Hothotレビュー

Google(ASUS)「Nexus 7 32GB LTE」

~国内キャリアのSIMでテザリングもできる、超高精細7型タブレット

「Nexus 7 32GB LTE」
発売中

価格:39,800円

 「Nexus 7」は、ASUSが製造を手がけ、Googleとのダブルブランドで提供される製品(2012年モデル含む)で、星の数ほどあるAndroidタブレットの中で、燦然と輝くファーストパーティー製品だ。他社製品と比べ、平均より高解像度で、可搬性も高いという特徴はあるが、どちらかというとNexusシリーズはハードウェアの仕様よりも、Googleが今後実装する機能や新OSが率先して導入されることが注目される、アーリーアダプタ向けの製品と言えるだろう。

 しかし、Nexus 7(2013)が注目されたのには、日本でもLTE版がSIMロックフリーで発売されることになったという仕様面も大きく起因してる。スマートフォンでテザリング対応端末が増えたことで、タブレットやPCにWANモデムを内蔵させる必要性は下がりつつある。だが他方で、データアクセスに用途を絞ったMVNO SIMも多数登場しており、安価に運用できほか、本製品は海外の周波数にも幅広く対応するので、海外旅行/出張時のモバイルルーターとしても使えると目論む人もいるだろう。

 そんなわけで、Nexus 7(2013)のWi-Fi版は8月28日に発売され、すでにレビューはいくつか上がっていると思われるが、9月13日に出荷開始となったLTE版のレビューをお届けする。

323ppiの超高密度液晶

 まずは、本製品の仕様を確認しよう。CPUはSnapdragon S4 Pro(1.5GHzクアッドコア)、メモリは2GB、ストレージはWi-Fi版は16GBと32GBの2種類があるが、LTE版は32GBのみ、液晶は1,200×1,920ドット(WUXGA)表示対応7型でIPSパネルを採用する。OSは最新のAndroid 4.3だ。

 インターフェイスは120万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ、IEEE 802.11a/b/g/n無線LAN(2.4/5GHz)、Bluetooth 4.0、Micro USB(SlimPortによるHDMI出力対応)、NFCなどを装備。センサー類は、加速度計、GPS、コンパス、周囲光、ジャイロスコープを搭載する。

 Snapdragonシリーズとしては、最近では600シリーズなどを搭載する製品も発表されており、S4 Proはそれよりは1世代古いが、大きな違いはクロックくらいで、アーキテクチャは現役であり、いまだトップクラスの性能を持つ。

 メモリ/ストレージ容量は一般的だが、液晶は7型ではまだ採用例が少ない、WUXGAを採用。解像度では9.7型のiPad(2,048×1,536ドット)より一回り小さいが、画素密度は323ppiと、iPadの264ppiを上回る精細さを実現している(ちなみに、iPhone 5sなどは4型1,136×640ドット、326ppi)。

 カメラの仕様も目立つものではないが、Nexus 7(2012)が前面カメラしかなかったのと比較すると、大きな改善だ。カメラの画質、機能については後に詳述する。

 Micro USBは、SlimPortに対応しており、専用のケーブル/アダプタを使うと、ディスプレイをHDMIで外部出力できる。ただし、見かけ上はMHLと同じだが互換性はない。Androidタブレットで画面の外部出力を利用しているユーザーは少ないと思われるが、同じようなコネクタ/機能で異なる仕様が存在するのは、ユーザーにとっては好ましくないだろう。このほかは、NFC(前モデルも搭載)とLTEモデムを搭載する以外、インターフェイス面で際立った特色はない。

 本体サイズは114×200×8.65mm(幅×奥行き×高さ)、重量は299g(LTEモデル)。これは、Nexus 7(2012)と比べて、横幅が約6mm狭く、厚さが約2mm薄くなり、重量は約40g(Wi-Fiモデル同士なら約50g)軽くなっている計算だ。このあたりは1年間の技術の進化を感じさせる。ただし、これは公称値。横に並べて気付いたのだが、奥行き(写真だとY軸方向)は、公称だと1.5mmしか違わないのだが、目測ではもっと差がある。ということで実測してみたところ、新型は縦横が約113×198mm、旧型は約119×195mmだった。つまり、横幅は確かに6mm縮んでいるが、縦には3mmほど伸びている。といっても、その点が可搬性に与える影響は小さく、それよりも薄く軽くなっている点を評価すべきだろう。

 薄型/軽量化には、バッテリ容量が4,315mAhから3,950mAhに減っていることも寄与していると思われるが、Webブラウズ時で10時間、動画再生時で9時間という駆動は、前モデルからほとんど変わっていない。つまり、前モデルからは性能を引き上げつつ、バッテリ駆動時間はそのままという形だ。なお、バッテリはQi互換機によるワイヤレス充電が可能になっている。

正面
裏面。ラバー的な手触りの、シンプルな仕上げ
右側面に電源ボタン、音量ボタン、SIMカードスロット
上面にイヤフォンジャック
左側面
下面にMicro USB(SlimPort対応)
背面カメラが追加された。ちなみに、音量ボタンでもシャッターを切れる
横持ちにした時に左右に位置するように2つのスピーカーを内蔵
SIMスロットはピンを差し込み、
押すと開く
SIMはマイクロタイプ
背面には大きくNexusのロゴ。NFCも内蔵
下の方にはASUSのロゴも併記
旧型(右)との比較。公称値以上に新型の方が縦方向に長い
厚さは一目で薄くなったことが分かる

使い勝手

 モバイルデバイスとして7型は、比較的小さな日本人の手にも馴染むし、画像や文字が電子書籍やWebの閲覧に向いた大きさになるといった理由から歓迎されることが多い。特にNexus 7(2013)は、重量が軽くなったので、より取り回しが楽になった。

 それでも、ベッドなどで仰向けになって寝転がりながら使っていると手はつかれる。そもそもスマートフォンでも疲れるし、何も持たず肘から上を上げ続けてるだけでも疲れる。ので、寝ながらの使い勝手が劇的に良くなったかというと、過度の期待はしない方がいいというか、どの端末も似たり寄ったりと言えるのだが、同じNexus 7で比較すると、新型は見た目の高級さは上がっているが、ディンプルがなくなったこともあってか、やや滑りやすくなっている。そのため、落としたりしないよう、ちょっと気を遣う。

 液晶については、まずIPSパネルなので、視野角は広く、浅い角度から見ても、色が反転するようなことはない。画質の面で、最も特筆すべきは、1,920×1,200ドットという高解像度を実現している点だ。Androidの場合、自動的にスケーリングを行なうので、液晶サイズが同じなら、地図やWebページで表示される範囲は同じだが、文字や線の精細さが明らかに向上する。1,280×800ドットの旧型で、PC WatchのPC版サイトをフル表示させても、文字の視認性は十分確保できるが、横に並べてみると新型の方が読みやすい。また、Googleマップでは、表示される地名が若干増え、閲覧性が増す。

 もちろん写真についても、画素密度が増すことで画質は向上するのだが、フルスクリーン表示した写真だけでなく、ソーシャル系アプリのユーザーのアイコンなども確実に見栄えが変化する。PlumeというTwitterアプリでは、アイコンや画像のサムネールが従来製品だとエッジがややぼやけたくすんだ感じで、これが普通なのだと思っていたのだが、Nexus 7(2013)では非常にくっきりとしたものになる。例えるなら、旧型はMPEG-1、新型はMPEG-4エンコードしたような差がある。ただし、Facebook公式アプリや、Chromeでは、サムネール画像の見栄えに有意な差は認められなかった。

 なお、色合いは、新型、旧型を並べて比較すると、旧型はやや黄色がかっており、個人的には新型の色味の方が好みだ。

Nexus 7(2013)でPC Watchを表示したところ
Nexus 7(2012)でPC Watchを表示したところ
それぞれの表示をデジカメで撮影したもの。上側が新型。旧型は若干文字の縁がぼやけており、全体的に黄色がかっている

 スピーカーは2カ所にあり、横持ちの際、ステレオになる。ただ、背後方向に向かって穴が空いているので、ユーザーに聞こえる音量が小さくなる。YouTubeを見たり、音楽を聴くのには十分な音量が出ているが、例えば、左右を両手で覆うようにすると、手のひらに音が反射して音量が増す。別売でいいので、そういう効果を持ったスタンドがあるといいように思う。

 WANモデムについて、NTTドコモLTE SIMを利用したところ、挿しただけで、自動的にAPN設定までなされ、即座にデータ通信ができるようになった。また、テザリングも問題なく実行できた。最近はテザリング可能なスマートフォンが増えており、PCやタブレットに無線WANを搭載する必要性は薄れてきているものの、本製品はSIMロックフリーであるため、海外に持って行った際に、現地でSIMを購入すれば、すぐ利用でき、モバイルルーターになるので、出張や旅行が多い人にはうってつけと言える。

 参考までに、電波状況の良い場所で、深夜2時にスピード測定を行なったところ、下りが約10Mbps、上りが約6Mbpsという良い結果が出た。

 このほかのキャリアのSIMは試せていないが、Googleでは、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセスのLTE SIMにも対応するとしている。

NTTドコモのSIMを挿したら、mopera Uが自動的に選択されていた。なお、mopera Uは任意の利用申し込みが必要
テザリングも可能

 使い勝手での欠点を挙げると、旧型もそうだが、microSDカードに対応していない。Androidタブレットでは、16GBあれば、相当の数のアプリや写真を溜め込めるが、microSDカードがあるに超したことはない。さほどコストをかけずに実装できると思うので、なぜ搭載しないのか疑問が残る。

アプリ

プリインストールアプリは1画面に収まる程度

 プリインストールされてるのは、Google純正のものだけで、28個と非常に少ないし、どれも見慣れたものばかりだ。もちろん、Google Playストアを利用できるので、好みのアプリをいくらでも追加できる。

 そんな中、Android 4.3からの標準となっているものだが、まだAndroid 4.3端末が少ないため目新しく映ったのがカメラ機能だ。カメラを起動し、カメラモードのアイコンをタップすると、静止画、動画、180度パノラマのほかに、360度全方位パノラマの撮影モードを選べる(正式な名称は不明)。

 このモードでは、中心に輪っかが表示され、カメラを適当にパンすると、小さな丸が表示されるので、それが輪っかの中の入るようにカメラを動かす。するとシャッターが切られるので、これを色々な方向に対して実行していく。自分の周囲上下左右360度隙間なく撮影したら停止ボタンを押す。すると、システムが自動的につぎはぎだらけの画像を、つなぎ目のないきれいな1枚絵に変換してくれる。

 これをギャラリーアプリで見ると、おおよそ4,000×2,000ドットの長方形の写真として表示されるのだが、中央下部の地球儀のようなアイコンをタップすると、写真をスワイプして360度くるくる回転できるようになる。つまり、地球儀をメルカトル図法の地図に展開するのと逆の作業(より正確には地球儀を内部から見る具合になるのだが)を行なっているわけだ。

 そして、左下の丸い矢印をタップすると、これがジャイロを利用し、Nexus 7を向けた方向の絵が表示されるようになる。つまり、Nexus 7を北に向けると、写真の北向きの部分が表示されるし、上に向けると空が表示されるという具合で、追随性も高いので、本当にその場で動画や写真を撮影しているような気分を味わえる。

 試した限り、部屋の中など狭いところでは、つぎはぎが残ったぎこちない画像になるが、屋外だと自然な1枚絵に変換される。この写真もジオタグ付きで記録できるので、行楽地などに行った際には是非使いたくなる機能だ。

 また、写真へのエフェクトとして、この360度パノラマ写真に対しては「小さな惑星」というものを適用できる。これを使うと、写真をデフォルメしたジオラマ惑星のように変形できる。

 このほかのエフェクトは、色合いの変更や、フレームの追加、トリミングや傾きなどの調整、各種補正など最低限のものは揃っている。ちなみに、エフェクトを選択した際に、写真をタップ&スワイプすると、タップしているところを境に、効果適用の有無をリアルタイムで確認できる。

カメラのUI。ぱっと見はかなりシンプル
カメラアイコンをタップすると撮影モードを変更できる
一番左の地球儀のようなアイコンをタップするとこの画面になるので、輪っかの中に丸が入るように本体を動かす
その後も、撮影してない範囲にカメラをパンして、位置合わせをしていく
すると、最後に上下左右360度を収めたつなぎ目のない1枚絵が合成される
ただし、室内で試したところは、距離が近いせいか、かなりつぎはぎ感が残ってしまった
360度パノラマ写真にかけられる「小さな惑星」エフェクトを適用したところ
そのほか一般的なエフェクトをかけられる
左側のサムネールをタップしてスワイプすると、上下か左右に分轄して、効果の有無を確認できる
【動画1】360度パノラマ写真をスワイプ操作しているところ
【動画2】360度パノラマ写真を本体の向きを変えて操作しているところ

 なお、写真の画質は取り立てて高いものではない。特に、室内など光量が十分でない状況ではノイズが目立ってくるが、ソーシャルサービスに上げるスナップ写真の用途としては及第点といったところだろう。また、これは本製品に限ったことではないが、カメラを起動し続けてると、そこそこ発熱する。とくに、360度パノラマは思わずいろいろ試してしまうが、あまり本体温度が熱くなると、シャットダウンの可能性がある。

 ちなみに、製品は発売日の9月13日に入手したが、起動すると早速システムアップデートの通知が出ており、アップデートすると、OSのバージョンは4.3のままだが、カーネルバージョンが、3.4.0-g1f57c39から、3.4.0-g6547a16になった。アップデートの内容は不明だが、細かなバグフィックスなどと思われる。

撮影サンプル※クリックすると2,592×1,944ドットの写真が表示されます

性能

 性能については、3DMark Ice Strom Unlimited 1.2、AnTuTu Benchmark 4.0.1、Quadrant Proffesional 2.1.1を実行した。

Nexus 7(2013)Nexus 7(2012)
3DMark Ice Strom Unlimited
Ice Storm101583109
Graphics98912808
Physics112184978
AnTuTu Benchmark
総合1973713780
Multitask32742848
Dalvik14521037
CPU Integer22681952
CPU float-point18361287
RAM Operation10411521
RAM Speed1522428
2D graphics1636787
3D graphics48912427
Storage I/O1187918
Database I/O630575
Quadrant Professional
Total51633792
CPU1361811465
Mem77123006
I/O21871773
2D graphics251249
3D20472466

 Quadrantでは、旧型の方がグラフィック性能がいいというおかしな結果が出ているが、基本的にはCPU性能が順当に進化し、グラフィック性能とメモリ性能は大きく飛躍していると見ていい。3DMarkについては、解像度が上がっているにもかかわらず、3倍以上のスコアを叩き出している。

 また、操作していても、きびきとした反応が返ってくる。米国では出荷直後にマルチタッチに問題があるとされていたが、特にそういった不具合には出会っていない。非常に軽快な操作が可能だ。

 バッテリについては、公称で、Webブラウズ時10時間、動画再生時9時間駆動するとされている。画面輝度10%、機内モードオンの状態で、1080pのMP4動画を再生し続けたところ、約10時間9分動作した。Wi-FiとGPSをオンにし、Twitterを5分、Facebookを30分間隔で更新する設定では、約8時間25分動作した。ゲームなどの重いアプリを使い続けるのでなければほぼ公称通りの時間使えそうだ。

 今回はこれに加え、モバイルルーターとしてのバッテリ駆動時間もチェックしてみた。Nexus 7(2013)側では、各種同期や更新はオフにし、画面も消した状態でテザリングをオン。これに対してWindows 7 PCでWi-Fi接続し、Twitterでストリーミング更新と、BBenchによる1分ごとのWebアクセスを行なってみたところ、なんと約16時間25分も動作した。これまで海外出張用にレンタルしていた単機能のモバイルルーターなどは、おおむね4時間前後、長いものでも6時間くらいでバッテリが切れていたのだが、大型なだけあり、非常に優秀なバッテリ駆動時間を実現している。また、モバイルルーターは使っていると結構発熱するものがあるが、Nexus 7(2013)は、モバイルルーターとして使っている限りはほとんど熱が発生しないのも特筆に値する。

結論

 まとめると、Nexus 7(2013)は、アプリが純正のみということで、ソフトウェアが質素なこともあり(と言っても、これら抜きでAndroidデバイスは成り立たない重要なものばかりなのだが)、ディスプレイ以外に大きく目立つ特徴が少ないが、そつなく仕上げられており、完成度はかなり高いと言っていい。ディスプレイ以外に特徴が少ないと書いたが、そのディスプレイの部分だけを取り上げても、本製品は購入に値すると言えるだろう。

 通話はできないのでスマートフォン代わりにはならないが、今まだフィーチャーフォンを使っているユーザーが、電話はそのままに、これを買い足すというのもあり得るシナリオだろう。もちろん、すでにAndroid端末を持っているユーザーにとっても高い満足度を提供する製品だ。

 ただし、旧型が16GBで19,800円だったのに対し、新型は同容量が27,800円、32GB+LTEモデルだと39,800円と、割高感があるのは否めない。逆に、通信機能やWUXGA液晶を求めないのであれば、今でも旧型を買うというのもありだ。

 ということで、本製品は、ルーター代わりにも使いたい、最高クラスの性能が欲しいという、アクティブユーザーに好適な1台と言っていいだろう。

(若杉 紀彦)