室内サンプル

 振動やノイズは、試用中特に気にならなかった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると暖かくはなるものの、長時間持ちたくないような温度にはならない。サウンドは、左右のフチにスピーカーがあるため、音がダイレクトに耳に届く。低音は望めないが、バランスよく鳴らしており、またパワーもあり、特に不満は感じない。声が結構前に出るので、ビデオ会議用に少しチューンしているのだろう。

 オプションのキーボードはテンキーなしアイソレーションタイプの日本語配列。閉じた時のカバーも兼ねている。主要キーのキーピッチは実測で19mm(仕様上はキーピッチ:18.5mm、キーストローク:1.35mm)。[Enter]キー周辺だけ若干狭くなっているが、これは許容範囲だろう。

 このタイプのキーボードは多くの部分が浮いているため打鍵感がフワフワしやすいのだが、割としっかりした感じであまりフワフワ感はない。タッチパッドは1枚プレート式。右側に指紋センサーもある。個人的な希望としては、バックライトが欲しかったところか。本体、キーボード共に磁石を内蔵しているので(後者の方が強い)、カバンに入れる時、磁気を伴うカード類は注意した方がいいだろう。

 届いたのがLTEモデルだったので、手持ちのnanoSIM@OCN モバイル ONEを使って軽くテストした。APNを設定すれば直ぐに接続でき、問題なく作動。LTEを搭載した場合、GPSも使えるようになるため、持ち出す用途が多いケースでは是非欲しい機能だ。

設定/ネットワークとインターネット/状態。Wi-FiとLTEが有効になっているのがわかる

 以上のようにWindows 10搭載タブレットとしては、サイズ感、重量、パネル、カメラ、サウンド、ペン、そしてキーボード……と、なかなかの仕上がりぶりで死角がない。加えてLTE+GPSに対応可能なのも強みだ。価格は少し高めだが、相応の価値がある。さすがNECと言ったところか。

別売のUSB Type-C拡張ドック(PC-VP-TS40)

 オプションのUSB Type-C拡張ドック(PC-VP-TS40)は、サイズ約170×80×30mm(幅×奥行き×高さ)、重量318g。付属のACアダプタは本体用より一回り大きく(約125×50×30mm(同)、重量336g)、出力も倍の20V/4.5A(90W)。多くのインターフェスを追加しつつ、本体給電も考えるとこの容量になるのだろう。

 追加されるインターフェイスは、写真からは見えないが前面:USB Type-C、USB Type-A、音声入出力。背面:USB Type-C(本体接続用)、電源入力、DisplayPort×2、HDMI、USB Type-A×2、Gigabit Ethernet、USB Type-A×2。これだけのものをUSB Type-Cケーブル1本で追加できる。机で本機をデスクトップPC化するのに揃えたいアイテムだ。

Core i5でストレスなく操作でき、バッテリベンチは9時間オーバー!

 初期起動時、スタート画面は1画面。NECグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。第11世代Core i5、メモリ8GB、SSD 256GBなので、ストレスもなく操作できる。

 ストレージはPCIe SSD 256GBの「WDC PC SN530 SDBPMPZX-256G」。仕様によると最大シーケンシャルリード/ライトは2,400/MB/sと950MB/s。CrystalDiskMarkもほぼ同じスコアだ。リードに対してライトが半分未満と言うのは少し珍しいだろうか。C:ドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられ空き206GB。BitLockerで暗号化されている。

 Wi-FiとBluetoothはIntel製、Fibocom L850-GLはLTEモジュールだ。センサーにFibocom GNSS Sensorもある。画面キャプチャにはないが、USB Type-C拡張ドックのGbEはUSB-C DockGen2 Ethernetとなっていた。

スタート画面(タブレットモード)。1画面。NECグループがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみ
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージはPCIe SSD 256GBの「WDC PC SN530 SDBPMPZX-256G」。Wi-Fi-とBluetoothはIntel製、Fibocom L850-GLはLTEモジュール
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化

 主なプリインストールのソフトウェアは、「PC設定ツール」、「Synaptics Fingerpoint Reader Preboot Manager」、「型番・製造番号表示ユーティリティ」……など、意外とシンプル。PC設定ツールは画面キャプチャからもわかるように、バッテリ/ECOモード/ピークシフトなどの設定が可能だ。

PC設定ツール / HOME
PC設定ツール / バッテリー
PC設定ツール / ECOモード
PC設定ツール / ピークシフト

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。全般的にCore i5-1130G7搭載機としては一般的なスコアだろうか。先に書いたがSSDのシーケンシャルライトがリードに対して遅いものの、それ以外のライトは目立って遅くないため、実用上は気にならないと思われる。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは9時間22分(キーボードあり、明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上の約11.4~25.6時間(約18.5時間)には届かないが、この構成なら妥当なところだと思われる。

PCMark 10 v2.1.2508
PCMark 10 Score3,590
Essentials8,155
App Start-up Score10,084
Video Conferencing Score7,521
Web Browsing Score7,153
Productivity5,186
Spreadsheets Score4,807
Writing Score5,596
Digital Content Creation2,971
Photo Editing Score4,717
Rendering and Visualization Score1,654
Video Editting Score3,363
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,758
Creative Accelarated 3.03,897
Work Accelarated 2.02,757
Storage5,013
3DMark v2.18.7181
Time Spy1,037
Fire Strike Ultra679
Fire Strike Extreme1,288
Fire Strike2,345
Sky Diver7,177
Cloud Gate9,259
Ice Storm Extreme47,239
Ice Storm79,337
CINEBENCH R23
CPU3,132 pts(12位)
CPU(Single Core)1,024 pts(7位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2,465.064 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト968.041 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード565.833 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト241.821 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード221.815 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト313.027 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード35.995 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト84.561 MB/s

 以上のようにNEC「VersaPro タイプVS<VS-9>/PC-VKT40S4G9」は、Core i5-1130G7、メモリ8GB、ストレージSSD 256GBを搭載し、12.3型フルHD+(1,920×1,280ドット)のパネルを採用したタブレットだ。

 デジタイザペン標準装備、パワーとバッテリ駆動時間のバランスも良く、パネルは16:10より少し縦が長目で横位置でも縦位置でも扱いやすい。LTE+GPS、キーボードやType-C拡張ドックなど多くのオプションが用意されているのもポイントが高いだろう。試用中特に気になる部分もなく、完成度の高い製品に仕上がっている。

 ペン、そしてLTE対応の第11世代Core i5搭載Windowsタブレットを探しているユーザーに、使っていただきたい1台だと言える。