買い物山脈

コンパクトで4台のHDDを搭載可能な「AOOSTAR WTR PRO」にTrueNASを入れてみた

製品名
AOOSTAR WTR PRO
購入時期
2026年3月10日
購入金額
5万2,700円
試用期間
約1カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 作業部屋でほぼほったらかしにして使っていたSynologyのNASキット「DiskStation DS918+」が、ついに起動しなくなってしまった。長年ファイルサーバーとして使ってきたDS918+を、3.5インチHDDを4台組み込んでファイルサーバーなどを作れるAOOSTARの「WTR PRO」でリプレースするにあたり、その使い勝手や自由度、NAS用OSの定番である「TrueNAS」をインストールした時の使用感などを紹介していこう。

クラウドとファイルサーバーの使い分けで仕事を効率化

 ファイルサーバーは、ネットワークに接続した複数のPCからアクセスし、ファイルを共有するためのPCだ。単にファイルを共有するだけなら、「Google One」や「OneDrive」などのクラウド型のファイル共有サービスを利用してもいい。筆者も複数のクラウド型サービスを契約して使い分けているので、その利便性は理解している。

 ただしクラウド型サービスで大容量のファイルを扱う場合には、かなり高い月額利用料金を支払わなければならない。またファイルを利用する前に、ダウンロード時間が発生することもある。膨大な枚数の写真データや、容量の大きな動画データを管理しなければならない仕事なので、そうしたファイルはローカル環境のファイルサーバーに置き、素早くアクセスできるようにしたいのだ。

Googleで現在契約しているのは、200GBまで保存できて年額4,400円の「Google Oneスタンダード」プラン。5TBまで使える「Google AI Pro」ならなんとかなりそうだが、年額2万9,000円とコストは大きく上がる

 筆者は仕事用のデータを2つに分けて整理している。1つは進行中の仕事ファイルの中でもテキストデータや軽い画像データ、データベース化した過去のベンチマークテスト結果だ。これらはクラウド型サービスに保存し、PCだけではなく外出中でもPCやスマートフォンから自由にアクセスして、いつでも状況を確認できるようにしている。

 一方、重い画像データや動画データ、過去の仕事用ファイル、ベンチマークテストの本体などはファイルサーバーに保存しておき、事務所に戻ったら素早く作業に入れるような体制にしている。こうした背景もあり、ファイルサーバーはどうしても必要だし、トラブルが起きればすぐに対処が必要になってくるというわけだ。あとはその、なんだ。あんまりクラウド型サービスにアップしたくないセンシティブな画像ファイルやPDFってあるでしょ、皆さんも……。

 さてDS918+が起動しなくなった理由だが、いろいろ調べてみるとACアダプタの故障だった。使わなくなっていた同社の「DiskStation DS415+」に付属していたACアダプタが同じコネクタ形状だったため、こちらに差し替えて電源を入れてみると普通に起動した。組み込んでいた3.5インチHDDやSSD、保存していたファイルも無事だった。

 とはいえ、DS918+の発売は2017年。購入から9年も経とうという状態で、電源に不安を抱えたまま使い続けるのは怖い。また搭載する有線LANの規格が1Gbpsまでとちょっと古いこともあって、新しいファイルサーバーの構築を検討する方が良いのではないか、というのが今回の経緯である。

今まで利用してきたSynologyのDS918+
2基の有線LANポートを搭載するが、どちらも1Gbpsまでとなる

 新しくファイルサーバーを構築するにあたって重視した要件は、以下の3つ。1つは4基程度の3.5インチHDDを組み込めることと、コンパクトな筐体であることだ。今まで使ってきたDS918+と同等のサイズならベストといえる。ベアボーンタイプのNASケースでは、こうした条件をクリアするモデルは多い。

 2つ目は有線LANが2.5Gbps以上に対応すること。さすがに今までと同じ1Gbpsまでの対応は満足できない。もっと高速な5~10Gbps対応のNASキットもあるが、作業場と生活スペースのブロードバンドルータとハブ、ケーブルを2.5Gbps対応モデルに入れ換えたばかりなので、そこまでは必要ない。3つ目はある程度の自由度を確保していること。OSやHDDが決めうちになるのは、なるべく避けたい。

 使い慣れているという意味では、SynologyのNASキットは有力候補だった。ただしSynologyは組み込めるHDDやSSDを自社ブランドに絞り込む方針を進めており、3つ目の自由度という点では不安が残る。UGREENの「NASync DH4300 Plus」やQNAPの「TS-433」では3.5インチHDDの選択肢は広く、2.5Gbps対応の有線LANポートを搭載する。

特にUGREENのNASync DH4300 Plusは新製品であり、なおかつキャンペーン価格で48,000円前後と安かったため、かなり心惹かれた

 正直この辺で手を打っても良かったのだが、最近はメーカーの専用OSではなく、Windows 11やNAS用OSなどが使える自由度の高いNAS向けのベアボーンPCもいくつか登場してきた。そうした中でも価格が比較的安くておもしろそうだと感じたのが、今回購入を検討したAOOSTARの「WTR PRO」である。

 幅は150mm、奥行きは228mm、高さは185mmと、サイズ感的には3.5インチベイを4基搭載する他社のNASに近く、置き場所を選ばない。このほかM.2スロットを2基搭載しており、OSはこのM.2スロットに組み込んだSSDにインストールする。CPUはAMDのモバイル向けモデル「Ryzen 7 5825U」を搭載しており、Windows 11の利用は快適だった。

今回試用したAOOSTARのWTR PRO

 インターフェイスとしては2.5Gbps対応の有線LAN端子を2基装備するほか、映像出力端子としてDisplayPortとHDMI、USB 3.2 Gen 2ポートやUSB 2.0ポートなど、PCとして利用するために必要なものは一揃い装備している。AOOSTARから専用OSは提供されておらず、ユーザーはメモリとSSDやHDD、Windows 11など自分でOSを調達して利用するベアボーンPCである。電源は小型のACアダプタを利用する。

前面カバーを外すと、合計4基の3.5インチシャドウベイにアクセスできる
左側面に各種インターフェイスを装備している
背面の12cm角ファンは吸気方向で取り付けられている
前面の電源ボタンは「WTR PRO」のプレートで隠すことも可能

 仕事柄、自作PC用のパーツを山ほど抱えている筆者としては、自作PC向けのPCケースやマザーボードを使うことも考えた。しかしコンパクトなMini-ITX対応PCケースだと、現状4台分の3.5インチベイを搭載しているモデルはほぼ存在しない。その意味では、コンパクトでベアボーンPCとしての完成度が高いWTR PROの魅力は大きかった。

DDR4なのでコストが低く、メンテナンスしやすい構造

 実際にパーツを組み込んで検証していこう。底面のカバーを外すと、メモリスロットやM.2スロットにアクセスできる。ここにDDR4 SO-DIMMやM.2 SSDを挿してWindows 11などをインストールしよう。WTR PROで利用するDDR4メモリは、DDR5メモリほどの高騰は見せていないため、環境を整えやすいのはありがたい。

底面のカバー下に、DDR4 SO-DIMM対応メモリスロットやM.2スロットを装備してい
ノートPC用のDDR4 SO-DIMMを利用する
システムドライブ用のM.2 SSD。M.2スロットがPCIe 3.0 x4対応なので古いモデルでも大丈夫だ

 M.2 SSDにWindows 11をインストールしたら、いったん電源を切って前面から3.5インチHDDを組み込む。4基の3.5インチベイは前面から着脱可能なトレイになっており、1台ずつ簡単に交換できる構造だ。また背面には、12cm角ファンを装備している。背面から吸気し、前面のメッシュパネルから排気するというちょっと変わったエアフローになっており、前面下部のメッシュパネルに手を近づけると、やや暖かい空気が流れてくるのが分かる。

 ベアボーンPCではあるが、こうしたメモリやストレージの交換、清掃などを簡単に行なえる構造は、SynologyやQNAPのNASキットによく似ている。長時間安定して動作することが重要なファイルサーバーでは定期的なメンテナンスや清掃が必要なので、こうした構造は便利だと感じる。

左のボタンを押すとレバーのロックが解除される。このレバーを引くと3.5インチシャドウベイのトレイを抜き出せる
トレイにHDDを組み込み、両側面から2本のネジで固定する
HDDを組み込んだシャドウベイユニットを戻し、レバーを押し込んでロックすれば組み込みは完了だ

 Ryzen 7 5825Uは、8コア16スレッドに対応する「Zen3」世代のCPUコアと、VEGA世代のGPUコアを内蔵するCPUだ。AMDの最新モデルと比べれば世代は古いが、Windows 11を利用するにはまったく問題ない。WTR PRO上での操作はもちろん、ネットワークを経由した共有ドライブへのファイル操作でも、もたつく場面はなかった。CPU負荷率も低く、安心して利用できる。

市販のNASを利用したことがあれば導入のハードルは低め

 と、ここで終わっても良かったのだが、WTR PROは自由度の高いベアボーンPCだ。今回はさらにNAS用OS「TrueNAS」をインストールしたときの使い勝手についても、簡単に検証してみた。TrueNASは、大雑把に言えばNASとしての利用に最適化されたLinuxの派生モデルで、現在の最新バージョンは企業向けの「TrueNAS Enterprise」と、一般ユーザー向けの「TrueNAS Community Edition」が提供されている。今回は無料で利用できる後者を試した。

TrueNAS Community EditionはTrueNASのホームページからダウンロードできる

 インストール方法などは、PC Watchの過去記事を参照して欲しい。今回のテストで利用したバージョンは25.10.2.1、インストール用USBメモリの作成は個人的に使い慣れている「Rufus 4.13」を利用したが、そのあとの手順は同じだった。WTR PROではドライバの追加インストールなどのトラブルもなくTrueNASのインストールは終了した。

USBメモリを挿したらRufusを起動し、[ブートの種類]の右にある[選択]ボタンをクリックしてダウンロードしたTrueNASのISOファイルを指定しよう。下部にある[スタート]ボタンをクリックすると、TrueNASのセットアップ用USBメモリを作れる

 インストール後のユーザー登録や共有ドライブの設定などは、ほかのPCからWebブラウザ経由で行なう。共有フォルダを「データセットを追加」と呼ぶなど、Windows 11とはちょっと違う作法も要求されるのだが、違うと言えばこのくらいだ。NASメーカーの独自OSにも似ており、各ストレージやユーザー名、アカウントに対する権限設定などで迷うことはなかった。

WebブラウザでTrueNASをインストールしたWTR PROに接続した時の画面。[ダッシュボード]ではCPUやメモリの使用率や温度などハードウェアの情報を一覧で確認できる
[ストレージ]では、接続されているHDDをまとめて管理し、[プール]という領域で管理できる。このへんはNASメーカーの独自OSとほぼ同じ
[認証情報]の[ユーザー]から、ファイルサーバーを利用するユーザーの設定が行なえる
[データセット]から、共有フォルダの作成と権限設定が行なえる。これで基本的なファイルサーバーの機能を利用できるようになる

 下のグラフは、4台の3.5インチHDDでRAID 5のドライブを作成し、CrystalDiskMark v9.0.2で共有フォルダのシーケンシャルリード/ライト性能を比較したものだ。WTR PROと検証用PCの有線LANは2.5Gbps対応で、グラフの単位はMB/sで小数点以下を四捨五入している。

 Windows 11とTrueNASで速度に違いはないほか、どちらも2.5Gbpsの帯域をしっかりと活用していることが分かる。またWTR PRO側の共有フォルダにアクセスしている時のCPU負荷率は、約5~10%と低かった。

300GBクラスのフォルダをWTR PROの共有フォルダーにコピーしているときのCPU負荷率の状況だ。コピーが終わるまで10%を超えることはなかった

 TrueNASはアプリで機能を強化することも可能だが、個人的には最小限の設定で利用できるこのファイル共有機能だけで使おうと思う。ちなみにAmazonの「Fire TV Stick 4K Max」にインストールしたVLC media player経由で、ファイルサーバーに保存している動画を再生することも多いが、これもシンプルなファイル共有設定のみで再生可能だった。

TrueNASでシンプルなファイルサーバーとして使おう

 コンパクトでメンテナンスがしやすいWTR PROは、ファイルサーバーとしての適性が高いことが分かった。OSについて考えると、シンプルにファイルサーバーとして使うだけならWindows 11のファイル共有でも問題ない。設定やメンテナンス、アップグレードなども使い慣れた環境で作業できるし、アプリで機能拡張するのも容易だ。

 ただWindows 11ではライセンスを購入しなければならない。その点TrueNASはフリーなので、ライセンス分のコストが必要ない。システム設定の部分でWindows 11とはまったく違う部分も少なからず存在はするが、NASメーカーの独自OSを使ってきた経験があれば苦労することもなく作業できそうだ。

 今回の結論としては、WTR PROとTrueNASの組み合わせでしばらく使うことにした。また最近は低価格なNASボックスも増えてきたので、機会があればそういったモデルも試してみたいところだ。