西川和久の不定期コラム
モダンスタンバイ対応で重量1kgを切る12.1型ノート「レッツノートSV8」
2019年6月18日 11:00
パナソニックは5月28日、「レッツノート」シリーズPCの2019年夏モデル、CF-SV8、CF-LV8、CF-XZ6/RZ6などを発表した。今回はその中からCF-SV8の代理店モデルが編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
Whiskey Lake世代を搭載し、モダンスタンバイ対応
今回ご紹介するCF-SV8モデルはプロセッサがWhiskey Lake世代となり、資料によるとSV7(2018年10月)と比較して約1.1倍、SX3(2014年10月)と比較して約1.8倍高速で、レッツノート史上最速のCPUとされている。加えてプロセッサの性能を最大限に引き出すため、新たな冷却システムも搭載。
さらにWindows 10の「モダンスタンバイ」にも対応。スリープ中でも低消費電力状態を維持し、メール受信、Skypeなどの着信、通知、Bluetoothデバイス操作による復帰などが可能となった(ただしアプリはUWPに限る)。モダンスタンバイに関しては山田祥平氏の「モダンスタンバイの当たり前にスタンバイ完了~レッツノートにモダンスタンバイを実装した男たち」の記事がわかりやすいので興味のある方は是非ご覧頂きたい。
ところで同社のサイトを見て少し驚くのは基本的にCore i5かi7かで2タイプしかないのに、代理店モデルで8モデルもあることだ。
Core i7はi7-8565U/8GB/SSD 256GB/DVDでブラックまたはシルバー。加えて最上位だとSSD 512GB/BD/LTE(Nano SIM)対応となる。Core i5はi5-8265U/8GBそしてシルバーは同じで、SSD 256GBまたは512GB、DVD/BD/なしで計5モデル。少し細かくし過ぎな気がしないでもない。またこれだけあるにもかかわらずメモリ16GBモデルがない。全部入りの最上位モデルだけでも16GBにして欲しいところだ。
手元に届いたCF-SV8(CF-SV8KDGQR)は、この中で一番標準的とも言える構成で仕様は以下のとおり。
パナソニック「レッツノート CF-SV8(CF-SV8KDGQR)」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-8265U(4コア8スレッド/1.6GHz~3.9GHz/キャッシュ 6MB/TDP 15W) |
メモリ | 8GB/LPDDR3-2133 SDRAM |
ストレージ | SSD 256GB |
光学ドライブ | スーパーマルチドライブ |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | 12.1型1,920×1,200ドット、非光沢、タッチ非対応 |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 620、HDMI/ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3、USB Power Delivery対応)、USB 3.0×3、Windows Hello顔認証Webカメラ、SDメモリーカードスロット、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | Sバッテリ:13.5~14時間、Lバッテリ:約21時間 |
サイズ/重量 | 283.5×203.8×24.5mm(幅×奥行き×高さ)/約0.999kg(Sバッテリ)、約1.099kg(Lバッテリ) |
その他 | Office Home & Business 2019 |
税込価格 | 266,000円から |
プロセッサはCore i5-8265U。4コア、8スレッドでクロックは1.6GHzから最大3.9GHz。キャッシュは6MB、TDPは15W。i5でも4C/8Tの強力なSKUだ。メモリはLPDDR3-2133 SDRAM 8GB。PCMark 10 System Informationによると4GB×2のデュアルチャンネルとなっている。ストレージはSSD 256GB。光学ドライブとしてスーパーマルチドライブも搭載している。OSは64bit版Windows 10 Pro。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 620。外部出力用としてHDMIとミニD-Sub15ピンを備えている。ディスプレイは非光沢で12.1型1,920×1,200ドット。タッチには非対応となる。
ネットワークはGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C、USB 3.0×3、Windows Hello顔認証Webカメラ、SDメモリーカードスロット、音声入出力。Type-CはThunderbolt 3、USB Power Delivery対応だ。
バッテリはSサイズかLサイズを搭載可能で駆動時間はそれぞれ最大13.5~14時間/約21時。サイズは283.5×203.8×24.5mm(幅×奥行き×高さ)。重量はバッテリのサイズにより約0.999kg(Sバッテリ)/約1.099kg(Lバッテリ)。Sバッテリだとギリギリ1kgを切っている。
Office Home & Business 2019がプリインストールされ税込店頭価格は266,000円から(価格.com調べ)。(光学ドライブの有無などがあるものの)同スペックのノートPCと比較すると高額だが、それでも売れるのは「レッツノート」ならではと言ったところか。
加えてCore i7-8665U vPro/Core i5-8365U vPro/NVMeの法人向けモデルや、Web直販モデルもラインナップ。カラーバリエーションは「EURO DRESSモデル」、プレミアムモデル限定でモーションレッド/クロトビ天板なども用意している。
毎回レッツノートの時には書いているがとにかく軽い。パッケージが届いても空箱に思うし、本体を持ち上げてもモックのように思える。実測で約1kgなので、ほかの軽量級機種と変わらないにもかかわわらずだ。見た目からくる予測重量をはるかに下回り、さらにバランスがいいのだろう。
とは言え、昨今の狭額縁そして超薄型のトレンドにはまったく沿ってないルックスだ。厚みだけでも24.5mmあるのだから驚きだ。しかし個人的にはそれらを優先したあまり、ユーザービリティを無視している機種(MacBook(Pro)のペタペタキーボードなど)もあり、この無骨な感じで結果使いやすい機種はきらいではない。
筐体はどこから見てもレッツノートだ。ある意味ThinkPadと同じこだわりを感じる。前面はパネル中央上にWindows Hello顔認証Webカメラ、そして手前側面に電源ボタン、SDメモリカードスロット、音声入出力、ステータスLED、光学ドライブ。このサイズ/重量で光学ドライブ内蔵だから毎度驚くばかりだ。
左側面に電源入力、HDMI、USB 3.0、Type-C。右側面にロックポート、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2を配置。バッテリはご覧のように着脱式で、Sサイズで重量252g。付属のACアダプタはサイズ約105×45×29mm、重量257g、出力16V/5.3A。
ディスプレイは非光沢の12.1型1,920×1,200ドット。Windowsの設定/ディスプレイは125%になっているが、推奨とは言え少し文字が細か過ぎるかも知れない。明るさ、コントラスト、視野角は十分、発色は少し地味目だ。
キーボードとタッチパッドはレッツノート固有のリーフ型キーボードとホイールパッド。主要キーのキーピッチは実測で約19mm。仕様上は19×16mm(幅×奥行き、一部キーを除く)。ストローク2mm。好き嫌いは別問題として(タッチパッドを使った2本指のスクロールは流石に面積が足らない気がする)、どちらもずっと変わらない安心感がある。
振動やノイズは試用した範囲では気にならなかった。発熱はベンチマークテストなどプロセッサに負荷をかけると左側に暖かいレベルで熱を持つ。サウンドはキーボード上の左右にスピーカーがあり、音がダイレクトに耳に届くためクリアだ。口径が小さいためカマボコレンジでシャリシャリ音だがパワーは結構ある。
4C/8Tの性能に加えBBenchで12時間を楽々オーバー
OSは64bit版のWindows 10 Pro。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。Panasonicグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更とショートカット1つの追加とシンプルだ。4C/8TのCore i5、メモリ8GB、SSDの構成と言うこともありキビキビ作動し気持ちよく、更に電源ONやスタンバイへの移行/復帰も速い(モダンスタンバイの効果)。
ストレージはSSD 256GBの「SAMSUNG MZNLN256HAJQ」。C:ドライブのみの1パーティションで約222.74GBが割り当てられ空き197GB。BitLockerで暗号化されている。光学ドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GUD0N」。Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。
おもなプリインストールソフトウェアは「Office Home & Business 2019」に加え、「マカフィーリブセーフ」、「i-フィルター6.0」、「WinZip」、「Power2Go for Panasonic」、「PowerDirector for Panasonic」、「PowerDVD14」、「Panasonic PC設定ユーティリティ」、「ハードディスクデータ消去ユーティリティ」、「PC情報ビューアー」、「Panasonic PC リカバリーディスク作成ユーティリティ」、「Panasonic PC Camera Utility」など。同社製はおもにツール系となる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。
PCMark 10 v1.1.1761 | |
---|---|
PCMark 10 Score | 3,716 |
Essentials | 7,633 |
App Start-up Score | 8,861 |
Video Conferencing Score | 7,088 |
Web Browsing Score | 7,081 |
Productivity | 6,021 |
Spreadsheets Score | 6,882 |
Writing Score | 5,269 |
Digital Content Creation | 3,032 |
Photo Editing Score | 3,741 |
Rendering and Visualization Score | 2,018 |
Video Editting Score | 3,693 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,459 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,552 |
Work Accelarated 2.0 | 4,712 |
Storage | 4,952 |
3DMark v2.8.6546 | |
Time Spy | 462 |
Fire Strike Ultra | 289 |
Fire Strike Extreme | 545 |
Fire Strike | 1,162 |
Sky Diver | 4,835 |
Cloud Gate | 9,431 |
Ice Storm Extreme | 46,825 |
Ice Storm | 67,689 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 52.50 fps |
CPU | 622 cb |
CPU(Single Core) | 161 cb |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 542.342MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 525.168MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 397.109MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 337.723MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 252.077MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 313.981MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 31.344MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 40.683MB/s |
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能) | |
バッテリ残量5%まで | 16時間16分28秒 |
さすがに4C/8TなのでCINEBENCH R15のCPUは速いものの、SSDはNVMeではないため爆速とはならず、Core i5-8265U搭載機としては一般的なスコアと言える。
バッテリ駆動時間は、キーボードバックライトOFF、ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能で残5%まで16時間16分28秒。仕様上Sバッテリだと13.5~14時間なので少し上回った。ただし明るさ0%は結構暗く輝度を上げれば仕様範囲となりそうだ。
余談になるが「モダンスタンバイ」は、個人的には可能になるのが少し遅すぎたかなと思っている(名称もConnected Standbyから、InstantoGoと詳細も含め変わってきた)。確かにこれを使えば蓋を閉じたままスタンバイ中でもメールの受信や通知などが可能であるものの、すぐ近くにスマホがあり、これらに即反応、メールは簡単のものならその場で返信、MessengerやLINEのトークもそのまま電話のように話せる。
そうなるとモダンスタンバイで初めて有効になるデータほほぼなく、結局普通のスタンバイで落ち着いて処理できる時にまとめて行なう……でも問題はない。企業用途となればまた違う話になるとは思うが、個人用途だとこんなところだ。
CF-SV8の場合、標準ではバッテリ駆動時で10分が経過するとこのモードへ移行するが、8時間経つと休止状態になる。休止状態では一切プログラムは動かないため、常時モダンスタンバイにするためには電源オプション/プラン設定の編集/パナソニックの電源管理のスリープ/休止状態の480分を0、即ち“無し”に変更しなければならない。BBenchで約16時間駆動できるため、モダンスタンバイだとさらに長時間行けるだろう。
以上のようにパナソニック「レッツノート CF-SV8(CF-SV8KDGQR)」は、Whiskey Lake世代のCore i5、メモリ8GB、SSD 256GB、12.1型1,920×1,200ドットのディスプレイ、そして光学ドライブを搭載した上で重量1kgを切る超軽量級ノートPCだ。バッテリ駆動もBBenchで約16時間、さらにモダンスタンバイに対応しているのでスタンバイ中でもメール受信などが可能となる。
試用した範囲で気になる部分は皆無。さすがレッツノートと言ったところ。20万円を超える価格だけがネックだが、PCを持ち運ぶ機会が多いビジネスユーザーにお勧めしたい1台である。