iPhone 3GSとWiMAXで変わるモバイルコンピューティングの枠組



 先週発売されたiPhone 3GSは、すでにこのハードウェア構造で作り慣れていたためか、充分な数が割り当てられていたようで、多くの購入希望者が問題なく発売日、あるいはその翌日に入手できたようだ。

 筆者も1年前に、予約無しで入手した際と同じ家電量販店(ヤマダ電機テックランド)に、またも予約無しで昼過ぎに赴いたところ、問題なく購入することができた。旧iPhone 3Gは家人の持ち物とし、新型に機種変更したSIMカードを入れ替えた。

 2台を1年ずつずらして購入したので、このペースで新機種が投入されるのであれば、うまく2年サイクルでの買い換えをペナルティなしで最新機種を使い続けることができそうだ(もちろん、iPhone以外の選択肢も今後は登場するかもしれないが)。

 ところで西川氏がiPhone 3GSの購入記でキャプションに書いていた契約時条件だが、少なくともヤマダ電機での販売では条件は一切付けられていない。ホワイトプラン+パケット定額+S!ベーシックパックの3つが必要だが、Wホワイトなど他のオプションは契約しなくとも入手できた。西川氏の例は、おそらく店ごとに付けられた販売条件なのだろう。

●他人にも勧められるようになった新iPhone
iPhone 3GS

 初代iPhoneが米国で発売された際は、購入するかどうかを相当迷った記憶がある。アプリケーションのインストールが行なえないなど、当時のiPhone OSは現在ほどオープンなソフトウェアプラットフォームではなかったが、完成度は高く大きな不都合は無かったからだ。

 しかし1年前、iPhone 3Gの際には、大幅な高機能化と国際化(主には入力メソッド)などもあって、当初は主に遅さや遅さから来る使いづらさに耐えながら使う必要があった。このあたりの話は当時の記事を参照してほしい。もっとも、ここで挙げた不満点は、その後、ほぼ解消している。その後に書いたローミング時の問題についても、さらに後に渡航した際には対策が施されていた。

 そして先日のiPhone OS 3.0によって、“ソフトウェア機能面での”不満はほぼ解消されたと言っていい。日本語入力の効率は大幅に改善されたし、Safariが落ちる頻度も少なくなった。iPhoneで入力した連絡先を特定のグループに追加してくれるオプションも、連絡先データが4,000件ほど登録されている筆者にとっては、とてもありがたい。連絡先と言えば、4,000件以上のデータを含むグループを表示する際にも、ほとんど一瞬で表示が行なわれるようになった(以前は10秒以上待たされていた)。

 しかし、一方で日本語入力への切り替え速度は若干遅くなり、それ以外の操作も全般にゆったりになった。ソフトウェアで機能を追加しているのだから、最適化の度合いが同程度ならば遅くなってしまうのは、ある程度は仕方がない。幸いなことに、使い物にならないほどの遅さではないので、そのままiPhone OS 3.0をiPhone 3Gで使い続けても、大きな不満にはならなかったと思う。

 だが、これからiPhoneを買うのであれば、どんなに8G版が安いからといっても、3Gではなく3GSを選ぶことを勧める。ゲームや重い処理を行なうアプリケーションを動かすためではない。あらゆる操作が、なんの引っかかりもなく動いてくれるからだ。

 アップルは約2倍の速度と言っているが、これは決して大げさな言い方ではない。iPhone OS 3.0でやや遅くなった分など、全く問題にしない。それどころか、使っている筆者の方が戸惑ってしまうほどサクサクと動いてくれる。

 iPhoneには、対応できない機能がある(FeliCaの問題がよく挙げられるが、他にもたとえば携帯電話専用でPCアクセスをサポートしていないWebサービスの利用などがある)が、逆に普通の携帯電話には決してできない使い方、機能もiPhoneにはある。

 3GSとなって高機能化したソフトウェアでも対応できる基礎体力が付き、いよいよ誰にでも勧められるスマートフォンになってきた。ハードウェアキーボードなしで良いと思うなら、他のスマートフォンを選ぶ上で他の選択肢はないと思うほどだ。


●モバイルWiMAX内蔵PCで体感する他のデータWANとの違い
IntelのWi-Fi/WiMAXモジュール「WiMAX/WiFi Link 5150」

 7月1日の正式サービス開始後に、もっと詳しい記事を掲載したいが、モバイルWiMAX内蔵PCが登場してくると、PCのモバイル環境は確実に変化する。

 現在、内蔵用モバイルWiMAXモジュールを試用しながら、この記事を書いているが、USBタイプのモバイルWiMAXモジュールよりも遅いカテゴリ3の内蔵WiMAXモジュールにも関わらず、5Mbps程度の速度が自宅から出た。先週の記事でも書いたが、内蔵モバイルWiMAXモジュールはアンテナの質が高いため、同じような電界強度ならばUSBタイプよりも高速になる場合があるようだ(ちなみにUSBタイプでは4.5Mbps前後だった)。

 しかし、モバイルWiMAXの良さは速度だけではない。速度だけならば、出先でのWebブラウズやメールチェックぐらいならば、HSDPAでも十分だ。最近はユーザーが増えて遅くなってきたとはいえ、イーモバイルの通信プランは魅力的に違いない。

 UQコミュニケーションズはユーザーの動向に応じて、基地局の各セクタごとの電波強度を変え、間に別の基地局を追加するなどしてマイクロセル化を順次行ない、速度をキープしていくと話しているので、ユーザーが増えてきても劇的に速度は落ちないよう頑張るのだろうと思っているが、こればかりは先は読みづらい。

 それよりもPCの液晶を開けて、レジュームからの復帰が完了した直後にネットワークを探して自動的に接続してくれることが重要なのだ。この点は何度も主張したいが、SIMカードもなく、単に通信モジュールが内蔵されてさえいれば、オンデマンドで契約してネットワークを利用でき、月額固定費用のプラン利用者ならば、接続を意識することすらなくなってくる。

 この感覚こそがモバイルWiMAXが、他のデータWANに対して圧倒的に優れているとこだと思う。


●2009年7月1日以前と以降

 これまでのスマートフォンは、どこかしら不足していたり、あるいは高機能でもパフォーマンスが不足していたりした。しかしiPhone 3GSの登場により、スマートフォンの有用性に対する認知は一気に拡がっていくだろう。

 iPhoneの操作性は優れていると評価されているが、個人的には従来型電話機を使っているユーザーに、そのまま手渡しても使ってもらえない(従来型携帯電話とは異なる)難しさがあると思うが、それもユーザーが増えてくれば自然に解決していくはずだ。

 速度が大幅に上がり、メールやスケジュール管理など基本的なPDAとしての機能が大幅に良くなった事で、PCでこれらの作業をほとんど行なわなくなった。適応範囲は確実に広くなっている。

 またパフォーマンスの強化は、各種Webサービスへの専用クライアントアプリケーションの増加、機能強化を促進すると思う。データの処理スループットが上がった事で、PC向けのコンテンツでもストレス無く捌くことができるようになるからだ。カメラの画質向上や動画撮影機能の追加も、応用範囲をさらに拡げる。

 一方、モバイルWiMAXの本格サービスが開始されれば、出先でも自宅と同様のインターネットサービスをPCで利用可能になる。しかも、携帯電話のようにオンラインかオフラインかをほとんど意識せずにだ(もちろん、エリア内ならば……だが)。

 これだけオンラインになるための方法や速度が変化すると、アプリケーションもどんどん変化していく。7月1日以前と以降では、モバイル環境での通信手段に関して考え方を少し変えていく必要があると思う。

 ただし、モバイルWiMAXのカバーエリアが充分ではない時期において、過渡的には従来のWANも含めた統合的なケアも必要だろう。たとえば周囲の接続環境(利用できるWi-Fiアクセスポイントが見えるか否か、モバイルWiMAXの電界強度、データ通信WANの利用可否など)を自動的にスキャンし、ある接続が切れた際には別のもっとも良い品質の通信手段で自動的に接続してくれるといった機能。

 現在の内蔵型モバイルWiMAXモジュール(Intel Echo Peak)は、Wi-FiとWiMAXを同時利用できない。これには電波の混信を防ぐためと消費電力を抑えるための2つの理由があるそうだ。しかし、両機能はそれぞれ独立した回路としてシリコン上には存在するというから、ワイヤレス通信のフルオート化も不可能ではない。

 そうなってくれば、手元にあるWi-Fi機器のゲートウェイとしてモバイルWiMAX内蔵PCを利用するのが当たり前になっているかもしれない。WiFをPAN的(Persoal Area Notwork)的に使いつつ、WiMAXでインターネットへの接続経路を提供する。

 そして、そんな使い勝手の良さに、そのうち誰も興味を持たなくなるはずだ。それが当たり前の使い方だと思う世代が増えてくるからである。

 “そうなれば、こっちのものだよ”と、UQモバイルは考えているのかもしれない。

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(2009年 6月 30日)

[Text by本田 雅一]