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東芝「dynabook Tab S38/S50」

~国内メーカー初の”0円Windows”採用タブレット

東芝「dynabook Tab S38/26M」(右)、「dynabook Tab S50/26M」

 東芝は、「dynabook Tab」シリーズとして、OSに「Windows 8.1 with Bing」を採用する8型液晶搭載タブレット「dynabook Tab S38」と、10.1型液晶搭載タブレット「dynabook Tab S50」の2モデルを発売した。2013年末に登場した「dynabook Tab VT484」の後継モデルで、本体デザインの変更や重量の軽量化などが実現されている。

 今回は、内蔵ストレージ容量が64GBの「dynabook Tab S38/26M」と「dynabook Tab S50/26M」の2モデルを取り上げる。価格はオープンプライスで、実売価格はdynabook Tab S38/26Mが52,000円前後、dynabook Tab S50/26Mが65,000円前後。

デザインを一新し薄型軽量化

 8型液晶を搭載する「dynabook Tab S38/26M」(以下、S38/26M)は、2013年11月に登場した8型Windows 8.1タブレット「dynabook Tab VT484」の後継として位置付けられる製品。従来モデルからの大きな変更点となるのが本体デザインだ。従来モデルの背面に施されていたエンボス加工が省かれ、筐体色がクラムシェルノートのdynabookシリーズで広く採用されているサテンゴールドとなった。液晶面のベゼル部分も本体色と同じサテンゴールドとなっている。

 また、従来モデルでは高さが10.7mmだったのに対し、S38/26Mでは9.5mmと1.2mm薄くなっている。数字としては小さな差だが、本体デザインの変更と相まって従来モデルの“ぼってり感”を解消。これらの変更によって、従来モデルよりもすっきりとしてシャープな印象の筐体となっている。

 本体が軽量化したのも特徴の1つで、従来モデルの約445gに対し約385gと約60g軽くなった。実測での重量は373.5gと公称よりも10g以上軽かった。実際に本体を手にすると、本体の薄型化による感触の違いも合わせ、かなり軽くなったと感じる。競合製品では、より薄くより軽い製品が存在するものの、そちらと比較してもほぼ遜色のない軽さと感じる。フットプリントは132×210.7mm(幅×奥行き)。幅が3.9mm、奥行きが2.3mm小さくなっており、手にした時の印象の違いはこの点も影響しているのだろう。

8型液晶搭載の「dynabook Tab S38/26M」。8型液晶搭載のdynabook Tab VT484の後継モデルだ
本体背面。背面は凹凸のない滑らかなデザインに変更。フットプリントは132×210.7mm(幅×奥行き)と従来より小さくなった
下部側面、高さは9.5mmと1cmを切り、従来より1.2mm薄くなっている
左側面。側面のラウンドデザインも変更された
上部側面
右側面
重量は実測で373.5g。従来よりも約60g軽くなっている

 次に、10.1型液晶を搭載する「dynabook Tab S50/26M」(以下、S50/26M)。こちらは今シーズンから新たに用意されたモデルとなる。最大の違いは液晶サイズで、10.1型と大型の液晶採用に合わせて筐体サイズが大きくなっている。本体サイズは258.8×175×9mm(幅×奥行き×高さ)となり、S38/26Mよりも一回り以上大きい。それでも、高さは9mmとS38/26Mよりも薄く、S38/26M同様すっきりとした印象の筐体となっている。また、S38/26Mが縦型をメインにしているのに対し、S50/26Mは横型をメインにしている点も大きな違いとなる。本体デザインはS38/26Mとほぼ同じで、本体色にサテンゴールドを採用している点も同じだ。

 重量は約555gと、本体が大きいこともあり、S38/26Mより170gほど重い。Androidタブレットでは10.1型液晶搭載で500gを切る軽さの製品も存在するが、Windowsタブレットとしてはまずまずの軽さで、実際に手にしても十分に軽く感じる。なお実測では540gと公称より15gほど軽かった。

こちらは10.1型液晶搭載の「dynabook Tab S50/26M」
液晶が大きいためフットプリントは258.8×175mm(幅×奥行き)とS38/26Mよりかなり大きい
下部側面。高さは9mmとS38/26Mよりも薄い
左側面
上部側面
右側面
裏面。筐体色は本体デザインはS38/26Mとほぼ同じだ
重量は実測で540g。公称より15gほど軽かった

液晶の表示解像度は2機種とも同じ

 S38/26MとS50/26Mの最大の違いとなる液晶は、S38/26Mが8型、S50/26Mが10.1型となる。ただ、サイズは違うものの、それ以外の仕様はほぼ同じとなる。表示解像度は双方とも1,280×800ドット。8型のS38/26Mについては解像度は標準的で大きな不満はないが、S50/26Mではサイズが10.1型と大きいため、より高解像度のパネルを採用してもらえるとなお良かった。特に、10.1型液晶搭載のAndroidタブレットなどではフルHD表示対応の製品がほぼ標準になっていることを考えると、やや物足りなさを感じる。実際に使っていても、Webアクセス時などに表示情報量の少なさを実感する。

 パネルの種類は非公開だが、視野角は十分に広く、縦横どちらの向きで使っても視認性の変化はほとんど感じられない。双方とも液晶表面は光沢処理となっているため、発色は十分に鮮やかだ。ただし、外光の映り込みはやや激しいため、気になる場面がありそうだ。また、スクロール時などの残像もやや大きいと感じる。このあたりは、従来モデルの液晶とほぼ同等だ。

 ところで、S38/26MおよびS50/26Mでは、通常液晶面ベゼル部分に配置されるWindowsボタンが、本体側面の物理ボタンによる実装となっている。従来モデルのdynabook Tab VT484では液晶面に搭載されていたため、操作時に戸惑うことがあった。慣れによってカバーできるとは思うが、一般的なWindowsタブレットとはやや異なる操作性となる点は注意が必要だ。

S38/26Mは、従来同様1,280×800ドット表示対応の8型液晶を採用。パネルの種類は非公開だが、視野角は十分に広く光沢仕様で発色もまずまず
S50/26Mでは、10.1型液晶を採用。表示解像度はS38/26Mと同じ1,280×800ドット。表示品質はS38/26Mと同等だ
S38/26Mでは、Windowsボタンが本体上部側面の物理ボタンとなっている
S50/26MもWindowsボタンは側面物理ボタンとなる。こちらも上部側面に配置

従来同様豊富なアプリを搭載

 従来モデルは、国内メーカー製の製品らしく豊富なプリインストールアプリの用意が特徴となっていたが、その点はS38/26MおよびS50/26Mにも継承されている。dynabookシリーズオリジナルの写真管理ソフト「思い出フォトビューア」や、タッチ操作で写真のレタッチなどの編集を行なえる「Adobe Photoshop Express」、DLNA対応のTVやBD/HDDレコーダと接続して録画番組などを楽しめる「RZスイート express」などを標準でプリインストール。もちろん、双方とも「Microsoft Office Home and Business 2013 SP1」も標準搭載される。

 内蔵のカメラ機能を活用するアプリの用意も特徴の1つ。さまざまなエフェクトを駆使した写真や動画を撮影できる「CyberLink YouCam for TOSHIBA」は、従来モデルから引き続き搭載。

 そして、新たに搭載されたアプリが「TrueCapture」だ。これは、黒板や白板、雑誌などを綺麗に取り込むアプリで、白板に書かれた内容を斜めから撮影した場合でも、正面から撮影したように歪みを自動的に補正して取り込める。

 上級ユーザーを中心に、こういった豊富なアプリが不要という声もあるが、初心者にとってはありがたい存在なのは間違いなく、ほかの製品との差別化になると言えるだろう。

dynabookシリーズでおなじみの写真管理ソフト「思い出フォトビューア」をプリインストール
「CyberLink YouCam for TOSHIBA」を利用し、内蔵カメラ機能でさまざまなエフェクトを加えた写真や動画を撮影できる
タッチ操作で写真編集が行なえる「Adobe Photoshop Express」もプリインストール
白板や雑誌の取り込みが行なえる「TrueCapture」を新たに添付
雑誌を開いた状態で撮影し、縁をこのように指定する
このように歪みを補正して取り込むことが可能

スペック面もほぼ同等

 搭載プロセッサなどのスペックは、両機種ともほぼ同等となっている。プロセッサは双方ともAtom Z3735Fを採用。従来モデルのdynabook Tab VT484で採用されていたAtom Z3740と比べると、標準の動作クロックは1.33GHzと同じだが、ターボブースト時の最大クロックがAtom Z3740の1.86GHzに対し、Atom Z3735Fでは1.83GHzとわずかに低下。また、対応メモリがAtom Z3740ではLPDDR3-1066で最大4GB、デュアルチャネル対応だったのに対し、Atom Z3735FではDDR3L-RS-1333で最大2GB、シングルチャネル対応となっている。また、統合グラフィックス機能はIntel HD Graphicsと変わらないが、こちらもターボブースト時の最大クロックが646MHzに低下(Atom Z3740は667MHz)している。高負荷時の性能がわずかに低下していると考えられるが、体感できるような差は少ないだろう。

 内蔵ストレージは64GBのeMMCを搭載。なお、下位モデルとして32GBのeMMCを搭載するモデルも双方に用意される。

 無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載。センサーとしてGPS、電子コンパス、加速度センサ、ジャイロセンサも標準で搭載する。従来モデルに引き続きGPSを搭載する点はメリットとなるだろう。カメラ機能は、約500万画素の裏面カメラと約120万画素の前面カメラを搭載。従来モデルから画素数が低下している点は気になるが、メモ程度の撮影であれば不満のない画質と感じる。

 側面のポートやボタン類は若干の違いが見られる。S50/26Mは、左側面にヘッドフォン/マイク共用ジャック、microSDカードスロット、Micro HDMI出力、Micro USB 2.0ポート、上部側面にWindowsボタン、ボリュームボタン、電源ボタンを配置する。それに対しS38/26Mは、上部側面にヘッドフォン/マイク共用ジャック、Windowsボタン、Micro USB 2.0ポート、右側面にmicroSDカードスロット、ボリュームボタン、電源ボタンがそれぞれ配置されている。このうち、S38/26MでMicro HDMI出力が省かれている点は少々残念だ。

 ところで、従来モデルでもステレオスピーカーを搭載する点が特徴となっていたが、S38/26MおよびS50/26Mにも受け継がれており、S38/26Mでは背面、S50/26Mでは左右側面に搭載している。基本的に画面を横向きで利用する場合にステレオ効果が発揮されるように配置されており、動画音声をステレオで楽しめるように配慮されている。

 なお、OSは冒頭でも紹介したように、双方ともWindows 8.1 with Bingを採用する。国内メーカー製のWindowsタブレットでWindows 8.1 with Bingを採用するのはこれが初だ。

S38/26Mの上部側面には、ヘッドフォン/マイク共用ジャック、Windowsボタン、Micro USB 2.0ポートを備える
S38/26M右側面は、microSDカードスロット、ボリュームボタン、電源ボタンを配置
S50/26Mでは、左側面にヘッドフォン/マイク共用ジャック、microSDカードスロット、Micro HDMI出力、Micro USB 2.0ポートを用意
S50/26Mの上部側面には、Windowsボタン、ボリュームボタン、電源ボタンと物理ボタンが並ぶ
背面には約500万画素のカメラを搭載。こちらはS38/26M
S50/26Mの背面にも約500万画素のカメラが搭載される
液晶面には約120万画素のカメラを搭載。S38/26Mでは液晶右上に搭載
S50/26Mの前面カメラは、液晶上部中央付近に搭載。こちらも約120万画素だ
従来同様ステレオスピーカーを搭載。S38/26Mでは背面に配置され、横向きに対応
S50/26Mのスピーカーは左右側面に搭載する
付属のACアダプタは双方とも同じもの。付属のUSBケーブルを利用し、本体のMicro USBポートに接続して充電を行なう
USBケーブル込みのACアダプタの重量は実測で76gだった

性能は従来モデルからやや低下

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark Vantage Build 1.2.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.3.708」の4種類。比較用として従来モデルとなる「dynabook Tab VT484/26K」の結果も加えてある。

 結果を見ると、ストレージ性能など従来モデルを上回る部分もいくつか見られるが、CPU性能や3G描画能力はやや下回る部分が目立つ。このあたりは、CPUの変更による影響と考えられる。ただ、実際に使っていて体感で分かるほどの性能差ではなく、従来モデルとほぼ同等の感覚で利用できると考えていいだろう。

【表】ベンチマーク結果
dynabook Tab S50/23Mdynabook Tab S38/26Mdynabook Tab VT484/26K
CPUAtom Z3735F(1.33/1.83GHz)Atom Z3735F(1.33/1.83GHz)Atom Z3740(1.33/1.86GHz)
ビデオチップIntel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD Graphics
メモリDDR3L-1333 2GBDDR3L-1333 2GBLPDDR3-1066 2GB
ストレージ64GB eMMC64GB eMMC64GB SSD
OSWindows 8.1 with BingWindows 8.1 with BingWindows 8.1
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score241224182437
Lightweight score145814571394
Productivity score101410141041
Entertainment score162016231710
Creativity score464746564265
Computation score588459015343
System storage score394639623789
Raw system storage score152015451326
PCMark Vantage Build 1.2.0
PCMark Suite487448855346
Memories Suite269727152824
TV and Movies SuiteN/AN/AN/A
Gaming Suite378938564004
Music Suite546453605476
Communications Suite559756486203
Productivity Suite493549585002
HDD Test Suite12429123799910
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/A
CPU Score327835013787
Memory Score288130352872
Graphics ScoreN/AN/A1130
HDD Score129851430414098
3DMark Professional Edition v1.3.708(VT484はv1.2.250を使用)
Ice Storm157011482316050
Graphics Score164871533716083
Physics Score134561326715938
Ice Storm Extreme955586969728
Graphics Score887083598770
Physics Score131021204715756

 次にバッテリ駆動時間だ。公称のバッテリ駆動時間は、S38/26Mが約7.5時間、S50/26Mが約7.0時間(双方ともJEITAバッテリ動作時間測定法Ver2.0)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測した場合では、S38/26Mが約7時間45分、S50/26Mが約7時間14分と、どちらも公称を上回る駆動時間だった。Windowsタブレットとして特別長いわけではないが、BBenchのテストで7時間を超える駆動時間があれば不満はないレベルと言える。

従来モデル同様価格がネックか

 S38/26Mは、従来モデルと比べ薄く軽くなり、シャープな印象のデザインとなるなど、魅力的な進化を果たしている。また、新たに登場したS50/26Mは、基本的なスペックはS38/26Mとほぼ同じだが、液晶が10.1型に大型化したことで文字などが見やすくなり、より幅広い年齢層に対応できる製品と言える。S38/26MでMicro HDMI出力が省かれた点は少々残念だが、安価な競合製品のような見た目の安っぽさはなく、買ってすぐ活用できる豊富な付属アプリが付属する点、しっかりとしたメーカーサポートが付く点など、国内メーカー製の製品らしい魅力を備えている。

 ただ、OSにWindows 8.1 with Bingを採用していることを考えると、実売価格はやや高いと感じるのも事実。7月上旬に発売開始したことから、もともとは従来モデルの後継として開発を進めていた製品と思われる。そういった中でWindows 8.1 with Bingが登場したため、急遽採用OSを変更して発売したのだろう。好意的に捉えると、通常のコストをかけて開発していた中では、OSをライセンス料が0円のWindows 8.1 with Bingに変更したとしても大幅な値引きは難しいかもしれない。

 今後続々登場が予定されているWindows 8.1 with Bing採用の低価格製品と比べると、どうしても価格的に見劣りしてしまう。そういった意味で、やや不利な位置付けの製品と言わざるを得ない。それでも、製品としての完成度の高さや付属アプリの豊富さ、国内メーカーの手厚いサポートなどにどの程度魅力を感じるかで、価格に対する印象は変わってくるだろう。価格よりも付属アプリの充実度やサポートを重視したいというなら、選択肢として考慮すべき存在と言える。

(平澤 寿康)