Apple iPhone 3GS |
品名 | iPhone 3GS | |
購入価格 | 購入時0円 (1,260円24回分割 /機種変) | |
購入日 | 2009年6月27日 | |
使用期間 | 約1日 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
iPhone 3GSが6月26日に国内でも発売開始となった。新規なら結構お安くなっているのであまり悩まないと思うが、すでに3Gを持っていて、3GSへの機種変(機種変更)は「結局いくらかかるのか?」頭の痛い問題だ。そこで筆者のパターンを紹介するので参考にして頂ければと思う。もちろん、購入した3GSのファーストインプレッションもお知らせしよう。
●3Gと3GSの違い3GSの「S」はSpeedの「S」。発表当初は「3G S」とも表記されていたが、最近になって「3GS」(間のスペースが無くなった)へ統一された。
ハードウェアの詳細はAppleからは公になっていないものの、先行発売された米国を中心に、すでにあっちこっちに「分解レポート」が掲載されている。3Gは「CPUクロック412MHz、メモリ128MB」に対して、3GSは「CPUクロック600MHz、メモリ256MB」だ。CPUは約1.5倍速、メモリは2倍の容量だ。また3Dグラフィックスも強化され「OpenGL ES 1.xから2.0へ」。これらの組み合わせにより、3Gと比較して最大2倍速いとうたわれている。
OSはコピペやMMSに対応したiPhone OS 3.0を搭載。これについては初代iPhone、iPhone 3G、iPod touchでもアップグレードできるため、全ユーザーが新しい環境を体感できる。ただし、ハードウェアのサポートが無いと動かない機能については、3GS専用となる。その違いをまとめると以下の通りだ。
iPhone 3G | iPhone 3GS | |
CPU/Memory | 412MHz/128MB | 600MHz/256MB |
OpenGL ES | 1.x | 2.0 |
カメラ | 200万画素/パンフォーカス | 300万画素AF(マクロあり) |
動画 | × | 640×480 30fps/モノラル 編集機能あり |
音声コントロール | × | ○ |
電子コンパス | × | ○ |
アクセシビリティ | × | ○ |
無線 | 3.6Mbps HSDPA、Wi-Fi Bluetooth 2.0+EDR | 7.2Mbps HSDPA、Wi-Fi Bluetooth 2.1+EDR |
付属ヘッドホン | マイク付 | マイク+音量調整 |
※OpenGL ESはOpenGL for Embedded Systemsの略
まず一番大きい違いが内蔵のカメラ。用途を考えると画素数の大小はあまり問題ではなく、「パンフォーカス(マクロ無し)」と「AF(マクロあり)」の違いの方が大きい。3Gはパンフォーカスだったので一定の距離(約1.5m?)以上はピントが合っているように見えるが、それ以内の距離ではピンボケとなる。例えばテーブルを挟んで一緒に食べている人にはギリギリピントが合うものの、テーブル上の食べ物を写した途端にピンボケだ。またケータイでは一般的なQRコードもピントが合わず認識できない。特にブログでは「今日の食事」的な日記へ写真が多く使われるので、食べ物がピンボケになるのは致命的とも言えた。
この点は3GSで大幅に改善され、タップした部分にピントと露出が合うようになり、加えて10cm程度のマクロ撮影もOKとなった。嬉しいことに640×480ドット/30fps+モノラル音声の動画も対応。撮った動画をその場でイン/アウトを指定して切り出し、YouTubeへアップロードも出来る。機能自体は「カメラアプリ」に統合され、3GSだと写真と動画を切り替えるスイッチを表示。保存先は、どちらも写真フォルダとなる。
「音声コントロール」、「電子コンパス」、「アクセシビリティ」も専用のハードウェアが必要となる。これに関しては、対応していない3Gなどでは、アプリのアイコンすら表示されない(アクセシビリティは設定項目に表示されない)。特に音声コントロールは日本語にも対応し、「××へ電話」としゃべると電話をかけたり、そのエントリーに複数の電話番号が合った場合は、どれにするか選択のメッセージが流れたり……と、まるでSFのような機能だ。音声処理をリアルタイムで行なうため高速なエンジンが必要となり、3Gでは対応できず、3GS専用の機能となる。
カメラ。右下に「カメラ/動画」を切り替えるボタンがある | 音声コントロール。背景に流れているのは、指示する言葉の例。ただ、誤認識するといきなり違うところへ電話し出すのでちょっと怖い |
電子コンパス。Googleマップと連動する。自分が今どちらに向いているのかが解る | 付属ヘッドホン。[+/-]の部分が3GS付属ヘッドホン固有のボリューム調整 |
そして意外と効きそうなのが、Bluetooth 2.0と2.1かの違いだ。2.0との違いは「ペアリングの簡略化」と「バッテリを最大5倍延長」。iPhone OS 2.xでのBluetoothはヘッドセット・プロファイルのみの対応であったが、OS 3.0になってA2DP(高音質/ステレオ音声)にも対応した。従って今後、Bluetooth接続のスピーカーやヘッドホンなどがiPhoneのアクセサリとして大量に出回ることが予想される。この時、iPhone 3Gでも使えるには使えるが、バッテリの減りが3GSより早くなる可能性がある。ヘビーに使うとバッテリの減りが早いiPhoneなだけにこの部分は気になるところだ。
バッテリ駆動時間もWiFiデータ通信が最大6時間から9時間、連続音楽再生が最大24時間から30時間、連続動画再生が最大7時間から10時間へと、サイズ/重量がほぼ同じ(重量だけ2gプラス)であるにも関わらず結構伸びているのが印象的だ。
以上、大雑把であるが3Gと3GSの違いはこんな感じとなる。特に筆者の場合、カメラを多用する上に、少し前に記事にしたカメラ系のAppを開発販売していることもあり、作動確認に実機が必要。どうするか悩んでいる場合ではなく、機種変を決めた。
●機種変で月額いくら増えるか?機種変の場合、もともとの3G代を支払い済みであれば何の問題も無いのだが、3G自体の発売日が去年の7月。24回分割の場合、現時点で誰も払い終わっていない。筆者は遅れて8月に購入していので残りは14カ月分と思っていたが、この認識がまず甘かった。本体の分割払いは「契約後3回目の支払いから」つまり3カ月後から発生しているのだ。従ってまだ17カ月分もある。発売と同時に契約した人も16カ月分。3Gは16GBモデルを契約したのだが、その本体代はこれまで
3,360円-1,920円(割引)=1,440円/月
を払っていた。しかし、この割引分は機種変をすると消滅、新しい3GSの方へ振り返られる。従って、
3,360円×17カ月=57,120円
まだこんなにも残っているのだ。3Gから3GSへ機種変する時には、この金額を一括で払ってもいいし、月額分へ加算するのもOK。一般的には後者を選択する人が多いだろう。もちろん、機種変時ではなく、お金の余裕のある時に一括払いするのも問題無い。
また3GSの本体価格は新規と機種変とで少し違い、新規の場合980円(24回払い/先の割引分などを含む)のiPhone 3GS/32GBモデルは、機種変では少し高くなり、1,260円(24回払い/先の割引分などを含む)となる。つまり月額で
1,440円/月(これまで)
1,260円(3GS)+3,360円(3G残)=4,620円/月
-------------------------------------------
差額 3,180円
と、本体代は月額で「3,180円」のコスト増となる。これは結構な金額だ。但し、筆者の場合3Gで「iPhone for everybody キャンペーン」に入っていなかったので「パケット定額フルの上限が5,985円のまま」だった。3GSではこの「iPhone for everybody キャンペーン」へ入ったため上限は「4,410円」となり逆に「1,575円安」となる。つまり本体代やベーシックな通信費などトータルでかかる費用で考えた場合、
3,180円(本体で増えた分)-1,575円(パケット定額フルの差分)=1,605円/月
「1,605円」のアップで済む。もちろん通話料は含まれていないものの、この程度なら3GS貧乏にならずに済む(笑)。安心して機種変することにした。ちなみにこれまで1カ月分の請求額は約9千円ほど。これが1万円ちょっとになる計算だ。
●機種変の手続きから受け取りまで3G発売時の大混乱があったためだろう、3GSは事前予約が正式に可能となった。新規も機種変も6月18日から受付開始だ。筆者は数日バタバタしていたこともあり、結局予約したのは6月22日の夕方にだった。
申し込み自体は非常に簡単で、本人を確認できるIDカードに相当する物さえ持っていれば後は3GSの希望するタイプ、16GBか32GBか、黒か白かを伝え、3Gの残金をどうするかなど、手続き自体は10分未満で終わり、予約の書類が渡される。またこの時、「26日にお渡しできるかどうかを26日までに電話でご連絡します」との話だった。
ところがこの確認の電話が待てど暮らせどかかってこない。25日の夕方まで待ったが、かかってこなかったので、渋谷へ用事で行くついでにショップへ寄り確認したところ「27日」であることが確定した。発売日より1日遅れであるが、そこまでいち早く入手しなければならないわけでも無く了解した。どうやら26日は大半が表参道に集められたのか、多くのショップでの販売は実際のところ27日からが結構あったと言う噂を耳にした。
そして27日、ショップのオープンする10分前に到着。すでに数人並んでいたが、大した混雑ではなかった。手続きは、予約時に受け取った書類を渡し、本人確認、ちょっとした説明、数箇所にサイン、そして3GSの開封、SIMの入れ替え。これで終わりだ。かかる時間は1人10~15分程度。この時面白かったのは「3GSの開封はユーザー本人が行なう」ことだ。確か3Gを契約した時は、SIMを含めいろいろな設定も店員が行ない開封済みの状態だったと思う。聞いたところ「iPhone購入のお客さんは愛着を持っている人が多いので……」と言うことだった。
●3Gから3GSのデータ移行
3Gから3GSのデータ移行は、母艦にしているPC上でiTunesを使って行なう。もちろんiTunes for WindowsでWindowsマシン上でも同期は可能である。筆者の場合は自宅のPowerPC版のMac mini、OSはTigerで行なっている。Intel Macも何台か事務所にあるのだが、基本的に開発環境なので、個人的な用途に使いたくなく、今となってはほとんど出番の無いPowerPC版のMac miniがiTunes同期専用+音楽再生用PCとして動いているのだ。
USB経由で3GSを接続するとiTunes上に「新しいiPhoneへようこそ」と表示されるので、ウィザードに従い必要項目を設定し、必要な項目の同期を取れば作業終了となる。但し、この時、メールに設定しているアカウント(i.softbank.jpも含む)や時計の日本以外の国(設定していた場合)、株価の銘柄、受信/送信済みのSMS/MMSなどは引き継がれない。前者3つは再設定すれば済む話なのだが、SMS/MMSに関しては、いろいろやり取りした思い出が綺麗にリセットされてしまう。できれば何だかの移行手段が欲しいところだ(ただこの件は、もしかすると「新しいiPhoneとして設定」ではなく「バックアップからの復元」を選べば出来たのかも知れない)。
もう1つ「あっ!」と思ったのは、メモの同期がTigerではできず、leopard(10.5.7)が必要となることだ。これまでメモはMac上では使わずiPhone内のみで使っていたのでTigerで問題無かったが、3GSへデータを移すには、一旦3GからMacへ同期、その後Macから3GSへの同期が必要となる。OSのライセンスが1つ余っているので、インストールすればいいものの、PowerPCでメモリ512MBだとまともに動かないと思いこれまでTigerで使っていた。
以上のように一部データを移行出来なかったが、音楽、動画、アプリ、アドレス帳など主要部分は3GSへ引き継がれ、本格的に3GSを使う準備が整った。もちろん古い3Gも、電話回線が使えない以外、つまりiPod touch+αとしては機能する。
新しいiPhoneへようこそ。USB経由で接続するといきなりこの画面が現れた | iPhoneの設定。デフォルトは「バックアップからの復元」だったのだが、何となく「新しいiPhoneとして設定」を選んだ。どちらが正解なのだろうか | 同期中 |
同期完了。全体で8GB弱なのだが、約40分ほどかかっている。32GBモデルなのでまだまだ余裕だ | 「SIMなし」と表示しているiPhone 3G。SIMを抜いた3G。電話としては使えないが、iPod touch+αとしては問題無く作動する |
●第一印象
小一時間ほど触って思ったのは「速い!」と「保護フィルム無しでも指紋跡が目立たない」と言うことだった。速いのは冒頭で書いた通り物理的に速くなっているので当然の結果で予想できた範囲。ただその変化が凄まじい。Mobile Safariでネットをアクセスすると、ほとんど待たずにページの表示が終わる。これまでの3Gは、フルブラウズが出来るとは言え、回線経由でもWiFi経由でも1ページ表示し終わるにはそれなりの時間がかかっていた。例えばWiFiを使いPC Watchのトップページを表示すると10秒強かかった、それが5秒ほどと半分以下になった。ここまで速いと目が点になる。
また文字入力もOS 3.0になってまた少しもたつく感じに戻ってしまったのだが、キビキビ入力でき、アプリの起動も速い。とにかく何をしてもパッパと動き非常に気持ちいいのだ。CPUクロックのアップが確実に効き、メモリが2倍になったことで動きに余裕ができたのだろう。いずれにしても、3GSを一度触ってしまうともう3Gに戻れない。これまで使っていた3Gは、開発販売しているカメラアプリの作動チェック以外使い道が無く、常に開発環境の横に転がっている状態になりそうだ。
次に液晶パネルの天敵、指紋跡であるが、3Gではアンチグレアタイプのフィルムをずっと貼っていたが、3GSでは「指紋防止コーティング」されているので、今日のところはあらたにフィルムは購入せず、とりあえずそのまま使ってみた。もちろん全く目立たなくなるわけではないのだが、これなら十分許容範囲。フィルムを貼るとどうしても発色が濁りがちになるため、無いに越したことはない。しばらくこのまま使ってみるつもりだ。
他に気付いた点としては、内蔵スピーカーの音が若干良くなった。中域の分解能が高くなっている。本体のサイズは3G、3GS共全く同じなので、ずっと使っていた「Air jacket set for iPhone 3G」もそのまま3GSに装着できひとまず安心だ。
音量調整付になったヘッドセットは、普段お気に入りの「SENNHEISER MM 50」を使うため、今のところノーチェック。このままずっと箱に入ったままになる可能性が高い。
3Gと3GSの指紋跡比較。左がアンチグレアタイプのフィルムを貼ったままの3G。右が何も貼っていない3GS。こうしてみると指紋跡が目立つが、実際使っている時は気にならない | Air jacket set for iPhone 3GもそのままOK。サイズが同じなので、これまで3G用として売られているアクセサリー関連がそのまま使える |
3Gと3GSの速度比較。左が3G、右が3GS。ネットへはWiFiで接続。 ご覧のように圧倒的に速いのがわかる |
●まずカメラを使ってみる
筆者が3GSに一番魅力を感じているカメラ機能を早速チェック。この部分は、OSが3.0になっても3Gにはアシストするハードウェアが無いので、どうなるか全く想像が付かなかった。カメラアプリを起動して、何もしないとAFは自動的に中央で合うようになっている。次にピントを合わせたい部分へ指でタップするとAFが作動、指定した部分にピントがあう。露出はピントが合っている部分を中心に設定される。マクロ撮影はモードを切り替える必要は無く同じ操作でOK。これはなかなか便利だ。但し、相変わらず露出補正やホワイトバランスの調整などは無く、オートのみに徹している。
また200万画素から300万画素になり、イメージャが変わった関係もあるのか、随分色とコントラストがはっきり出るようになった。3Gのちょっと味のある写りも捨て難いが、3GSは今風になった。全体的になかなか好印象だ。国内のケータイ内蔵カメラより解像度こそ低いものの、これだけ写れば実用的には十分だろう。
OS 3.0のカメラ関連の話として1つ改善された点がある。それはMMSを使った場合、添付写真をリサイズする条件が変わったことだ。これまでパソコン用のメールアカウントやi.softbank.jpのアカウントを使ってメールアプリで写真を添付した場合、800×600ドット以上の写真は自動的に800×600ドットへ縮小。これはいいのだが、800×600ドット未満の写真も800×600ドットへ拡大して送信していた。これは非常に困った仕様で、例えばケータイの画面サイズに合わせて320×240ドットへリサイズして送信しても、自動的に拡大され受け側は800×600ドットになってしまうのだ。
しかしMMSを使えば、その基準が1,024×768ドットになり、これより大きい画像、例えばカメラで撮影した300万画素の写真は自動的に1,024×768ドットへ縮小して送信、これ未満の場合はリサイズ無しでそのまま送信される。そもそも小さい画像を拡大するのは画像が荒くなる上データ量も無駄に増え、デメリットばかりで好ましくない。このバグとも言えるメールアプリの仕様は、残念ながらOS 3.0になっても変わっていない。従ってMMSを使った方が便利だろう。
●結論
以上、iPhone 3GSを手にするまでと、手にしてから1日未満のファーストインプレッションをお届けした。「1年違うとここまで違うのか!」と言うのが率直な感想だ。使い込んでのレポートはまた別途お届けするとして、この調子だと、来年新機種が出ると、また残金を残したままの機種変。当面完済は難しそうだ。ぜひ、旧iPhoneから新iPhoneへの機種変プランを作って頂きたいと思う。
(2009年 6月 29日)
[Text by西川 和久]