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Macで終活。自分の死後にMacへアクセスできる人を指定しよう

 あまり考えたくないことだとは思いますが、もしあなたが亡くなったとき、Macはどうしますか? あなた以外にMacのログインパスワードを知らなければ、Macの中にある大切なデータに誰もアクセスできず、家族などに負担をかけてしまうかもしれません。そこで設定しておきたいのが、macOS Montereyから追加された「デジタル遺産プログラム」です。「Macで終活」を始めるなら、まずはこの機能をきちんと使いこなしましょう。

デジタル遺産プログラムの対象デバイスは、macOS Monterey以降を搭載したMac、またはiOS 15/iPadOS 15以降を搭載したiPhone/iPadです

デジタル遺産プログラムを理解

 Appleが提供する「デジタル遺産プログラム(Digital Legacy Program)」は、MacやiPhone、iPadといったAppleデバイスを使うユーザーが亡くなった際に、「故人アカウント管理連絡先」として指定された人が故人のMacのアカウントと個人情報にアクセスできる機能です。

 たとえば、あなたが亡くなった場合に備えて家族や友人を故人アカウント管理連絡先として追加しておけば、あなたの死後、家族や友人はAppleに許可申請をすることで、あなたのApple IDアカウントにアクセスし、iCloudやiCloudバックアップに保存されたデータのダウンロードや削除が可能です。

  • iCloud写真
  • メモ
  • メール
  • 連絡先
  • カレンダー
  • リマインダー
  • iCloudに保管されているメッセージ
  • 通話履歴
  • iCloud Driveに保管されているファイル
  • ヘルスケアのデータ
  • ボイスメモ
  • Safariのブックマークとリーディングリスト
  • iCloudバックアップ

 上記のリストが故人アカウント管理連絡先に指定された人がアクセスできるデータの一覧です。支払い情報やキーチェーンに保存されているパスワードなどの情報、アプリ内課金や購入したコンテンツへのアクセスはできません。また、アクセス可能な期間は承認から3年間に限定されています。

故人アカウント管理連絡先を追加

 Macで故人アカウント管理連絡先を追加するには「システム環境設定」から設定を行ないます。具体的には、[Apple ID]パネルの[パスワードとセキュリティ]から[故人アカウント管理連絡先]欄の[管理]をクリックし、「連絡先」アプリから故人アカウント管理連絡先を選択。

 すると、故人アカウントにアクセスするためのアクセスキーが発行されますので、これを故人アカウント管理連絡先に追加した人へ「メッセージ」アプリを使って送信したり、紙にプリントアウトまたはPDFで渡して大切に保管してもらいましょう。

 設定はものの数分あれば終えることができますし、Macからだけでなく、iPhoneやiPadからも行なうことが可能です。また、故人アカウント連絡先に追加するにはメールアドレスだけが必要なので、Apple IDやApple製デバイスを持っていない人でも追加できます。

システム環境設定の[Apple ID]パネルを開き、自分のApple IDでサインインしている状態でサイドバーの[パスワードとセキュリティ]を選択。[故人アカウント管理連絡先]の[管理]をクリックします
[故人アカウント管理連絡先を追加]をクリックして信頼できる人を指定します。ファミリー共有を設定している場合は、その人の名前が表示されます。新たに追加する場合は[ほかの人を選択]をクリックして「連絡先」アプリから選択します
デジタル遺産へのアクセスについての説明を確認したら、次の画面でアクセスキーの共有方法として印刷、または「メッセージ」による送信を選択します。選択したら[続ける]をクリックします
印刷した場合、32文字のアクセスキーとiPhoneで読み取れるQRコードが表示されます。この情報で故人のアカウントデータにアクセスしたりAppleデバイスのアクティベーションロックを解除できるので、厳重に管理しておきましょう
故人アカウント管理連絡先が追加されたら[完了]をクリックします。確認のプロセスで故人の誕生日の情報がリクエストされるので、もし異なる日付が設定してある場合は[誕生日をアップデート]をクリックして情報を正しく修正しておきます
故人アカウント管理連絡先は最大5人まで設定できます(13歳未満の指定は不可)。必要であれば[+]をクリックして、ここまでと同じ手順で追加しておきましょう。また、追加済みの連絡先を削除することもできます

故人アカウントへのアクセス方法

 故人アカウント管理連絡先に指定された人が故人アカウントにアクセスするためには、故人アカウント管理連絡先追加時に発行されたアクセスキーと、死亡診断書のコピーの2つを用意して、Appleに許可申請する必要があります。

 具体的には、Appleの「デジタル遺産」のページにアクセスして、Apple IDでサインイン。そして画面の指示に従ってアクセスキーの入力や、死亡診断書のコピーを提出するとAppleに承認され、故人アカウント管理者用の特別なApple IDが付与されます。

 そしてあとは、このApple IDを使って故人のMacにログインすると、Macのアクティベーションロックを解除でき、故人のiCloudやiCloud Driveのデータにアクセスできるようになります(故人のApple IDとパスワードは使えなくなります)。

 基本的にはすべてオンラインで手続きができるため、故人アカウント管理連絡先に指定された人の大きな負担にはならないでしょう。また、Appleはあなたの故人アカウント管理連絡先の有無を知るのみで、それが誰かを知ることはないなどプライバシーにも配慮されています。

 ちなみに、日本国内で死亡診断書に該当するものは、医師が交付する書面や市区町村が発行する死体火葬許可証や戸籍または除籍の全部事項証明書、死亡の記載がある住民票の写しなどが考えられますが、公的な書類のコピーであれば概ね問題ありません。

故人アカウント管理を委託されたユーザーが故人のアカウントにアクセスするには、Appleの「デジタル遺産」のページにアクセスし、Apple IDでサインインします。2ファクタ認証が有効な場合は6桁のパスコードを入力します
手続きには生前に発行されて共有された故人のアカウントへのアクセスキーが必要です。[アクセスする権利をリクエスト]をクリックし、次の画面で入力したら[続ける]をクリックします
続けて、故人の死亡診断書のコピー画像をアップロードする必要があります。Apple側が申請内容を審査し、確認が取れたときのみ故人のアカウントデータへのアクセスが可能となります

知っておきたい注意点

 このようにAppleのデジタル遺産プログラムは誰でも簡単に設定できるよう作られているのが特徴ですが、いくつか注意したいことがあります。

 まず、デジタル遺産プログラムで管理できるのは、あくまでもiCloudで保存されているデータの一部だけです。たとえば、GoogleやFacebookといった外部のサービスを利用している場合は、それぞれの故人アカウントに関する機能を用いて設定する必要があります。

 また、故人アカウント管理連絡先がアクセスできるデータの種類を事前に指定することはできない点にも注意しましょう。つまり、故人アカウント管理連絡先に指定された人は故人のiCloudやiCloudバックアップの対象データにすべてアクセス可能なので、もし死後に見られて困るものがある場合は事前に削除しておく必要があります。

 そして最後に、故人アカウント管理連絡先のアクセスキーはくれぐれも失くさないよう注意しましょう。アクセスキーがなくても、故人の相続人や正当な代理人であることを証明する裁判所の書類などがあれば故人のアカウントへのアクセスを申請できますが、手続きが複雑となり時間がかかってしまうことが考えられます。

iCloud以外のサービスはそれぞれ設定や手続きを行なう必要があります。Googleの場合は「アカウント無効化管理ツール」、Facebookの場合は「追悼アカウント管理人」にアクセスしましょう
故人アカウント管理連絡先を設定していない場合の手続きに関しては、Appleのサポートページ「亡くなったご家族の Apple アカウントへのアクセスを申請する方法」、またはAppleのサポートに問い合わせることをおすすめします