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iiyama 「ProLite XUB3490WQSU」

~sRGBカバー率100%対応の広色域ワイド液晶

ProLite XUB3490WQSU
液晶サイズ34型
パネル方式AH-IPS方式
表示解像度3,440×1,440ドット
アスペクト比21:09
画素ピッチ0.2325×0.2325mm
表面処理非光沢
タッチパネルなし
バックライト方式LED
応答速度14ms(黒白黒)、5ms(中間色)
コントラスト比1,000:1(Adv. Contrast有効時80,000,000:1)
視野角水平178度/垂直178度
輝度320cd/平方m
表示色約10.7億色
走査周波数水平
HDMI/MHL、HDMI1 : 30~92kHz
HDMI2、DisplayPort : 30~100kHz
垂直 : 24~30Hz、60~75Hz
チルト角度下4度、上20度
高さ調節130mm
スイベル左右90度
ピボット機能なし
入力端子DisplayPort
HDMI 2.0
HDMI/MHL
HDMI
ステレオミニジャック
USB 3.0アップストリームポート
出力端子USB 3.0×2
USB 2.0×2
ヘッドフォン出力
スピーカー3W+3W
VESAマウント対応(100×100mm)
電源内蔵
消費電力標準48W、最大110W
付属品DisplayPortケーブル
HDMIケーブル
オーディオケーブル
USBケーブル
電源ケーブル
本体サイズ827.5×230×404.5~534.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量8.5kg

 株式会社マウスコンピューターが展開するiiyamaブランドから、アスペクト比21:9対応の34型ワイド液晶新モデル「ProLite XUB3490WQSU」が登場した。10bitカラー対応、sRGBカバー率100%対応と、広色域表示に対応しており、映像処理など優れた表示品質を要求する用途をターゲットとした製品となっている。価格はオープンプライスで、現時点ではマウスコンピューター楽天市場店にて129,800円で販売されている。

本体デザイン

 「ProLite XUB3490WQSU」は、アスペクト比21:9の34型ワイド液晶パネルを採用する液晶ディスプレイだ。この手のワイド液晶は、当初ゲームや映像表示など、いわゆるマルチメディアやホビー用途の製品から投入が始まったが、現在では高解像度化や広色域表示に対応することで、ビジネスシーンや画像・映像処理用途をターゲットとした製品も増えつつある。本製品も、ホビー用途だけでなく、ビジネスシーンや映像処理用途など、よりハイエンドな用途をターゲットとした製品となっている。

 本体デザインは、ホビー向けの奇抜なデザインではなく、比較的落ち着いたものとなっている。本体カラーはブラックで、樹脂素材を採用しているため、高級感はないものの、本体の薄型化や狭額ベゼルの採用などにより、それほどチープな感じはしない。

 本体サイズは、34型ワイド液晶パネルを採用していることもあり、827.5×230×404.5~534.5mm(幅×奥行き×高さ)と特に横幅がかなり大きくなっている。それでも、液晶の左右および上部の非表示領域がそれぞれ10mmに狭められていることもあって、サイズの割にはコンパクトにまとめられているとも言える。本体重量は8.5kgある。

 スタンド部は、iiyamaブランドのほかの液晶ディスプレイでも採用されているものとほぼ同等のものとなっている。チルト角度調節は下4度から上20度、昇降は130mm、スイベルは左右90度の範囲内で調節可能となっており、機能性は十分満足のいくものだ。

 また、スタンドはそれぞれ適度な力で調節できるようになっており、位置調節もまずまず軽快だが、液晶部分の重さがあるためか、ぐらつきはやや大きいように感じた。高さ調節はもっとも低くした状態でロックがかかるようになっており、ロック解除には液晶背面に手を回す必要があるため、やや面倒に感じる。なお、機構的にはピボット機構に相当する回転機構も備えているが、縦画面での利用には対応しない。

 電源ボタンやOSD操作、入力切り替えなどのボタンは、液晶下部右寄りの側面に配置されている。ボタンは全て物理ボタンで、下部側面にあるため目立たないようになっている。ただし、ボタンが横一列に並んでいるため、直感的なOSD操作はやや難しいと感じた。

液晶パネル

 本製品は3,440×1,440ドット表示対応の34型ワイド液晶パネルを採用する。パネルの方式はAH-IPS方式。ワイド液晶ディスプレイでは、液晶面がカーブしている湾曲タイプの液晶パネルを採用する製品も増えているが、本製品は水平な平面タイプの液晶パネルを採用している。タッチパネルは非搭載。

 AH-IPS方式のパネルを採用しているため、視野角は上下/左右とも178度と十分に広い。サイズの大きいワイド液晶では、正面に座って見る状態でも中央付近と周辺部との視野角が大きく異なるが、広視野角のため中央部から周辺部まで、発色や明るさにムラを感じることはなかった。

 バックライトはLEDを採用しており、輝度は320cd/平方mとこのクラスの液晶ディスプレイとしてトップクラスの明るさを確保。加えて、バックライトはフリッカーフリー仕様となっており、ちらつきを感じることもない。眼精疲労の原因の1つとされているブルーライトを低減する「Blue Light Reducer機能」なども搭載されており、長時間の作業でも目の負担を軽減できる仕組みを搭載する点も特徴の1つと言える。

 コントラスト比は標準で1,000:1だが、ダイナミックコントラスト機能の「Adv. Contrast機能」を有効にすると8,000万:1と大きく改善される。10bitカラー対応かつsRGBカバー率100%の広色域表示対応と合わせ、優れた表示品質を備えている。応答速度は中間色で5ms、黒白黒で14msと、IPSパネルとしてはほぼ標準的だ。

接続端子

 映像入力端子は、DisplayPort×1系統、HDMI 2.0×1系統、HDMI/MHL×1系統、HDMI×1系統の全4系統を用意。アナログRGBのミニD-Sub15ピンは用意されていない。なお、4系統の映像入力のうち、DisplayPortとHDMI 2.0ポートでは3,440×1,440ドット@60Hzの映像信号に対応するが、HDMI/MHLおよびHDMIポートでは3,440×1,440ドット@30Hzまでの対応となる。そのため、PCとの接続にはDisplayPortまたはHDMI 2.0ポートを利用したい。

 映像以外の端子は、ミニプラグ仕様のマイク入力端子とヘッドフォン出力端子、USB 3.0×2およびUSB 2.0×2のUSB Hub機能を備える。マイク入力端子とヘッドフォン出力端子は液晶背面下部に、USB Hub機能を実現するUSBアップストリームポートとダウンストリームポートは本体右側面側に用意する。利便性を考慮すれば、ヘッドフォン出力端子も本体側面に用意してもらいたかった。

 HDMIやDisplayPort、音声入力端子から入力された音声は、本体に内蔵するステレオスピーカーから再生可能。スピーカー出力は3W+3Wで、音質は液晶ディスプレイ内蔵スピーカーとして標準的。音楽や映像コンテンツを高音質で楽しみたいなら外部スピーカーを利用したいが、手軽に音を鳴らしたいということであれば十分に活用できる。

OSD

 OSDは、どちらかというとシンプルなものとなっている。コントラストや輝度、色温度、RGBの色合い調節など、基本的なものは網羅しているが、プロ向けグラフィックス用途の製品に比べると、設定できる項目はそれほど多くない。そういった意味では、グラフィックスのプロからすると、やや物足りなく感じるかもしれないが、一般ユーザーやビジネスユーザーが利用する場面では、大きな不満はないはずだ。

 OSD操作は、先に紹介しているように、液晶ベゼル下部側面のボタンを利用する。横一列に並ぶボタンを使って、上下左右に項目を移動しつつ操作することになるため、操作ガイドの表記は用意されているものの、直感的な操作が行なえず戸惑うことがあった。慣れれば戸惑わず操作できるかもしれないが、OSDの操作性に関しては、ボタンの配置を工夫して欲しいところだ。

画質

 本製品は、10bitカラー表示やsRGBカバー率100%対応を謳うiiyamaブランドの液晶ディスプレイの中でも、特に表示品質に優れるモデルとして位置付けられている。実際にデジタルカメラで撮影した写真を表示してみても、発色は十分に鮮やかで、細かな色合いの変化も潰れることなく表示される。

 標準のコントラスト比は1,000:1だが、ダイナミックコントラスト機能の「Adv. Contrast機能」を有効にすると8,000万:1に改善。実際に、夜景を撮影した写真を表示してみると、暗部や極端に明るい部分も潰れることなく表示されるのはもちろん、しっかりとした黒が表示される点も、このクラスの液晶ディスプレイとしての優位点になると感じる。この辺りは、液晶パネルの発色性能やコントラストの高さが遺憾なく発揮されていると言える。

 また、ワイド液晶として大型かつ高解像度のパネルを採用していることで、より多くの情報を一度に表示できる。複数のビジネスアプリを同時利用する場合にも、ウィンドウを重ならないように横に並べても、それぞれに十分な表示領域を確保できる。加えて、サイズが大きいことで、小さな文字まで十分な視認性が確保できる。文字を等倍表示した場合でも、見づらいと感じることはなかった。

 応答速度は黒白黒で14ms、中間色で5msと、AH-IPS方式パネルとして標準的で、動画を再生した場合でも残像が気になることはなかった。家庭用ゲーム機を接続してゲームをプレイし、わざと高速に視点を移動させた場合などに若干残像を感じる場面もあったが、特別不満を感じるほどではなく、一般ユーザーも不満に感じることはないだろう。同様に、表示遅延も個人的にはほとんど感じることはなかったので、よほど高速応答性や低表示遅延を求めない限り、ゲームプレイ用途にも十分対応できると言える。

 販売価格は129,800円と、同クラスの製品と同等かやや安い価格となっている。そういった中、10bitカラー表示やsRGBカバー率100%に対応する高品質表示に対応している点は、十分な優位点となるだろう。サイズが大きいため、設置場所の確保が難しいと感じるかもしれないが、24型クラスの液晶ディスプレイをデュアルで使うことを考えると、逆にこれ1台で済むため省スペースで利用可能と言える。

 プロのグラフィックス用途としては、ややOSDの機能面で見劣りする部分もあるが、一般ユーザーやビジネスユーザーを中心に、申し分ない表示品質や利便性を備えている。コストパフォーマンスに優れる液晶ディスプレイとしてお勧めしたい。

(平澤 寿康)