東芝「dynabook R631」
~国内大手メーカー初のUltrabook



東芝「dynabook R631」

11月中旬 発売

価格:オープンプライス



 薄型軽量で、優れた応答性とセキュリティ性を備える、新しいカテゴリのノートPCとしてインテルが提唱するUltrabook。そのUltrabookに準拠する、国内大手メーカー初の製品が東芝から登場。それが「dynabook R631」だ。今回、いち早く試用する機会を得たので、ハード面を中心に見ていきたいと思う。

●圧倒的な薄型軽量ボディを実現

 dynabook R631(以下、R631)の最大の特徴は、なんといっても圧倒的に薄型かつ軽量なボディだ。本体写真を見てもらうと一目瞭然だが、とにかくボディの薄さに目をひかれる。高さは、最薄となるボディ前方でわずか約8.3mm、最厚となるボディ後方でも約15.9mmしかない。超薄型ノートPCといえば、アップルのMacBook Airを思い浮かべる人が多いかもしれないが、MacBook Airは11.1型液晶搭載モデル、13.3型液晶搭載モデルとも最厚部で約17mmとなっており、R631の方が約1mm薄い。今回は、実際にMacBook Airと比較できなかったが、MacBook Airを上回る薄さを実現している点は、大いに評価できる。また筆者が利用している、ソニーの旧VAIO Z(VPCZ11)との比較では、R631が半分ほどの高さで圧倒的に薄いことがわかる。

 フットプリントは、316×227mm(幅×奥行き)。このサイズは、光学式ドライブ搭載の薄型モバイル「dynabook R731」と全く同じ。13.3型液晶を搭載するノートPCとして、標準的な大きさだ。また、本体重量は、公称で約1.12kg、実測では1,089gであった。実際にR631を手に持ってみると、フットプリントがやや大きいこともあり、かなり軽く感じる。このように、非常に薄く軽量なボディが実現されていることで、ブリーフケースのようなカバンにもスッと収納でき、携帯性はR731よりも圧倒的に優れるはずだ。

 ボディ素材はマグネシウム合金が採用され、ボディカラーはシルバーメタリックで全面統一されている。また、天板およびパームレスト部はヘアライン処理が施されており、高級感が感じられる。天板のdynabookロゴもさりげない感じで、いいアクセントになっている。シンプルだが、飽きの来ないデザインと言っていいだろう。

天板部分。ヘアライン処理のシルバーメタリックボディは、シンプルながら高級感があるフットプリントは316×227mm(幅×奥行き)と、dynabook R731と全く同じサイズだ本体正面。正面から見ると、際立って薄いことがよくわかる
左側面。高さは手前が約8.3mm、後方の最厚部が約15.9mmと2cmを大きく下回っている本体後方。各種ポート類や冷却ファンの排気口が見える右側面。液晶パネル部も非常に薄くなっていることがわかる
本体底面。メモリスロットなどにアクセスできるフタは用意されておらず、バッテリも着脱不可能。左上の丸い部分は冷却ファンの吸気口だ旧VAIO Z(VPCZ11、右)との比較。R631は、旧VAIO Zのほぼ半分程度の高さとなっている重量は実測で1089gと1.1kgを切っていた。手にすると、非常に軽く感じる

●薄形ボディながら優れた堅牢性を実現
ボディ素材はマグネシウム合金で、パームレスト部はハニカムリブ構造を採用し、薄型ながら優れた堅牢性を実現

 ここまでボディが薄型だと、堅牢性が気になるかもしれないが、R631は堅牢性もしっかり確保されている。パームレスト部はR731同様、強度に優れるハニカムリブ構造を採用。また、キーボードとボディの間にも、強度を高めるハニカム構造を採用。また、先ほど紹介したように、ボディ素材には軽量かつ強度に優れるマグネシウム合金を採用しており、天板部分の100kgf全面加圧試験や、76cm落下試験をクリアする堅牢性を実現。また、キーボードは30ccの防滴テストをクリアする防滴性も確保。こういった特徴によって、モバイルPCが遭遇しやすいさまざまなトラブルに対する耐性が実現されている。

●1,366×768ドット表示対応の13.3型液晶を搭載

 液晶パネルは、1,366×768ドット表示対応の13.3型液晶を採用している。上下の視野角がやや狭く、視点を上下に移動させると、やや色合いの変化が感じられるが、デジカメ写真や映像コンテンツなどを表示させるのに十分な表示品質を備えている。また、パネル表面は非光沢処理が施されているため、外光の映り込みはほとんど感じられず、文字入力作業などは非常に快適に行なえる。最近のノートPCで広く採用されている、いわゆる光沢液晶に比べると、発色の鮮やかさは若干劣るように感じるものの、R631はビジネス用途をメインターゲットとしていることを考えると、十分に満足できる。

 ちなみに、液晶パネルはヒンジ部のトルクがやや軽めに調整されており、軽い力で開閉できるようになっている、ただその反面、液晶パネル部はややぐらつきを感じる。とはいえ、キー入力している状態でぐらつくことはないので、大きな問題とはならないだろう。

1,366×768ドット表示対応の13.3型液晶を搭載。上下の視野角がやや狭い。表面は非光沢処理が施され外光の映り込みがほとんどなく、文字入力中心のビジネス用途に最適液晶パネル上部中央には、約130万画素のWebカメラを搭載

●バックライト搭載のアイソレーションキーボードを採用

 キーボードは、キーとキーの間隔が開いた、いわゆるアイソレーションタイプのキーボードを搭載している。形状やキー配列は、R731とほぼ同等で、使い勝手はほぼ同じと考えていい。キーピッチは、横は約19mm確保されているものの、縦が若干短くなっている点もR731のキーボードと同じ。使っていて若干違和感を感じることはあるものの、配列は自然で、慣れればタッチタイプも問題なく可能だろう。ストロークは、ボディが薄型ということもあって、約1.2mmと短いが、やや重めのタッチとしっかりしたクリック感によって、数字ほどストロークが短いとは感じない。

 ところで、このキーボードR731のキーボードと1点異なる部分がある。それは、バックライトが搭載されているという部分だ。キーボードバックライトを点灯すると、キートップが浮かび上がるように光り、暗所でも軽快なキー入力が可能。ビジネスシーンでは、暗所でPCを利用する場面も少なくないため、キーボードバックライトが搭載されている点は大いに歓迎できる。

 ポインティングデバイスは、パッド式のタッチパッドを搭載。パッドの面積は十分に広く、ジェスチャー操作にも対応しており、非常に扱いやすい。また、スペースキー下に、タッチパッドの動作をON/OFFできるスイッチも搭載。USBマウスなど外部マウスを利用する場合など、簡単にタッチパッドの動作を切れるようになっている点は嬉しい配慮だ。また、クリックボタン中央には指紋認証センサーも標準搭載。ビジネスシーンで要求される高いセキュリティ性もしっかり確保できる。

アイソレーションタイプのキーボードは、配列や形状などR731に搭載されているものとほぼ同じだキーピッチは横が約19mmだが縦はやや狭い。ストロークは約1.2mmだが、硬めのタッチとしっかりしたクリック感で短さを感じさせない
キーボードバックライトを内蔵し、キートップ表記が明るく浮かび上がる。暗い場所での利用に便利だタッチパッドは、パッド面の面積が広く、ジェスチャー操作にも対応し使いやすい。またクリックボタン中央には指紋認証センサーを標準搭載する

●薄型ながらフルサイズのポートを搭載

 R631の基本スペックは、CPUとして超低電圧版Core i5-2467M(1.60GHz)を採用。チップセットはIntel HM65 Express、メインメモリはPC3-10600 DDR3 SDRAMを4GB搭載し、増設は不可能。グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000を利用している。ストレージデバイスは、容量128GBのSSDを搭載。デバイスマネージャーで確認したところ、東芝製の「THNSFB128GMSJ」が採用されていた。

 無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANおよびモバイルWiMAXを搭載しており、Bluetoothは非搭載。

 ところで、薄さを突き詰めたノートPCでは、各種接続ポート類に、小型のポートを採用したり、専用ポートと変換コネクタを利用するものも少なくない。それに対しR631は、ポート類をうまく配置することによって、全てフルサイズのコネクタとなっている。

 例えば、背面にはGigabit Ethernetポート、USB 2.0×2ポート、HDMI出力、電源コネクタ、アナログRGB(ミニD-Sub15ピン)コネクタが用意されているが、このうち高さのあるGbEポートとアナログRGB出力は、最も厚さが確保されている、後部左右の脚の部分にうまく配置することで、フルサイズコネクタの搭載に成功している。これだけの本体の薄さを実現しながら、フルサイズコネクタを搭載している点は、利便性が損なわれていないという意味でも大きなポイントだ。また、右側面にはUSB 3.0ポートが搭載されている。最新の高速ポートもしっかり搭載している点は嬉しい。左側面には、マイク・ヘッドフォン端子とSDカードスロットが配置されている。

右側面には、マイク・ヘッドフォン端子とSDカードスロットを配置後方に、Gigabit Ethernetポート、USB 2.0×2、HDMI出力、電源コネクタ、アナログRGB出力を用意。高さのあるGbEポートやアナログRGB出力もフルサイズのコネクタで利便性に優れる右側面にはUSB 3.0ポートを配置。拡張性が犠牲になっていない点は嬉しい

●Ultrabookでも品質やポートを重視したい人にオススメ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の5種類。比較用として、富士通のLIFEBOOK SH76/E、レノボのThinkPad X1、東芝のdynabook R731/39Bの結果も加えてある。

 dynabook R631LIFEBOOK SH76/ELIFEBOOK SH76/DNThinkPad X1LIFEBOOK PH75/DNdynabook R731/39B
CPUCore i5-2467M (1.60/2.30GHz)Core i5-2520M (2.50/3.20GHz)Core i7-2620M (2.70/3.40GHz)Core i5-2520M (2.50/3.20GHz)Core i5-2520M (2.50/3.20GHz)Core i5-2520M (2.50/3.20GHz)
チップセットIntel HM65 ExpressIntel HM65 ExpressIntel HM65 ExpressIntel QM67 ExpressIntel HM65 ExpressIntel HM65 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×1PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
ストレージ128GB SSD (THNSFB128GMSJ)128GB SSD (THNSFB128GMSJ)256GB SSD (THNSFC256GBSJ)128GB SSD (THNSNC128GCSJ)256GB SSD (THNSNC256GG8BBAA)128GB SSD (THNSNC128GMLJ)
OSWindows 7 Home Premium SP1 64bitWindows 7 Home Premium SP1 64bitWindows 7 Professional SP1 64bitWindows 7 Professional SP1 64bitWindows 7 Home Premium SP1 64bitWindows 7 Professional
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite77641121011326115081220711170
Memories Suite506563036831641666246574
TV and Movies Suite378847914953457648344860
Gaming Suite718487899747785493748338
Music Suite104621278013792134681507912622
Communications Suite76621213512859129611314312352
Productivity Suite59801124113154133261526212466
HDD Test Suite191861985324188241382548826206
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/AN/AN/A10714
CPU Score633692499531925587539307
Memory Score7556996810379854198849994
Graphics Score3867N/A6488452654484819
HDD Score180062188031860334363250935408
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット
3DMark Score1618N/A1976169518961941
GPU Score1294N/A1560133215191535
CPU Score6471N/A9900918874399398
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score4174N/A4729377945684596
SM2.0 Score1449N/A1605123515541586
HDR/SM3.0 Score1716N/A1879150918611802
CPU Score2425N/A3689356730363557
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ6.37.17.17.17.17.1
メモリ5.95.97.55,97.55.5
グラフィックス5.65.85.94,76.25.6
ゲーム用グラフィックス6.36.26.36,26.26.2
プライマリハードディスク6.76.66.76,77.06.8
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット194120082170163421202126
1,920×1,080ドット9941006107384111191079

 結果を見ると、超低電圧版Core i5-2467Mは動作クロックが低いこともあり、比較用として掲載したモバイルPCとの比較では、さすがに結果が劣っていることがわかる。ただ、その差は思ったほど大きくない。Core i5-2467Mには通常電圧版と同じ優れた描画能力を誇るIntel HD Graphics 3000が内蔵されているため、3D描画能力は一般的なモバイルノートにかなり近付いている。また、HD動画の再生支援機能、クイック・シンク・ビデオも利用できる。さらに、ターボ・ブースト・テクノロジーにも対応しており、状況に応じてCPUコアの動作クロックが最大2.30GHzまで上昇し、パフォーマンスが底上げされる。もちろん、処理の重い作業を行なった場合には、通常電圧版Core i搭載のモバイルノートと比較して、若干動作が遅いと感じるかもしれないが、そういった場面はかなり限られ、モバイル用途では快適に利用できると考えていい。

 次に、バッテリ駆動時間だ。R631のバッテリ駆動時間は、公称で約9時間とされている。実際に、Windowsの電源プランを東芝独自の「eco」モードに設定するととも、無線LANを有効に、キーボードバックライトをオフにした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約6時間38分の駆動時間を計測した。バッテリは本体に内蔵されており、交換は不可能だが、これだけの駆動時間が確保されていれば、問題はないレベルだ、本体の薄さや軽さを考えても、十分に満足できる。外出先でより長時間利用したい場合には、ACアダプタを同時に持ち歩く必要があるが、付属のACアダプタは十分コンパクトで、本体の軽さを考えると同時に携帯しても苦にはならないだろう。

付属のACアダプタ。コンパクトで本体と同時携帯も苦にならない。コネクタはL字にはなっていないACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで235gだった

バッテリ駆動時間
省電力設定:東芝オリジナル「eco」、BBench約6時間38分

 Ultrabook準拠のモバイルノートは、ネットブックやCULVノートと同じように、ほとんどのメーカーでスペックが横並びとなってしまうため、なかなか差別化が難しいことになる。そういった中でR631は、非常に薄型かつ軽量で、堅牢性に優れるボディを実現するとともに、フルサイズのポートやキーボードバックライトを備えることで、個性を実現しているように思う。

 ただ、Office付きとは言え実売想定価格が約15万円に設定されているという点は少々気になる。他社のUltrabookでは、10万円を切る価格を設定していたり、スペック的に優れる製品もあり、約15万円という価格はかなり高く感じてしまう。もちろん、マグネシウム合金で軽量化していたり、国内大手メーカーで手厚いサポートが受けられるというメリットはあるが、それを考慮したとしても、スペックが横並びになりやすいUltrabookの中で、価格が高めに設定されている点はやはり残念だ。

 それでも、製品の品質やサポートという点では、他のUltrabookより優れていることは間違いない。そのため、Ultrabookといえども品質やサポートを重視する人にオススメとなる。特にビジネスユースなら、指紋センサーやOfficeなどを含めて、大きな魅力となるはずだ。

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(2011年 11月 1日)

[Text by 平澤 寿康]