買い物山脈

Google「Nexus 7(2013)」LTEモデル

~ローコストで運用できるSIMロックフリーのLTEタブレット

製品名
Google「Nexus 7(2013)」 LTEモデル
購入価格
39,800円
購入日
2013年9月13日
使用期間
1カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
LTEモデルは側面にSIMカードスロットを備える。下はWi-Fiモデル

 本誌連載「電子書籍タッチアンドトライ」の評価のために購入したNexus 7(2013)を、およそ1カ月経って手放すことにした。理由は単純、同じNexus 7(2013)のLTEモデルを購入したからだ。Wi-Fiモデルを約1カ月間使った結果、電子書籍用途や動画鑑賞はもちろんのこと、仕事の遠征などでも十二分に使えるという確信を得たので、外出先での通信が可能なLTEモデルに買い替えることにしたというわけだ。

 といったわけで、Nexus 7そのものの特徴紹介や電子書籍端末としてのレビューは前述の記事、およびHothotレビューをご覧いただくとして、今回はSIMカード導入時のポイントや注意点、さらに本製品が備える無接点充電機能について見て行きたい。

IIJmioのSIMカードを導入。SMSへの対応がポイント

 LTEモデルを購入するまでの約1カ月間、外出先ではWi-FiモデルをLTEルーターと組み合わせて運用していた。ただLTEルーターを常時オンにしているわけではないため、やはり取り回しが面倒だと感じることが多く、それが今回LTEモデルの購入を決断した動機だ。

 さて、LTEモデルはSIMロックフリー端末ということで、自前でSIMカードを探す必要がある。筆者の場合、しばらく前から手持ちのスマートフォン「Xperia Z」をIIJmioの「高速モバイル/D ライトスタートプラン」のSIMカード(microSIM)と組み合わせて利用しており、今回はこのSIMカードを本製品へと流用。Xperia Zには新たに購入した日本通信の「スマホ電話SIM LTEプラン月額定額2980」を装着して運用することにした。

左がIIJmioの「高速モバイル/D ライトスタートプラン」、右が日本通信の「スマホ電話SIM LTEプラン月額定額2980」のパッケージ。どちらもネットで購入したものだが、前者は事業者側の設定が完了してから送られてくるのに対して、後者は届いてから事業者に申し込んでしばらく待たされるなど、開通までのプロセスはやや異なる
どちらもドコモのminiUIMカードが同梱される。型番を見る限り同一だ
裏面。事業者によってシールなどの仕様が異なる
カードから取り外したSIMカードをトレイに装着し、Nexus 7へと挿入する
Nexus 7のAPN設定。あらかじめIIJmioが登録されているので、特に手動で設定する必要はない
端末の状態を表示したところ。ネットワークは「NTT DOCOMO」となる
ロック画面下段などでも、表示は「NTT DOCOMO」

 新たに購入した日本通信のSIMカードをNexus 7用にせず、わざわざIIJmioのSIMカードと入れ替えた理由は、音声通話/SMSへの対応だ。これまでXperia ZをSIMカードと組み合わせて運用する中で、音声通話は利用しないにせよ、SMSだけは最低限使えないと、各種ウェブサービスやアプリの登録にあたって不便だと感じたからだ。一方、新しく購入するNexus 7はもともと音声通話に対応していない上、また(筆者の使い方では)SMSがそれほど必須というわけではない。

 そのため、今回のNexus 7 LTEの購入をきっかけに、音声通話/SMSに対応した日本通信の「スマホ電話SIM LTEプラン月額定額2980」を購入してXperia Zに導入し、それまで使っていたIIJmioのSIMカードを玉突き式にNexus 7に流用したというわけだ。SIMカードのサイズはどちらもmicroSIMなので、単純に入れ替えるだけで済む。事業者側に利用端末を知らせているわけでもないので、登録変更の手続きなども必要ない。

一部のアプリではSMS非対応だと認証番号が受け取れず、サービスを有効化できない。音声通話に対応したSIMカードであれば一般的にこのようなことはない(このスクリーンショットはXperia Zのもの)
IIJでは10月からSMSに対応したSIMカードが追加された(プレスリリースより)。既存のカードについては交換することでSMSが利用可能となる

 もっとも、10月に入ってから、IIJmio 高速モバイル/DのSIMカードは交換手続き(有償)をとればSMSに対応するようになったので、交換後は筆者のNexus 7 LTEでもSMSが使えることになる見込みだ。IIJmioはあわせて月間2GBのライトスタートプラン月1,974円が1,596円へとなる料金の値下げも発表しており、SMSオプション147円を加えた月額合計1,743円が、筆者のNexus 7 LTEにおける今後の通信費となる見込みだ(SMSの送受信は1通あたり3.15円の従量制)。LTEでの高速通信に対応しながら、これだけ運用コストが低いことは、やはり大きな魅力だ。

ファイアウォールアプリの導入で、アプリ単位でLTEでの通信をブロック

 今SIMロックフリー端末の導入を検討している人にとって気がかりなのは、実際に使用した場合、日々どれくらいのデータ量を消費するかということだろう。筆者はどちらかというとライトユーザーだが(そもそも毎日欠かさずLTEによる通信を行なっているわけでもない)、参考になる点は少なからずあるはずなので、ざっとまとめておきたい。

 先にも述べたように、筆者がIIJmioで契約しているプランは月間の上限が2GBまでの「ライトスタートプラン」だ。日毎ではなく1カ月トータルでデータ量を計算するので「通信を行なうのは月にほんの数日だが、使う時はそこそこのデータ量がまとめて発生する」という筆者の使い方に最適だ。100MBあたり315円で追加購入もできるので、万一超過してしまった時でも対応は容易だ。こうした点がクリアなのは、安心感があってよい。

 実際の用途はというと、外出中のWebブラウジングと地図閲覧が中心で、まれに打ち合わせの際にDropboxないしは自宅のNASにリモートでログインして資料(おもにPDF)をダウンロードするというのが主だ。これだけなら、今までSIMロックフリーのXperia Zを運用する中で、月間2GBという制限でおおむね問題がないことがはっきりしている。

データ転送量はAndroidの[設定]→[データ使用量]で確認できる。警告を出すラインと通信を制限するラインがそれぞれ設定できるので、データ量の制限があるSIMカードを使う場合には事前に設定しておくとよい

 懸念点があるとすれば、Xperia Zに比べて画面サイズが大きくなったことで地図などを使う機会が増え、転送量が増大するであろう点だ。例えばGoogleのストリートビューであれば、4~5分見ただけで100MBを超えることも珍しくないので、これについては運用の側で注意する必要がありそうだ。それ以外では、Dropboxの写真自動アップロードを「Wi-Fiのみ」にするなど、アプリの機能によっては留意すべき点はいくつかある。本製品の目玉機能の1つであるテザリングについても要注意なのは言うまでもないだろう。

 もっとも、こうして注意をしていても、たまに外出先でとんでもない大容量データを転送してしまうことがある。筆者が先日うっかりやらかしたのは、外出先でKindleストアで本を購入し、ちょうどその時接続していたLTE回線を経由してダウンロードしてしまったことだ。アプリ別の転送量で、Kindleアプリが突出した容量になっていて、ようやく気がついたという体たらくである。

 これについては、その後ファイアウォールアプリを導入することで対処している。「NoRootファイアウォール」というアプリなのだが、これを使えば、Wi-Fiなら通信するがLTEでは通信しないといった制御がアプリ単位で行なえる。今回の例であれば、KindleアプリはWi-Fi環境の場合のみ通信が行なえるようにしておけば、うっかりLTEで大容量データをダウンロードする心配がなくなるというわけだ。

うっかりKindleでコミックをダウンロードした時のデータ使用量のグラフ。Xperia Zで運用していた当時のものだが、外出先で頻繁に利用しているChromeはともかく、Amazon Kindleの通信量が234MBとそこそこの量に跳ね上がっていることが分かる
Androidアプリ「NoRootファイアウォール」。これを使えばアプリごとに、Wi-Fi/LTEそれぞれで通信するか否かを制御できる。この画面はKindleアプリに対して、Wi-Fiなら通信するが、LTEでは通信しないよう設定している状態

 この設定だと、KindleでいうところのWhisperSync、いわゆる既読位置の同期などもブロックされてしまうが、いざとなればこのアプリ自体を一時的にオフにすればよいだけなので、大きな問題ではない。LTEによる不用意な大容量ダウンロードを防止するという意味では、非常に有用なアプリと言える。このほか、ロケーションによって通信環境を切り替えるアプリなども、使い方によっては有用だろう。

 ところでもう1つ、Wi-FiではなくLTEでの通信が発生しやすい要因として、自宅内の無線LAN環境が不安定なケースが挙げられる。無線ルーターとの通信が頻繁に切断されることにより、一時的にLTEに切り替わり、通信量が増える羽目になるというものだ。そもそもたいしたデータ量ではない上、前述の設定さえ行なえばそれほど影響が出ることはないし、根本的に自宅ではLTEをオフにしておけばよいのだが、どうにも気持ち悪さは残る。

 筆者宅ではどうやら2.4GHz帯の電波干渉に問題があるようなので、今のところ5GHz帯のIEEE 802.11aに通信を固定することで対処できているようだが、もしこれが無線ルーターの品質に起因するのであれば、安定して通信ができる無線ルーターに買い替えるのが近道ということになる。無線LANがいまいち不安定で、気がついたら切断されていることがあるという人は、注意したほうがよいかもしれない。

使うと手放せなくなる無接点充電。充電パッドは3,000円程度で購入可能

 ところで本製品は、専用アダプタやUSBケーブルを繋がなくとも充電パッドの上に本製品を置いておくだけで充電が行なえる無接点充電(Qi)に対応している。この使い勝手についても見ていこう。

 Nexus 7の従来モデルでは、本体側面に充電用の接点があり、オプションの専用充電スタンドを組み合わせることで充電が行なえた。今回のモデルではこれが廃止され、かわりにこのQiに対応した。より汎用的な仕組みが取り入れられたということで、ユーザーからするとありがたい。

 筆者が今回購入したQi対応の充電パッドは、パナソニックの「QE-TM101」という製品。発売されたのはおよそ2年前だが、7型タブレットを安定して乗せるのに適したサイズで、Nexus 7にもしっかりと対応している。

パナソニックの無接点充電パッド「QE-TM101-K」。本稿執筆時点ではどこのショップもかなり品薄。ここにきて販売数が増えているのか、あるいは後継製品の登場を控えて生産を絞っているのか、理由は不明だ
Nexus 7とのサイズ比較。面積は146×170mmで、ポータブルCDドライブと同等

 使い方は簡単で、台の上に本製品を乗せるだけ。送電コイルが自ら適切な位置に移動し、青色LEDが点灯して充電が開始される。あらゆる素材や厚みでテストしたわけではないが、保護ケースをつけたままでも認識されることが多いので、そうした意味でも使い勝手はよい。

 気になる充電時間だが、バッテリが数%以下で充電を開始したところ、4時間弱で満充電となった。通常のAC経由だと満充電まで3時間程度なので、十分に許容範囲だ。就寝前にセットすれば翌朝に満充電になるし、会社などで利用する場合、夕方頃に外回りから戻ってきてすぐセットすれば、帰宅時にはまた満充電に近い状態になっている計算だ。なにより、使いたくなればすぐ充電を中断して使い、終わったらすぐに充電に戻ることができるという、有線接続時にはないフットワークの軽さは魅力だ。

上にNexus 7を乗せると充電がスタートする。この写真では隠れているが、充電中は本体右上のLEDが青く点灯する
内部の送電コイルが自ら最適な位置に移動してくれるので、置き方は無造作でかまわない。ちなみに画面側が下向きだと充電は行われない
【動画】送電コイルが移動し、充電が始まる様子。ギミックとしてもなかなか面白い

 本音を言うと、もうすこし充電パッドの面積が縦横どちらかに長ければ、Nexus 7のフットプリントとのバランスがよくなりそうなのだが、あまりそこにこだわるべきポイントでもないだろう。使い勝手、充電速度など申し分なく、また実売も平均3,000円台と手が届きやすいのもよい。これから長く使っていこうとするユーザーは、チェックする価値はあるのではないかと思う。

SIMロックフリー端末のこれからの増加に期待

 以上、Wi-Fiモデルを約1カ月、そしてLTEモデルも約1カ月使ってきたわけだが、個人的には非常に満足している。画面のギラつきを抑えるために非光沢シートを貼るなど、細かいところでは手を加えているが、全体を通して使い勝手にストレスは溜まらず、ポテンシャルの高さを感じる。いい意味で、使用中に端末の存在を感じさせないモデルである。

今回の趣旨からは外れるが、Wi-Fi対応の7型タブレットの価格競争もすさまじい。右は本稿執筆時点では国内未発表のKindle Fire HD(2013)だが、従来モデルよりも薄く軽くなり、それでいて139ドルと破格のプライスである。本製品については追って電子書籍端末としてのレビューをお届けするのでご期待いただきたい

 唯一迷いどころなのは、39,800円という価格だろう。SIMロックフリーで通信費は工夫次第で抑えられるとはいえ、2012年モデルでは3G対応モデルは29,800円だったので、初期投資額としてはやや割高な感は強い。また先月には、LTEには非対応ながら、同じく7型で通話にも対応したASUS「Fonepad 7」も登場している。内蔵メモリの容量も違うので一概には比べられないが(Fonepad 7は16GB、本製品は32GB)、Fonepad 7はmicroSDスロットを搭載しているという利点もある。

 もっとも、そこはSIMロックフリー端末ということで、もし今後さらに魅力的な製品が出てきた場合も、契約期間の縛りもなくSIMカードを差し替えて乗り換えられるのは大きな利点だ。SIMロックフリーのXperia Zから本製品に引っ越した今回の筆者が、まさにその典型的な例である。タブレットではなくスマホだが、登場が噂される「Nexus 5」など、選択肢は少ないように見えて徐々に増える傾向にあるので、SIMロックフリーの端末が登場するたびに懐具合をみながら一喜一憂する日々が続きそうだ。

(山口 真弘)