西川和久の不定期コラム

マウスコンピューター「m-Stick MS-CH01FV2」

~Atom x5/冷却ファンを搭載し、安定作動のスティックタイプPC

製品写真

 マウスコンピューターは4月18日、Atom x5搭載のスティックタイプPCを発表した。このクラスの初登場からそれなりの月日が経ったが、新型はどう変わったのか。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

こなれてきた感のあるスティックタイプのPC

 スティックタイプのPCは2015年の中盤から2016の春先まで、この連載でも結構扱ってきたカテゴリのPCだ。当初は発熱の関係から性能が出なかったり、またプロセッサのパワーアップに伴い徐々に大きくなって、これをスティックタイプと呼んで良いのか……的なものまで、いろいろなものが出回った。

 それはそれである意味面白かったのだが、最近では落ち着いたのか、新機種もないな、と思っていたところに(Atom x5/7の次世代がないのも理由の1つだろう)、新型が発表され手元に届いた次第だ。主な仕様は以下の通り。

マウスコンピューター「m-Stick MS-CH01FV2」
プロセッサAtom x5-Z8350(4コア4スレッド、クロック 1.44GHz/1.92GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2W)
メモリ2GB(DDR3L-RS 1600)
ストレージ32GB eMMC
OSWindows 10 Home(32bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 400、HDMI
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1+LE
インターフェイスUSB 3.0×1、USB 2.0×1、micro USB(給電用)、microSDカードスロット(SDXC/SDHC)
サイズ/重量113×39×13mm(幅×奥行き×高さ)、約62g
その他冷却ファン搭載
価格19,800円(税別・送料別)

 プロセッサはAtom x5-Z8350。4コア4スレッドでクロックは1.44GHzから最大1.92GHz。キャッシュは2MBでSDPは2Wだ。前回ご紹介した2in1も同じプロセッサなのだが、このSKUが(価格や性能なども含め)扱いやすいのだろうか。

 メモリは2GB。ストレージはeMMCで32GB。32bit版Windows 10 Homeを搭載するには、最小限に近い構成となる。

 インターフェイスは、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.1+LE、USB 3.0、USB 2.0、SDXC対応microSDカードスロット、そして給電用のmicro USBを装備。電源とは別にUSBポートが2つ使えるので、扱いやすそうだ。

 加えて冷却ファンを搭載しているので、発熱による性能低下を抑えられる。なお音声出力はなく、HDMIからとなる(ディスプレイが対応している場合)。

 本体サイズは113×39×13mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約62g。スティックタイプとしては平均的な大きさだ。価格は19,800円(税別・送料別)。

表/右。上にPower LEDと通気用のスリット。右側面にUSB 2.0、USB 3.0、microUSB(給電用)、電源ボタン
裏/左。左側面手前にストラップホール、その横にmicroSDカードスロット
ACアダプタの重量は実測で160g。5V/3A出力。HDMIの延長ケーブル付属。透明のキャップはHDMIコネクタ用
重量は実測で61gと軽い
Chromecastとの比較。Chromecastが小さいだけで特に本機が大きいわけではない

 大きさ的には、PCとしてはかなりコンパクト。筐体はこの手のスティックタイプのPCにありがちな感じで、特に目新しさはないものの、考えてみればたった61gでWindows 10が作動するPC。これはこれで凄いことだ。

 上にPower LEDと通気用のスリット。右側面にUSB 2.0、USB 3.0、microUSB(給電用)、電源ボタン。左側面手前にストラップホール、その横にmicroSDカードスロットを配置。短辺の一方にHDMI出力がある。電源供給用以外にUSBが2ポート使え、一方はUSB 3.0なので、必要であれば比較的高速な外部ストレージも追加可能だ。

 付属品は5V/3A出力のACアダプタと延長用のHDMIケーブル。ACアダプタの重量が160gと、こちらの方がはるかに重く、冗談みたいな話となる。

 ノイズや振動は使用した範囲で特に気にならず、冷却ファンも耳を筐体に当てないと聞こえないレベルだ。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると少し暖かくなる程度。このタイプが出回りはじめた当初は結構熱を持ったので、それを考えるとかなりの進化と言えよう。

 いずれにしても、久々に使った感想は、発熱の件なども含め安定性が向上し、何も気にせず普通のレベルで使えるようになったこと。4GBメモリのモデルがあれば欲しいな……と思ってしまった。

 さて、「m-Stick MS-CH01FV2」と一緒に、24型液晶ディスプレイiiyama「ProLite XUB2492HSU」も届いたので軽くご紹介。

 何といっても最大の特徴は、写真からも分かるようにベゼル+非表示部分幅が6.3mmの狭額縁、上左右に段差のないフラットなウルトラスリムラインである点だろう。見栄えも良く、マルチモニタを構成する時も綺麗に並べることができる。加えて、24型IPS式フルHDのノングレア(非光沢)パネルで、実売2万円ちょっとと財布にも優しい。

iiyama「ProLite XUB2492HSU」
パネル24型IPSパネル/ノングレア(非光沢)
解像度フルHD/1,920×1,080ドット
画素ピッチ0.275mm
視野角左右178度/上下178度
応答速度5ms(中間色)
輝度250cd/平方m(標準)
コントラスト比1,000:1(標準)、500万:1(Adv.コントラスト機能時)
入力DisplayPort、HDMI端子、D-Subミニ15ピン、音声入力
出力ヘッドホン、スピーカー2W×2
USBハブUSB 2.0ポート×2
スタンド昇降130㎜/ピボット対応
角度調節範囲チルト-5~22度/左右各45度
付属品ミニD-Sub15ピンケーブル、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、オーディオケーブル、電源コード、USBケーブル
サイズ/重量539.5×230×376.0~506.0mm(同)/5.4kg(スタンド込み)
店頭価格22,422円(AKIBA PC Hotline! 2016年11月26日調べ)

 仕様は表を参考にして欲しいが、少し気になる点があるとすれば、輝度が250cd/平方mと一般的(?)な300cd/平方mと比較して少し暗めな点。この関係でコントラスト比も少し緩くなっている。

 が、例えば写真観賞用は100cd/平方mと言われているのでこの半分以下で、筆者は100cd/平方mでも眩しいため、通常の作業は60cd/平方mにしており、全く問題ない。

 非光沢で眼に優しく、IPSパネルなので視野角も広い。発色も良好。加えて全ケーブル付属、スピーカー2W×2も内蔵し、狭額縁でこの価格。ブルーライト低減機能も搭載している。Web閲覧用や業務用など、一般的な用途としては文句なしといったところだ。

 加えて消費電力も、16W(最大36W)/パワーマネージメントモード時0.5W(最大)と省エネ。5年以上前の古い液晶ディスプレイを使い続けるよりも、電気代を考えれば乗り換えた方が良いかも知れない。ただDVI入力がないので、この点だけ評価が分かれそうだ。

前面。ベゼル+非表示部分幅が6.3mmの狭額縁だけあって下部以外はほとんどパネルだけに見える。右下にボタン系が並ぶ
背面。この位置が一番低い状態。スタンドにケーブルマネージメントがある
左側面。側面もフラットで非常に薄いのが分かる
コネクタ周辺。手前から電源、音声入出力、DisplayPort、HDMI、ミニD-Sub15ピン、USB Hub
回転と角度最大。縦表示にも対応
OSD。パネルの下に、INPUT/EXIT//ENTER/電源とボタンが並び、OSDとしてはオーソドックスな操作性

冷却ファン搭載で本来の性能を維持

 話をm-Stick MS-CH01FV2に戻すと、搭載OSは32bit版のWindows 10 Home。メモリが2GBなので無理に64bitにしていないところは好感が持てる。

 初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は、Windows 10標準に加え、ユーザーサポートグループにPDFが2本。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプルだ。Atom/2GB/eMMCと、ほぼ最小限の構成だけに、それなりの動きとなる。

 eMMCは32GBの「SanDisk DF4032」。Cドライブのみの1パーティションで、約28.4GBが割り当てられ空き21GB。ほとんど余裕がない。microSDカードスロットやUSB 3.0が使えるので、データなどはそちらに置く方が無難だ。Wi-FiとBluetoothはQualcomm製。

スタート画面(タブレットモード)。Windows 10標準に加え、ユーザーサポートグループにPDFが2本
起動時のデスクトップ。壁紙だけの変更
デバイスマネージャ/主要なデバイス。eMMCは「SanDisk DF4032」。Wi-FiとBluetoothはQualcomm製
eMMCのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約28.4GBが割り当てられている

 プリインストールソフトウェアは、Windowsストアアプリはなし。デスクトップアプリは「マカフィー リブセーフ」のみと、ストレージの容量が少ないだけに、ほぼ素のWindws 10となっている。またマウスコンピュータお馴染み「Windows 10ユーザーガイド」と「ハードウェアマニュアル」も健在だ。

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)。CrystalDiskMarkの結果を見たい。参考までにCrystalMark(4コア4スレッドで条件的に問題ない)のスコアも掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 3.9。プロセッサ 6.2、メモリ 5.5、グラフィックス 3.9、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.85。メモリのバンド幅は6,996.68506MB/s。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1,389。

 CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 153.5/Write 73.46、4K Q32T1 Read 35.86/Write 15.93、Seq Read 163.2/Write 80.95、4K Read 10.96/Write 15.18(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 22,259、FPU 18,577、MEM 17,735、HDD 22,072、GDI 3,203、D2D 2,327、OGL 3,206。

 プロセッサ、グラフィックス、メモリ、ストレージ、全てがAtom x5そしてeMMCのコンビネーションとしては平均的なものとなっている。参考までにGoogle Octane 2.0のスコアは6,450だった。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 3.9。プロセッサ 6.2、メモリ 5.5、グラフィックス 3.9、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.85
PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)。スコアは1,389
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)/詳細。クロックは200MHzを少し下回る辺りから最大の1.8GHz前後で頭打ち。温度は約60度から78度辺りと少し高め
CrystalDiskMark。Seq Q32T1 Read 153.5/Write 73.46、4K Q32T1 Read 35.86/Write 15.93、Seq Read 163.2/Write 80.95、4K Read 10.96/Write 15.18(MB/s)
CrystalMark。ALU 22,259、FPU 18,577、MEM 17,735、HDD 22,072、GDI 3,203、D2D 2,327、OGL 3,206

 以上のようにマウスコンピューター「m-Stick MS-CH01FV2」は、Atom x5、2GB、eMMC 32GBを搭載したスティックタイプのPCだ。冷却ファンを搭載し、あまり熱くならずに性能を維持。加えて電源以外にUSB 2.0と3.0が2つ使えるのも扱いやすい。

 試用上、特に気になる部分もなく、流石にこなれてきた感じがする。19,800円という価格も含め、気軽にスティックタイプのPCを試してみたいユーザーにおすすめできる逸品だ。