東芝「dynabook R542」
~世界初のアスペクト比21:9液晶を搭載したUltrabook



東芝「dynabook R542」

発売中

価格:オープンプライス



 薄型ノートPCであるUltrabookは、2011年秋に初めての製品が登場したまだ歴史の浅いジャンルだが、PC市場における存在感は着実に大きくなっている。2012年夏モデルとして、第2世代Ultrabookが各社から登場し、さらに注目が集まっている。当初のUltrabookは、似たり寄ったりのスペックの製品ばかりであったが、第2世代Ultrabookでは、光学ドライブ搭載製品や重量875gを実現した超軽量モデルが登場するなど、ユニークな製品も登場してきた。

 今回取り上げる東芝の「dynabook R542」もそうした一風変わったUltrabookであり、アスペクト比21:9という、超ワイド液晶を搭載していることが特徴だ。

●エンターテイメント用途を重視したコンシューマ向けモデル

 東芝は、早くからUltrabooks市場に参入したメーカーであり、2011年11月に13.3型液晶搭載Ultrabook「dynabook R631」を発売している。dynabook R631は、オーソドックスな構成のUltrabookだが、第1世代Ultrabookの中ではトップクラスの軽さと薄さを実現しており、高い技術力を誇る東芝ならではの製品であった。

 dynabook R631の後継として、2012年6月に第3世代Coreプロセッサー・ファミリーを搭載した「dynabook R632」が登場しているが、今回レビューするdynabook R542は、dynabook R632とは別のラインナップとなる。dynabook R632がビジネス用途を重視したUltrabookであるのに対し、dynabook R542はエンターテイメント用途を重視したUltrabookである。

 まず、外観から見ていきたい。dynabook R542は1モデルのみのラインナップで、ボディカラーもダークシルバーのみである。実際のボディカラーは、シルバーというよりブラウンに近い印象であった。上面の手前側は茶色のラバー素材で覆われており、表面にメッシュ状の凹凸があるため、手で持ったときにも滑りにくくなっている。

 液晶サイズが14.4型と大きめなので、ボディサイズも約368.5×200×20.8mm(幅×奥行き×高さ)と、Ultrabookの中ではやや大きい。重量は約1.69kgで、14.4型液晶搭載ノートPCとしては軽い部類だ。常に携帯するにはやや大きくて重いが、部屋から部屋への移動などは気軽に行なえる。背面のカバーは取り外すことはできず、メモリ増設やバッテリ交換はできない。

dynabook R542の上面。上面の手前側にはラバー素材が使われている「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。液晶のアスペクト比が21:9なので、本体もかなり横長で、奥行きはdynabook R542のほうが9mm小さいが、横幅はdynabook R542のほうが91.5mm大きいラバー素材の表面には、メッシュ状の凹凸があり、手で持ったときにすべりくくなっている
dynabook R542の背面。メモリ増設やバッテリ交換などはできないようになっている評価機の重量は実測で1,682gであった

●1,792×768ドットの超ワイド液晶を搭載

 次に、PCとしての基本スペックを見ていこう。CPUとして、Core i5-3317U(1.7GHz)を搭載し、メモリは4GB(増設不可)である。ストレージは、500GB HDDと32GB SSDのハイブリッド構成である。SSDは、単体のドライブとして認識されているわけではなく、HDDのキャッシュとして利用することでOSやアプリの起動などの高速化を実現している。第2世代Ultrabookとして、標準的なスペックを備えており、一般的な用途なら十分なパフォーマンスである。

 dynabook R542の最大のウリが、アスペクト比21:9という超ワイド液晶を搭載していることだ。一般的な液晶解像度は1,366×768ドットや1,920×1,080ドットであり、アスペクト比は16:9である。しかし、dynabook R542の液晶解像度は1,792×768ドットで、アスペクト比は洋画などでよく使われているシネマスコープ(シネスコ)サイズと同じ21:9となる。Ultrabookでは、1,366×768ドット液晶を搭載する製品が多いが、1,366×768ドット液晶に比べて、dynabook R542の液晶は横に426ドット分広いことになる。

 一般に販売されているコンシューマ向けノートPCで、アスペクト比21:9の液晶を搭載したのは、dynabook R542が世界初とのことだシネスコサイズの動画を一般的なアスペクト比16:9の液晶で表示させると、画面の上下に黒い帯が表示されてしまうが、dynabook R542なら黒帯なしで画面一杯に表示できる。また、画面を左右に分割して、2つのウインドウを並べて表示させても、1つのウインドウあたり896×768ドットの領域を確保できるので、快適に利用できる。さらに、超ワイド画面を便利に活用できる「東芝スプリットスクリーンユーティリティ」が搭載されており、ウインドウサイズを自分で調整することなく、あらかじめ設定したサイズで画面を分割し、ウインドウをフィットさせることが可能だ。

 液晶は光沢タイプだが、外光の映り込みを抑えるコーティングが施されており、外光の映り込みはそれほど激しくはない。発色は鮮やかで、コントラストも十分であり、動画再生にも適している。

 液晶上部には、約130万画素Webカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

dynabook R542のデバイスマネージャーを開いたところ。ストレージはHDDとSSDのハイブリッド構成になっている液晶は14.4型で、解像度は1,792×768ドット。光沢タイプだが、外光の映り込みは比較的少ない
東芝スプリットスクリーンユーティリティには、各種の画面分割パターンが用意されているタイトルバーの「□□」ボタンをクリックすると、スプリットスクリーンユーティリティで設定したウインドウサイズに分割表示される液晶上部には、約130万画素のWebカメラが搭載されている
●暗いところでも使いやすいバックライトキーボードを採用

 キーボードはアイソレーションタイプの全87キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.2mmと余裕がある。キー配列も標準的で、快適にタイピングが可能だ。EnterキーやBackspaceキーが大きいのも嬉しい。また、キーボードにはバックライトが搭載されており、暗いところでもキートップの文字が光るので、タイプミスを防げる。ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのクリックパッドを搭載する。Ultrabookでは一般的な、パッドとクリックボタンが一体化したタイプだが、個人的にはdynabook R632に搭載されているような、パッドとクリックボタンが独立しているほうが好みだ。

 エンターテイメント用途を重視したマシンだけあり、サウンドにもこだわっている。dynabook R542は、ボディが横長なので、キーボードの左右に十分なスペースがある。そのスペースに音質に定評のあるharman/kardonステレオスピーカーを搭載しており、高音質な再生が可能だ。さらに、3Dサラウンドサウンド機能の「SRS Premium Sound 3D」が搭載されており、立体感のあるサウンドが楽しめる。

キーボードは全87キーで、キーピッチは19mm、キーストローク1.2mmであるキーボードにはバックライトが搭載されているポインティングデバイスとして、クリックパッドを搭載する。dynabook R632のタッチパッドは、クリックボタンとパッドが独立していたが、こちらはパッドとクリックボタンが一体化したタイプだ
横長ボディを活かして、キーボードの左右にharman/kardonステレオスピーカーを搭載。高音質なサウンドを楽しめる3Dサラウンドサウンド機能の「SRS Premium Sound 3D」が搭載されており、広がりのあるサウンドが楽しめる

●USB 3.0を3基搭載するなど、インターフェイスも充実

 Ultrabookとしてはインターフェイスも充実しており、USB 3.0×3とHDMI出力、有線LANなどを搭載している。すべてのUSBポートが3.0対応になっていることは評価できる。dynabook R632に搭載されているミニD-Sub15ピンは省略されているが、エンターテイメント用途ならミニD-Sub15ピンが必要になることは少ないだろう。メモリカードスロットとしてSDカードスロットを搭載する。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN機能とBluetooth 4.0をサポートしているが、dynabook R642とは異なり、WiMAXは非対応である。

左側面には、有線LANとUSB 3.0×2が用意されている左側面のポート部分のアップLANケーブル接続時には、有線LANコネクタのカバーを下に開く必要がある
右側面には、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 3.0が用意されている右側面のポート部分のアップ
前面には、SDカードスロットが用意されている前面のSDカードスロットのアップ

●バッテリ駆動時間は実測で6時間30分と十分長い

 dynabook R542は、バッテリの着脱はできない仕様になっている。ACアダプタはコンパクトで、重量も実測で210g(ケーブル込み)と軽い。公称バッテリ駆動時間は約8時間と長く、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定で、バッテリ駆動時間を計測したところ、6時間30分という結果になった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。本機は、Ultrabookとしては比較的サイズが大きく、常に持ち歩くための製品ではないが、バッテリ駆動時間についても十分満足できる。さらに、「TOSHIBA ecoユーティリティ」がプリインストールされており、消費電力をリアルタイムに知ることができる。ecoユーティリティで、節電モードの「ecoモード」に切り替えることによって、消費電力を下げることが可能だ。

付属のACアダプタ。コンパクトで携帯に便利だCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較
ACアダプタの重量は実測で210g(ケーブル込み)であった「TOSHIBA ecoユーティリティ」によって、消費電力をリアルタイムで知ることが可能。節電モードの「ecoモード」にすることで、消費電力が下がることがわかる

●高速起動を実現する「東芝高速スタート」とパネルオープンパワーオン機能
「東芝HWセットアップ」で、パネルオープンパワーオンの有効/無効の切り替えが可能

 Windowsの高速起動を実現する「東芝高速スタート」機能を備えていることも特徴だ。シャットダウン時に通常のシャットダウンではなく、東芝高速スタートを選んでシャットダウンすることで、次回の起動が高速化されるというものだ。東芝高速スタートでは、起動時のBIOS処理やプログラムの読み込みを最適化することで、起動時間を短縮している。

 実際に、通常の起動と、東芝高速スタートでの起動を5回ずつ行ない、その起動時間の平均を算出したところ、通常の起動は19.2秒だったのに対し、東芝高速スタートでは11.5秒と、かなり起動が高速化された。また、液晶パネル部分を開くと電源がオンになる「パネルオープンパワーオン」機能も搭載しており、あわせて利用することで、さらに体感的な起動時間を短縮できる。

●Ultrabookとしては高い性能を実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。

 比較用として、ソニー「VAIO T SVT13119FJS」、富士通「LIFEBOOK UH75/H」、日本HP「HP ENVY14-3000 SPECTRE」、日本エイサー「Aspire S3-951-F34C」、NEC「LaVie L LL750/HS」の値も掲載した。LaVie L LL750/HSは、第3世代の通常電圧版Core iを搭載するA4サイズノートPCだが、それ以外の機種はすべてUltrabookである。

 dynabook R542VAIO T SVT13119FJSLIFEBOOK UH75/HHP ENVY14-3000 SPECTREAspire S3-951-F34CLaVie L LL750/HS
CPUCore i5-3317U (1.70GHz)Core i5-3317U (1.70GHz)Core i5-3317U (1.70GHz)Core i7-2677M (1.80GHz)Core i3-2367M (1.40GHz)Core i7-3610QM (2.30GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 4000
PCMark05
PCMarksN/AN/A6993N/AN/AN/A
CPU Score7228793776588032414611541
Memory Score852859406463576137489076
Graphics Score577940074807413431477112
HDD Score2020412710128993100349025910
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score8577827093001042838958953
Memories Score559151566776572226255432
TV and Movie Score381438444300435528046275
Gaming Score759969757224761430867028
Music Score983710643107391218139807884
Communications Score94759643943811523353611311
Productivity Score93931029891471186731535434
HDD Score1630818159215642382932344190
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score813079618811962536878531
Memories Score542849546773540425165199
TV and Movie Score414237764328434827846201
Gaming Score675463416041624026586412
Music Score9528930597751184937367345
Communications Score93909173945210924342111126
Productivity Score8576988782951068428985057
HDD Score1547818091220102389733174178
PCMark 7
PCMark score429832943119343115522876
Lightweight score324231932061356012612013
Productivity score29722963167228788131633
Creativity score660550955912627631564843
Entertainment score365826983020250016503043
Computation score144498866157498773608812435
System storage score405139442018431013771528
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)12607792995657834698314651
CPU Score16151468154416008722290
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH378636993685391026245704
LOW573656855688637840947609
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP10010099.9799.9799.97100
HP10099.9799.97100100100
SP/LP10010010010099.9799.97
LLP10099.9710099.97100100
DP(CPU負荷)17232019286
HP(CPU負荷)91189143
SP/LP(CPU負荷)685792
LLP(CPU負荷)574591
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード268.3MB/s274.4MB/s77.87MB/s221.3MB/s80.34MB/s107.6MB/s
シーケンシャルライト85.28MB/s86.87MB/s81.50MB/s193.2MB/s78.84MB/s108.5MB/s
512Kランダムリード239.0MB/s244.3MB/s41.99MB/s161.8MB/s34.09MB/s37.03MB/s
512Kランダムライト30.62MB/s34.19MB/s33.52MB/s195.8MB/s28.75MB/s55.82MB/s
4Kランダムリード18.22MB/s19.32MB/s0.635MB/s11.52MB/s0.448MB/s0.436MB/s
4Kランダムライト0.925MB/s1.105MB/s0.834MB/s40.50MB/s1.027MB/s1.360MB/s
BBench
標準バッテリ6時間30分6時間14分6時間12分6時間23分5時間5分3時間24分

 CPUの基本的な処理能力を計測するPCMark05のCPU Scoreは7228であり、同じCPUを搭載したVAIO T SVT13119FJSやLIFEBOOK UH75/Hに比べてやや低いが、体感で差がわかるほどではない。ディスク性能を計測するPCMark05のHDD Scoreは20204と高く、同じHDD+SSDのハイブリッド構成を採用したVAIO T SVT13119FJSやLIFEBOOK UH75/Hよりも上回っている。PCMark7のスコアも、VAIO T SVT13119FJSやLIFEBOOK UH75/Hよりも全体的に高い。PCMark VantageのHDD Scoreは、VAIO T SVT13119FJSやLIFEBOOK UH75/Hより低いが、総合的に見て、第2世代Ultrabookとして水準以上のパフォーマンスを持っているといえる。

●完成度は高く、コストパフォーマンスも優秀

 dynabook R542は、アスペクト比21:9の超ワイド液晶がウリのUltrabookだ。一見、キワモノにも思われる超ワイド液晶だが、ウインドウを2つ並べて作業しても、横の解像度不足を感じることがなくなかなか便利だ。本体のサイズはやや大きいが、常に持ち歩くのでなければ、むしろこのくらいのサイズのほうが、使い勝手はよい。基本性能も十分で、インターフェイスも充実しており、Ultrabookとしての完成度は高い。8月下旬現在の実売価格は11万円程度であり、Office Personal 2010がプリインストールされていることを考えると、コストパフォーマンスも優秀だ。携帯性よりも、画面の広さを重視するという人にお勧めしたい。

バックナンバー

(2012年 8月 21日)

[Text by 石井 英男]