三浦優子のIT業界通信

ビックカメラ、ヨドバシカメラがマイクロソフトの店頭施策を評価
~低価格版が人気で、オンラインへの興味はまだ低い



 マイクロソフトが、店頭向けに実施している施策が店頭でどう受け入れられているのか、ビックカメラ有楽町店、ヨドバシカメラマルチメディアAkibaの2店舗を現状を取材した。

●マイクロソフトのトレーニングにより的確な接客が可能に

 「Windows 7」、「Microsoft Office 2010」の発売にあたって実施した店頭向けトレーニングに関しては、「前バージョンとの違いなどを明確に回答できるようになったので、自信を持って販売できるようになった」と両店舗とも評価する声があがった。その一方で、夏のキャンペーン時点では主要店舗がポップを飾ってアピールした「PCでも地デジカ」は、現在の店頭では大々的にアピールされていない。その要因はどこにあるのか。

 ビックカメラ有楽町店の4階、ソフト売り場では、「Microsoft Office 2010」、「Windows 7」などマイクロソフトのパッケージ製品が好位置に置かれている。ソフト売り場の全員、4階の全販売スタッフのほぼ半数がセールストレーニングを受けたメンバーだ。

 ソフト売り場の責任者である同店東崎康孝主任は、「トレーニングを受けたことで、接客力、提案力は確実に上昇し、接客したお客さんの購入率が上昇したと感じている」と話す。

ビックカメラ有楽町店本館4F東崎康孝主任ビックカメラ有楽町店のソフト売り場には、マイクロソフト製品用デモコーナーを常設。デモを行ないながら、各商品の特徴をアピールしているビックカメラ有楽町店のOffice売り場

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaの2階、ソフト売り場でも、「セールストレーニングの効果は高い」と断言する。

 ソフト売り場担当者全員がトレーニングを受け、その結果、「Officeを販売する際の苦手意識がなくなった」とは、同店MAC・PCソフト・書籍専門チーム寺井貴威リーダーの言葉。

 また寺井氏は、「総論、各論それぞれを理解するトレーニングを受けたことで、お客様からどんな突っ込みを受けても答えることができるようになった」と話す。

ヨドバシカメラマルチメディアAkiba MAC・PCソフト・書籍専門チーム寺井貴威リーダーソフト売り場でも、Windows 7 Proffesionalをアピールするコーナーを設置Windows XPの出荷終了を知らせる特別ポップも

 Officeの場合、すでに前バージョンなどを使っている人が多く、「前のバージョンと比べてどこが違うのか」、「どんなことができるようなったのか」といった知識が無ければ答えられない質問が売り場担当者に寄せられることが多い。それだけに、具体的な質問に答えることができるようなトレーニングに対し、高い評価の声があがった。

 特にOfficeのUIに対しては、2007で採用されたリボンインターフェイスが、それ以前のバージョンのOfficeを使っているユーザーから馴染めないという声が強い。そうした声に、「実例を見せながら、こうやって使えばいいというところをアピールすることで、購入を躊躇していたお客様が購入に結びつくケースが実際にあった」(ヨドバシカメラ・寺井氏)というほど、トレーニングが購買に結びつくことになったという。

冴子先生

 また、Office 2010については、発売のタイミングで冴子 2010が店頭を周り、新機能をデモンストレーションを行なうなど店頭を盛り上げる施策がとられた。こうした施策に対しても、「店頭を盛り上げてくれる仕掛けは店頭としても、有り難い。実際にイベント時には多数のお客さんが訪れてくれたし、有り難い」(ビックカメラ・東崎氏)と評価する。

 ただし、こうした施策以上に、Office 2010ではパッケージの価格が下がる方が実戦力が高いため、売れ行きが好調な部分もあるという。

 2010年年末の人気商品となっているのは、ブルートラックマウスとOffice Home and Busineess 2010がワンパッケージとなってソフトのみの場合とほぼ同じ価格で販売されている限定版「ゴールドパック」だ。

 短期間に売り切れてしまったWindows 7の1周年記念パッケージについても同様で、コストパフォーマンスが高い限定パッケージが人気を集める傾向が高い。

現在の売れ筋は、「Microsoft Office Home and Business 2010ゴールドパッケージ」ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでも、現在売れ筋のOfficeはゴールドパッケージMicrosoft製品の売り場の上部には、Windows 7発売1周年を祝うポップも

 一方、ニュースでは盛んに話題になっているクラウドやオンラインサービスへの質問を寄せるお客さんは現状ではほとんどいないという。Windows 7、Office 2010ともにWindows Liveとの連動などオンラインサービスとの連動をセールスポイントとしているものの、それを求めて店頭を訪れる人はまだ少ないのが現状のようだ。

●PCの店頭売上はデスクトップが好調

 PC売り場では、エコポイントの影響は多少あったものの、PCの販売状況は決して悪くない。

 「ニュース等では、スマートフォンやiPadのような新しいものに注目が集まっているものの、実際にはそれらの商品では出来ないことも多い。手軽さを求めるのであればスマートフォン、iPadが人気だが、PCそのものの機能が必要となる人にはPCが必要」とビックカメラ有楽町店の吉岡智洋主任は指摘する。

 マイクロソフトではWindows 7発売時にOffice同様、店頭向けトレーニングを実施した。

 「どのバージョンで何ができるのか、これはトレーニングをきちんと受けていないと答えることができない。お客様からは、『ドメイン参加機能があるのはどれ』、『多言語対応が必要なのだが』といった専門的な質問も寄せられる。こうした質問に答えるためには、トレーニングは有り難い」と話すのはヨドバシカメラマルチメディアAkibaのPC売り場の村尾一彰氏。

 秋葉原という土地柄、ユーザー層も、ニーズも幅広い。ビジネスユースのユーザーから、ゲームユーザー、ごく普通のユーザーとユーザーによって質問内容も大きく異なる。そうした幅広い質問に答えるベースとなっているのがトレーニングだという。

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでは、ソフト売り場にも、PC売り場にもWindows 7 Professionalの専用コーナーを設けている。

 「プロを購入するのはビジネスユーザー。ほぼ指名買いでプロを購入するお客さんばかり」(ヨドバシカメラ村尾氏)という。

 Windows 7 Professionalに対しては、マイクロソフトがキャンペーンを実施していることもあってビックカメラでも専用コーナー作成を計画中。マイクロソフトの狙いは、家庭用PCで仕事をする人が多いことから、どうせ購入するのであれば仕事もできるPCをということだが、ビックカメラでも「プロは指名買い」と目的を持った人が購入することがほとんどのようだ。

ビックカメラ有楽町店本館5F吉岡智洋主任Windows 7 Proffessional搭載モデルについては、現在は個々の製品にポップをつけて対応しているが、専用展示コーナーを設置予定
ヨドバシカメラマルチメディアAkiba PC・ADSLチーム担当村尾一彰氏ハードウェアコーナーでのWindows 7 Proffesional搭載PCコーナー

 一方、マイクロソフトやPCメーカーがキャンペーンを行なっている「PCでも地デジカ!」に関しては、店頭ではほとんどポップなどを見ることができない。春のキャンペーンでは各店舗がポップを展示していたのとは対象的だ。

 これは「現在のデスクトップPCは地デジを見ることができるのが当たり前になってきているから」とビックカメラ、ヨドバシカメラの両店舗が口を揃える。地デジ機能を搭載したデスクトップPCの売れ行きも決して悪くはない。

 ビックカメラ有楽町店では、「一人暮らしの人にとっては、1台でPC、テレビ、さらにBlu-ray Discレコーダーとしても利用できるPCは、狭い部屋でも利用しやすいと好評。画面サイズでいえば、20から22型のもの。学生さんなど新生活を始める人が多い2月、3月にはさらなる売れ行きアップが期待できる」(吉岡氏)と地デジ付きデスクトップPCの売れ行きが伸びているという。

 両店舗共に、昨年は高い人気を集めていたネットブックは、「売れ行きが一巡し、伸びが止まっている」と指摘。ビックカメラ有楽町店では、「それをカバーするようにデスクトップの売り上げが伸びている」という。ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでは、「デスクトップよりも依然としてノートの人気が高いが、昨年に比べて高機能なものが人気」となっている。

 また、今後Windows搭載のスレートPCが登場への期待を聞くと、ビックカメラでは「iPadは発売当初は若い人がユーザーになると考えていたが、実際には年配の人の購入が多い。Windows版でもそういう需要が期待できるのでは」と、顧客拡大に繋がることへの期待するという。

 ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでも、「比較的年代が上の人に人気があるほか、企業でアンケート調査に使いたいといったニーズがあるようだ」とビジネス用途にも活用される見込みがあるという。

地デジPCコーナーは、夏モデルの時とは異なり、地デジカロゴをつけてのアピールは行なわれていない秋葉原の立地からか人気が高いゲーム専用マシン
デスクトップモデル、一体型ノートでは地デジチューナー搭載モデルが増えたことからヨドバシカメラマルチメディアAkibaではポップなどを使った地デジ搭載アピールは特に行われていない