Hothotレビュー

名刺サイズでAIを動かせるLunar Lake搭載モジュール「LattePanda Mu Ultra」を試す
2026年9月14日 06:06
CPUにIntel N100を搭載した低価格で小型のコンピュートモジュール「LattePanda Mu」(以下: Mu)を覚えているだろうか。それが今回、大幅なパワーアップを果たして登場した。CPUにLunar LakeことCore Ultra 5 226Vを採用した「LattePanda Mu Ultra」(以下: Mu Ultra)だ。
今回、解禁前にキャリアボード「Mini Carrier」と組み合わせ、評価機を試用する機会を得たので、ベンチマークを交えて簡単なレビューをお届けする。
小さな基板に14フェーズ電源を詰め込んだMu Ultra
まずはMu Ultraのモジュール本体から見ていこう。表面(CPU面)にはCore Ultra 5 226Vが鎮座し、その周辺には14フェーズの電源回路が並ぶ。この小さな基板によくぞ詰め込んだと感心する密度だ。
なお、Core Ultra 5 226VはメモリをCPUパッケージに統合しているため、基板上にメモリチップがなく、これが基板の小型化に貢献している(もっとも、14フェーズの電源回路と相殺されるが)。
表面ではほかにWinbondの「25R256JWEQ」が確認でき、これは256Mbit(32MB)のシリアルフラッシュなのでBIOS用だろう。なお、MuにあったeMMCチップは実装されておらず、少なくとも入手したボードには空きパターンもなかった。
裏面には、MPSの「M2940C」が実装されている。M2940CはIntelのIMVP規格に対応するデジタルマルチフェーズVRコントローラであり、その周囲にある4個の「MP29001-A」は、これと組み合わせるパワーステージだと思われる。このほかITEのスーパーI/O「IT8613E」も見える。先日レビューした「LattePanda IOTA」と共通の構成だ。
PCケースの前面パネル用ピンヘッダも備えるMini Carrier
Mu Ultraは、フォームファクタから想像できる通り、DDR4 SO-DIMMのソケットという入手しやすい共通部品を使い、ユーザーが設計した製品に組み込んで使うことを想定したモジュールだ。つまり、Mu Ultra単体では動作せず、ユーザーがベースとなる基板を設計し、その上に載せて使う。
ただ、いきなり「モジュールだけ提供するから基板開発からよろしく!」というのはいささかハードルが高いので、公式では「Carrier」と呼ばれるリファレンスのキャリアボードを提供し、すぐに製品を検証できる仕組みを用意している。Muのレビュー時は、多数のピンヘッダやPCIeスロットを備えた「Lite Carrier」が提供されたのだが、今回はより軽装備となった「Mini Carrier」が提供された。新製品ではないのだが、簡単に見ていこう。
Mini Carrierの表面には、コンピュートモジュール接続コネクタとCPUファン接続コネクタを配置。裏面にはM.2 2280(SSD用)とM.2 2230(Wi-Fi用)の各コネクタ、22ピンのGPIO(電源は3.3Vと5Vを切り替え可能)、そして電源ボタンやLEDを制御できる、PCケースでも使われているフロントパネル用9ピンコネクタを備える。
裏面のチップを眺めてみよう。Intelの「S5373L10」は2.5Gigabit Ethernetコントローラ「Intel I226-V」。Winbondの「25Q64JVS1Q」は64Mbit(8MB)のシリアルフラッシュ、ITEの「IT8851FN12B」はUSB PD 3.0コントローラで、Type-C経由の電源入力を司っていると思われる。Realtekのオーディオコーデックはおなじみの「ALC269」だ。
背面インターフェイスは、DC入力(12V~20V)、USB 3.2 Gen 2 Type-C 2基(USB PD給電/DisplayPort Alt Mode対応)、HDMI出力、2.5Gigabit Ethernet(Intel I226-V)、USB 3.2 Gen 2 2基、3.5mm音声入出力、電源ボタンを装備。電源ボタンまで含め、すべて背面に集約されているのが特徴だ。筆者の環境では、Intel I226-VはなぜかWindows標準のドライバで自動認識されないため、ドライバを別途導入する必要があった(特に初期セットアップでネットワーク接続が必須のWindowsでは面倒)。
DC入力は外径5.5mm/内径2.5mmと一般的なもので、多くの電源が対応可能。USB PDによる給電も可能だ。加えて、MX1.25-10Pによるバッテリ給電(LattePanda UPS board対応)、および2mmピッチの4ピンDC入力にも対応。いずれにしてもMu Ultraを使う場合、最小でも50Wの電源を確保する必要がある点は注意したい。
なお、このキャリアボードには互換性があり、Mu UltraをLite Carrierに装着することも可能だそうだが、現在は一部互換性の問題があり、対策が進められているという。ただ、そもそもMini CarrierはPCIeの代わりにより使いやすいOCuLinkを備えるほか、M.2スロットがType 2280対応となったため、SSDが増設しやすい。Mu Ultraの特徴を引き出せるのはこちらだ。
キャリアボードにはスペーサーが2種類添付されている。CPU側は約30mm、逆側は約19mmで、簡易的にどこかに固定することもできるだろう。ちなみに、Mini Carrierのネジのピッチは約66×103mm、サイズは約92×110mmだ。
性能はMuから大幅アップ。これをどう使うか?
今回はWindows 11 Proを導入し、ベンチマーク「Cinebench 2026」、「PCMark 10」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」を実施。参考用としてMuおよびGMKtecのCore Ultra 7 256V搭載ミニPC「K13」(Balance設定、PL1/2ともに20W)のスコアを並べてある。なお、MuのPCMark 10のスコアは時間の都合により再取得しておらず、バージョンが異なりスコアが大幅に異なるため、あくまでも参考としていただきたい。
結果は下記の通りで、さすがにIntel N100ベースのMuと比較すると高速なのはいうまでもない。一方、K13と比べると3D回りでやや置いていかれる印象だ。これは、K13のCore Ultra 7 256VはXeコアが8基なのに対し、Mu Ultraの226Vは7基と少なく、クロックも低いためだ。FF14が逆転しているのは、このベンチはCPU負荷もあるためだと推測される。また、Mu UltraがCinebench 2026で勝っているのは、PL1が30W、PL2が35Wと高く設定されているためだ。PCMark 10でもいい勝負になっている。
Intel Arc 130Vは、確かに内蔵GPUとしてはゲーミング性能が高く、3DMarkの結果もそれを物語る。しかし本製品をゲーム用とするのは無理があるだろう。そこで、GPUを活用できるもう1つの用途であるAIではどうか?ということで試してみた。
AIを動かすならUbuntuのほうが手っ取り早いので、テスト後に別のSSDを用意し、代わりにUbuntu 26.04.1 LTS(なお公式は24.04となっているが、26.04.1でも動作した)をインストールした。インストール後、Claude Codeを利用して、llama.cpp環境をセットアップした。
Xe2アーキテクチャはいくら3Dが高速だといっても、LLM用途に限っていえば絶対性能としては低い。そもそも搭載メモリが16GBのため、動かせるモデルは9B(90億)クラスが上限で、最新最高モデルが高速で動くレベルではない。それを踏まえた上でいろいろ試してみたが、9Bクラスは14tok/s前後で動作した。快適に動かすなら、Gemma 3n E4B/E2Bあたりだろうか。
一方、何かとスルーされがちなNPUだが、AI(Claude Code)がある今ならいくらでも使える。試しに文字起こしAIモデルWhisperをNPU上で走らせて~とClaude Codeにお願いしたら、30分ほどでプロトタイプが完成した。グラフには掲載していないが、精度が高いWhisper Largeでもリアルタイムの12.8倍の速度で文字起こしが可能だったので、オフラインでじっくり処理もアリなレベルだ。
これなら、Web会議やマイクで入力した音声を文字起こし→Gemma 3n E4Bあたりに投げて要約や検索、というのがローカルで行なえそうではある(コンテキストウィンドウは32,768トークンなので、1~2時間が上限だろうが)。
ちなみに、NPUでWhisperを動作させているときはファンがあまり回らず静かだ。一方CPUやGPUが回りだすとファンはフル回転時の騒音がかなり気になるレベルだったため、BIOSでファンカーブを設定しておくことをお勧めする。
OCuLinkでGPUを増設してGPT-SoVITSで発話させてみる!
もう1つ、既にある声に似せてテキストから音声に変換するゼロショットTTS「GPT-SoVITS」のサーバーとして運用できないか、ということを考えてみた。
しかし結果からいえば、Arc 130Vで動かす構想は盛大な失敗に終わった。出てくる音声の抑揚は明らかに変で日本語になっていない。1時間格闘したが、そもそもネット上でも成功例がないようで諦めた。
そこでOCuLinkを使い、MINISFORUMのRadeon RX 7600M XT搭載のeGPUユニット「MGA1」を接続してみた。MGA1は、最大65WのUSB PD給電とUSB 3.2 Gen 2のハブの機能を備えており、本機のお供にピッタリな製品だ。
Radeon RX 7600M XTを噛ましたところ、今度はうまく声が合成できた。なぜArc 130Vで動くただの計算がコケるのか理由は不明だが、Intelにはもう少し頑張ってドライバをブラッシュアップしていただきたい。
ちなみにRadeon RX 7600M XTを接続すると自動的に内蔵GPUが無効になる仕組みのようだ。これはこれで演算リソースが非常にもったいないので、BIOSでオンにしたいところ。……というかオンがデフォルトでいいと思う。
つまり、理想としては、NPUでWhisperによって音声を入力→Radeon RX 7600M XTで9BクラスのLLMを処理→Arc 130VでGPT-SoVITSで音声出力という、「音声のローカルAIエージェント」が動作したらめちゃくちゃ美しい。しかし、今のところ最大のボトルネックとなりそうなLLMをArc 130Vで走らせるしかないのが悔やまれる。
もっとも、Radeonの方に余力があるのなら、そっちに喋る3Dアシスタントを描画させておいてGPT-SoVITSと共存させる、というのはアリはアリである。
Mu Ultraを小型ローカルAIノードとして活用する
さて、問題は「何に使うのか」だ。PCの価格が高騰している昨今、メインマシンのメモリを気軽に増やせる状況ではない。そこで前述の通りE2B/E4B程度のモデルなら実用的に動く本機に、LLM処理をオフロードするという使い方が考えられる。小さいケースに収めてネットワーク越しに外から叩けば、メインマシンのメモリを一切消費せずにローカルLLMを常用できるわけだ。
今回は試していないが、本機にはOCuLinkもあるため、外付けGPUでLLMを処理させるのもありだろう。
さらに本機にはNPUもある。実際にWhisper LargeをNPUで動かしてみたところ、「超」が付くほど実用的だった。たとえばNPUのWhisperで会議音声からテキストを起こし、それをGPU上のLLMに渡して議事録に整形する――といった処理をボードだけで完結できる。Lunar Lakeの高い電力効率と組み合わせれば、常時稼働の小型AIノードとして光る存在になりそうだ。







































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